陸の孤島、和歌山県。
そんな和歌山の最奥に「日置川」(ひきがわ)という川がある。
関西方面からなら比較的アクセスは良いが、東海方面からは驚くほど遠い川だ。
でもこの川は非常に奇麗で、難度も低いからのんびりツーリングに最適な川。
カヌーにキャンプ道具と酒と酒と酒を積みこんで下るのに持って来いの川なんです。
カヌー野郎としては放ってはおけない、気になる存在の川が日置川なんです。
今後はしばらく遊びに行けんから、のんびりと過去の旅まとめの続きをして行きます。
曖昧な記憶で振り返る「あん時のアイツ」シリーズ第24弾。
今回はそんな「日置川」カヌーツーリングの模様を振り返って行こう。
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日置川には2度訪れている。
1回目は単独で和歌山名川行脚をした2004年の5月。
日置川〜小川〜古座川〜熊野川〜赤木川と巡った旅だった。
随分ともう昔の話で例のごとく記憶がぶっ飛んでいるけど、写真を見ながら記憶をたどって行こう。
この時は奈良県にいる実兄の家に泊まって、そこから高野山経由の山道で延々と日置川を目指した。
一発目の写真がこんなんだから、相当な山越えだった事が伺える。
この龍神温泉は日本三大美人の湯で、ぬめり感がハンパなかった事を記憶している。
肌はツルツルになったけど、所詮ブサイクはブサイクのままでした。
そしてマニアックな滝を見に山に入って行ったり、マニアックな幕末の志士が逃げ込んだ蔵を訪れ、マニアックな川の下見をし、マニアックな昔話の舞台となった場所を巡りながらの長行軍。
無駄な寄り道しまくりながら、気付いたらこんな場所にいた。
一体ここは何処なんだ?
木がモコモコ過ぎて奥に道路があるかも分からんし、そもそもここは車で渡れる所なのか?
でもそんな「人が気軽に行けない場所」だからこそ清流は保たれるのだ。
ステキな清流に期待は膨らむばかりの僕。
そしてそんな僕のアツい想いに日置川は「濁流」で応えた。
この旅の直前で降った雨の影響で、思いっきり濁っている。
はるばるやって来た挙げ句、得意の言葉「こんなはずじゃなかったのに」が飛び出した事だろう。
もの凄く落ち込んだ事は今でもハッキリと覚えている。
川を南下して行くと「八草の滝」という看板がある。
奥の方に微かに見える滝がそうなんだが、この川のツーリングの楽しみとして「途中で上陸して滝を間近で見る」というカヌー野郎の特権が味わえる。
とかくこの「カヌーでしか行けない」的な状況には毎度興奮してしまう。
北海道に行った時、僕が全裸でガッツポーズしているのを女性に目撃されたオヤコツ温泉などはそのいい例だ。(参考記事)
この日はゴール地点の向平キャンプ場泊。
僕の旅では珍しくキャンプ場を使っている。
周囲がファミリーキャンパーで盛り上がる中での、ストイックな無言のソロキャンプ。
恐らくこの時の「なんで金払ってまでこんな惨めな思いをするのか」という気持ちが、今後キャンプ場を使わなくさせたんだろう。
今ではすっかりやらなくなったが、この時は果敢にフライフィッシングに興じていた模様。
そしてこのような不思議なメシを作っている。
魚を直に投入して炊き上げた「魚臭いべちゃべちゃ飯featuring里芋」という食べ物らしき物を、後悔の苦い味とともに一人で黙々と食べたのを記憶している。
周囲のファミリーキャンパーの美味しそうなBBQの匂いを嗅ぎながら。
人はこのような失敗を繰り返して成長して行くのだ。
翌日、早朝にスタート地点へカヌーを置きに行き、キャンプ場に戻って再びバスでスタート地点へ移動してやっとスタート。
今みたいに折り畳めるダッキーじゃなかったから、とにかく単独行は大変だった。
濁っているから気分は沈んだが、やはり雰囲気は中々よろしい。
時折いい案配の素直な瀬も出て来て、濁っててもそこそこ楽しませてくれる。
やがて八草の滝への入口らしき所に到達。
特に目印もないから、行かれる方は見失わないように。
そして上陸し、枯れた沢を徒歩で遡上して行く。
結構な探検気分。
やがて木々の間から滝が現れ、
目の前に「八草の滝」がご登場です。
大きな岩がズバッと切られたような岩盤を、段々に水が落ちて来る変わった滝を独り占め。
ここに来たくても観光客では来られない場所。
カヌーやってて良かったなって思える瞬間だ。
やがてゴールですな。
多分この写真はたまたまいた他のカヌーの人に撮ってもらったんだと思う。
で、僕みたいな体型のタヌキが出迎える、味のある「えびね温泉」に入って、
次の川に向けて移動して行く。
途中、眼前が海という強烈な秘湯「崎の湯」へ。(この人は僕ではない)
他にもいい写真があったけど、大量のモザイク処理が必要だからやめておく。
ここは実に荒々しい湯で、道路から男湯は丸見えだ。
ある程度、勇気と男の自信が試される秘湯だ。
我こそはと言う露出狂にはぜひ挑戦してもらいたい。
その後は千畳敷をさすらい、
三段壁っていう断崖絶壁へ。
そしてさらに奥の奥へと勝手に侵入して行って、
結局、段々怖くなって来て引き返した事を覚えている。
若さだね。(今でもこんな事やってるけど)
で、名も無い美しすぎる川で野宿して、
そのまま古座川の最高の支流「小川」へと突入して行く事になる。
これであん時のアイツシリーズ第4弾の記事に繋がるわけだ。(参考記事:まわる柿太郎)
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2回目は山田(仮)との二人旅。
2007年の8月。
よく考えたら僕はこの2ヶ月前に結婚式を挙げてるのに、のんきに2ヶ月後に「野郎二人旅」してるあたりが最低男と呼ばれる所以だろう。
ちなみにこの時は僕ばっかり写真撮っていたから、写真に写っているのが山田だらけになっている。
山田ファンには堪らない「山田劇場in日置川」でございます。
この時はどういうルートで向かったか全く覚えていない。
ここ、どこなんだろう?
もちろん「食の寄り道好き」の山田と一緒なので、やっぱり市場に寄って食材を調達している。
漁港と市場をこよなく愛す男なので、彼と一緒なら魚臭くてべちゃべちゃなメシを食わずに済むのだ。
そして1回目でも訪れている千畳敷と三段壁にも寄ってるみたいだ。
それこそ新婚旅行のように観光地で浮かれる男達。
実際和歌山の観光地は荒々しい所が多いから結構野郎でも楽しめる。
そんなこんなで日置川着。
もちろんもうキャンプ場なんて泊まらずに川原で野宿です。
野宿となるとやはり先ほどまでの観光気分は消え、山田は山賊化する。
何ともガリガリで弱そうな山賊だが、こういった状況下での山田は職人のように無言でテキパキと動く。
魚市場で仕入れた食材が続々と網に投入されていく。
ううむ、今見ても凄く美味そうだ。
そしてコイツを焼いてる間に、山田はすでに鍋料理に取りかかっている。
さすがは山田だ。
と感心していたら、なんと山田が自分で鍋をぶちまけてるじゃないか。
アウトドア野郎の誰しもが通る道。
調理中にウロウロしすぎると、必ずこのように足を引っかける奴が現れるから注意が必要だ。
しかしそこは百戦錬磨の山田。
土の付いてない野菜を器用に救出して、意地でも鍋を作るという心意気が見てとれる。
彼の食に対する飽くなき探究心はとどまる事を知らない。
わざわざ一回カニを網で焼いてから、
そのカニを、すっかり食材と汁不足の鍋に投入。
これだけでもちろん激ウマ。
そして最後はカニ雑炊で感動のフィニッシュ。
山田がいるだけで、あの魚臭いべちゃべちゃ飯を食う事にもならず最高の晩餐が楽しめた。
是非皆さんも、海が近くて漁港や市場がある川には山田を連れて行くと良いでしょう。
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翌日。
快晴の日置川下りスタート。
実はこの時も事前に雨が降っていたからちょい濁り。
それでもこの奇麗さだから、やっぱり和歌山の川は美しいのです。
そして市場で入手した発泡スチロールの箱に食材を入れて、それをカヌーに乗せて下るスタイル。
冷え冷えビールとウマウマ食材と共に旅をする。
これこそ日置川の正しい下り方だ。
しかし残念なのは、山田は食に夢中で僕を写真に残そうという気がないということ。
ゆえにこの思い出の中に僕の存在を確認することが出来ない。
まるで川で食材を売り歩く行商人のようだ。
そして「今回は日置川をご紹介」って言いながら、肝心の下ってる最中の記憶がズッポリと消えてしまっている。
なのでコースの紹介とか難所の説明とは一切無しでお送りしています。
でも、こういう写真で十分魅力が伝わるでしょ?
そして、やがて前半でも紹介した八草の滝へ向けて上陸。
山田も、まるで林業の親方のようで「おう、そこの木切っとけ」とでも言いそうな雰囲気だ。
そして久しぶりに八草の滝に到達。
水量が少なくて随分と迫力が無くなってたが、暑い時期だったから滝を浴びて気持ちよかったというボンヤリした記憶がある。
僕は写ってないから分からないが、多分そうだったはずだ。
そして川に戻る。
驚いた事にここで川での写真が終わっていた。
見事に最初から最後まで「山田一人カヌー旅」の模様になっている。
ちゃんとここに僕もいるんだが、今となってはそれを立証出来る物は何も無い。
次に出て来た写真は、なんと山田が民家に勝手に侵入しようとしている姿。
実はここは民宿。
無類の「しなびた民宿好き」で知られる山田がチョイスした民宿。
もちろん彼の狙い通り、地元のおばあちゃんお手製の激ウマな家庭的田舎料理が出て来た事は言うまでもない。
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翌朝。
朝飯後にMTBで周辺探索。
まさに日本の原風景的な朗らかな景色の中、汚れたおっさん二人のサイクリング。
で、気付いた時にはこんな山道に迷い込んでる始末。
右側は結構な崖になっているように見える。
確か何となく適当な道を進んでこのような結果になったような記憶がある。
でもここからの川の景色はとっても良い感じだった。
肉眼でも集団の鮎がウヨウヨしているのが丸見えだ。
日置川はやっぱり素晴らしい川だ。
途中では冒険心をくすぐる、こんなワイルドなトンネルも。
行き当たりばったりの旅で、こういうものに出くわすとワクワクする。
ここでやっと僕が登場した。
でもこれがこの旅で最初で最後の僕の写真。
多分、さすがに「撮って」って頼んだんだろう。
山田は食に対する嗅覚は鋭いが、写真を撮って欲しい僕の想いを感じ取る事は出来なかったんだろう。
そして、民宿のおっちゃんの「農具自慢」というマニアックなイベントを堪能し、
山田も、すっかり故郷に帰って来た次男坊といった馴染みっぷりを見せつける。
これぞこの日置川を楽しむ王道スタイル。
さすがは違いの分かる男、山田だ。
ただ「カヌーで川下って終わり」ではもったいないのがこの川の魅力。
あとはここに1週間くらい居座り、川を潜り倒して魚を捕って食い、そのまま地元の祭りなどになだれ込めればパーフェクトだ。
そして居座りすぎて、地元の娘を嫁に貰うくらいになればさらに良い。
でもこの時の僕は結婚したばかりだし、山田に至っては「俺は皇族としか結婚しない」と逆玉しか考えてない男だったからこの時の旅はここまで。
で、写真は突然このような場所にジャンプする。
なぜか山田リクエストによる「高野山参拝」。
行動パターンの意味がよく分からないが、確か二人で真っ暗な道場みたいな所でお坊さんのお説教を聞いた記憶がある。
そしてなぜかじいさん達に混じって写経もやった気がする。
二人して、色々と懺悔したい事が多々あったんだろうか?
今となってはその動機を窺い知る事は出来ない。
と、こんな感じの日置川紀行でした。
日置川の紹介というより、どっちかというと山田の紹介みたいな記事になってしまった。
またこの時のような旅がしてみたいものだ。
ちなみに彼は現在静岡でひっそりと暮らしている。
もちろん未だに皇族とは結婚していない。
山田伝記〜旨さ世界一への挑戦〜 in日置川
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MATATABI BASE
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