木曽駒ヶ岳にて開催された「ゲリM復活祭」。
しかしここまではいつも通り僕単独の「マゾ男一人祭り」。
そろそろ他のメンバーが黙っちゃいない。
一人だけ楽しんでずるいじゃないかと。
そして我も我もと進んでマゾの沼に突入して行くメンバー達。
やがて勢い余ったメンバーの一人が、ついに「失踪」するという事態に。
風雲急を告げる木曽駒ヶ岳。
男達の戦いはここからだ。
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木曽駒ヶ岳山頂を制覇したチーム・マサカズのご一行。
一般の方々はここからロープウェイへ引き返して行くのが常道。
しかしマゾの方々は振り返る事無くさらに奥へ奥へと突き進んで行く。
計画としてはこうだ。
木曽駒ヶ岳山頂から稜線を辿り、両サイドの大絶景を堪能しながら北上。
そして絶景を堪能した後は一度八合目まで下降し、「濃ヶ池」という美しい山上池を堪能する。
そこから一気に乗越浄土まで登って、中央アルプスの槍ヶ岳こと「宝剣岳」の山頂を猛々しく制覇。
そしてすっかり男らしくなった4人は、大満足でロープウェイにてビクトリーウェイを駆け下りるって寸法だ。
まずは素晴らしき稜線漫歩。
両サイド見渡す限りの絶景の中を、絶倫男アゴ割れMが颯爽と駆けて行く。
修行不足の者には景色が見えないかもしれないが、我々にはちゃんと見えている。
アゴ割れMも時折足を止め、眼下に広がる大絶景に絶句してしまっているようだ。
まずいぞ。
このままではまた奴の口から「なんかさ…感動が欲しい」という、決して言ってはいけない言葉が飛び出してしまう。(参考記事:南木曽岳の悲劇)
一方でそんな景色の中、ガレ場を降りて来るゲリMとオギK。
そもそも今回の登山は、国家試験受験から解放された「ゲリMお疲れ登山」。
精神的抑圧からの解放の為に企画されたものだが、彼は今新しいタイプの精神的苦痛と対峙している気がしてならない。
そろそろ彼は、この「ゲリMお疲れ登山」が「ゲリMをお疲れにする登山」だという事に気付く頃だろう。
しかしこの真っ白な稜線行軍は、思いのほかいい感じの道だった。
晴れていたらどんだけ最高の道だった事だろう。
一体今までに何度「ああ、晴れてたらなあ」という言葉を吐いて来た事だろうか。
そもそも毎度天気予報は晴れなのに、なぜ僕らはいつもこの真っ白な「精神と時の部屋」で修行をする事になるのか?
あの悟空ですら「気が狂いそうで一ヶ月も入っていられなかった」と言うほど過酷な環境。
重力とマゾ力は地球の10倍。
むしろゲリMはここで受験勉強した方が集中して勉強出来たかもしれない。
しかしここに来て、神が頑張ったゲリMに祝福のご褒美。
この憐れな男達に、雲間から光を恵んでくださったのだ。
やっぱり晴れると素晴らしいじゃないか。
しかし晴れたというのに彼らの表情が硬い。
我々は晴れたら晴れたで強烈に「焦る」。
経験上、こんな晴天はすぐ終わって再び大荒れの天気になるのが分かってるから、急ぎつつ全力でこの快晴を楽しまなきゃいけない。
結果、焦燥感にまみれて「楽しめない」といういつものパターンに突入した。
晴れてるうちに慌ただしく写真撮影をこなす4人。
急げ急げ急げ。
そして出来るだけ浮かれるなよ。
笑ったりするなよ。
ああ、浮かれるなって言ったのに。
こうしてあっという間に僕らは精神と時の部屋へ引きずり戻された。
快晴撮影が間に合わなかったアゴ割れMなどは、苦々しいほどの無念の表情だ。
もはや任侠映画のワンシーンのようだ。
今にもポケットからチャカを取り出して、僕に向けて「感動はどこじゃ、オラ」と脅しをかけて来そうだ。
かろうじて踏みとどまったのは、おそらくまたケツからストッパーが制止に入ったんだろう。
そしていつもの状況に戻り落ち着きを取り戻すご一行。
さあ、ここから一気に高度を下げて行くぞ。
ここからの下りは、高所恐怖症野郎の僕にとっては中々にヘビーだった。
しかしここで僕以上の高所恐怖症野郎がいたことが判明。
その男は「ゲリM」だった。
自分の腹を急降下させるのは得意でも、岩場の急降下は彼にはかなりのストレスとなった。
最初の難関を下りきった頃、彼の足はプルプルと震えて表情は虚ろにこわばっていた。
まるでゲリで苦しむ人がトイレから出て来た時の表情そのものだ。
彼はここで一気に体力と精神力を失い、次第にすっかり口数も減って遅れ出す。
振り向けば遥か後方の雄大な景色の中にゲリMが埋もれているのが確認出来る。
彼は今、一人きりで慎まやかにマゾを愉しんでいるようだ。
この素晴らしい時間を邪魔してはいけない。
これは試験を頑張った彼に対する、僕たちからの心ばかりのプレゼント。
存分に楽しんでいただきたい。
やがて眼下に目指すべき「濃ヶ池」を確認。
この時は誰も口にしなかったが、みんな同じ事を考えていたようだ。
「あれ、あの池汚いぞ。一つも美しくないじゃないか」と。
しかしすぐさま目線を前方に移動させ、何事も無かったかのように突き進む4人。
ここでイタズラ好きの神の気まぐれ。
またしても晴れて束の間のセカンドチャンス。
今日は僕が前半で体を張ってある程度快晴代償を前払いしておいたから、さすがの神も気前がいいようだ。
再び大慌てで撮影タイムです。
さっきは間に合わずに組長写真になってしまったアゴ割れMも、ここぞとばかりに全開だ。
しかし後方を振り返ってみれば、せっかくの晴れに目もくれない弱り切った男の姿が。
なんて楽しそうな姿だろうか。
フラフラで表情も乏しく、非常にいい状態をキープ出来ているようだ。
そんなゲリMをよそに突然激しい討論会を繰り広げ始める「おっぱい評論家」の2名。
そんな渾身の討論会を前にしてもゲリMの表情は虚ろなままだ。
もはや彼は弱りすぎているから、今目の前にパーフェクトおっぱいの全裸ガールがいたとしても無表情でスルーすることだろう。
このように皆に放尿シーンを激撮されても怒る気力も無いようだ。
おかげでかつてないスケール感満点の美しい放尿シーンが撮影された。
彼は本当に素晴らしい友人達に恵まれた幸せな男だ。
ここから非常に地味な道を一気に下降。
やがて美しき「濃ヶ池」へ到達。
うすうすは気付いていたが、全く美しさを感じさせないゲリのような池。
誰ともなく言った。
「汚いね」と。
当初はここをランチ予定地にしていたが事前に済ませておいて良かった。
ここではランチどころかウンチだ。
結局わざわざ大迂回してまでやって来た濃ヶ池は、我々に濃い疲労感だけを与えるだけの池だった。
そしてここからの行軍がさらに僕らを楽しいファンタジーへと誘う。
もはや道というより川になってしまった道を突き進んだり、
猪突猛進のアゴ割れMがあり得ないルート取りで死地に追い込もうとして来たり、
大ガレ場のトラバースを横切って、
振り向けば老人と化したヨロヨロのゲリMがいる世界。
非常に地味で体力だけをえぐる苦痛の区間。
そしてヘロヘロになった我々の前に、気の遠くなるような登りの道が現れる。
僕なんかは喜びでお手上げ状態。
この後編では触れてないが、彼の足の痛みはこの時点で火を噴くような痛さとなっている。
靴の中は大熱狂のエンドレス・カーニバル。
追いつめられれば追いつめられるほどに喜びで打震える男。
こうなって来ると体に力がみなぎって、興奮で呼吸も荒くなる。
痛みと苦しみでニヤニヤしながらガシガシと登って行くマゾ神。
ああ、強烈な登りだ。
最高だ。
そして眼下には素晴らしい景色と弱りきった男達の姿。
みなさん、ようこそ夢の王国へ。
さあ共にファンタジーアトラクション「イッツ・ア・マゾール・ワールド」を存分に楽しもう。
やがて限界を通り越したゲリMの頭上に神の追い打ちが忍び寄る。
周辺はいよいよ悲壮感たっぷりのガスの世界へと包まれて行った。
神もここが勝負所と判断。
いよいよこの山が、平和とは対極の凄惨な登山現場へと変貌を遂げたのだ。
やがてポツリポツリと雨が降って来る。
ソツのない神のラッシュ攻撃だ。
雨が降る事はこっちも織り込み済みだったが、このタイミングは実にお見事。
もはや我々は喜びでKO寸前だ。
↓出発の時はあんなに平和的な穏やか快晴だったのに、
今となってはガスの勢いは留まる事を知らず、いよいよ1m先も見えないような深い霧の世界へ。
これはあの時と同じ日・同じ場所の出来事なのか?
もうあの頃の純朴だった僕らには戻れない。
やはり行き着く所はいつだって泥仕合。
そしてついに極上のミステリーが幕を明けた。
ある男が神隠しにあって失踪するというハイレベルなプレイを仕掛けて来たのだ。
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その時、先頭を行っていたのはアゴ割れMと僕。
アゴ割れMが精力(セーリョック)ホームズとするならば、僕が扮するは助手のマゾソン。
一足先に登りきって宝剣山荘に到達したホームズとマゾソンは、雨宿りをするべく山荘に向かった。
ここまでは一本道。
後ろにはオギK、そして遅れてゲリMがいるはずだ。
はぐれてはいけないので、ひとまず山荘には入らずに彼らを待とう。
しかしガスが酷くて彼らの姿は全く確認出来ない。
やがてこの真っ白なガスの中からゲリMが現れた。
おや、オギKはどこに行った?
ゲリMの前を歩いていたはずだぞ。
ゲリMに聞けばオギKを追い抜いてはいないと言う。
他にそれる道なんて無い。
「オギKが消えた」
奴は神隠しにあったのだ。
まずいぞ。
奴は今頃、大きな銭湯宿で下働きさせられて顔の無い妖怪と汽車に乗っている頃か?
どう考えても他に道は無いし、滑落の危険箇所もなかった。
現時点で一番怪しい容疑者はゲリMただ一人。
そこでホームズとマゾソンと容疑者Mで緊急会議。
ひとまず容疑者Mはそのままロープウェイ乗り場を目指し、ホームズは木曽駒ヶ岳方面の捜索、マゾソンは今来た道を再び捜索することになった。
結果的にホームズと疲労困憊のマゾソンは再び山中を彷徨うという延長戦に巻込まれた。
誰もいないガスだらけの登山道に向かって僕は「おおおい、オギKーー!」と叫ぶ。
もちろん返事は無いばかりか、このままでは二重遭難の恐れ有りだ。
再びグハグハと登り返し、ホームズと合流するがオギKの行方は不明のまま。
結局散々捜索した挙げ句見つからないので、我々は山荘の人に「おぎやはぎの小木に似た奴が来たらロープウェイ乗り場で待っていると伝えてください。」と言って下山を開始した。
もはやこの先にある宝剣岳に登ろうなんて気はさらさら無くなっていた。
だってもうその姿すら見えないんだもの。
すっぽりとガスを被ってしまって、宝剣岳は見事な包茎岳と化していた。
このガスを晴らすのはさすがの上野クリニックでも無理だ。
こんな所に突入したら100%の死が約束されるだろう。
不安な気持ち一杯でホームズとマゾソンは下山して行く。
僕の脳裏には、僕の胸ぐらを掴んで号泣する喪服姿のオギK奥さんと子供達の姿が浮かぶ。
いつものように下山すればするほどにガスは晴れて行く。
毎度この人を馬鹿にしたような現象には腹が立つ。
もう随分時間が経っているから、さすがに容疑者Mはもうロープウェイ乗り場に到着しているだろう。
そこでオギKと合流していてくれればいいが。
と思って下の方を見たら、何やら見慣れた男を発見。
なんとゲリMがまだ下山してないばかりか、山ガールに写真撮影をお願いされて鼻の下を伸ばしているじゃないか。
それを見て唖然とするセーリョック・ホームズ。
ホームズは言った。
「犯人はあいつだ」と。
結局我々は精魂尽き果てたゲリMに追いつき、共にゴールのロープウェイ乗り場を目指す。
やがて遠方から、のんきに携帯をいじくって退屈そうな男を発見。
オギKは生きていた。
ほっとしたが、そのあまりののんびりとした待ちっぷりを見てどっと疲労感が襲って来た。
どうやら僕とアゴ割れMが一瞬山荘方面に足を向けた際、濃いガスで山荘も確認出来なかったオギKはわずかにそれてそのまま下山してしまったようだ。
なんてことのない結末だったが、彼のおかげで随分と悲壮感に満ちた登山を楽しむことが出来た。
ありがとう、オギK。
そしてなんとか無事に下山記念写真。
もはやゲリMは完全に表情を失ってしまっている。
どうやら今回の「ゲリM復活祭」を存分に楽しんでくれたようだ。
もはや感動で感情すら失ってしまったようだね。
せっかく復活しても、このようにすぐに追い込まれてしまう。
それがチーム・マサカズ流の祝福。
非常に恐ろしいチームだが、このチームを作ったのはゲリM本人だ。
もう後悔しても遅い。
動き出したこの船は、もはや誰にも止められない。
木曽駒ヶ岳 〜完〜
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実はこの旅には続きがある。
まだマゾ経験の浅いこのメンバー達と別れて、ここからは僕一人のマゾ延長戦。
ここから深夜の山奥心霊ロングドライブを経て、B旦那たち横浜組がいる気田川へと向かう。
そしてそのまま気田川カヌーに突入だ。
与えられた土日を全力で遊びきる男。
そんな男の命がけのドライブが始まった。
〜つづく〜
木曽駒ヶ岳 後編〜失踪ミステリー〜
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MATATABI BASE
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お疲れ様でした!
盛大な「ゲリM復活祭」になりましたね!(笑)
前編を読ませていただいた時点できっと「絶倫アゴMさんがガスの中を山ガール目掛けて暴走し、行方不明」ってオチかな~と勝手に推理していたんですが、まさかのオギKさん「オレ流下山」だったとは!!(笑)
とにかく、皆様ご無事で何よりでした!
僕は、先日「笠ヶ岳 日帰りピストン」にチャレンジしてきました!
アーネスト・ホーストばりのローキックを受け続け、ダウン寸前でしたが、何とか無事に生還しました!(笑)
最近、先輩のブログを嫁に紹介したところ、ドはまりし、暇さえあれば過去の記事を読みあさっているようです(笑)
先輩に会って「あだ名」を付けて欲しいと申しておりました(笑)
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今回、各方面から「後編で失踪するのはアゴ割れMだろう」との声を頂きました。
しかし「最初に怪しい奴はシロ」というミステリーの法則通り、犯人はまさかのオギK。
まさかを楽しむチームらしい落ちでした。
でも実際は本気で焦って、即座に彼の家族の顔が浮かびましたよ。
それにしても次は笠ヶ岳!
凄い勢いでハイクラスの山を落として行ってますね。
もはや先生と呼ばせて頂きたい程。
ちなみに全く関係ないですが、名古屋にあるホースと主催のジムのロゴマークと看板を作ったのはわたくしでございます。
ここにも意外な共通点?がありましたね。
そして光栄な事にDHY(ドはまった嫁)ですか。
すんごく嬉しいですが、最近このブログが主婦層から非難の声が上がっているだけに不安ですね。
なにやら「この人サイテー、なんだかんだ奥さん置きっぱなしで遊びまくって」って言われているようです。
奥さんはそんなことないですよね?
味方ですよね?
そして有吉みたいなリクエストですが、ある程度覚悟しておいた方が良いですよ。
ゲリMの例もありますし、些細なミスが一生を左右します。
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先生なんて、とんでもございません!
ただのミスチョイスです(笑)
「日帰りできる、そこそこ高い山」をヤマレコなどで調べてチョイスするんですが、あのサイトにアップしている方々は健脚どころか剛脚の持ち主ばかりということが、最近になって分かってきました(笑)
「らくらく日帰り・・・」なんて書いてあったりするんですが、下山中「嘘つけー!!」って毎回思います(笑)
うちのDHYは、それはそれは羨望の眼差しで先輩を見ていますよ!
「ほんと素敵なパパだよね~♡」「文才能力がベジータ級♡」などなど(笑)間違いなくテリーマン並みに見方だと思います(笑)
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またまたご謙遜。
確かにヤマレコの人々は随分と軽々と楽っぽいコメントを書くので恐ろしいです。
槍ヶ岳を日帰りで登ってる奴もいたりするので、それを信じて行くと最高にマゾれます。
ある意味我々マゾピニストにはありがたい情報満載です。
今度奥さんをこっそり僕の嫁の元に派遣してください。
洗脳スパイとして「旦那さんは素晴らしい。もっと旅に行かせてあげた方がいい。」と刷り込んでいただきたい。
そこまでしてくれたら、テリーマンどころかカメハメ師匠と呼ばせていただきます。