三連休。
もちろん僕は監督(嫁)によって、お留守番三連投が命じられた。
全盛期の浅尾拓也のように、毎試合のように連休には連続お留守番登板指令。
嫁が祝日とかも休みの無いブラック企業勤めのため、連休時はそのあおりを受けまくる。
中継ぎピッチャーにHP(ホールドポイント)がつくように、留守番お父さんにも何かポイントがつかないものだろうか?
しかもかつて大エース権藤博が「権藤・権藤・雨・権藤」と呼ばれたように、僕がお留守番登板をすると「快晴・快晴・また快晴」という三連休天気予報になるからたまらない。
そんな三連休、ひたすら家で子供と共にトミカ・プラレールに興じねばならぬ切なさよ…。
いつものように子連れで遊びにいけば文句は言われないが、なんせこの時期(冬)は子供を連れ回すと過剰な心配性の嫁やお義父さんが面倒なのだ。
「風邪を引いたらどうするんだ」とか「まだ水疱瘡治ったばかりなのに」とか「ウイルスが…」とか「PM2.5が…」とか「乾燥肌が…」etc…
まあ、かと言って夏は夏で「熱中症が…」「サルモネラ菌が…」「殺人ダニが…」などといちいちめんどくさい。
はっきり言って鬱陶しい。
子供は汚いもん触って真っ黒になって血だらけになって遊んでナンボの生き物だ。
心配性なんてクソ食らえ。
なーんて事が言えない僕は、おとなしく家庭内プラレールに没してお留守番。
でも当然気づいた時にはいつものように軽発狂。
三連休の2日目の朝。
ワッと叫んで、ウッと気を失い、ハッと目覚めた時。
僕らはいつの間にか登山口に立っていた。
何も家にいることばかりが安全なお留守番ではない。
家だってハウスダストもあれば、突然頭上に隕石が落ちて来ないとも言えないではないか。
この日は嫁が名古屋でエステ&お買物三昧の日。
どうか目一杯楽しんできて欲しい。
てことで面倒なことを言われない隙に、僕はここにお留守番しに来てしまったのだ。
肝心の子供たちのテンションが低めなのが気になるけど…。
しかし人生とはプラレールのように決まったレールを敷かれて歩いていくものじゃない。
時にはこのように、無理矢理父の個人的欲望を満たすために連れ出されてしまう時だってある。
ここは割り切って、この「鳩吹山」をしっかりお留守番しようではないか。
ってことで今回も平和親子登山。
1月2月のアイスクライミングに行きやすくなるための、ホールドポイント荒稼ぎ強化月間。
野郎3人の静かなるお留守番の模様をサクッと振り返っていこう。
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鳩吹山の登山口に向かう道。
そこで確認されたのは、子供とは思えないローテンションのりんたろくん。
これから楽しい楽しい登山が始まるだなんて微塵も予感させないやる気の無さである。
彼としては家でヌクヌクと携帯ゲーム(キン肉マンマッスルショット)がしたかったようだが、6歳にして社会の(親の)厳しさを痛感しているようだ。
思えばこの鳩吹山は今回で二回目。
前回の時はりんたろくんもまだ2歳で、何も知らない無垢な子供だった↓。
なぜか担いでいるのがアゴ割れMだったりするが、この時はまだ何の疑問も持たずに父の放浪に付き合ってもらっていたな。
しかし今では、登山口に着く頃にはもはや顔も上げられないほどのグッタリさ。
全身から登山に対する「めんどくささ」が溢れ出んばかりである。
そしてスタートしてわずか5分。
早くもりんたろくんが「腹へって死にそうなのよ。休憩しようよ。」と訴える。
ついさっき父がマックに寄って贈賄ハッピーセットを買ってやったばかりだと言うのに、早くも休憩おにぎりタイム。
景色もクソも無い、なんとも味気ない登山道の脇でのまさかな早漏ランチだ。
そしてこの時の、元気なこーたろくんと対照的に、おにぎりを食う時のりんたろくんの生気の無い顔と言ったらどうだ。
ここまで目から希望を失った表情の子供を見た事がない。
そんなに登山がイヤのか?
しかし父はこの絶望顔を過去に一度見た事があるぞ。
おにぎりじゃなくてうどんだったけど…。
受け継がれる意思。
きっとなんだかんだ言いながら、彼も33年後には山に登って同じ表情で吐いて喜んでいるはずだ。
とりあえず僕は死んだ目をした少年に対して、「山頂に行ったらキン肉マンマッスルショットのガチャをやらせてやる」と約束して生気を取り戻させる。
ついでに「山頂でガチャやったら、念願のレア悪魔将軍が手に入る確率が高まるぞ」と小粋なウソをかます。
ゲーム内のガチャをやる度にザコキャラしか当たらない彼は、「ほんとに?地獄の断頭台じゃなくて地獄の九所封じの方の悪魔将軍だよ!」とやる気を出した。
私は子供に対して「ウソは良くないぞ」と言う資格ゼロのクソ野郎である。
こうして無事にやる気を出したりんたろくん。
6歳にして40以上の山に登った(登らされた)兄として、弟のこーたろくんに「足元危ないから気をつけて」とばかりに優しく寄り添う。
しかしその直後に、激しく転倒する男。
弟の股間に捕まってもがく姿に、兄の威厳が溢れかえっているね。
かと思えば、二つに分かれる道に遭遇すると、山のベテランのりんたろくんが再び動く。
左に行くべきか右に行くべきか。
そんな時彼は地図にも父にも頼らず、「トレッキングポールが倒れた方に行く」というシャーマン的な方法を選ぶのだ。
しかしこのポールはなぜか毎回逆方向に倒れるので、彼一人で山に行ったらイチローの打率を上回る遭難率を叩き出すだろう。
しかも分岐点じゃない所でも突然この儀式が行われ、何度か崖方向に進まされそうになる事もあるから恐ろしい。
そして時折道の途中で座り込んでは、「ア〜ア〜 ベルリンに〜赤い雨が降る〜。ハーイル ブロッケン ブロッケン」とブロッケンJr.のテーマソングを歌い出す。
こうなると彼は完全に自分の世界に入り込み、ここが山だという事を忘れ空想の中で遊び出す。
ある意味クライマーズハイ状態なので、こうなれば結構彼は無意識に山頂に向かって歩いていくからしめたものだ。
一方で、まだまだ無垢なこーたろくんは終始ゴキゲン。
最初の金華山から自力で歩かされてるだけあって、その足取りはしっかりしている。
だが二回目以降の登山で、「父に担がれる事の楽さ」に味を占めてしまったのか。
自力登頂なんかになんのこだわりもない彼は、即座にダッコ要求だ。
それでもりんたろくんが2歳だった頃の事を思えば、結構根気よく途中まで登って来る。
りんたろくんが2歳の頃は、大抵登山口前から「ダッコダッコ」の連呼だった。
それを思えば将来有望なアウトドアマンである。
しかしキン肉トランス状態になったりんたろくんも負けてはいない。
結構な急登を登って景色の良い尾根道にまで到達。
そして道で拾った、彼曰く「アノアロの杖」をトレッキングポールに取付けてパワーアップ。
彼は彼なりに、この望んではいない登山を楽しんでいるようだ。
こうなったらお父さんも黙ってられない。
君たち兄弟にお父さんの偉大な力を見せてやろう。
頭上を見てごらん。
快晴予報だったのに、とってもグレーだろ?
そしてなんだか寒風が吹きさらして来たね。
だうだ?山って楽しいだろ?
そんな寒々しい登山が続き、しばらく歯を食いしばって進んでいく。
やがてなんとか山頂に到達して笑顔の3人。
まあ、実際笑ってるのはお父さんだけだけどね。
りんたろくんにとっては山頂なんてどうでもいい。
彼の頭の中は「ガチャでレア悪魔将軍をゲットすること」その一点。
「山頂ではレア超人の獲得率が上がる」という父のウソを信じてここまでがんばって来た男。
彼は「お願い!キン肉アタルでも良いから★6個の超人出て!」と祈るようにガチャボタンを押す。
すると出て来たのはこいつ。
ペ…ペンタゴン…。
ここに来て全く使えない★4つの超ザコキャラを引いてしまったりんたろくん。
陽気にはしゃぐこーたろくんをよそに、しばしその場で画面を見つめて固まってしまっているではないか。
ウソをついた張本人の僕は、「どうやらちょっと標高が足りなかったみたいだな。300m程度のお山だとペンタゴンが精一杯みたいだね。だから今度は富士山の頂上でガチャろうね」と、ウソを新たな陰謀で塗りつぶしていく。
実に酷いお父さんである。
ちなみにペンタゴンが出る事は、オープング写真とサブタイトルでヒントがありました。
わかったでしょうか?
そんなこんなで、失意ですっかり目が開けられなくなったりんたろくんと東屋に移動して本日二度目のメシタイム。
へこむ兄をよそに終始ゴキゲンなこーたろくんは、アメリカの徴兵ポスターのようなアイウォンチューポーズ。
というか嫁に似たその目でそれやられると、なんだか怒られてる気分になるからやめて…。
とりあえず体力が有り余ってるようだから、下山は担がずしっかり歩かせます。
一方でまだ「ペンタゴンショック」を引きずってる男は、相棒のブロッケンJr.と戯れ出して立ち直りの気配を見せないまま。
去年のクリスマスの日に、朝起きたら靴下の中に念願だったこのブロッケンJr.が入ってて驚いたよね。
サンタさんも「もうブロッケンJr.のフィギュアなんてまともに売ってないからすげえ高かったよ…」と泣きそうになってたやつだね。
しかたない。
お父さんとしてもウソをついてペンタゴンショックを与えた責任がある。
そこで久しぶりにりんたろくんを背負って下山する事に。
するとやっとこさテンションが上がって(苦しい登山から解放されて)、ご覧の喜び顔。
そして見事な「してやったり顔」に。
そもそも3歳までが使用限度のこのベビーキャリアに、6歳児が乗ってる時点で異様だ。
まあご機嫌が直ってミスター・カーメンのテーマを歌い出したから、とりあえず良しとしておこう。
山を楽しんでくれたかどうかは大いに怪しいけど。
と、そんな感じで我々のお留守番は無事終了。
お母さんも心配せずエステ行けたし、ご両親はのんびりできたし、お父さんも楽しかったし、子供たちも…楽しかったし。
誰も傷つかない完璧なお留守番が決まった。
傷ついたのは、登場するなりため息をつかれたペンタゴン一人だけである。
そんな我が愛息達。
こーたろくんはその後、めでたく3歳の誕生日を迎える事が出来た。
まるで祝われてるのがりんたろくんみたいに見えるが、彼は「スプリングマン」と名付けたおもちゃを楽器にしてバースデーソング(なぜかロック調)を弟のために歌ってあげてるのだ。
そしてこーたろくんの前にロウソクを吹き消してしまうと言うサプライズも披露。
そしてケーキを食わないりんたろくんは、やる事はやったとばかりに「じゃあ2階でマッスルショットやってくるね」とこの部屋から出て行った。
こいつ、絶対将来釣った女にエサをやらないタイプの男になるな…。
何はともあれ、こうしてりんころの二人は順調にアウトドアマン?として成長中。
もうちょっと大きくなれば、泊まりで堂々と連れ回せるからその時が楽しみだ。
「遊びにいくための大義名分」から「一緒に遊べるパートナー」へ。
気ははやるが、その時が来たらもうちょっとお父さんストレス減りそうです。
でも今の時期も可愛いし捨てがたい。
色々悩ましいけど、とりあえずもっと色んな場所で留守番していこう。
そう思った、1ヶ月以上唇が割れて地味に苦しむ冬のお父さんでした。
嘘つき父さんと幻の悪魔将軍 〜完〜
嘘つき父さんと幻の悪魔将軍〜国防総省本庁舎の嘆き〜
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MATATABI BASE
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