いよいよメインディッシュイベント、人生初のシーカヤックだ。
相変わらず、天気はよくない。
しかも、シーカヤックでは致命的な風も強く波も高い。おまけに寒い。
35年シーカヤックの貞操を守り続けた僕が、こんな悪条件で操を失っていいものだろうか?
もっと素敵なシチュエーションで海デビューを飾りたかった。
プロの方にお金を払ってお手軽に童貞喪失的ながっかり感に襲われないだろうか?
自問自答が続いたが、昨日の八幡さんの一言でもうすっかりやる気に満ちていた。
「きれいで静かな海もいいけど、僕は悪条件の過酷な海も経験してもらいたい。本当のアウトドアの世界がそこにはある。僕はそれを皆に知ってもらいたい。」というような内容だった。
まさにそのとおり。
僕はどちらかというと、なぜかいつも過酷な状況でカヌーをやる事が多い。
雨男だから仕方ないが、それでも続けているのはやはり過酷な条件下を乗り越えるたびに自然の事もちろん、自分の事も再認識する事が多くて、確かな充実感を得てきたからだろう。
僕は八幡さんの語る、アウトドアの本当の魅力の持論に激しく同意したのだ。
そう思えばシチュエーションこそ良くないが、いきなりベテランのものすごいテクニシャン相手に童貞喪失するのも悪くない。
間違いなく記憶に刷り込まれるはずだ。
もう一組のお客さんと合流し、スタート地点を目指し北上した。
まさに地元の人しか知らないような、マニアックなビーチからスタートだ。
もう一組のカップル(今後は仮名として「坊主くん」と「彼女さん」とする)は完全素人さんだったから、出発前に軽い講習。
でもこの講習がさすがの内容だった。
今まで僕は独学でパドリングしていたが、いかに無駄な力を入れて漕いでいたかがよくわかった。
しかも、川と海とではやはり漕ぎ方など若干違うものがあり、新鮮だった。
しかし、坊主くんと彼女さんはカヤック自体が始めてでいきなりこの条件下では若干気の毒な気もした。
ごめんね、日本有数の悪天候男の僕が来てしまったばっかりにこんな状況になってしまって。
人に迷惑だけはかけないように生きてるつもりなんだけど、どうもいつもうまくいかんのです。
そして、いよいよ出発!
出発してしばらくは、遠浅な海岸なのでまだ波は穏やかだ。
しかし驚いたのはやっぱり川のカヤックと海用のカヤックの違いだ。
シーカヤック艇はユーコンの時乗ってはいるが、ボトムの形状がV字だからなのかすごく不安定感がある。
慣れないうちはちょっとフラフラしたりしたが、やはりその直進性は川のカヤックにはない感じでおもしろかった。
僕同様、長い事漕ぎに行けてなかったWさんがイキイキとして大海原を漕いでゆく。
やっぱり僕らはパドル漕がんとダメなパドル中毒者だでねえ。
本日の予定は平久保灯台下の崖を回って、休憩してよし、潜ってよしのシーカヤックならではの極上のビーチへ上陸するんだ。
3日前の灯台の上から撮った写真がこれ。
まさにここをカヤックで漕いで行く予定なのだ。
しかし、いよいよ波が高くなってきた。
目線の先では明らかに白波が立ってうねっており、もうとても写真も撮れる状態ではなくなってきた。
これがかろうじて撮った最後の写真だ。
さすがにヤバメな状況になってきて、この先に行けるかの判断をしに八幡さんが先を見に行った。
そして帰ってくると、多分4人とも「沈」だろうとのこと。
僕はそれはそれでいい経験になると思ったが、さすがに坊主くんと彼女さんが青ざめた顔をして笑ってないので、強行軍は断念した。
極上ビーチよ、サヨウナラ。
僕らは引き返し、無人のビーチへ上陸。
正直僕としては、このビーチでも十分極楽ビーチだ。
憧れだったカヌーでしか行けない無人のビーチというやつだ。
しかし、上陸した坊主くんと彼女さんは二人とも放心状態だった。
ガイドブックに載っているような素敵で優雅なシーカヤックを想像していた彼らには、中々過酷な初カヤックになってしまったようだ。
そして、八幡さんが奥の方からワイルドに薪を取ってきて昼飯を作り始めた。
さすがに手際がいい。
完成した途端に雨が降ってきたのでみんなであったか焚き火を離れて木陰へ移動。
昼飯はペペロンチーノとサラダ的なものとスープ。
がんばって漕いだからすごくウマかった。
食いながら坊主くんが寺の息子でまさに坊主だという事が判明。
それが八幡さんにはずいぶんヒットだったようで、坊主ネタで盛り上がった。
飯も食って落ち着いたところで、なぜかさすらいショット撮影大会となった。
誰が最もさすらってる感が出ているかを競うという非生産的な企画である。
Wさん、僕、坊主くんとさすらっては見たがどうもみんなうさんくさい。
やはりベストオブさすらいはこの男だろう。
完全に絵になっている八幡さん。
現役でバリバリさすらってる男の背中はやはりカッコいい。
さあ、そして選択の時が来た。
この寒い中、シュノーケリングをやっちゃうかどうかの問題だ。
通常であれば僕は絶対入らない。
確かに僕はドMだが、この寒さで海に潜るほどの荒々しさは持ち合わせていない。
しかし、そこは「せっかく来たんだし」という多くの観光客がその言葉の後に大失敗するの原理でトライする事に決めた。
でも、やってみて大正解でした。
たしかに最初はかなり冷たくてきつかったけど珊瑚のあたりにいくとなんだか暖かかったりしたんです。
そして僕らは帰路についた。
帰りは追い風追い波で、カヤックがすいすい進んで行く。
そして、ゴール。
やっぱりシーカヤックは楽しかった。
そして悪天候だけど、悪天候なりの体験も出来て、僕はきっとそこそこ深い部分でシーカヤックを認識できた気がする。
これはもっとやりたい。
早く一人で海へ出て、極上ビーチで男の3点セット(焚き火、バーボン、ギターね)で酔いしれたい。
なにより、初体験のパートナーが八幡さんで良かった。(←この文章誤解のなきように)
今度八幡さんと漕ぐ時は、僕のスキルをもっと上げてさらに深いシーカヤックのガイドをお願いしたい。
うちのりんたろくんも大きくなったら、まずは八幡さんのところへ送り込みたいものだ。
そしていつか八幡さんの子供とうちの子が二人でなんかでっかい冒険やってくれたら本望なんだけどなあ。
この八幡さんの運営するちゅらねしあさんは、言ってみれば違いの分かるダバダ〜的な本物のカヤックガイド屋だ。
一般の方はもちろんだけど、もう今更ツアーなんてっていうカヤック経験者や、冒険野郎どもにお勧めしたい。
上辺だけな観光客向けなガイドではない、本来のガイドの姿がそこにはあるんだ。
ちゅらねしあホームページ
グレートシーマンプロジェクト
Exilim G スペシャルサイト
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やがてさんだるハウスへ戻ってWさんと散歩に出かけた。
でいごの花が咲いているとの事。
さあこの花が咲き始めたとうい事は、八重山諸島に台風の予兆かね。
しかしでいごの花ってこんな桜みたいな感じで咲く花だとは知らなかった。
八重山諸島放浪旅、最後の夜。
またWさんと飲みに行った。
結局、この八日間毎晩飲み続けてしまった事になる。
そして最後の晩餐にふさわしいやつのご登場。ヤシガニである。
もはやエイリアンを茹でたもののようだ。
↓こちらは生前の勇姿。(他ページから引用)
絶対エイリアンだって。
陸にいるし。
しかし一応名前にカニが入っているからウマいのだろう。
またこいつの身がカニみたいにスルッて取れないこと取れないこと。
かろうじてほぐした身を、なにやらカニみそ的なものにつけて食べる。
実に濃厚なる、土着的ワイルドテイスト。
この味を例えようとしたが、浮かんでこない。
もう「ヤシガニ味」としか形容できないオンリーワンな奴だった。
こうして八重山諸島最後の夜は更けて行った。
石垣島!初シーカヤック、波高し
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MATATABI BASE
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