僕の車は日産のエクストレイルで、アウトドア野郎にとっては中々の相棒だ。
しかし僕は車を奇麗にするという事にとんと無頓着だ。
車なぞは、山や川原で激しく扱える旅道具の一部と捉えている。
毎週のようにちまちまと洗車なんかして、大事大事に扱う物ではない。
汚れなぞは男らしく雨で流せばよい。
汚れる程に、道具としての男っぷりが上がるってもんだ。
しかし最近車内が青春の匂いで充満している。
前に吸っていたたばこの残り香や、登山後のすっぱい汗の匂い、ダイエット食として食べるおでんの匂いなどで大変賑わっている。
(余談だがおでんはいつもコンニャクを2つのみ買っている。ほとんどカロリーがないから買っているが、店員に何か別の意味で疑われていないか不安だ。)
嫁はいつもこの車に乗ると「クサッ」と言って、汚物を見るような目で僕を見る。
そこでさすがの僕も、どうせ遊びにいけないからと車内清掃に踏み切った。
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ダッシュボードを開けると、驚きの光景が飛び込んで来た。
セメダインが破裂しているじゃないか。
というか僕はいつ何の為にセメダインをここに置いたんだ?
ばりばりとセメダインを剥がすと、中から六画レンチが出て来た。
なんだこれは。
ヘラがなかったから、六画レンチでもんじゃでも食ったのか。
取っ手部分ならまだしも、よりによって使う側にびっしりともんじゃが絡まっている。
さらに奥になにやらあるぞ。
マイナスドライバーでべりべりと剥がしていく。
なんだこのジュラシック・パークの「琥珀の中の蚊」みたいなやつは。
これはまさか「SDカード」か。
なんて変わり果てた姿だ。
大分前に紛失してずっと探していた8GBのやつだ。
今でこそ安くなったが、当時は8GBは結構高かったから悲しかったのを覚えている。
せめてセメダインの逆側に置いておけば、こんな惨事にならずに済んだものを。
これがこのまま地中に埋もれて、数百万年後に発見されて、中の記憶を元に「マゾヒスティック・パーク」が建設されるかもしれない。
山や川を縦横無尽に走り回る、僕の大群。
どんなに雨が降ろうと、風が吹こうと、嫁に罵倒されようと恍惚の表情で「キシャッーー」と叫ぶ僕。
後の世の人達に、今の人類の姿に誤解を与えない為にもこのカードは適切に処分した。
いくらなんでも、多少もっと車を掃除してあげよう。
このカードの命、無駄にはしない。
SD刑事の殉職
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MATATABI BASE
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