梅雨入りし、当分は雨で遊びに行けそうにない。
という事で久しぶりに「あん時のアイツ」シリーズで、過去の旅をまとめていくかな。
第21弾となる今回は「房総半島放浪」。
時は2008年の5月。
そもそも房総半島なんて旅する予定は全く無かった。
たまたま嫁が土曜日休みで、日曜日に幕張で仕事という時があった。
そこで嫁が「仕事ついでに、土曜日にディズニーランドに行きたい」と提案。
さらに「日曜日は私仕事だから、あんたはどっかで時間つぶししといて」とも。
正直僕はディズニーランドが嫌いだ。
あんな人だらけの作られたファンタジー世界で行列に並んでいるよりも、僕は大自然で野生のミッキー達と戯れている方が好きなんだ。
おそらく、土日ともディズニーならお断りしていた。
しかし日曜日の嫁が仕事中に、僕一人で堂々と放浪ができるじゃないか。
そう判断した僕はすかさずその話に乗った。
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大好きなディズニーランドに到着し、満面の笑みの僕。
やる気の無さが前面に押し出されている表情だ。
しかし単にやる気が無いだけでこんな顔になっているわけではない。
実は彼はこの直前に嫁に激しく怒られてへこんでいる状態なのだ。
ここに到達する前の電車の券売機で、僕は1万円札を投入して切符と小銭だけを受け取ってきていた。
つまりお札のお釣りの9000円を取り忘れるという、奇跡的なミスを犯していた。
結果嫁にど叱られて、このように激しく落ち込んでいるわけだ。
ディズニーランドに入る前に、これほどハードな魔女のアトラクションがあるとは思ってもいなかった。
(※後に券売機の故障だと判明。無事にお金は返ってきました)
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ディズニーランドでの記憶はほとんど残っていないので、話はいきなり翌日の日曜日。
僕の背中がモコモコと動き、自由の翼がバサリと現れる。
昨日とは打って変わって生き生きした男が、早朝から房総半島へ旅立っていった。
目指すは憧れの「亀山湖」。
かつて野田知佑さんが長く居を構え、名カヌー犬「ガク」と出会った場所だ。
他の人にとっては何にもない湖だが、大の野田さんファンとしてはまさにディズニーランド級の夢の城だ。
もちろんカヌー持参で、漕ぐ気満々の僕。
僕にとってはこっちがメインイベントなんだ。
車を走らせ、亀山湖が近づくにつれてワクワクとドキドキが止まらない。
そしてそんな想いが勢い余って、雨のパラパラと風のビュービューも止まらない。
亀山湖に辿り着いた時には、すっかり小雨と暴風ランドになっていた。
こんなはずじゃなかったのに。
雨はともかく、湖面の風紋を見てお分かりの通り風が凄まじい。
湖で強風って一番辛くて楽しくない条件だ。
憧れの湖をこんな形で漕ぎたくない。
できれば穏やかな晴れた日に、もっと清らかな心で堪能したい。
こうして無念にまみれて僕は亀山湖を後にした。
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せっかく手に入れたこの自由な時間を無駄にする事はできない。
すかさず僕は「房総半島放浪」にシフトチェンジ。
しかし亀山湖しか調べて来てないから、そもそも目指す場所もなくただただ彷徨うばかり。
今みたいにiPhoneがあればサクッと周辺の見所を検索するんだろうが、そんなものはない。
結果、彷徨いに彷徨ってこの様な場所に流れ着いた男。
一体ここはどこなんだ?
というかなぜ僕はこんなにも濃霧に包まれているんだ。
よく分からない場所で相変わらず酷くなる天候に翻弄されながら、男は森に吸い込まれて行く。
とても幻想的で怪しげな雰囲気だ。
さてはディズニーの新しいアトラクションに迷い込んでしまったのか?
今にも奥からカリブの海賊達が大挙して襲撃して来そうでは無いか。
まったく予備知識も無いままに、思った以上に不思議な世界に迷い込んだ事にコーフンして来る。
これぞ放浪の醍醐味。
その後も進んで行くと、思いがけないものが現れて強烈に驚いた。
なんじゃこりゃあ。
予想もしていなかっただけに、瞬く間に松田優作と化す男。
ここは日本なのか?
まるで中国に瞬間移動して来たかのようだ。
このアトラクションはイッツ・ア・スモールワールドなのか。
看板の横に立つ僕と大きさを比較して頂くと、そのスケールがお分かりだろう。
僕のジャケットの色が背景と同化しちゃってるから分かりにくいだろうが、何も知らずにこんなものが出て来ると正直怖い。
看板には「百尺観音」と書いてあるが、有名な場所なんだろうか?
僕以外に人がいないからそれすら分からない。
なんだか楽しくなって来たぞ。
もちろん僕の楽しさスイッチを感知した天が、さらなる濃霧で期待に応える。
もはや何が何だか分からない。
実は僕はもう死んでしまったのかな?
昨日嫁に叱られた時にショック死してここに来たのかな?
さらに突き進んで行ったが、この先は行き止まりか。
何やらもの凄い崖に見えるが、濃霧が酷すぎて全く分からない。
下を覗くと、うっすらと下界が見える。
これはいよいよ僕は天に召されているんじゃないのか?
僕の心から楽しさという感情が薄れて行った事を天が確認し、次第に霧を晴らし始める。
うおっ、凄い高い所にいるぞ。
しかも凄まじいまでの断崖絶壁じゃないの。
唐突に現実を突きつけられた高所恐怖症の男。
ハンパない高度感が男に襲いかかる。
さっき僕が立っていた所を見れば、ケツの穴も「きゅきゅり」と音を立てて萎んで行く。
一体何なんだここは。かなり凄いぞ。
僕が知らなかっただけで、全国的に有名な場所なのか?
下情報が何も無い中での、出会い頭の石仏と断崖絶壁。
ディズニーなんて目じゃないファンタジーと冒険に溢れている。
その後も奥へ奥へと進んで行く。
何やらおどろおどろしい雰囲気になって来た。
ちょっと、凄く怖いんだけど。
さっきの断崖絶壁の怖さとはまた異質の寒々しい光景。
何だかとってもファンタジーな妖精たちが僕の背中に取憑いている気がしてならない。
やがて霧が晴れて来て、思いがけずだだっ広い広場に出た。
そこにはさらに僕をビビらせる怪物がどどんと現れる。
なんじゃこりゃあ。
男から二発目の優作が放たれた。
とてつもなくデカい大仏が出現。
奈良の大仏なんて目じゃないデカさだ。
大仏の前に祈っているおじいちゃんがいるから、そのとんでもない大きさが分かるだろうか。
本当にここは一体何なんだ?
ひとしきりアホ面で大仏を見上げてから、霧も晴れたってことで再び断崖絶壁に戻ってみた。
恐る恐る例の場所から覗き込んでみる。
うわあ。
車小っちゃい、人小っちゃい。
天上から下界を眺めている気分。
ドリフの雷様が見ている風景が僕の目の前に展開してる。
霧が晴れるとともに、崖のえげつなさも丸見えだ。
いやあ、堪能した。
こうして僕は結局ここが何なのかよく分からぬまま撤収した。
そして小雨が本降りになって来て、無惨に撤退。
ずぶ濡れの仔犬のように弱った体を引きずって、男は嫁の元に帰って行った。
今回この記事を書くにあたり、唯一分かっているキーワード「百尺観音」で検索して調べてみた。
ここは鋸山という山で、山全体が日本寺という寺だったらしい。
あの大仏は奈良の大仏の1.7倍。
僕が立っていた崖は「地獄のぞき」と呼ばれているようだ。
僕としてはディズニーランドの入口ですでに地獄を覗いていたので、二度目の地獄のぞきとなったわけだ。
こうしてわずかな時間ですら放浪する男は帰って行った。
亀山湖でカヌーできなかったのは悔しいが、思わぬご褒美があった旅だった。
やはり知らない土地を事前情報なしで放浪するのは実に楽しい。
今度は事前情報なしで韓国の北の方の国を放浪してみようかな。
きっとステキなファンタジーが待っていて、かなりのサプライズが用意されていることだろう。
みなさんも一度こんな放浪をしてみてはどうでしょうか?
暴走半島放浪〜絶壁男とミッキーマウス〜
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MATATABI BASE
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相変わらず坂登っています。
(山も川も下るほうが好きなんですがw)
鋸山や亀山湖いらしたんですね。
私はその海を挟んだ反対側あたりに生息しているので思わず食いつきました。
鋸山はちょっと息が切れますが、石仏や見晴らしの良さは面白いです。
以前私が音連れた時には、日本寺の大仏様頭部後ろにある仏様の頭にその頭と同じくらいのスズメバチの巣がくっついていました。不思議な光景でした。
亀山湖は、行かないようにしています。なぜならヤマビルがあの山系ものすごいらしいのです。湖畔のキャンプ場だけは大丈夫らしいのですが・・
以前とある場所でヤマビル被害にあっていらい極度の恐怖症になってしまいました。
このブログにもそんな記事がありましたので、よく行かれたなと感心です。
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hamatoshi、順調にさかのぼってますね。
その亀山湖ヤマビル情報は全く知りませんでした!
当時はまだ純朴なマゾだったんで、恐らくヤマビル被害には耐えられなかった事でしょう。
そう思うと漕がなくてよかったかもしれませんね。雨も降って最高のヤマビル環境でしたし。
僕もふくらはぎをヒルに占領された時の事がトラウマになってて、今ではヒル目撃情報のあった山には行かないようにしてます。
こうして人は夏に地元の低山に行けなくなり、やがて北アルプスなんかに行って登山にはまって行くんですね。
そう考えると、ヤマビルは登山ブームに一役買ってるのかもしれませんね。
是非山ガールの皆さんも、あのエキサイティングな体験を堪能してほしいもんですね。