吉野川/徳島

激流どうでしょう第3夜〜冷水マゾランド〜

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濁流大増水の渦巻き那賀川と魅惑のダッチナイトの翌日。

ついに今回の死国遠征のメインディッシュが登場だ。


日本の下れる川の中で、最も激しい瀬の祭りが繰り広げられる区間。

それが大激流、吉野川「小歩危(こぼけ)」のラフティングだ。


もちろんそんな激流野郎も、この前の大雨で絶賛増水中で怒り狂っている状態。

ただでさえパワフルな激流がその敵意をむき出しにして我々を待ち構える。

とてもじゃないが僕らの腕ではラフティング以外に下る方法は皆無だ。

ここをダッキーで下ろうものなら、そのやる気に反してスタートから轟沈すること間違いなしの「中畑清」状態。

どんなに張り切った所で、キビシいものはキビシいのです。


激流どうでしょうの第3夜として、そんな小歩危の一日を振り返ってみよう。


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ダッチナイトから一夜明け、若干二日酔い気味と風邪気味状態の穴吹川川原の朝。

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事前の天気予報ではそこそこいい感じの予報だったが本日はいかがか?

空を見上げてみる。

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きっとこんな空の事を「暗雲立ちこめる」とでも言うのだろうか?

昨日に引き続き、またしても豹変する天気予報。

早速本日の予報を再確認してみよう。

ちなみに今日のラフティング時間はは10時から16時だ。

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なんと言う事でしょう。

昨日と予報が大幅に変わってる上に、ラフティング中ずっと曇りになってて終了と同時に晴れるとは。

さりげに風速8mってなってるのも見逃さないぞ。


こうしていつものように、起きがけからのガッカリタイムを楽しんでからの爽やかスタートとなった。


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9:30にラフティング会社に集合し、小歩危スタート地点へ移動。

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随分とチャラいガイドの男がチャラく安全説明を開始する。

ラフティングの若いガイドさんってなんだか全体的にチャラかったりするんだが、ギャルの皆さんの参加者も多いので調度いいのかもしれない。


しかし、我々に付いたガイドさんはベテランのいぶし銀ガイド。

いぶし銀すぎて声も渋く、「声が通らない」事により肝心の激流中に背後からの指示が聞こえないという問題が後に発覚することになる。

そんないぶし銀ガイドWさんと、我々5人、そして石川県からのカップルの8人の運命共同体。


ここからは「激流ダイジェスト」と「水遊びダイジェスト」に分けて振り返って行こう。


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まずは「激流ダイジェスト」。


小歩危の区間は4級・5級クラスの全く未知の激流が乱発する。

僕は普段、せいぜい2.5級クラスの瀬が精一杯でそれ以上は回避する。

僕はあくまでも「激流派」ではなく「のんびり清流ツーリング派」なので、このクラスは全くの別世界だ。


まず、一発目の「小手調べ」的な瀬に突入した。

その際に石川県カップルの女性の方が、なんとラフトからはじき出されて激流に放り出された。

その惨事を見た僕は一瞬にして笑顔が消える。


もちろん女性は救出されたが、「今後こんな惨事が続発する」という恐怖に取り付かれたのは言うまでもない。

一度長良川で三途の川合流地点まで到達した事のある僕は、これ以降「落ちた時のイメージトレーニング」に必死になってしまう。


それでも、やっぱり金払ってプロに任せている安心感はハンパない。

次第に楽しくてしょうがない瀬のオンパレードが始まる。

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当たり前だが、さすがにこれはいつものセルフタイマー撮影ではない。

ポイントポイントにラフト会社の撮影の人がいて、こんな素晴らしい写真を撮ってくれるのだ。


で、そんな撮影してる人を見つけ出せばカメラ目線での撮影も可能だ。

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しかし、激流すぎて後ろの人達はまだ水しぶきの中にいる状態。

流れの凄まじさが分かるだろうか?



別の瀬ではこんな感じ。

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ここでいぶし銀ガイドが、非常に細くて通らない声で「漕いじゃダメ」って指示を出すんだが、先頭のバターNにまで指示が行き届かない。

何も知らないバターNの見事な漕ぎっぷりが炸裂させている。

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結果、前傾だったバターNが、瀬のアッパーを食らいカチ上がる。

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そんな中でも、いち早くカメラマンを発見しピースサインを送るB女房はさすがだ。

そしてこの瀬はまだここで終わらない。

さらに回転して落下して行く。

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「個人で漕いでみよう」なんて発想を粉々に打ち砕く破壊力。

もしダッキーで突入したら、このままポーンと体だけ飛んで行く黒ひげ危機一発。

さすがは小歩危だ。



さらに間断なくやってくるお下劣な瀬。

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小歩危ではドリンクを持ち込む必要はない。

名水吉野川を口から鼻からたっぷりと体内に吸収することが出来る。

吉野川下流で吉野川の水を利用して大塚製薬が「ポカリスエット」を作っているらしいので、ある意味スポーツに適した原水をたっぷり飲むことが出来るのだ。


そんな瀬を抜けたら、大概最後は落ち込みに落下していく。

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まるで僕の人生のようだ。

嫁という大波に翻弄され続けた後に訪れる、激しい落ち込みへのテンションダウン。

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こうして笑顔でいられる分、小歩危なんて軽いものだ。



そして最後にやって来る、小歩危最大クラスの瀬が「鮎戸(あど)の瀬」だ。

ガツンと落ち込みに落下する所から始まる。

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ここで沈したら、瀬からの抜け出しは困難で数十秒間浮上する事は出来ないらしい。

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そして、二段目にガッツリと滑り落ちて行く。

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この時点で僕らの目の前は白波と泡の真っ白な世界で、頭の中も真っ白で顔は真っ青だ。

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落下した先には、もう何が何だか分からないカオスが広がる。

北斗の拳のトムキャット風に言えば「このふざけた時代へようこそ」と言った局面だ。

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写真だけ見ると「海難事故現場」だが、みんな笑ってるから大丈夫だと分かる。

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こうして鮎戸の瀬を突破した。

正直想像していたよりも3倍は凄まじい世界だった。

でも、とてつもなく楽しかった。

たまにはこうして安全をお金で買って、安心して大激流を攻めるのも心のリフレッシュになって大変よろしい。

今後お金で解決出来るなら、先払いしてから嫁に「遊び願い」を提出したいものだ。


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で、こっからは「水遊びダイジェスト」。


激流の小歩危って言っても、全てが激流にまみれているわけではない。

穏やかな区間もあって、もちろんそんな場所では水遊びをするのが川に対するマナーだ。

しかし、この日は実に寒くて川の水温もキリリと冷えている。

僕は風邪気味だったから出来る事なら落ちたくなかったが、全力で楽しむには必要不可欠なイベントだ。



ラフトの縁に立って、皆で輪になって体を支えあう。

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まだこの時点では、石川カップルの女性意外は誰も落ちていなかったからすごい緊張感が漂う。

とにかく僕は風邪を悪化させたくなかったから、可能な限り最後まで少ない入水で済ませたかった。

と、思っていた矢先に僕の隣のダッチャーSがあっという間にバランスを崩した。

その巻き添えを食って、見事にこの最初の段階から僕は冷水に落下した。

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額の黄色いテープに「M」と書いてあるのが僕だ。

凄く冷たくて鼻に入った水で息も苦しいんだが、ドMらしく実に嬉しそうにニヤリとしている。

マゾ野郎にとって、この小歩危はディズニーランドのような夢の国なのかもしれない。



飛び込みポイントではお約束の飛び込み。

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正直、高所恐怖症の僕にはヘビーなイベントなんだが、多くのガールズ達が見守る手前やめるなんて言い出せない。

やってしまえば楽しいんだが、いつまで経ってもこれには慣れない。



その後落水したB旦那は画期的な再乗艇方法を見せつける。

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何やら、またしても新手のアメリカンヒーロー誕生のような一コマだ。

ここから表情を読み取る事は出来ないが、相当苦痛に満ちた顔をしている事は間違いない。


激流を座って下ったり、

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寝そべって下ったり、

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嬉々としてヨダレが溢れまくるマゾ野郎たち。

ラフトの恐ろしいまでの安定感でこそなせる技に感激しきりだ。


なんだったら、最初から沈した状態で瀬に突入するマゾプレイ。

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絵だけ見れば衝撃的な事故画像だが、僕は果てしない快感に浸っている。


何かの線が切れたB夫妻は、夫婦でバック転身投げ。

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B旦那は見事な犬神家着水。

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B女房は一人投げっぱなしバックドロップ着水。


見事な夫婦だ。

B女房に至っては、実はこの旅の前に「骨折疑惑」が浮上した女。

今回の旅がボツになる事を恐れて、病院にも行っていないという心意気。

我が女房にも彼女のこの姿勢を大いに見習っていただきたいものだ。


そんなB女房とパドルで支え合うという、お互いの信頼関係で成り立つ遊び。

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骨折疑惑があるとは思えないほどの支えっぷりで、僕も必死のV字開脚で応える。

見事な攻防戦だったが、この後僕だけ落ちて彼女は生き残った。


皆で輪になって、

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一斉に屁をこく。

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実際は足をばたつかせてるだけなんだけど。


そしてそのまま奴隷として売られて行く。

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で、ゴール。


いやあ、激流から水遊びまで堪能しまくった一日だったよ。

正直この時点で「あ、やばいかも」って感じで風邪の諸症状が僕を蝕み始めている。

この時の悪寒が、後の「穴吹川朦朧ツーリング」から「死国搬送脱出」への伏線となっていくのである。


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寒中ラフティングを終えて、ラフト会社に戻って来た途端素晴らしい晴れ間が広がった。

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もう、、おそいよ、あんた。

こんな時だけ、見事に天気予報通りなんだな。

まあ、そこは気を取り直して本日の戦友同士の記念撮影。

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天気ともども、実に晴れ晴れとした表情だ。

しかしさりげなく僕の乾かし中の帽子には「屁こき虫」がへばりつく。

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最後まで地味に僕をへこませる事を忘れない。


最終的には若いチャラガイドとも仲良くなった。

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彼は相当にクレイジーで、この表情からも恐らく一本打ってから川下ってると僕は見ている。

一方で、ネパール人ガイドさんとも仲良くなる。

彼はラフトの本場ネパールで最近ガイド会社を立ち上げたばかりの新米社長さんだ。

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その見事な「揉み手」で、我々をネパールのラフトツアーに誘ってくれている。

小歩危なんて目じゃないほどの激流を、何日もかけて下るラフトツアー。

凄く行きたい。

余りにもマゾすぎて、僕はとろけてしまうかもしれない。



その後、いぶし銀Wさんのおすすめの讃岐うどん屋さん「うどんの穂」へ。

たいした看板もないから分かりにくい。

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店の奥の方を見ると、「見えてはいけないもの」が見えてしまったか?

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さにあらず。

ちゃんと足でうどんを踏み踏みする、讃岐うどんならではの製麺風景。

もちろん、出て来るうどんがまずいわけがない。

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前日の徳島ラーメンに続き、ご当地もので腹を満たす。


腹が満たされれば、前日に引き続き「落ち着けない温泉めぐり」だ。

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今回のチョイスは吉野川ハイウェイオアシスに併設した、吉野川温泉「美濃田の湯」。

入口付近には爆音で地元演歌歌手のテープが垂れ流され、入湯を迷わせる。

我々の中に「またか」という思いが蔓延し、「あいあいの悲劇」の再来を予感させた。


あいあい程ではないがまたしても大量の客でごった返し、サウナは前日にも増して密入国コンテナ化。

吉野川の展望がウリみたいに書いてあったのに大して川は見えず、ダッチャーSに至っては展望風呂って書いてあった所に勢い良く入ったら水風呂だったというまさかプレイを完成させる始末。

原色に彩られたよく分からない壺湯に裸体の男達が密集する阿鼻叫喚の世界。

そしてヘビを発見してパニックに陥るバターN。


徳島落ち着かない温泉の洗礼を二日にわたって食らってしまった我々は、本日も心と体を癒すことが出来なかった。

中々徳島の温泉はレベルが高い。


そして再び穴吹川の川原に戻って来た我々は、連夜のダッチナイト。

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もう食材を買う時の基準が「うまそうかどうか」ではなく「挟めるか挟めないか」というキビシい目で食材を買って来た。

そして、本日もまたダッチャーSによって挟まれた食材達に一つとして失敗はなく、果てしなくウマい食材祭りとなった。


昨日よりもさらに酒を飲みまくり、どんどん遅くなる時間。

外は5月とは思えない寒さで、僕に至っては緊急用のエマージェンシーシートを被りながらの無謀な宴。


朝から風邪気味だったくせに今日一日冷水に晒され、夜は寒い外で酒を飲み続ける僕。

こんな男が風邪をこじらせないわけがない。

しかし風邪の症状のすべてが酒とダッチの魔力でごまかされ、その日も気持ちよく僕は眠りについた。

翌日の悲劇に向けて、男の悲しき激流下りはまだ始まったばかりだ。


漆黒の死国の地獄が、男の枕元にまでヒタヒタと忍び寄る。

頭上には満月に近い大きな月が煌々と輝いていた。



激流どうでしょう 〜第4夜へつづく〜



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MATATABI BASE

コメント

    • tun_noko
    • 2012年 5月 14日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    吉野川行きましたか。小歩危のラフティング。いいですね~。
    僕も久しく行っていないのでウラヤマシイっす。

    あしたは大歩危かな?

    所で何で大歩危小歩危っていうか知ってますか?

    (正解)
    この流域は渓谷になっていてその昔は[色:FF0000]大[/色]股で[色:FF0000]歩[/色]くと[色:FF0000]危[/色]ないのが大歩危

    [色:FF0000]小[/色]股で[色:FF0000]歩[/色]いても[色:FF0000]危[/色]ないのが小歩危
    でした!

    • yukon780
    • 2012年 5月 15日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    いやあ、さすが日本屈指の激流区間でした。
    普段ではありえない瀬だっただけに、相当に楽しめましたよ。

    今回は小歩危の1日ツアーだったので、大歩危の方は行ってません。
    翌日は例の「穴吹川」になります。
    また追ってその時の記事は書きますね。

    そして大歩危小歩危の由来、知りませんでした。
    しかし正解を見ても、何やら軽いノリの名付け方ですね。
    もっとこう、豪沈危(ごうちんげ)とか魔祖危(まぞけ)とかのがしっくり来る気がします。

    また四国豆知識お願いしますね。

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