「乗鞍岳」
それは「最も簡単に登れる3,000m峰」として、多くの人々に親しまれている山。
特に登山をした事ない人や、子供老人にも登りやすい難易度の低い山だ。
しかしである。
そんな乗鞍岳を、過去に三度挑戦して三度敗退した男がいる。
彼の一度目の挑戦は、晴れ予報を信じて有給休暇まで取って行ったら現地でこの状況↓になった時。
この時は登山靴を忘れて麓まで靴を買いに走り、戻ってきて往復のバスチケット買った直後に豪雨という悲惨さだった。(参考記事:連鎖する悲惨〜福地山〜)
そして二度目のチャレンジは、当時まだ2歳だったりんたろくんを背負ってのリベンジ登山。
その時は出だしこそ快晴で快調だったが、山頂付近で突然の濃霧&寒気&突風&小雨という乱交パーティー状態に。
そしていたいけな2歳児は唇が紫色と化し、低体温症寸前になって号泣。
よって山頂まであと50mという寸止めお預けプレイが炸裂して無念の撤退。
撤退時も思いっきり転倒して膝の皿を割ったかと思うほどの追い打ち土産をもらい、完全敗北にて追い出されている。(参考記事:惨敗に乾杯〜乗鞍岳〜)
そして三度目は、晴れ予報が当日になって突然暴風雨となり、現地に行く事すら出来なかった。
もはや乗鞍と戦うリングにすら上がれなかったのである。(参考記事:ジョーのつぶやき〜柿の種野郎の化粧品〜)
だがそんな男に、ついに4度目の乗鞍リベンジマッチの時が訪れた。
そして前回パープルリップで死線を彷徨った2歳児は、今7歳となって己の足でのリベンジを誓う(本人の意思ではない)。
さらには当時のりんたろくんと同じくらいの歳である次男こーたろくんも、初挑戦にて初登頂を目論む(本人の意思ではない)。
親子二代で挑む乗鞍真田丸。
難攻不落の山・乗鞍岳との因縁、今こそ断ち切ってみせるのである。
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今回は万全を期して、日帰りではなく前泊スタイル。
麓の平湯キャンプ場にて、野郎3人でのキャンプである。
もう嫁のアウトドア化への道は完膚なきまでに断ち切られてしまったので(参考記事:神々の理想郷〜デスゾーンの彼方に〜)、今後は僕と息子達だけの父子家庭スタイル。
周りのキャンパーのお父さんが笑いながらビール飲んでたり寝転がって昼寝しているのを横目で見つつ、僕は各種設営から子供らとの遊びやオムツ交換に至るまで大汗をかきながらこなして行く。
もはや時給1万円クラスのハードワークな気がしてならないが、父子家庭スタイルでしかキャンプ出来ないんだから我慢一徹だ。
それでも陽気に遊ぶ子供たちを見ればそれも報われる。
当時まだ2歳だったりんたろくんも、逞しく成長して乗鞍リベンジに向けて「もうパープルリップにはならないぞ」と気合い十分。
そしてまさかこれから3,000mの世界に連行されるとは夢にも思ってないこーたろくんは、スラックラインを乗りこなして終始ゴキゲンだ。
今回もこのような無垢な幼児達の唇を紫化させしてしまったら、そろそろ幼児虐待で通報されてしまう。
なので今回は少しでも天気予報が怪しかったら行かないと心に決めている。
フラフラになりながらも何とかメシを作り、
ジュースから肉に至るまでぶちまけまくりのこーたろくんの面倒を見つつ夜は更けて行く。
大人一人だと気軽に子供ら置いて便所も行けないし、何より嫁から「何かあったらいかんで」と禁酒命令されているのが痛すぎる。
キャンプ場に泊まって焚き火を前にして酒が飲めないというお預けプレイ。
そんな苦行も全て明日の乗鞍リベンジのため。
4度目のチャレンジ、必ず成功させてみせる。
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ついにやってきました、乗鞍岳スタート地点の畳平。
やっとこさ僕は乗鞍と戦うリングに上がる事が出来たのである。
そして今回は松本に移住して北アが「ご近所」になった低血圧Mちゃんが急遽参戦。
まるで愛人を連れた疑似ファミリー登山のような光景だが、これも全てこのリベンジマッチを成功させるための秘策なのである。
彼女は松本移住後、松本市の平均雨量を激しく向上させる事に成功して正式にプロのアクテンカー(悪天候人間)となった名選手。
我がマイナスパワーをプラスに変えるには、僕と同等のマイナスパワーをぶつける必要があったのだ。
これぞ「マゾをもってマゾを制す」の深謀遠慮なのである。
さあ、その作戦も成功して空は快晴。
意気揚々と走り出したのはこーたろくんだ。
さては自力登頂してしまうのではないか?
これを見た僕は、「我が家に麒麟児が生まれていたか!」と司馬懿のように喜んだ。
しかし次の瞬間、こーたろくんは「もう歩けない。背中に乗るの。」と早々にリタイヤ宣言。
まさかの駐車場の段階で自力登頂を断念した我が家の麒麟児。
2歳で金華山を自力登頂した時は「将来有望!」と喜んだものだが、だんだんとお兄ちゃんに似てきてしまった。
そもそも子供はベビーキャリアに一回担がれると、その楽さに味を占めて頑張らなくなってしまう。
今思うと買って正解だったかどうかは怪しい所である。
一方、2歳の時にこの畳平に来た時のお兄ちゃん。
当時のレインボー過ぎる写真がこちら↓。
そして5年後の今がこちら↓。
あんなに無邪気だった2歳児は、今やキン肉マンにかぶれすぎてマスクマンとなってしまった。
そして根性のなさだけは進化して「足が痛い。膝が痛い。もう歩けない。」と、水曜どうでしょうの大泉ばりに愚痴が止まらない。
そしてマスクマンのままベビーキャリアに掴まって引っ張るから、ベビーキャリアの体感重量は25kgほどのしんどさなのである。
もちろん僕は車にトレッキングポールを忘れて来るという仕込みが済んでいるため、荷重を分散させる事が出来ずに足腰への負担がマゾいことに。
そしてそんなマゾ兄を横目に、低血圧Mちゃんは4年に一度の快晴に対して腰を抜かしている。
しかし彼女の雲呼びのスキルは向上しており、早くも山間からお馴染みのアイツがコンニチハしているではないか。
まずい、もう見つかったぞ。
アイツがモクモクして来る前に、早々に決着をつけないとまたしてもパープルリップの洗礼を浴びてしまう。
我々は急いで肩ノ小屋まで移動。
そこではこんな懐かしいアイテムと再会。
この毛糸のポンチョ。
りんたろくんがパープルリップになって撤退してきた際、低体温症の体を冷やすべく急遽5,000円はたいて購入した思い出の一品。
その時の写真がこちら。
ガタガタ震えながらも、この頃からiPhoneを手放さない男。
しかしそんな男もやはり5年経って成長したのか。
レディーの低血圧Mちゃんに対して、「僕のトッポあげる」と親切にお菓子をあげているではないか。
しかしそのお菓子は空箱だった。
かつてチーム・マサカズの小木Kにやられたことを、今ここで別の人(しかも女性)にリベンジするというまさか。
しかも彼は「この人イケメンが好きだと思って。」と言うではないか。
良く見るとトッポの箱の裏にイケメンが。
低血圧Mちゃんがよほどイケメンに飢えているように見えてしまったのだろうか?
ちなみに僕が「このお姉さんは移住してお山に住んでいる妖精さんだ。自在に雨を降らすんだよ。」と紹介。
それも十分失礼な紹介の仕方だったが、りんたろくんはその上を行っていた。
彼は「この人は妖精じゃないよ!だって妖精は18歳までなんだもの!」と失礼の上塗り。
これが妖精さんの怒りを買ってしまったのか?
小屋の向こう側から、モクモクが一気に浮上してきた。
急がねばならない。
状況は大惨敗したあの時と酷似している。
さあ、ここからがいよいよ乗鞍への本格的な登りが始まる。
そして嬉しい事に、ここで再び麒麟児こーたろくんが「ボク、のぼる。」と自力登頂宣言。
しかし開始1分で「もうダメなの」とリタイヤ宣言。
ベビーキャリアは何かと束縛されるマゾ父には非常に便利なアイテムだったが、子供にとっては麻薬のような中毒性があってなにくそ精神が育たないのかも…。
ただ利点もあって、これで子供担いでるとすれ違うハイカーさんから「まあ、すごい」「お父さんガンバ」などと温かい声援を貰える。
日常生活中に嫁から温かいお言葉をミジンコの糞ほども貰えない身としてはちょっと嬉しい。
ただ乗鞍はヤング山ガール率が低く、おばちゃんが「私も背負ってもらおうかしら。ドゥハハハハハ!」とデーモン閣下のような笑い声で絡んで来るのが実にハードである。
しかし一方で、過去にこのベビーキャリア中毒にどっぷりだったりんたろくんがここで謎のスイッチオン。
突然ガシガシとハイスピードで登り始めたのだ。
あのパープルリッパーだったりんたろが、ここまで逞しく…。
この成長を目の当たりにして喜びにむせる父に対し、りんたろくんは逞しい顔で言う。
「さっさと終わらせて早くおもちゃ欲しいから」と。
確かに大泉ばりの愚痴が止まらないりんたろくんに対して、「しょうがねえな。ちゃんと登りきったらおもちゃ買ってやるから。」と大人的贈賄策にて懐柔を図っていた。
彼はその希望だけを頼りに、特にリベンジとかしたいとも思わない山に登っていた模様。
彼にとっては、おもちゃを貰うためのやりたくもないバイトのようなものだったのである。
そんな不純な動機で登る男に根気が続くわけがない。
まるで僕を見ているかのように、みるみるヘロヘロ状態になって行くではないか。
なるほど、僕を客観的に見るとこんな感じなのか。
妙な形でだが、はっきりと親子の血の繋がりを感じてお父さんは嬉しいぞ。
おもちゃのための厳しい苦行が続くりんたろくん。
しかし3,000m目前に来て、他の低山では味わえない光景が彼の前に広がる。
でも彼は驚きの無表情で無感動。
妙な形でだが、はっきりと君の母との血の繋がりを感じてお父さんは悲しいぞ。
そんなこんなで頑張って登って行くと、ついに因縁の場所に到達。
前回挑戦時、頂上を目前にして撤退を決意した山頂小屋の地点である。
当時は泣き叫ぶ低体温症の息子を抱えながら、真っ白な世界の中で右往左往しながら苦渋の決断をしたものだ。
しかし今日は低血圧マイナスパワーとの衝突のおかげで、実に良いお天気を持続している。
行ける。
4度目の挑戦にして、今日こそ北ア最難関(個人的に)の山を制覇するとき。
りんたろくんもイケメンに飢える(飢えてないけど)妖精さんに連れられて、逞しく最後のビクトリーロードを進む。
そして妖精さんの「ここ危ないね。滑落しちゃいそう。」という声に対して、りんたろくんは「この人カツラ落としそうなんだって。妖精ってカツラだったんだ。」とラストスパート失礼発言。
そしてついに5年に渡る因縁の乗鞍岳との戦いに今終止符が。
喜びに浸って笑っているのはなぜかお父さんただ一人。
りんたろくんはまたマスクマンになってたので無理矢理マスクを剥ぎ、こーたろくんに至ってはあくびをしている始末。
彼らにとって因縁もクソも感じていないこの山頂には何の思い入れもないようだ。
しかもりんたろくんは、突然エロたろうとなって三脚で妖精さんの腹をつつき続けるというセクハラタイムに突入。
どうやら彼はノリクラとイメクラを勘違いしている可能性が高い。
ここからの下山中、彼はことあるごとに妖精さんの背中やら二の腕やらを堪能しながらの下山となった。
そしてその迷惑なお客さんの執拗な攻撃に対して妖精さんが怒った。
あんなに青空一色だった世界が、まるでドーム球場の屋根が閉まるかのように白に閉ざされて行くではないか。
慌てて逃げ惑う乗鞍真田丸のご一行。
この頃には「足が痛くてもう限界なのよ」と、さっきまで満面の笑みでセクハラしていたりんたろくんがリタイヤ宣言。
そこで結局今回も三面六臂のマゾモンスター「アシュラマゾ」が乗鞍にもご光臨である。
腰が爆発しそうになって苦悶の表情を浮かべながらも、「カーカッカッカ」と喜びに浸るアシュラマゾ。
ポケモンGOの中でも一二を争うレアモンスターで、基本的に山の中での発見率が高い。
さあ、迫り来るモクモクから逃れるように最後の一踏ん張り。
かつてりんたろくんをかかえながら逃亡中に、思いっきり転倒して膝の皿を割る寸前まで追い込まれた道を横目に見つつ、
なんとかゴールです。
最終的にはりんたろくんが担がれちゃってるが、これもまたあの頃の再現として良き思い出である。
で、バス待ちの間にご褒美のキモいおもちゃを買ってやり、
我々は因縁の山、乗鞍岳から去って行った。
それを確認した反対方面行きのバスに乗った妖精さん。
衝突マイナス役として役目を終えた彼女もまた、その力を再び解放して静かにいつもの白い霧の中へと消えて行った。
こうして乗鞍は再びあの頃と同じ白の世界に包まれた。
ありがとう妖精さん。
また青空が見たい時はよろしくお願いします。
こうして4回、6年の長きに渡る戦いが終わった。
しかし我々にはリベンジ対象の山がまだまだやたらとある。
基本的に山頂で景色見れない事が多いから、もう一回行かないといけない所だらけなのだ。
我々真田丸親子の戦国を乗り切る戦いはまだまだ続くのである。
乗鞍リベンジ〜フェアリー真田丸の悲願〜 完
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今回のギア
【上半身】
・ベース/ファイントラック「パワーメッシュT」
・Tシャツ/ノースフェイス「メンズロゴTシャツ」
・ウィンドシェル/パタゴニア「アルパインフーディニジャケット」
【下半身】
・下着/ノースフェイス「ドライショート」
・ショートパンツ/アークテリクス「パリセードショート」
【足】
・ソックス/ドライマックス「トレイルランニング」
・シューズ/モントレイル「バハダ2」
【頭部】
・キャップ/パタゴニア「ダックビルトラッカーハット」
・サングラス/オークリー「ピットブル」
【ギア】
・ヘッデン/ブラックダイヤモンド「ストーム」
・スラックライン/ギボン「クラシックライン」
【ザック類】
・ベビーキャリア/モンベル「ベビーキャリア」
・カメラバッグ/パーゴワークス「フォーカスL」
・エマージェンシーキット
・財布/スノーピーク「山財布」
【デジ物】
・一眼カメラ/ペンタックス「K30」
・三脚兼腹つつき棒/ベルボン「キューブ」
【住】
・タープ/ローカスギア「タープX・デュオ・シル」
・テント/ゴーライト「シャングリラ3」
・ハンモック/ヘネシーハンモック「ウルトラライトバックパッカーA-sym」
・ペグ/MSR「ブリザードステイク×6」
・ペグ/イーストン「ブラック12′×2」
・ペグ/スノーピーク「ソリッドステイク30」
・シート/ハイマウント「オールウェザーブランケット」
・マット/サーマレスト「リッジレスト」
・マット/モンベル「U.L.コンフォートシステムパッド180」
・シュラフ/モンベル「ULSSダウンハガー#4」
・キルトシュラフ/ローカスギア「ニィクス」
・ピロー/モンベル「U.L.コンフォートシステムピロー」
乗鞍リベンジ〜フェアリー真田丸の悲願〜
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MATATABI BASE
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