目次
天竜再び
激動の秋吉久美子ラウンドが終わった。
しかしその代償で腰が天に奉納され、渾身の階段落ちで背中もクラッシュ。
そんないよいよ絶対安静が必要な段階で一本の電話がかかってきた。
「カワイさん、パックラフト買ったから一緒に天竜川下らない?」と。
電話の主は、僕が「男塾塾長」と崇める南アルプス北沢峠こもれび山荘のご主人の竹元さん。
かつて太平洋戦争終結期のアメリカ大統領に「TAKEMOTOがあと10人いたらアメリカは敗北していただろう」と言わしめた剛の者である。
そんな塾長のお誘いを、腰と背中が痛いからと言って断ってしまっては切腹は免れない。
僕は再び戦う男の必需品であるロキソニンを強く握りしめ、「一号生ユーコン田沢!そのお誘い、お受けいたします!押忍!」と快諾してしまったのである。
体が持つのかどうか心配だったが、何気に「天竜川」はそろそろ再訪してみたかった川だったし、結構思い入れが強い場所。
僕が川旅にはまった若い頃、30kgのクソ重いレクリエーショナルカヤック持ってかなり足しげく通っていた川だ。
この川は川沿いに電車も走ってるから移動が便利で、なおかつ観光和船が通っているから釣り人が船の交通に寛容で夏でも下れる貴重な川だった。
この川では、僕がパドルを家に忘れたことで急遽「鍋の蓋」で漕がざるをえなかったなんて一幕もあった。
この辺りの思い出記録はこっちの方でまとめてるんでおヒマな方はどーぞ。
とても良い川なんだが、なんせあまり泳ぎたくなるような綺麗な川じゃなかったため、清流ハンターに目覚めてからは足が遠のいていた。
そんな青春の川に、今15年の時を経て再訪する喜び。
30kgだったカヤックも、時代の変化とともに今やたった3kgのパックラフトに変貌した。(ただし減った分は本人の体重に加算されている)
天竜峡は紅葉の名所でもあるので、今がまさにベストシーズン。
コースも、前半の「急流セクション」、中盤の「紅葉セクション」、後半の「無人工物のんびりセクション」と変化に富んでいる。
川を始めたばかりの塾長をおもてなしするには最高のステージである。
ってことで今回はのんびりマゾ休めの「天竜川パックモミジガリング」。
後半は思わぬサプライズな出会いもあったりと、マゾ疲れを癒す素敵な2Daysの始まりなのである。
天竜川パックモミジガリング
第4形態の男
今回はあくまで塾長を天竜川でおもてなしし、「川って最高!」と思ってもらうための川旅だ。
間違ってもいつもの悪天候プレイに塾長を巻き込んではいけない。
そんなことしたら油風呂で煮られてしまう。
しかし確実に晴れにするには、この程度の腰痛&背筋痛では奉納不足だ。
そこで僕は、出発前日の夜に「突如激しく風邪を引く」という追いの一手に打って出たのである。
二つの痛みの症状に風邪をプラスしたことで、フリーザで言えばツルツルの第4形態の状態になって最強の奉納スタイルが確立された。
これから冷たい秋の川を下ろうというのに、ツバもまともに飲み込めないほどの喉の痛みと倦怠感。
天竜川に向かう車中では、栄養ドリンクと龍角散のど飴を旅のお供にして魂の直進行軍。
サービスエリアで体に優しいうどんを頬張り、風邪薬とロキソニンをダブル処方。
ついさっき「のんびりマゾ休め」とほざいていたが、結局今回も安定した滑り出しだ。
しかも今回はゴール地点の駅からスタート地点の駅まで電車で移動してそこで塾長と待ち合わせの予定なんだが、「塾長を待たしてしまってはいけない!」と、念には念を押して30分前にはゴールの駅に到着する予定で車を走らせていた。
しかしその駅に到着する直前で、ナビがポーンと鳴って「この先で通行止めが発生しました。別ルートで案内します。」と突然の死刑宣告。
なんとゴール手前の橋が急に通行止めとなり、まさかの+33分の大迂回を強いられてしまったのである。
このままでは3分遅れで電車に乗り損ね、塾長を待たせた罪で男塾名物・義呂珍が執行されることは必至。
さっきまで余裕で車を走らせていたのに、途端にスペクタクルな展開に巻き込まれて喉は一気にカラカラになり、さらに熱っぽさがアップ。
結局歯を食いしばりながら大急ぎで車を走らせ、ヘロヘロになってゴール予定地点の唐笠駅に到着。
厳しい戦いだったが、とりあえず第4形態フリーザ&謎の通行止効果でなんとか晴れをもぎ取ったのである。
実に15年ぶりに降り立った唐笠の無人駅。
随分体重も老いも体の弱さもアップした状態で戻ってきてしまったが、それが時の流れの残酷さというものだ。
やがて即座に電車がやって来る。
プチ情報だが、この飯田線の車両の扉は、入口横のボタンを押さないと開かない仕組みになっている。
当時そのことを知らなかった僕はそんなボタンの存在など知らず、ただただ開かない扉の前で立ち尽くし、「開かない!車掌さん!開かないですよ!」と叫んでパニックになったものだった。
このボタンに気付くか否かが、この天竜川の最大の核心部だったりするのである。
魂のハンドリング
久々の電車移動。
電車を使うとやっぱり「旅感」が出ていい感じ。
ただ今日ばかりは旅感よりも「悪寒」の方が勝っており、まだ何も始まってないのに既に虫の息だ。
やがてスタート地点付近の伊那八幡駅で下車し、無事に塾長と合流。
トレードマークのヒゲを剃り落とし、長めの髪もバッサリカットしていたため、思わず「何かやらかして裏塾長(女将さん)に剃られたんですか?」と聞いてしまいそうになったが、まだ男塾名物・獄悔房連に入るわけにはいかないのでグッとこらえた。
やがてスタート地点の川原に移動して準備開始。
以前から川旅に興味津々だった塾長は、今年念願のパックラフトをご購入。
選んだのはココペリのセルフベイラー(自動排水)艇である「ニルヴァーナ」。
塾長は今年こいつを買った直後に大雨後の濁流仁淀川にて川デビューしたんだが、なんとスタート直後にフロアがスローパンクしてほぼ水没した状態で下り切ったというまさかに見舞われたらしい。
このニルヴァーナのフロアパンク問題、僕の周りでも他に2件も同様の症状があったので、何かしらロット不良があったのかもしれない。
とりあえずココペリはこれにて塾長の怒りを買ったので、命あるうちにパックラフト界からセルフベイリングしてしまった方がいいだろう。
そんなこんなで準備もできたんで、いざ15年ぶりに天竜川の川旅に出発。
さあ、山では大先輩の塾長だが、川では僕の方が一日の長がある。
ここらでバシーっとお手本ってやつをお見せして「さすがユーコンカワイ」と言わしめたいところ。
僕はパックラフトに乗り込み、スプレースカートを装着し「さあ、行きますか!」と元気よく出発。
そして次の瞬間、衝撃的な事実に気づいて絶叫。
「ああ!俺パドル持ってねえ!」と。
そう、僕はスプレースカートを装着することに脳のキャパシティの全て奪われ、なんと川原にパドルを置き去りにしたまま川に飛び出してしまったのである。
僕は「うおおおお!」と叫んで大慌てて両手で水をかいて川岸を目指す。
しかしすでに川の流れに乗ってしまってる男は、無情にもそのままノーパドルで流されていく。
さすがの塾長も「そんなバカな!」と絶叫し、大慌てで岸に戻る。
そしてなんとかパドルを回収し、それを必死でハンドリングしてる大馬鹿野郎に手渡して事なきを得たのである。
結果的にスポンジ脳のお手本をバシーっと示し、ある意味「さすがユーコンカワイ」と言わしめることに成功。
かつてお鍋の蓋でパドリングしていた男は、15年の時を経てスケールアップした魂のハンドリングを見せつけた。
別の意味で僕は確実に成長している。
そろそろ本気で、自ら老人施設に入る申し込みをしようと思った瞬間である。
前半戦「急流セクション」
川の先輩としてしっかり威厳を示したところで、改めて出発。
広々とした大河、そして適度で快適な瀬。
最近は渓谷部の狭い川を漕ぐことが多かった分、この開放感と空の広さには「ああ、ただただ気持ちいーなー」とうっとりしてしまう。
この川は割と流れが速く瀬も多いんだが、基本的に天竜舟下りの観光和船が通るので川底のイヤラシイ岩が撤去されていて超快適。
この日も川の中にまでブルドーザーが入り込んでせっせとルート整備中だった。
何やらこういう豪快な絵面って、なんかアラスカみたいなワイルドさがあってテンションが上がってしまう。
そんなブル中野を横目に見つつ進んでいくと前方に南原橋が見えてきて、広かった川幅が一気に狭くなって流れも速くなっていく。
この橋を越えると、「鵞流峡(がりゅうきょう)」という男塾名物的なネーミングの荒々しい区間へと突入していくのだ。
激しめの割には流れが素直で、ひたすらセンターを突っ切っていけばいいという爽快さ。
このただただ楽しいだけの区間には塾長も「いいねえ!」と満足げ。
風邪引いただけあって天気もよろしいし、いい歳したおっさん二人が巨大なウォータースライダーを「フウ!」とか言いながら快適に流されていく。
やがて赤い天竜橋が見えたら、鵞流峡最後の1.5〜2級の瀬へと突入していく。
ここも長めの瀬で、早い段階で沈したら延々と流されていくといった場所だ。
すこぶる快適に漕ぎ下る二艇。
塾長のニルヴァーナも今日はちゃんとパンクせずにせっせと自動排水して調子よし。
天竜橋を越えると、また元の広々とした世界にスポンって飛び出す。
そして目の前にはズボーンと広大な空。
先ほどまで激しかった川も滔々とした流れに変わり、頬を撫でる風を感じながら優雅に飛び立つ渡り鳥の姿を楽しむ。
狭い峡谷でスリルを味わい、広大な空という優しさに包まれるというこのメリハリ。
さっきまで天龍源一郎だったのが、突然黒木華的な優しさに包まれてしまうこのパターン。
まさにツンデレの川、それがこの天竜川なのである。
中盤戦「紅葉セクション」
その後も広々区間ではウダウダと喋りながら黒木華を楽しみ、
時折現れる天龍源一郎の追撃をかわしながら進んでいく。
そうこうしてると、薄緑色の「姑が射たれる」と書く姑射橋を過ぎる。
そこからは「天竜峡」と言われる紅葉で有名な名勝区間が始まるのだ。
両岸にそそり立つ岩壁、そしてそこにへばりつくように点在する紅葉のグラデーション…
ってところなんだが、今年は紅葉ハズレ年で、時期も少し早かったのか中途半端な彩り。
それでもこの幽玄な雰囲気はこの天竜峡独自の景勝で、そこを悠々と漕ぎ進んでいくのは中々に気持ちがいい。
所々の岩には漢文が刻まれていたりして、周りの雰囲気と相まって中国の山河を行く李白気分だ。
さらに気持ちいいのは、ここは観光地でもあるので、吊り橋の上のおばちゃんたちに写真をパシャパシャ撮られてちょっとした韓流スター気分も味わえるのである。
そんな優雅なクルーズを楽しんでいると、やがて川の上を通る飯田線に出くわす。
運が良ければ川の上からここを通るのどかな飯田線の電車を眺めることができ、鉄道好きにはたまらないスポットでもあるのだ。
まあ僕はそもそも運はないので何も通りはしないけど。
後半戦「無人工物のんびりセクション」
飯田線の鉄橋を越えると華やかだった天竜峡区間が終わり、ここからは人工物の見えないのんびりとした区間に突入する。
流れも穏やかで、岩壁も少なくなって山容も穏やかに。
若い頃はこの区間が大好きで、よくここのあたりの雰囲気の良い川原で焚き火を熾してひたすら本読んでグダーっとしたものだった。
前半はスリルを楽しみ、中盤は景勝を愛で、後半はのんびり癒される。
15年ぶりに来たが、やっぱり川旅に向いた名川である。
諏訪湖からの生活排水の流入がなくて水が綺麗ならもっと最高なんだけどね…(この川は下流に行くほど支流の流れを組み込んで水が綺麗になって行くという不思議な川だ)。
やがてあの頃のように、気持ちの良さそうな川原を見つけて上陸。
流木も豊富なので、ここいらで昼メシのための焚き火スタート。
竹元さんはその名の通り竹を細かく裂いて「竹ティンダー」を慣れた手つきで製作。
昼メシはいつもはこの時期お約束の「餃子うどん」なんだが、今日は塾長をおもてなしするべく名古屋名物「赤から鍋」をチョイス。
鍋用にカットされた野菜、豆腐、豚肉、生卵をぶち込んで放っておけば、たちまち完成。
これぞユーコンカワイ奥義「赤から紅葉鍋」の出来上がりである。
こいつがまた猛烈に美味かった!
今後はこの赤から紅葉鍋がマイスタンダードになりそうだ。
そんな紅葉鍋をハフハフ食ってると、目の前の川では天竜舟下りの和船がスイーッと通り過ぎて行く。
こっちが手を振れば、観光客たちも手を振り返してくれ、船頭さんも笑顔で会釈してくれる。
立場は違っても、良い川では同じ自然の空間を共有した者同士、不思議と一瞬で仲間意識が芽生える。
人のいない荒野の川旅も好きだが、こういった適度に人との距離が楽しめる川も僕は好きだ。
そしてたらふく飯を食ってのんびりしたら、あとはもうゴールの唐笠駅に向けてウダウダと漂流するが吉。
でもって、やがて唐笠駅直下の岸でゴール。
しかしここで何気に上陸箇所を間違えてしまい、ここにいた人から「あのう…ここ家の敷地内だからもう少し先に上陸してもらって良いですか?」と言われてしまった。
危うく不法侵入で通報されるところだったが、とりあえず平謝りして本来のゴール地点から上陸して駅へ。
こうして久々に充実した川旅が終わり、塾長も「ワシが男塾塾長こもれび平八である!」とご満悦の表情。
風邪がしんどいのは相変わらずだが、とりあえずおもてなしが成功して良かった。
ここからはスタート地点の車を回収し、そっから塾長の車で一路八ヶ岳方面へ車を爆走させた。
なぜ八ヶ岳かというと、実はこの旅の直前に塾長から「シェルパ斉藤さんとこで餃子パーティーあるらしいから一緒に行こう」と誘われていたからだ。
シェルパ斉藤さんといえば、神様野田知佑さんに次いでBE-PALで長期連載をする超有名ライターさん。
僕は川旅を始めたきっかけは野田さんの影響だが、何気に山旅を始めたのはシェルパさんの影響が大きい。
シェルパさんに憧れた僕はなけなしの金でグレゴリーのトリコニ60を買い、まともに山を登ったことないのに屋久島に渡って海から海へと旅するゼロtoゼロを真似したりした。
その後も南伊豆歩道だったり京都トレイルをシェルパさんの本を参考にして歩き、その経験が元になって今の山好きにつながったと言っても過言じゃない。
余談だけど僕が「ユーコンカワイ」と名乗ってるのも「シェルパ斉藤」という響きの良さにあやかってのものだったりするのである。
ファンタスティック餃子ナイト
シェルパ斉藤さん登場
爆音を響かせて八ヶ岳山麓に向けて突っ走る塾長の魁号。
塾長によるアツい「軟式テニスって必要か論」と「筋肉に溺れた男たち列伝」をたっぷり聞きながら車を走らせる事約1時間。
シェルパ斉藤さんの自宅兼カフェ兼雑貨屋兼駄菓子屋兼ゲストハウスの「チーム・シェルパ」に到着。
まずこの時点で僕はそもそも今回が一体何のイベントなのか全く聞かされていなかった。
なので「シェルパさんがファンの人を集めてただ単に餃子パーティーをやるお気楽イベントだよなあ」と勝手に思っていた。
その他大勢のファンの中に混じって、チャンスがあったらシェルパさんと話せたらいーなー程度の心持ちだったのである。
しかし到着するなりこっちに向かって走ってきたのは何とシェルパ斉藤さんご本人というまさか。
そして「いやー、待ってましたよ。みんな待ってますよ。さあ、早くこっちへ!」と、挨拶をする暇もなく引っ張られて行く。
僕は「うわ!シェルパさんだ!本物だ!」と思う一方で、「なんだ?なんだなんだ?」と事情がさっぱり掴めない。
案内された場所にはなんか見たことあるようなないような人たちが多数おり、いきなりそのままその人たちと記念撮影に突入。
どうやら僕らは大幅に遅刻していたらしく、シェルパ斉藤さん含めここにいる人たちを寒空の下で散々待たせていたという超恐縮な事実が発覚。
記念撮影が終わると、そのままシェルパ斉藤さんのスピーチがスタート。
僕は「おー改めて本物だぁ。うわぁ、一歩くんってこんな大きくなったんだぁ。」って思いながらスピーチに耳を傾ける。
で、よくよく話を聞いていると、実はこの集まり、今PEAKSで連載中の「山小屋24時間滞在記」が来月号で連載100回を迎えるらしく、その記念のイベントだったことが発覚。
なので落ち着いて周りを眺めてみると、全然ファンの人の集まりじゃなくて有名な山小屋のご主人だらけ。
しかもたまたま普通に話しかけてた隣の女性の人が「あ、私鈴木みきって言います。」とあいさつして来て、「え!あのイラストレーターの鈴木みきさん!?ツイッターフォローしてますよ!」と一気にボルテージアップ。
と同時に「あれ?俺みたいな一般マゾ人がここにいて良いのか?」と恐怖が湧いて来た。
慌てて塾長に「僕、山小屋関係者じゃないっすけど大丈夫なんすか?」と聞けば、「君は一度小屋の中で宇多田ヒカルを熱唱してるから立派な山小屋関係者である!」とどかーん。
そんな中、山小屋のご主人たちが次々に壇上に上がって小屋の紹介とかシェルパさんとの思い出話をスタートさせる。
まさかまさかと思っていたら、案の定「次はこもれび山荘さんです!お願いします!」と言われ、全然関係者でもないのに塾長とともに壇上へ。
いよいよ喉の渇きはマックスとなり、口の端からは泡が溢れ出して意識も朦朧としてきた。
なんだか有名な武将たちの会合の場に、足軽の身分の男が偶然入り込んでしまった的な場違い感覚。
ただの超一般人だということがバレたら打首は免れない。
でもここではちゃんと塾長が「で、こっちにいる人は元々うちのお客さんで、小屋のベンチで昼寝してるところを僕がスタッフと間違えて叩き起こしてからの縁で色々手伝ってもらってるユーコンカワイくんです。今月のPEAKSでひっそりライター&イラストレーターデビューしております。」と僕のことを紹介してくれた。
僕もすかさずヘコヘコと頭を下げながら「ゆゆゆゆユーコンカワイと申します。よよよよよろしくお願いします。」と精一杯のご挨拶。
一度だけ小屋で宇多田をやり、一度だけPEAKSに登場したことで、なんとか「ギリギリ関係者」のラインでこの荒波を乗り切ったのである。
ホワギョーの計
ひとしきり山小屋の方達の挨拶が終わると、そっからは和気あいあいと餃子パーティースタート。
今回は「各自餃子を持参のこと」と仰せつかっていた。
僕は「ここが勝負どころだ!」と出来るだけ印象に残りそうな餃子チョイスに邁進し、わざわざ「ホワイト餃子」を買って行ったのである。
その独特のネーミングと肉まんのような形状が功を奏し、参加者たちの食いつきが非常に良かった。
この軍師ユーコンカワイの「ホワギョーの計」が見事に当たり、以降僕は山小屋の人たちに「あ、スタッフに間違われたホワギョーの人ね」「おお!さっきのホワイトの人!」という謎の認知を獲得。
今後は「ホワイトカワイ」と名乗ったほうが良さそうな雰囲気だ。
実際に山ではホワイトまみれだし。
これでスイッチが入って、酒をガブガブ飲むわ餃子食うわの酒池肉林モードへ突入。
シェルパ斉藤さんともお話をしたが、すっかり酔ってしまってて「シェルパさん聞いてくださいよ!僕養子なんすけどね!そこの醤油取ってくださいも言えないくらい気を使う毎日なんすよ!」と全く旅とか山とかと関係ない話をしてしまった。
シェルパさんも「そ…それは気の毒に…とりあえず頑張りましょう!」と、この謎の来訪者を気遣ってくれた。
その後は完全に関係者を装ったミーハー野郎と化し、こないだ情熱大陸に出てた三俣山荘の伊藤圭さんに絡んで行く。
歳も一個違いだし、音楽とコーヒーが好きな気さくな文化人ってな感じがとても好感が持てた。
にしても半月の間に情熱大陸出演者2名に出会う(吉田隊長、伊藤さん)のもなかなかなレア体験。
そろそろ僕も情熱大陸からオファーをもらい、「プロ養子・ユーコンカワイ」として日常の嫁罵倒&土下座&気疲れな日々を情熱的にドキュメントしてもらいたいところだ。
三俣山荘にはいずれは伊藤新道を絡めたパックトランピングルート開拓で行こうと思ってるから、またその時にゆっくり話がしたい!
でもってこちらは南アルプスが誇るイケメンナイスガイ、昨季から七丈小屋の小屋番を務める花谷泰広さん。
登山界のアカデミー賞と言われる「ピオレドール賞」の受賞歴があり、パタゴニアアルパインクライマーのアンバサダーでおなじみの超トップクライマー。
花谷さんも何気に歳は一個違いだが、その実力差はアミバvsトキほどの大きな開きがある。 顔もね。
でもって塾長が「カワイくん!君PEAKSでイラストも書いたんだから、イラストの大先輩たちと撮ってもらうがいい!」と大号令。
超尊敬する鈴木みきさん&神田めぐみさんとともに「イラストメガネ三銃士」でパシャり。
もはや完全に浮かれが止まらない偽りの部外者。
「さもこの業界で何年もやってますオーラ」を振りまき、偽を偽で塗り固めていく一般人。
そのタイミングで、この日シェルパさんところに届いてたPEAKS12月号が出てきて、僕も紙面になってるのをここで初めて目にすることになってちょっと興奮。
この時点で日本酒を浴びるように飲んでいた僕は色々楽しくなってきちゃって、勢いでシェルパさんにそれ持ってもらって写真を撮るという暴挙に打って出たのである。
あの日こもれび山荘のベンチで昼寝して塾長に叩き起こされてなかったらきっと今日のこの日は無かっただろう。
改めて塾長には感謝の念でいっぱいであります。
その後も楽しい宴は続き、山の人間の集まりらしく餃子は瞬く間に消費され、6升もあった日本酒もカラッポに。
こうして夢のような一夜が過ぎて行ったのである。
なお、この時の様子は今度のPEAKS1月号の山小屋24時間滞在記の100回記念で載るみたいですよ。
もし購入したら、そこに部外者が1人混じってるってことを感じながら読んでみるといいでしょう。
浮かれの代償
朝。
この日の八ヶ岳山麓は驚異的な冷え込みで、温度計も氷点下を示していた。
そんな中、他の人たちは屋内やテントで寝ていたのに、なぜか僕だけが寝袋ひとつで外で寝ていたことが発覚。
頭が鈍器で殴られたかのようにガンガンと痛く、美しいまでの二日酔いが決まった。
しかも氷点下の世界で外で寝ていたことによって、風邪も猛烈に悪化していたのである。
自業自得の浮かれの代償。
風邪と酒で喉の炎症はマックスの状態で、声を出しても天龍源一郎みたいにしか喋れない始末。
第4形態の状態に二日酔いもプラスされて、いよいよ最終形態のゴールデンフリーザと化したユーコンカワイ。
三俣山荘の伊藤さんも「え?なぜ外で?」と、ユーコンカワイの情熱大陸の世界に感嘆の声を漏らしていた。
朝は昨日の餃子の残りで餃子鍋を作り、シェルパさん自ら御釜で炊いたご飯のご提供。
ここからまたしばし談笑の時間は続いたんだが、僕だけは完全にフリーズ状態。
寒空の下、風邪の諸症状との孤独な戦いに突入し、昨日まで元気だったのに急に根暗な人になったみたいに物静かに己の悪寒と戦うことに。
二日酔いのせいでどんどん気持ち悪くなって来て、今何かの拍子に誰かからボディーブロー食らったらその場でホワイト餃子を吐き散らすことは必至。
そんなことしてチーム・シェルパ出禁になってはいけないので、真っ青な顔をしながら必死でその吐き気に耐え続けた。
やがてお別れの時間となり、塾長&シェルパさんとともに記念撮影。
最終的には結局ボロボロの状態でフィニッシュしてしまったが、実に楽しい一夜を過ごすことができました。
シェルパさんも最後に「ちゃんと醤油取れるように頑張ってね!」と暖かいエールをくれたのである。
やがて帰路につく僕と塾長。
僕はまだだいぶお酒が残っているのか、このような幻覚が見えてしまう危険な状態。
だいぶ飲み過ぎてしまったようだ。
というかこのスパイダーマンを見てから、急激に気分も悪くなって胃の中の餃子たちの遡上が止まらない状態に。
頭は頭蓋骨の中でメタリカがライブでもやってんのかってくらいに痛く、塾長の男らしいハードな運転によってみるみる廃人化も進む。
もちろん、こういう日は信じられない大快晴だったりするのである。
普段体調が良くて山に登る時は真っ白の「ホワイトカワイ」なのに、体調が悪ければ悪いほどに「ブルースカイカワイ」になるのがユーコン流情熱大陸。
やがて葉加瀬太郎のエンディングテーマがテーレーレレ〜と流れ出す。
かっこいいナレーションがこの旅の模様を締めくくる。
男は今日も 浮かれた先の世界で代償を払い続ける
彼は帰りの車中で こう静かにつぶやいた
塾長 僕はもうダメです 降ろしてください と
おもむろに車を降りた彼は その思いのたけを大地に向かって叫んだ
紅葉の揺らぎ 清流のせせらぎ そして魂の嘔吐
山の神に捧げる 渾身のホワギョーリバース
こんな日はいつだって絶好の山日和
しかし彼は山には行かず この後3度にわたって「ゲロり途中吐瀉の旅」を楽しんだ
そして彼は再び戦場に戻って行った
養子という名の気疲れの戦場へ
プロ養子・ユーコンカワイ
帰路の車中でディランが歌う
友よ、答えは風邪の中にある と
情熱大陸 完
フラフラの状態で帰宅。
僕は嫁に「あのシェルパ斎藤さんに会ったんだよ!」と報告。
しかし嫁は「あ?シェルパ?知らんがね。それより早く子供風呂入れて寝かしつけてよ。遊んできた分際で風邪引いたとか頭痛いとか言ったら殺すでね。」とピシャリ。
秋の木枯らしが身に染みる季節。
頬を伝う涙もひんやりする今日この頃。
そろそろ冬が始まりますね。
この日以降、夜の咳が止まらずに寝不足です。
頑張っていきましょう。
塾長とゆく!紅葉天竜川と高揚餃子ナイト 〜完〜
※天竜川ルートマップ、そして今回使用したウェア&ギア一覧は次のページへGO!
こんちわ!
凄い面子っすね!集合写真なんてファミコンジャンプのパケージ級のオールスター感。
風邪と二日酔い程度ではこの幸福感はペイできないでしょ。。
ファミコンジャンプの気を抜くとアッという間にスタート画面に戻りますしね
今後何が在るか判りませんよ~ホントにホントにお体御自愛くださいね。。
でも、なんだかんだ言って溶け込んでるユーコンさんは流石っすね~
僕も改めて写真見ると違和感しか感じないですよ。
ファミコンジャンプでもたまたまその時連載してただけでゲーム入りした不人気漫画もあったと思うけど、まさに僕がそれですね。
みんな立派な人なのに、僕だけ数時間前にパドル持たずに川に飛び出してる大馬鹿野郎ですからね。一人だけ外で寝てるし..。
まあ今回の秋吉久美子ラウンドが全体的に薄幸感溢れてましたが、最後のこのご褒美があったからってことでしょうね。
ちなみに実際は結構恐縮しちゃってたし、みんな山小屋事情的なお話ししてたんで、縄跳びに入れない人みたいに行こか戻ろかの繰り返しでしたよ。
とりあえず「ホワギョーの人」ってことで記憶にはとどめてくれたでしょうから、忘れられないうちに各山小屋回っていかんとなって思ってます。
いずれは山小屋関係者じゃなくても呼ばれるようになりたいっすね。
押忍!
見事なまでのマゾ姿。感服します。
天竜は居年初めてあそびに行ってとても良いところでした。
今年も行く予定でしたが、大雨で中止になってしまってザンネンでした。
何より飯田線は究極超人あ~るの聖地だったりします。
さすがさすらいのスナフキンさん。
まさか天竜まで行ってるとはこちらこそ感服しました。
次回来ることがあれば是非一緒に下りましょう。
究極超人あ~る…完全に記憶から消えてたのを引きずり出された感じです。
思わずググって「あ〜これあったなあ」と朝から感慨にふけっております。
ジャンプ派だったんで細かい内容まではわからないけど、飯田線が聖地なんですね。
何気に唐笠駅の近くが峰竜太の出身地で、彼の実家の酒屋で酒買ったことあります。
日本に一人いるかいないかのあ〜るファンで峰ファンだとかなりアツい聖地巡礼になりそうです。
初めまして。
地元のことが記事になっていたので思わずコメントしてしまいました。
私は飯田線で峰竜太さんの出身高校に通っていたので唐笠駅は毎日電車から眺めていました。(下車したことはありませんが)
天竜川は私にとっては、中学校の授業で川の生物を調査したり、舟下をしたり、カヌーで下ったりといろいろと思い出がある川です。そんな天竜川を褒めていただいて、本当にうれしいです。
後半のイベントはすごい豪華なメンバーでしたね。
これからもお体を大事にしつつ頑張ってください。
M.D.さん、初めまして!コメントありがとうございます!
良いところで育ちましたねえ。
ほんとここは僕も若い頃足繁く通った思い出の川で、故郷みたいなところなんですよ。
生活してる人と川の距離も近く、川を基準に文化が成り立っている数少ない場所だと思ってます。
昔は「カヌー連れてって」って言われたらまずここに連れてってましたね。
飯田線のボタン式にもすっかり慣れてきたし、今回また魅力を再発見できたんで今後も行きたいと思います!
後半はほんと豪華でした。
あのメンツの中に情報ゼロで突っ込んで行ったんで、当の本人が一番驚いてます。
またああいう場所に呼んでもらえるよう、今後も頑張っていきます!
おお!私の地元千葉のホワイト餃子じゃないですか!
食べたことないですけど(笑)以前嫁に食べに行こうかと誘ったら「興味ない」の一言で撃沈した思い出の店です。
お陰さまで事後代償は終わったようですが、先週の晴れをもぎ取った瑞牆、金峰では途中歩けなくなるほどの胸の痛みという事中代償を受けさらなる「等価交換」の世界へ足を踏み入れました。そのうち機械の腕になったり鎧だけの体になったりしないかと心配してます。
最近のユーコンさんの記事読んでいるとアウトドアの世界で頑張ってきている成果が人脈(天気ではない)という形でどんどんできているなぁと感じます。これからも体に気を付けて楽しんでください。山の記事待ってますよー
おとおさん、千葉だったんすね!しかも食べたことないって!
すっかり千葉のソウルフードだから千葉県民なら誰でも食ったことあるのかと持ってましたよ。
僕も今回の件で初めて千葉のものだってこと知って、それまではなぜかずっと名古屋めしの一つだと思ってました。
あの食感は僕は好きですが賛否両論分かれそうっすね。
餃子と思って食うと硬いしもちもちしすぎなんで、餃子と思わずにホワギョーという名の新しい食いもんと思って食ううとうまいですよ。
ぜひ奥様といってみてください!
そして事後代償から等価交換スタイルになりましたか。思ったより早かったですね。きっとPEAKS効果かと。
謎の人脈の広がりは今すごく感じてます。
正直僕自身は人付き合い苦手なんで戸惑ってる部分ありますが、もうせっかくなんで色んな波には率先して乗って行ってみようかと。
しかし今年に関してはほんと山行ってないんですが、なぜか山関係の人脈が人がっていくという不思議。
もうそれもこれもやっぱり男塾塾長のパワーのなせる技でありますよ。
もうそろそろ山登り始めようと思ってます!もう登れる体力なくなってる気もしますけどね..
昨日はご家族と一緒でしたのにお声がけさせていただきすみませんでした。
生ユーコンさんに興奮が抑えられなかったです。
しかし今日から腰に違和感が‥‥
これがユーコンマジックなんでしょうか‥‥
nagakenさん!
ムースさんでのまさかの邂逅。
僕もまさか店内に知ってる人いるとは思わなかったんでビックリでした。
目的のものの試着終わったら改めてゆっくり話そうと思ったらもういなかったんで、結果的にちょっとしか話せなくて無念です。
そしてうちの嫁同行というかなりレアな状況ですからね。
多分腰は嫁の覇王色の覇気にやられたんだと思います。
あのあと散々試着しまくった挙句、結局ファイントラックの詰め替え用洗剤しか買わなかったというまさかでありました。
でもムースの石田さんやbbpの方とも話せたんで有意義でしたね。
嫁からは「長え」と後で怒られましたけど…
また何かの機会にお会いできたら、今後はゆっくり話しましょう!
認識していただいているだけで感謝感激です。
帰る時お声掛けしたかったのですが、ガッツリ試着されてたので(しかも奥様が横に!!)そのまま帰った次第です。娘を迎えに行くミッションがありうちも嫁から早くしろ光線が出まくりでしたので。
私も結局何も買えませんでしたが(嫁を連れて行くのはダメですね 笑)ユーコンさんに会えたのが一番の収穫でした。
次回は各務原のイオンあたりで是非!!笑
そうだったんですね。
確かに嫁が立ちはだかってたら、男塾の鎮守直廊三人衆に阻まれるよりも突破は困難だったと思います。
僕も時間制限あったんでやることやってからって思ってましたが、やっぱ家族と一緒じゃゆっくり見られないっすね。
ある意味このブログでは非公開の嫁見れたってことで我慢してください。
各務原のイオンも度々出没します。むしろそこが一番多いっすね。
次回会った時はぜひまたお声がけくださいまし!