御池岳/滋賀

御池厄除け復活祭 後編〜そしてサヨウナラ〜

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限界の先にこそ光はある。

そう信じて男達は大急登を突破。

中には口から胃液をしたたらせながら、うつろな表情で登ってくる者までいる。


やがて彼らは悪魔将軍との死闘の末にテーブルランドに到達。

そしてそんな彼らに待っていたのは、これでもかという「白の洗礼」。

これにより、闇に染まった厄災男の心が純白に染め上げられていく。

男は涙目で呟く。

「やっぱり山はこうでなくっちゃ」と。


しかし彼の厄除けの儀式はまだ始まったばかり。

ここからはいよいよ待ちに待った雪上テント泊。

そして翌日には、テーブルランドの素晴らしき雪原をスノーシューハイクしての御池岳初登頂だ。


特に冬の御池岳では、「青のドリーネ」なる実に神秘的な光景に出会えるという。

ドリーネとは石灰岩が侵食されて出来た、すり鉢状の窪地のこと。

冬にそのドリーネを青空の下で見ると、なんと青く輝いて見えるという神秘のスポット。

我がヘドロ厄を封印するには持って来いの場所なのである。


さあ、残す所厄除けの儀式と青のドリーネへの封印の儀式。

風邪でしんどいなんて言ってる場合ではない。

今後の人生がかかっているんだ。

というか家で大人しくしてるのが一番の厄除けだった気がしないでもないが、我が精神構造状これが正解だと信じてやまないのである。


それではそんな彼らのその後の模様。

ズバッと振り返ってみよう。


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久しぶりの精神と時の部屋。

苦労して辿り着いた果てに突きつけられる圧倒的ホワイト。

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だがこれはこれで実に素晴らしい。

そりゃ青空との見事なコントラストが見れたら最高だったが、そんなもの今の僕には刺激が強すぎる。

それは3ヶ月間ずっと男達にまみれてマグロ漁船で働いている男に、突然裸のアンジェリーナ・ジョリーを送り込むような刺激の強さ。

もし今晴れていたら、恐らく僕の目はつぶれて全身が日の光で粉々に砕け散っていたはず。

やはりリハビリとしてはこのくらいの白から徐々に馴らして行くべきだ。


しかしそうは言ってもさすが鈴鹿屈指の雪山。

美しすぎる樹氷達と広い雪原の世界は、それだけでも見応え十分だ。

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ううむ、美しい。

常に頭の中に「晴れてたらもっと…」という余計な言葉がちらついてしまうが、私のような疫病神がそんな大それた願いを口にしてはいけない。


そこからはテント設営場所を探すべく樹林帯を彷徨う。

その様子はもはや東山魁夷の絵の中にでも入ってしまったかのような光景。

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見た目は静けさがあって幻想的なんだが、やってる本人達は結構な寒風に吹き付けられてプルプルしております。

しかしどこ行っても樹氷のトンネルだらけで気分は悪くない。

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そう、山だからって「景色」を求めるから毎度悲しい目に遭うのだ。

このように身近にある物だけ見てれば、景色だ何だと目に見えないものにいちいち裏切られる事もないのである。


しかしそんな僕の思いが伝わらなかったジャンダラKが、なぜか絶景ポイント「東ボタンブチ」に向かって行ってるではないか。

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僕は必死で「待て!やめるんだ!」と叫ぶが、その声は風でかき消される。

やがて彼は「鈴鹿山脈の名峰がズラッと見渡せる場所」に到達してしまう。

しかしもちろんそこから見えるのは白い絶望のみ。

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ガックリと肩を落とすジャンダラK。

だから言ったのに…。

僕レベルの心眼使いなら遥か富士山まで見る事は出来るんだが、まだ正常登山者のジャンダラKには白しか見えなかったはずだ。

彼はすっかりうなだれて大人しく樹林帯に消えて行く。

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その背中の寂しさよ。

今頃「なぜアイツを誘ってしまったのか…」と後悔している事だろう。


しかもついでに書いておくと、彼は今回新しいレンズで「星空」を撮るのを非常に楽しみにしていた。

言うまでもないが今晩星空が出る可能性は、僕の嫁が急に優しくなる可能性と同じ確率。

そもそも僕は登山歴5年にして、やっとこの前五色ヶ原で初めて星空に出会えた男。

次に我が頭上に星空が輝くのはまた5年先だ。

一蓮托生。

それが私の登山スタイル。

今後僕を誘う人は、大切な色んなもの失う覚悟でお誘い願いたい。

星空目当てで重い三脚を持って来た所で、そんなものはマゾの上塗りでしかないのである。



やがて比較的平坦な場所を探し当て、そこを今夜の幕営地とする事に。

その頃には汗を吸った僕のアウターがパキパキに凍るほどの氷の世界へ。

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急いで設営しないと全身がカチカチになって、気づいたら下山が春になってるなんて事になりかねない。

しかしこんな時に限って「待ってました」とばかりに吹き荒れる寒風。

今回が雪上テント泊二回目なんだが、突風以外のシチュエーションを味わわせてはくれないのだろうか?

頼むから晴れた無風の状態でゆっくりやらせてはくれないのだろうか?


いかん。

疫病神の分際でまた叶わぬ夢を見てしまった。

とにかく急げ。

荒れた厳冬期のテント設営をデートで例えるなら、手をつないだりキスしたりしてる回りくどい時間は命取り。

出会って即ベッドインくらいの気持ちでやらないと、みるみる体温が奪われて凍死してしまう。


そんな中、百戦錬磨のジャンダラKはまさかの「ツェルト」。

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この荒れ狂う暴風極寒の世界でツェルト泊とはさすが三河武士。

夜勤明けに1200mの暴風雪上でビバークしてから、また夜勤に突入して行くという大技だ。


そして僕の方もさらに荒れ狂う風と風邪の中、必死で富樫のペグダウン。

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しかし風が強いから全くうまくいかない。

何度やってもバランスが悪くてキレイに立ち上がらない。

あんなに庭で練習したにもかかわらず、やはり現場は過酷。

やはりどんなにホットドックプレスで予習した所で、いざ初Hともなれば頭は真っ白なのである。


もう何度目かの失敗で「ああ!もうダメ!やめたやめた!俺もう死〜んだ!」と全てを放り投げそうに。

しかし諦めたらほんとにそこで人生終了だから、再び最初から丁寧にやり直し。

その間野ざらしのザックからカメラまで全て凍って行って、さらに焦る。


やがて庭では5分とかからなかったテント設営に、実に1時間という時間を費やす事に。

結局なんだか斜めったフニャチン状態で立ってしまったが、とりあえず一晩過ごせそうだ。

設営の早さを買ってこのテントを選んだが、まだまだ庭で練習しないといつかこのテントに殺されてしまう。

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何気にジャンダラKもかなり風に苦戦を強いられて、同じく1時間近く格闘していた。


厳しい戦いだったが、とりあえずまだ生きる権利は確保された。

そして僕は早速シャングリラ内で「内装工事」に着手。

雪を掘って掘りごたつ風にし、テント内で座れるように改造すると…

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なんということでしょう。

さっきまでのテント内が、あっという間に居酒屋に大変身。

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マゾの匠とジャンダラKは悦びの乾杯なのであります。


ついに来た、夢の「雪上居酒屋・死暗愚痢羅(シャングリラ)」の開店日。

フロアレステントにしたのは、はっきり言ってこれがやりたかったからに他ならない。

標高1200mの誰もいない吹雪の中に現れたオアシスだ。


普通の人は「だったら普通に街で居酒屋行けよ」という正論を吐いちゃう所。

そして「風邪ひいてるのに酒飲むのか」と呆れる所。

だが何度も言うが私はロマンハンター。

これがあるから、白い世界でも心を折らずに笑えるのであります。


そしてそのロマンハンターの横で「ホルモンハンター」が動く。

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おもむろにテント内の雪のテーブルの上に、ロマンを展開して行くジャンダラK。

そもそもピエール滝似の男がシャングリラの中にいるってだけで、我々世代には懐かしいグルーヴ感。

やがて彼が「シャングリラッ、シャングリラッ」っと呪文を唱えた時、突然目の前に「ホルモン」が登場。

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これぞ彼が事前に入手して来た、三河地方の鶏肉マニア垂涎の名店、足助の「花の木」の味付けホルモンなのである。

たちまちテント内に「ジュンジュワァ〜」という艶かしい音が響き渡る。

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しかもこの風のない死暗愚痢羅に持って来いの、チタニウムストーブと固形燃料という小洒落たスタンス。

彼は肉だけでなく、このような僕好みの「道具」でもいちいち快楽中枢を刺激して来る。

おまけに「ホルモン鍋&うどん」という追い打ちも忘れない。

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素晴らしい。

僕は今回アルファ米とジャッキーカルパスだけで夜を飲み明かそうと思っていたが、このまさかすぎるおもてなしの嵐が実に最高だ。

ここまで彼には散々迷惑かけて来たから、この段階で「お前に食わすホルモンはねぇ!」と寄り目で言われても文句言えない立場なのにほんとありがたい。


そしてホルモン食いながら、ワインと梅酒が進む進む。

次第に話題はアツい山談義に。

「だからボカァね…。そこの醤油とってくらさいも言えないし、かといって自分で取り行くのもやらしいでしょ?だから一回トイレに行ったふりをしてから、戻り際にさりげなーく醤油取って席に戻るんですよぅ。わかりますぅ?養子ってねぇ、養子ってやつぁねぇ…」


そんな感じで山の話は盛り上がり、〆はホルモン汁をお湯とおにぎりの中に投入して「ホルモン雑炊」に。

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完璧に決まったジャンダラKのホルモン祭り。

最後は冷え冷えのみかんに感謝の祈りを捧げて終了です。

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こいつも弱った体の五臓六腑に染み込むうまさだった。


この完璧な厄払い儀式のおかげで明日は快晴間違い無し。

ホルモンパワーで風邪も吹き飛んで、ついに夢の青のドリーネ。


さあ、明日が待ち遠しい。

おやすみなさい!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ううむ…


顔が冷たい…

なんだ?

顔に雪降ってるぞ

ここはテントの中なのに

一体何ごとだ?


そう。

これぞ居酒屋・死暗愚痢羅の代償。

テント内の結露が凍り、それが今小雪となって我が顔面に降り注いでいるのである。


そりゃあんだけテント内で調理して、おっさん二人がワイワイやってたんだから結露は凄まじい。

だってよく見ると↓最終的にテント内ガッツリ凍ってるしね。

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これが夜中になってパラパラ顔に降って来るというわけです。


結局これが気になって中々眠りにつけない。

それでも風邪薬飲んで意地で寝る。


おやすみなさい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ううむ


なんだこの爆音は。

まるで数千匹の鳥がこのテントに次々と突撃しているかのようなこの音は。

これ風なのか?

それともヒッチコックの映画なのか?

今にもテントが吹き飛びそうな勢いだ。


だめだ、もう「飛んで行く」というビジュアルしか脳内ビジョンに映し出されない。

頭の中で勝手に108通りくらいの悲しいエンディングが展開して行く。

もはや生きた心地がしない。


しかもこんな時に凄く尿意が。

だめだ、気になったら今すぐしたくなって来た。

でも外は猛吹雪。


あれか?

あれやってみるか?

あれしかないのか?


僕はおもむろにショベルを持って雪のフロアを掘る。

そう、フロアレステントだから可能な、人生初の「テント内放尿」のお時間がやって来たのだ。


僕はその穴に対して膝をついてLの字の体勢に。

しかしやはり「理性」が邪魔しているのか一向に出ない。

かれこれ己の己をさらけ出してから2分が経過。

このままでは己の己が凍って、己の己で釘が打てるようになってしまうではないか。


僕は理性を押し殺し、心を無にして己の本能とだけ対話をする。

するとやがて少しづつ解き放たれる芳醇な雫。


やがてしばしの静寂の後、そっと下を見る。

そこには理性を乗り越えた者の前のみに現れるという「黄金のドリーネ」が輝いていた。

僕はそれにそっと優しく雪をかぶせ、再びシュラフに潜り込む。


良い夢が見れそうだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ううむ


だめだ、寝られない!

と言うかどんどん風が強くなってるぞ。


テントは常時「バタバタバタバタバタバタッ!」と大賑わい。

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もう不安でしょうがない。

ここはテーブルランド。

なんだかテーブルの上にテント立ててて、いつ来るか分からないマチャアキのテーブルクロス引きの瞬間を待っているかのような緊張感。

今引っ張られたら間違いなく空に飛ばされる。



ここからは寝たのか寝てないのかよく分からない、実に長い夜を過ごした。

そして酒飲んだ挙げ句、風邪薬まで飲んで、おまけに寝不足というスペシャルな仕込みが完成した時。


朝がやって来た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


もそもそとテントから出る。

万が一にでも晴れ渡ってないだろうか?

うん。

もちろんそんなわけない。

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あれ?ゆうべ核戦争でも起きた?と思ってしまうほどの白い世界。

どこかにトキ兄さんが倒れてやしないか?


それにしても酷い風だった。

ジャンダラKはよくツェルトで一晩過ごしたもんだ。

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実はこれ見るまで、「朝起きてツェルトなかったらどうしよう」と本気で考えていただけにとりあえずホッとした。


で、中から出て来たジャンダラKさんと目を合わし…

周り見て…

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再び目を合わし、そして言う。

「撤退だネ」と。


周囲は検討の余地すら感じさせない、昨日より酷い白い世界。

もはやホワイトアウト寸前の文句無しの撤退日和である。


サクッとテント片付けて撤収する頃にはこの吹雪度。

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結果的に「苦しい思いしてホルモン食いに来ただけ」という華やかな足跡をこの御池岳に刻んでやった。

これがただでは死なない三河武士魂なのである。


そして白みを増した世界を戻って行く。

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いちいちスノーシューつけるのも面倒だからと、つぼ足でのテーブルランド脱出。

もちろん朝から楽しい膝上ラッセルです。

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どう見ても映画「八甲田山」のリメイク撮影現場にしか見えない。

しかしここまで真っ白だとこっちも色々吹っ切れて楽しくなる。


「我々に青のドリーネなんて必要はない」


そうプラトーンポーズで叫ぶおマゾ軍曹。

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形はどうあれ、彼は一番彼らしい形で戻って来たのだ。

おかえりなさい。

これぞあんたの復活祭だ。



やがて前日に殺されかけた地獄の断頭台へ。

しかし今日は下りになるから、ヒップアタックで一気に撃破だ。

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これぞ我々マゾ・ミッショネルズのタッグ技「マッゾル・ドッキング」。

二人揃って強烈なシリセードで悪魔将軍に一矢報いてやった。


そして、昨日は2時間近くかかって登った大急登をわずか15分で撃破。

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無事に生きたまま超人墓場(真の谷)まで戻って来たぞ。


しかしここで「あたりまえ体操」が。


山から谷へー

下ったあとはー

登るッ

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あたりマゾ体操〜


当たり前だが、ここから峠までまた登って行かねばならない。

しかも昨日の夜の雪のせいで、親切な新雪が深雪となって我らのマゾに彩りを添える。

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下山時とは思えないこのツラさ。

まだ二日目だが、なんだか随分長くこの鈴鹿の山中を彷徨っている気がする。

なのに山頂も落としてなければ青のドリーネも見てないという報われてない感。

いいぞいいぞ。


この登りが地味に相当キツかった。

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やがて白船峠に着く頃には、久々にヘロリンQ。

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その気になれば、いつでもリバースしてもう一回ホルモン鍋が楽しめそうな勢い。

もしくは勢い余って己のホルモンまで吐き出しそうなしんどさだ。


それでもまだここは終わりじゃない。

ここから例のMr.不明瞭・木和田尾さんの下山道。

歩きにくいトラバース道から、

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よく分からない道を抜け、

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ひたすら終わりの見えない長い長い道のりをゆく。

やがてボロ雑巾のように道路に出て、

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灰色でグチャグチャの世界の中をとぼとぼ歩いて、

やがて藤原簡易パーキングにてゴール。

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見事に徹頭徹尾悪天候だった。

果たしてジャンダラKさんは後悔してはいないだろうか?

ホルモンを振る舞った挙げ句、お返しに悪天候を振る舞われては随分と割に合わなかったはずだ。


本当、今回は病人の介護兼ガイドありがとうございました。

これに懲りてなければまたよろしくお願いします!


そして個人的には非常に充実した2Daysだった。

若干久々にしてはマゾを盛り込みすぎた感が否めないが、自分らしく生きれた気がする。

しかもやっぱり山だとノンストレスなのか、あっという間に風邪も治ったようだ。

いやあ、しんどかったけど楽しかった!




ちなみに帰り道で、本来行くはずだった小秀山方面を見てみました。

やたらと晴れてますね。

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うん。

まあ。

そんなもんでしょ。



さあ、嫌なものが目に入ったが、今回の山行で我が運命を強制的に切り開いたぞ。

もうここからは厄にまみれた負の連鎖を断ち切って、輝かしい日々が始まる。

ここからは良い予感しかしない。

やっと私の2015年が始まるのである。




でも僕はこの時まだ知らなかった。

あの実体のない「悪魔将軍」が、すでに僕の体に乗り移っていた事に…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


帰宅後。

それは突然やって来た。


おや?と思った時にはもう遅い。

たちまち体中に駆け巡る嫌な予感。

いや、

嫌な悪寒。


とつてもない勢いで僕の体が大悪寒に支配されて行く。

その時の状況を分かりやすくバッファローマンで例えるならこんな感じだ。

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僕は悪魔に支配された。

たちまち熱が38度を越えて行く。

もう立ってられないほどに体がガタガタと震え、あまりの寒さに慌てて毛布にくるまる。


なんだ?

ここは家なのに、テーブルランドよりも寒いぞ。

寒い寒い寒い。


登山前に病院行った時はインフルエンザじゃないって言われてるから、インフルエンザではないはず。

さてはまた風邪がぶり返したのか?

やはり少々おマゾが過ぎてしまったのか?


結局そのまま一向に熱は下がらず、僕は翌日の会社を休んだ。

しかし一旦下がった熱もその日の夜再びスパーク。

平熱35度台の低体温人間のくせに、まさかの38.7度を記録。

いよいよ「ブシュウ…ブシュウ…」という吐息しか吐けない状態に。


さすがにおかしいと救急病院へ。

登山前に病院に行って、登山後も病院とはどんだけ病院好きなんだ?


こーたろくんの新春救急初詣以来の救急詣で。

なんという信仰心の厚い救急熱心な男なのか?

ポイントカードがあれば結構良い景品がもらえそうなほどの救急マニアだ。


そしてそこで下された診断。

ドクター・ボンベは言う。

「ハイ、インフルエンザですね。」って。




なんだそれ。


じゃあ何かい?

僕は早く風邪を治そうと行った登山前病院でインフルエンザを頂戴して、山でウイルスを育んで風邪が治ると同時に下山後に発症したと言うわけなのかい?


やられた….。

僕はもう既に体をサタンに乗っ取られていたんだ。


というかなんだこの流れ?

厄の輪廻を断ち切るどころか加速してるじゃないか。

そもそも毎年インフルエンザの予防接種受けてたのに、今年に限ってカマーホリックとか色々あって行けなかったんだよ。

それが今になって実を結んじゃうのかい?


もうダメだ。

この流れは当分止められそうにない。

思い切って松岡修造クラスの陽の男に抱かれてみるしか、この負の世界から抜け出す方法が見つからない。


かつては快晴の代償で風邪を引いていたもんだが、今や悪天候の山に行くだけでインフルエンザにまで冒されてこの身を奉納しなくてはいけないようになってしまった。

僕の2015年は一体いつになったら始まるのだ….。


というかジャンダラKは大丈夫だろうか?

一つシャングリラの下、思いっきり同じメシ食ってたぞ。

そして僕の爆笑飛沫とかも飛びまくってたし。

何なら結露の霜とともに彼にウイルスが降り注いでたし…。


ホルモン提供したのに、悪天候で返されてウイルスまで浴びせられるとは、彼も登場一発目から一体どこまで巻き込まれれば気が済むのか?

とりあえず後に確認したら移ってなかったみたいでホッとしたけど。




やがて救急から家に帰ると、鉄壁のマスクをした嫁によって即座に隔離部屋に監禁された。

再び捕われの身となってしまった弱り切った狼。

鏡に映るその顔は、やつれて酷く青ざめている。

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男はその青ざめた顔を見て、朦朧とした声で呟く。

「あはは…これかぁ…。これが青のドリーネかぁ…。キレイ…だ..な……」

そしてバタリと倒れ込む。


これぞ真の厄災男の身に訪れるという「青のマゾー寝」。

彼はやっと最後に白ではない、美しい青に出会ったのである。




それからたっぷり1週間。

男は徹底的に隔離され、完全に引きこもり状態。

あれほど外で遊ぶ事を願って過ごした3か月の果て、彼が辿り着いたのはより内なる世界。

ついに彼は自宅の一室に「封印」されてしまったのである。


廊下に置かれたメシをズズズッと部屋に引き寄せる時の切なさよ。

しかし彼はもう泣かない。

世界を氷と吹雪にしてしまう特殊能力を持つマゾと雪の魔王として開き直る。

彼はメシを暗い室内に引き寄せながら歌う。


ありのままの 姿見せるのよ

ありのままの 自分になるの

何も怖くない 風よ吹け


そして悪寒で体をガタガタ震わせながら、


「少しも寒くないわ」


と言ってバタンと扉を閉めて隔離部屋に引きこもる。

しかし部屋の中から時折嗚咽声が漏れ聞こえて来る。


なんでこうなるんだ…


いつまでこの流れ続くんだ….



悪魔め….



もういっそ蝋人形にしてくれないか….





真の復活はまだ先のようである。




御池厄除け復活祭 〜完〜


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜おまとめ動画 「OIKEDAKE〜It’sSoHard〜」〜





〜ジャンダラKさんのブログ 「じゃんだらりん登山日記」より〜

163合目!!ホルモン祭り!!in テーブルランド(真の谷より)1日目

164合目!!ホルモン祭り!!in テーブルランド(真の谷より)2日目



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コメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    こんばんは。

    編集お疲れ様でした。

    「雪上居酒屋・死暗愚痢羅」も開店前から並んだ甲斐があり、
    一番乗りでホルモン祭りを体験できました。
    楽しい思い出をありがとうございました。
    天気は良くなかったけど・・・。

    下山後は大変でしたね~。

    家族からは
    「家をほったらかして山に行っとるからだわ~」と言われたことでしょう。
    悪魔将軍だけは嫌ですね~。
    5日間、冷や冷や物でした。

    今回の天気が悪かったので、次回お誘いすることは無いと思いますが、
    雪上居酒屋・死暗愚痢羅には通ってしまいそうです。(笑)

    • yukon780
    • 2015年 2月 12日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    climblikeさん、いやあ、やっと落ち着きました。
    もうすっかりインフルは良くなって、一週間溜まりに溜まった仕事の雪崩に身動きできない状態ですよ。
    動画編集は休養中にガッツリやらせていただきました。
    まだ熱が38℃ある時にやってたから(熱下がるまで大人しく出来んかった)、編集者の朦朧加減が反映されて最後に変なものが写り込んでしまいましたよ。

    そして雪上居酒屋・死暗愚痢羅の開店一発めご来店ありがとうございました。
    当店名物「陰降怨座」のお味はいかがでしたでしょうか?

    もちろん当店の女将からは「10年くらい死んどけ」と言われました。
    本当の悪魔将軍は家にいたようです。

    本当に今回はご迷惑おかけしました。
    ぜひ「そろそろ青空には飽きて来たぜ」とか「そろそろウイルスの脅威にさらされたい」と思った時は誘ってください。
    死暗愚痢羅はいつでも新鮮な悪天候とウイルスをご用意しておもてなしします。
    またホルモン祭りしたいです。
    そして沢も!

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