前穂〜奥穂〜涸沢/長野

紅葉挟撃作戦5〜奥穂高岳編・逆襲のマゾ〜

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天に拳を突き上げる志士達。

ついに革命達成の瞬間が訪れたのか?

それともラオウ的な絶命の瞬間を迎えてしまったのか?


あまりにも長過ぎてマゾ過ぎたここまでの道のり。

北アルプス屈指のわんこマゾルートを乗り越え、ついに吊り尾根戦線も佳境に。

目指す北アルプス最高峰・奥穂高岳(3,190m)の頂まであとわずか。


奥穂高岳は北ア維新達成の為の最重要拠点。

ここを陥落させる事により、北ア維新への土台は完成する。


そして奥穂高岳の先にある穂高山荘に「奥穂奇襲部隊」を配置。

その真下の涸沢カールに待機している「涸沢陽動部隊」と呼応。

このハママサ同盟二軍による必殺の「紅葉挟撃作戦」で、二軍の中間に鎮座するモクモク幕府を挟撃。

そして見事に「快晴奉還」を達成し、最高の大紅葉を満喫する為の革命戦。


いよいよ大詰め段階に突入した作戦コード「赤きマゾの血」。

男達の反撃が、今始まろうとしている。


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ついに吊り尾根最終ステージに辿り着いた奥穂奇襲部隊。

いよいよ天空の岩壁決戦が始まった。

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凄まじきスケール感。

後方にはこれまで吐き気をこらえながら撃破して来た、禍々しい吊り尾根の道のり。


限界という言葉では足りないほどの疲労感。

果てしない頭痛と、信じられないほどのワイルドな体臭に包まれた瀕死のおっさん達。

もうここまで来ると恐怖感は消え、ただただ無心で登るだけのマゾマシーンと化す。


そしてそこにはひたすらに無感情な岩の世界が展開し、聞こえるのは男達の荒く太い息づかいのみ。

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まるで終盤の加藤鷹のような荒い息づかいが天空の世界に響き渡る。

多くの人が終盤の加藤鷹のやり過ぎ息づかいに対して不快感を感じているだろう。

しかし奇襲部隊のこの息づかいが炸裂したと言う事は、まさにこの長い旅路のフィニッシュを視聴者にお知らせしているという彼らなりの優しさなのだ。

そう、まさにここが昇天間際の攻防戦だ。

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一歩一歩が激しく重く、誰もが無言になる時間帯。

正直、朝の上高地付近での出来事なんて思い出す事も出来ない。

もう本来の目的も忘れて来て、ただただ刑に服しているような気分だ。


そして何度も何度も山頂の幻を見ては「あ…あれ、頂上じゃない…?」と誰かが呟き、それがただの岩の影だと分かるとその場に倒れ込みそうになるの繰り返し。

その度に精神と体力は削られて、さらに体が重くなると言ったマゾ循環。

これは永遠に終わる事無い、奥穂と我々の壮大なるSMプレイだ。


そんな中、遠くにまたしても何度目かの山頂らしき幻。

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あれがもしまたニセ山頂で山頂手前の「南稜の頭」だったら、恐らく我々は二度と立ち上がる事は出来ないだろう。

そしてその場で最後の力を振り絞って、遺書を書く事が精一杯だろう。

せっかくだから嫁への溜まりに溜まった苦情も書き添えてやる。

そして三河武士らしく前のめりで死んでやるまでだ。


そんな悲壮な覚悟で、その場にあった本日何本目か分からない鎖をよじ登ると、

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なんと「南稜の頭」と書かれた標識が。

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やはり先ほど見たものは幻ではなかった。

ここが南稜の頭ならば、この先にあるのが真の山頂。

ついに奥穂高岳の頂をこの目に捉える事が出来たぞ。

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この時のホッとした感が想像していただけるだろうか?

永遠に終わらないと思われたこのマゾ過ぎた戦いが、やっともうじき終わるのだ。

この安堵の表情を見ていただければ、この時の喜びが伝わるだろう。

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背景が白いのに、こんなに嬉しそうなこの男の顔を今まで見た事が無い。

いつもならグッタリ肩を落とす場面なのに、もう景色なんてどうでもいいという心境にまで追いつめられていたのだ。


そして大分前から精神が破壊されているこの二人も、狂ったように「ジャンー!ジャンー!」と叫んでいる。

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しかし彼らが叫んでいる方向は真っ白な世界。

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ついに気が触れてしまったのか?

どうやら本来晴れていれば見えるはずの「ジャンダルム」に向けて叫んでいる模様。

ジャンダルムの姿は全く確認できないが、彼らには見えているんだろう。

ここまでの長い修行によって、彼らの心眼はさらに強化されたのだ。

そう、もう今の我々にはモクモクカーテンによる景色シャットアウトなんぞ通じない。


マゾが極まった我々にはもう怖いものは無い。

高山病の頭痛も受け入れるし、この時点で絶景なんていう浮かれたものも望まない。

欲しいのは明日の「快晴大紅葉」のみ。

その大革命の為なら、今日一日を完全マゾ日にする事もいとわない。

絶対に泣かないぞ。


しかし、そんな荒みきった我々に「あなた達はよく頑張ったわ」と囁く声。

ご雷鳥さんの優しきツイートだ。

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このボロボロの段階でのこの優しすぎる存在感。

我が嫁にも、1mmでもこの雷鳥的な優しさが欲しいものだ。

マゾに汚れ過ぎた我々には、この時のご雷鳥は天使のような美しさに感じた。


さあご雷鳥が出たと言う事は、いよいよ最後のビクトリーロード。

最重要拠点制覇まであと少し。

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振り返れば、信じられないほどのフラフラな姿を惜しげも無く見せつけるバターNの勇姿。

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かつてこれほどのギリギリ感で登頂を果たした男を見た事が無い。

24時間マラソンよりも、よっぽど国民の感動を呼びそうな程のフラフラ登頂。

会場のみんなも涙ながらに「負けないで」を熱唱。

うなぎのぼりに上がって行くチャリティーバター募金の額。


やがてバターNがついに武道館に入って来た。

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歓声とサライに包まれる奥穂チャリティー会場。

バターを先導するサポートの坂本さんも、いよいよ奥穂の山頂をその視界に捉えた模様。

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そして一歩一歩その重い足を引きずりながら、日本国民1億2000万人の夢を乗せて突き進む奥穂奇襲部隊。

やがてついにゴールテープを切り、

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本日二番目の3,000m峰、最重要拠点、

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奥穂高岳を占拠だ!

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もはや芸術的と言っていいほどの白すぎる背景をバックに、果てしない達成感に包まれる修行僧達。

今まで見た山頂からの絶景の中でも、群を抜いて白い。

さすがは北アルプス最高峰の白だ。

もはやスタジオ撮影のような完璧なるホワイトバック。

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高山病ブラザーズも頭痛と歓喜に包まれて、ご機嫌でご危険な状態。

まさに今我々は北アルプスで最も高い場所にいる変態になったのだ。


そして前方には、いつか行くであろう「本物の世界への入口」が怪しく雲の中へ伸びている。

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ここが日本登山最難関ルート「奥穂〜西穂」の地獄の世界への入口。

この先は選ばれたマゾしか足を踏み入れては行けない領域。

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漂っている魔のオーラが凄まじい。

これはまだまだ我々レベルの草野球程度のマゾの叶う相手ではない。

しかしいつか我らのマゾが神の領域に踏み込んだ時。

この先の世界の扉は開かれるのだ。


今はまだそっちの世界で死ぬわけにはいかない。

今回の目的はあくまでも紅葉挟撃作戦の成功。

最重要拠点を占拠した我々は、一路作戦決行の地「穂高山荘」を目指して下山して行く。

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やがて霧の中に亡霊のように出現して来た穂高山荘発見。

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まさに切り立った稜線上に作られた天空の城。

いよいよこの長過ぎた一日が終わる。


しかし気を抜いた我々に最後の追い打ち。

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ちょっと何やってるのさ?

もう普通にゴールさせてくれないだろうか?

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実は何気にここを降りて行くのが今日イチで恐ろしかったりする。

結局我々はスタートからゴールまで、徹頭徹尾マゾることに成功したのだ。

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そしてこの時点で、初めて我々は涸沢の様子を知る事が出来た。

まんまと我々の迂回作戦は功を奏し、見事にモクモクの上部に回り込む事にも成功したのだ。

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そしてはやる気持ちを抑えながら、ついに挟撃作戦決行本部「穂高山荘」に到達。

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実にスタートから10時間以上。

本当に辛くて長い道のりだった。


しかしここでのんびり休んでいるわけにはいかない。

とても面倒くさいが、我々は急いで作戦成功祈願の為の儀式を執り行う必要があるのだ。

その表情からも、この儀式のうっとうしさが伺える事だろう。

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本当はこんな事はしたくないんだが、これも作戦を成功させる為だ。

仕方あるまい。


そして眼下に何も知らないモクモクを見下ろしながら、いよいよその瞬間を待つ。

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見事挟撃作戦を成功させて、この涸沢に溜まったモクモクを蹴散らしてくれるわ。


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同時刻、涸沢ヒュッテ付近。

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奇襲部隊の穂高山荘到着をジッと待っていた涸沢陽動部隊。

もちろんこの時点で彼らの頭上は、相変わらずモクモクに包まれている。

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ビールとワインにまみれて浮かれている陽動部隊に夢中のモクモクさん。

もちろん背後にいる奇襲部隊の存在には全く気付いていない。


見事に上と下からの挟み撃ちの形が整った。

時は熟した。


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モクモク上部・奥穂奇襲部隊。

今こそ陽動部隊に合図を送って作戦決行。

奇襲部隊は渾身の「負の力」を集結させ、ワキからの加齢臭とともにマイナスイオンパワー放射。

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溜めに溜めたマイナスの力がモクモクに降り注ぐ。


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モクモク下部・涸沢陽動部隊。

上空から降り注ぐマイナスパワーを受信。


すかさず戦闘服に着替えて、下からもモクモクめがけてマイナスシャワー放出。

必殺の「紅葉ジェットストリームアタック」が放射状に炸裂。

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偶然持って来たダウンジャケットが同色だったという悲劇。

おっさん三人の痛すぎる、この「ホモイスティック」な赤い光線がモクモクに襲いかかる。


上から「加齢臭マイナスイオンシャワー」。

下から「紅葉ジェットストリームアタック」。

ついにここに「紅葉挟撃作戦」が発動したのだ。


山間に響き渡る「ぎゃああああああッッッ」というモクモクさんの断末魔。

完全に不意をつかれた見事なる挟み撃ち。

ついにモクモクさんが「ぱああああ」っと切り裂かれ、ついに涸沢紅葉の全貌が現れる。

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その模様は上空の奥穂奇襲部隊からも確認できた。

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みるみる眼下のモクモクが切り裂かれて行く。

そして我々の目からもハッキリと涸沢陽動部隊のいる場所が確認できるようになった。

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随分離れているが、ついに11時間ぶりに再会を果たしたハママサ同盟。

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この壮大な北アルプスを部隊に発動させた渾身の「紅葉挟撃作戦」は、素晴らしい連係プレイによって今見事に実を結んだのだ。

これにより強力なマイナスの結界が張られる事になり、モクモクさんは這々の体で常念岳方面へ流れ逃げて行った。

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慌てて逃げるあの情けない姿よ。

ついに悲願のモクモク退治に成功したぞ。


しかし肝心の「快晴奉還」に関しては、まだあと一晩置く必要がある。

夜の星空は諦めるしか無いが、一晩かけてじっくりと負のパワーで挟み込み、この北アルプスを強力なプラス世界に変える必要がある。

本当の意味での維新達成は、明日の「快晴」によって成されるのである。


さあいよいよ明日、我々の紅葉挟撃作戦も総仕上げ。

恐らく明日はモクモク幕府から「快晴奉還」が発表され、北アルプスは大快晴に包まれる予定。


そして奇襲部隊はさらに万全を期すべく、三番目の3,000m峰「涸沢岳」を陥落させる。

涸沢岳を落とせば、前穂高岳・奥穂高岳を含めた全ての拠点の制圧に成功。

そして盤石の体制にて一気に涸沢陽動部隊の待つ涸沢カールへと攻め込むのだ。


そこでついに大快晴で大紅葉で大絶景の中、「ハママサ同盟」が夢の合流。

その時に初めてこの革命は完結を迎えるのだ。


しかしその合流への道に立ちふさがるは、最後の難関「ザイテングラート」。

何だか重太郎や吊り尾根と違って、横文字になるだけで妙にミステリアスで危険な匂いが立ちこめてくるネーミング。

ザイテングラートとはドイツ語で「岩壁の側面の支稜」とある。

この「岩壁の側面」というワードに、非常に抜き差しならないサディスティックな予感を感じずにはいられない。


しかしここまで来たからには必ず陽動部隊との合流を果たし、完全勝利の雄叫びを上げるのだ。

もう勝利は我々の手中にあるも同然。

このまま事を順調に進めれば負ける事は無い。


そう。


誰も裏切らなければ…。




紅葉挟撃作戦6〜ザイテングラート編〜へ  つづく



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