南伊豆歩道/静岡

爆発大移動の旅3〜脱水ジャングル野郎〜

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鬼怒川、伊豆山稜線と綴って来た「爆発大移動の旅」シリーズ。

前日の悲惨な伊豆山稜線トレッキング(参考記事)の翌日に、よせばいいのに再びトレッキング。

場所は「南伊豆歩道」。

伊豆半島の南端の海岸沿いを伸びている歩道だ。


しかし「歩道」と思って気楽な思いで行ったのが大きな間違いだった。

歩道といっても、ほとんど登山。

ジャングルの様な密林をぬって歩き、断崖絶壁の海岸沿いを歩くハード歩道。


実はこの歩道、後で知る事になるがこの時期に歩く人はあまりいないらしい。

ゴールしたあと、売店のおばちゃんに「あんた、こんな時期にあの歩道歩いて来たのかい。物好きだねえ。草ぼーぼーだったでしょ?」と言われた。

秋からの涼しい時期はいいが、これから暑さ本番って時期に侵入すると悲惨な事になるようだ。


伊豆敗退記後編「南伊豆歩道トレッキング」。

ジャングルマゾクルーズの始まりだ。


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南伊豆歩道は全長およそ12kmのロングトレイル。

僕はその中で、中間地点の入間起終点から妻良までのコースを選んだ。


入間の漁港にある駐車場にて車中泊。

もちろんこの程度では前日の疲労は全く抜けなかったが仕方がない。

とにかく遊ばなきゃならんのだ。

のんびり体力の回復なんて待ってる場合じゃない。


駐車場には分かり易い地図もある。

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それにしても、全く人がいない。

南伊豆歩道ってマニアックな道なのか?

GWだというのに、この閑散っぷりはどうしたことだ。

(まあ、要するにこの時期登って行く物好きはあまりいなという事だ)



漁港の一番奥に、登山道発見。

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もうこの時点で、生い茂り感がハンパない。

ただでさえクソ暑いのに、さらなる暑苦しさを演出して来る。


この場所で改めて地図を確認していたら、背後から一人のハイカーがやって来た。

全く人がいなくて、不安一杯だっただけにホッとした。


50歳くらいのその人は、話してみるとシーカヤッカーである事が判明。

このマニアックな歩道で、マニアックなカヌー野郎同士が出会うヨロコビ。

二人が打ち解けるには、全く時間がかからなかった。


そして、僕はそのおっさんと一緒に歩き出した。

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この人は日本のシーカヤックの黎明期からカヤックに親しんでいた人らしく、とても興味深い話が沢山聞けた。

旅先での「出会い頭のカヌー野郎」ほど楽しいものは無い。

ニッチな世界で暮らす者同士の出会いは、大変に貴重な体験だ。


しかし、完全に趣味が合致するわけではない。

彼は「カヌー野郎」だけではなく「野草野郎」でもあった。

食える野草をこよなく愛する、岡本信人のようなおっさんだったのだ。


はっきり言って僕は全く「野草」に対して心がアツくならない男だ。

しかし、途中からおっさんは何度も立ち止まっては、

「あ、ほら見て。○○草が生えてる。これ美味いよねえ。」とか言って来る。


どうしよう。

まるで興味ないばかりか、その都度立ち止まるからまるで進まない。

挙げ句に、

「ああ、○○草だ!これ珍しいから写真撮っておくといいよ。」

とコーフン気味に撮影を促して来る。

言われるがままに写真を撮る僕。

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この1枚は、僕の中で「最も心のこもっていない写真」となった。

そもそもどの草が珍しいのかもさっぱリ分からないし、全く興味も無い。


貴重な出会いだったが、なんとかこのおっさんをまいていかんと先に進めない。

でもいまいちきっかけが掴めずに、ずっと二人で歩いて行く。

野草の話に、心のこもっていない相づちを打ちながら。



この歩道には「千畳敷」という景勝地があるらしい。

しかしここはジャングルと断崖絶壁のツートップ歩道。

千畳敷に行くには、このような場所を急峻に下って行かねばならない。

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かなり急な下り坂。

さすがの野草のおっさんも口数が少なくなったほどだ。


やっと下まで降りれば、今度は崖を這って道を進んで行く。

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「歩道」というにはギリギリのラインだ。

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ちなみにこの辺りから、しばらく写真が「白飛び」しまくってます。

カメラの設定を間違った事に気づかずに、ずっと色が飛んだ状態で撮影し続けます。

こういう初歩的なミスが、旅の後も僕をへこませたりする。


そして千畳敷とやらに到達。

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白飛びしまくってるせいで幻想度がアップしちゃってるが、中々に凄い所だ。

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なんか別の惑星みたいだね。

そんな惑星を彷徨って写っているのが薬草のおっさんだ。


そしておっさんに写真を撮ってもらう。

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ちなみにこの男は頭にタオルを巻いているが、もちろん前日に帽子を盗まれているからだ。

そしてカメラバッグが絶妙な位置に来ていて、かなり変態っぽいぞ。


ここで野草のおっさんがしばらく休憩して行くらしい。

貴重な出会いだったが、正直もう野草の話がつらかったのでここで別れる事にした。


こうして再び一人になった僕は、道を戻って元の登山道に戻って行った。

再びジャングルと断崖絶壁の交互トレッキング。

しんどいけど、さすがに景色は素晴らしい。

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しかし、よくもまあこんなところに歩道を作ったもんだ。

木や草はもさもさで、隣は崖になっていて、起伏も激しいし暑いししんどいし。

世の中に「恋人達の聖地」ってやつが結構あるけど、僕はここを「マゾの聖地」として認定しよう。


やがて「富戸の浜」というゴロタ石の浜辺に到達。

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ぐったりしてここで休憩。

あまりの暑苦しさに、持って来た水分がいよいよ心もとなくなって来た。

もうガブ飲みしたいほどに喉がカラカラだ。

しかしあと少し行けば中間地点の吉田の集落がある。

自販機くらいあるだろうから、そこで水分を補給しよう。


ヨロヨロしながら、吉田の集落へ向けて出発。

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もうこの手の風景にも慣れて来た。

今は絶景よりも水分が欲しい。

集落はもうすぐそこだ。

僕は残った水分を全て飲み干してスパートをかけた。


そしてやっとの思いで吉田の集落に到着。

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集落と言っても、ほとんどジャングルじゃないか。

どんどん不安になって行く僕。

やがて信じたくない現実を突きつけられた。

「この集落に自販機なんて無い」という現実だ。


この時点で所有水分はゼロ。

道はまだ中間地点。

歩き旅に慣れていない頃だから、水分調整に思いっきり失敗したのだ。


民家で水を分けてもらおうか迷ったが、恥ずかしがり屋の僕はそんな日本昔話みたいな事は出来ない。

もうこうなったらゴールに向けて突き進むしか無い。

「なんとかなるだろう」という、大概ダメな奴が吐くセリフを口にして僕は進んで行った。


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もう、うんざりするような道が深い森の中に吸い込まれている。

僕は生きてゴール出来るだろうか?



何やら前方から、何かが突進して来たぞ。

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うおっ、イノシシだ。

僕はビックリして身構えた。

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でも子供のウリボーでした。

くそ、ドキドキして一気に喉が乾いてしまったじゃないか。

脅かすんじゃない。


それにしても密林ジャングルっぷりがひどくなってきたな。

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この集落に住んでいる人は何者なんだ。何族なんだ。


プリントアウトして来た南伊豆歩道の地図を見ると、この先は「ジャングル景観コース」って書いてあった。

もういいよ。

もうジャングルいいよ。

おしゃれに「景観コース」って書いてもだまされんぞ。

要はヘビーなジャングル密林マゾコースじゃないか。


いよいよ脱水症状が始まって来た。

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時折日陰で休むんだけど、水分がないから一刻も早く移動を開始する。

いち早く水分を補給しないと、ほんとに動けなくなってしまう。

こんなマニアックな密林歩道で行き倒れたら、誰にも発見されずに腐乱死体と化してしまう。


ここからの写真はほとんど残っていなかった。

写真を撮っている場合ではなくなって行ったのが伺える。

かろうじて残っていた1枚がこれ。

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美しい景色なんだが、脱水状態でここを進んで行かねばならなかったこの男の事を想像すると、実に気の毒だ。


GWのピーカンの日。

世の人はレジャーや観光で楽しい一日を過ごしている事だろう。

でも忘れてはいけない。

伊豆半島の端っこで、孤独にマゾッてる奴がいた事を。



こうして僕はフラフラの状態で妻良にてゴール。

もはや人間干し椎茸。

ゴールの感動も何も無いまま、ゾンビのようにユラユラと自販機を探しさまよう。


この時に飲んだポカリスエットの味。

みなさんに想像出来るだろうか?

「五臓六腑に染み渡る」って感覚がしみじみと分かった。

あんなに美味いポカリはなかったね。



こうして僕の伊豆半島二連敗の2DAYSツアーが終わった。


でも自由を勝ち取ったGWの旅はまだまだ始まったばかりだ。

全身がすでにボロボロだが、とにかく僕は遊ばなければならないんだ。


僕はその足でひたすら北上した。

ゆっくり休みたい所だが、そうはさせるか。

一路目指すは山梨県「富士川」。


育児ストレスによる「爆発大移動の旅」第4弾。

日本三大急流「富士川カヌーツーリング」の幕が開ける。




自分の事だけど、この人いつか死ぬな。



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MATATABI BASE

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