弓削島/愛媛

瀬戸内海!神の島遥か国・後編〜大潮逆走生名島!〜



3日目 生名島一周シーカヤック

あれからどれくらい意識を失っていただろうか?

口からはなぜか喀血の痕跡。

変な格好で座り続けていたのか、腰もスペシャルに痛い。

全身を包み込む疲労感はもはや58ラウンド目のボクサーのようだ。

 

思い出した。

確か昨日私は夢の快晴無人島ビーチに向けて猛烈に仕事を片付けたんだっけ?

そして根性で仕事を終わらせて、朝方に窓の外を見たまでは覚えているがその先の記憶がない。

何か嫌なものを見た気がしたが、きっと疲れすぎて幻覚を見ていたんだろう。

だって今週はオール晴れの予報。

そして昨日石田さんも「無人島は逃げません。きっと明日もいい天気ですよ。」って言ってたじゃないか。

 

ではなんだ?

今私の目の前に広がっているこの本降りの世界は?

昨日の晩のうちに核戦争で起きたのか?ってくらい完全に色彩も失われてグレイッシュな世界観。

しかも雨だけならまだしもめっちゃくちゃ寒いぞ。

 

そんな僕の背後で、昨日まで半袖短パンだった石田さんが防寒着バッチリの状態で佇んでいる。

そして「ユーコンさん…瀬戸内がこんなに目まぐるしく天気変わることなんて初めてですよ。晴れを雨にするだけでは飽き足らず、あなたは季節までも変える力があるんですか?」と絶望的な視線を送っていた。

僕も思わず「私は一ヶ月ぐらい気を失っていたのですか?」と言ってしまうような天候の激変っぷりで、慌てて防寒着を着込んでガタガタと震えた。

こうして瀬戸内海は一夜にして白と寒気の炎に包まれ、地域住民たちに「ユーコン襲来!」の報が行き渡ったのである。

 

このまさかの天変地異に対し、慌てて作戦会議が行われた。

諸々の状況判断によって「ユーコンさん、残念ながら無人島はやめときましょう。」ってことに。

僕も「ええ、いいですよ。そもそも私のような男が人様と同じように無人島でステキビーチを楽しもうだなんて思った時点で分不相応だったんです。どうせ行っても水墨画のようなビーチしかないでしょうしね。」と、目を赤く腫らせて了承。

そして長い協議の結果、今回は日帰りで「生名島(いきなじま)を一周する」というプランに決定した。

4日間も時間取ったのにまさかの日帰りプラン。

しかしそんな僕を見て石田さんは「もうここまで来たらマゾルートで行きましょう。今日は幸い最も海の干満差が大きい“大潮”です。そんなヘビーな日に、あえて潮流を“逆走”して島を一周しましょう。」と提案して来たのである。

それは例えるなら、四方八方から複雑に入り乱れる大きな大河を流れに逆らって遡上しながら移動しようぜといった変態感。

おそらく石田さんの中で「こいつを簡単なルートで浮かれさせたら瀬戸内が沈んでしまう。やはりこの人はマゾらせておかないとダメなんだ。」と判断したのだろう。さすがはプロのガイドである。

しかし海経験の少ない僕は「わかりました。グレーになった景色はいつものように想像で補完します。瀬戸内海にはレジャーではなく筋トレしに来たと気持ちを切り替えます。」と全てを受け入れた。

そして昨日は来る事すら出来なかったスタートの地にやっと立ったのである。




海面に打ち付ける雨を望む。どこまでも広がる色のない世界に自然と笑みがこぼれる。





よく見ると格好も昨日の「浮かれアイドルスカイブルー」ではなく、がっつりドライスーツで中にはナノパフを着込むほどの防寒対策。

この旅の前に石田さんに「ドライスーツのがいいですかね?」と聞いたところ、「そんなの暑くて着てらんないっすよ!大丈夫、晴れてクソ暑いくらいです。ハッハッハ!」と言われていたが、残念ながらたった1日で冬が来てしまったためこのくらいが丁度いいのだ。

そしてグレイな世界をバックに希望に満ちた出発記念撮影。

相変わらず「幕末の写真か?」といった彩色感。

というかこのブログが台風の時にリニューアル発表して以降、神崎川、御嶽の沢、瀬戸内と全部雨じゃねえか。

 

しかし海という世界は不思議なもので、気圧の影響で雨が降ると比較的海面は落ち着いたりするらしい。

不幸中の幸いで風は大して吹いておらず(晴れた時は風が吹き荒れるシステム)、海面は安定している。

どうせ雨なんて漕ぎ出しちゃえば気にならないし、昨日風呂入ってないからシャワーを浴びながら漕げると思えば一石二鳥だ!と言い聞かせて出発。

石田さんは「こういういつもと違う瀬戸内を味わうのもオツですよ!」と励ましてくれるが、僕にとってこの鉛のような世界こそ“いつもの海”である。

やはり世の中に出回ってる瀬戸内の「青い空!青い海!」なんてものは全てフォトショップの加工品だったと再確認。

僕はガガーリンのように「やっぱり地球は灰だった」と静かに呟き、カエサルのように「瀬戸内よ、お前もか…」と歯を食いしばりながら黙々とパドリング筋トレに勤しんだ。

 

ちなみにこの瀬戸内の海は一般的に「穏やかなイメージ」を持たれがちだが(僕もそうだった)、実は非常に難しい海だったりする。

瀬戸内海を大きな川とイメージするとわかりやすいが、この狭い水域の中に大小様々な島があってそれがとても複雑な潮流を生み出すからだ。

そんな状況の中に6時間おきに干潮満潮で東へ西へ流れが変わり、さらに風が島と山の間を複雑に吹き抜けて海面を荒らす。

さらにさらにその狭い水域に大量の船が行き来し、その船が生み出す波も予期しにくい波を生み出すという修羅の世界。

かつてここで村上水軍が日本最強の海賊として大暴れできたのは、それらの複雑な潮流を我が物にしていたからに他ならないのである。

そんな海域に今、ど素人の睡眠不足の悪天候男が「大潮の中で潮流を逆走してる」というマゾさ。

海面は一見すると穏やかに見えるが、今いる場所と数メートル先では全く違う流れで、気を緩めると転覆してしまうのだ。




数メートル先の潮流が真横に急流で流れてるのがわかるだろうか?気を抜いてると突然流れに掴まって沈してしまう。





しかし昨日一日、この瀬戸内と同レベルの“お仕事戦闘潮流”という奇妙な冒険を乗り越えてきた男は「昨日のお歳暮パネルの急流に比べればこんなもの!」とその潮流を乗り切って行く。

やがて生名島の北端に位置する「亀島(かつて村上水軍の城があったところ)」を無事に通り抜け、

ランチタイムになったため、サウンド波間田というキャンプ場の浜に上陸。

この時点で生名島を半周。

ここまでひたすら潮流を逆走してきたため、当たり前だけど常に盛り漕ぎ。

ゆえに上陸してカヤックから降りた瞬間、速攻で脇腹をツる男。

やはりこの男、青空の下のキレイなビーチで浮かれてるより、灰色の空の下、微妙に草が生えてるビーチで脇腹つってる姿のがよく似合う。

少しやみかけてた雨も、「さあランチ食うか」って段階で再び降り始めたので石田さんが慌ててタープ設置。

で、「タープ張ると雨がやむ」っていう安定の展開に、石田さんは「ユーコンさん…ほんとブログ通りの人なんですね」と感心しきり。

そしてひとしきり飯を食い、タープをしまって再び海に出ると「待ってました」とばかりに本降りアタック。

タープの中では雨は降らず、外に出ると雨が降るという現実に石田さんも「マジかよ…。晴れ男なんて言ってすみません。完敗です。」とついに白旗をあげた。

きっと世が世なら卑弥呼クラスのシャーマンとして崇められただろうに、私は生まれた時代を間違えたのだ。




こんな時は目を閉じて心眼で快晴の瀬戸内に思いを馳せる。





やがてこの負のオーラが石田さんにも蔓延。

この寒暖差に追いつけなかった石田さんの脇腹もツッてしまったというまさか。




即座に上陸して脇を伸ばす石田氏。





しかしよくよく聞いてみれば、石田さんも僕と同じツりキチだったことが判明。

しかも「大して大食いじゃないのにどんどん体が大きくなっていくんですよねえ」という共通点も。

僕も柿ピーをバリボリと食いながら「ほんとなんで我々はこんな痩せないんですかねー」と愚痴り、さらに羊羹を食べるのである。

 

必要以上にエネルギー補給した後も、生名島逆走旅は続く。

やがて生名島をぐるっと一周する頃には、石田さんが「ああ…ユーコンさん!なんか背後からさらにグレーなお友達が迫って来ましたよ!」とパシャり。




シムラ、後ろ後ろ〜。





もはや通常の雨雲では満足できず、いよいよ「これ海で最悪の雷パターンじゃね?」っていう怪しげな雲を召喚してしまった男。

海面で雷ってリアルにやばいやつで、海面上で避雷針のように一番高いのってシーカヤック漕いでる人の頭。

もし直撃したらこのようなことになるのは必至。

しかも直撃を避けられたとしても、海に落ちた雷はそのまま海を伝って周囲20mは感電するというからたまらない。

そんな中、みるみる広がっていく黒く重いモクモクさんたち。

やがて遠くの方から聞こえてくる「ゴロゴロゴロゴロ」という音。

この辺りは造船所が多いから間違いなくそこからの音だったんだろうが、もちろん得意のネガティブシンキングが発動して48通りの落雷死イメージを我が脳内ビジョンに映し出された。

しかもこれから島から島への海峡越えという難所に突入。

時間もすでに17時と焦りも止まらない。

ずっと逆走して来たから疲労も困憊だ。

そしてその段階で、天は「機は熟した!今だ!」と全軍に大号令。

「絶対に今は勘弁してね」って瞬間に、容赦無く「バシャ降りの計」を発動したのである!

一番厄介な海峡越えで突然のスコール。

男の「もうやめてええええええっっ!!」の声も、海面を叩く雨の音にかき消される。

何度も言うが、今週はオール晴れの予報である。

 

さらに必死で海峡越えをしてると、背後から突然「ブッブーーーー!!」という大警告音。

その音でビクゥッ!ってなって危うく沈しそうに。

雨の音で全然気づかなかったが、もう少しで連絡船に轢かれるところだった。

なんて恐ろしいんだ瀬戸内海。

僕は石田さんに「やっぱここは上級者コースなんですか?」と聞けば、「いや、上級者も連れてこないっす。ユーコンさんスペシャルコースです。」と言うじゃない。

そして畳み掛けるように「さあ、こっからが最後にして一番の山場です。あの橋をくぐるまでの海流が一番不安定です。その先がゴールです。気を引き締めて行きましょう!」と言うじゃない。

そんな複雑海流満載の場面で、とうとう満を持して「風」も吹いて余計ややこしい海面状況に。

いよいよ現場は「波が横から来るのか後ろから来るのかもわからない」海流乱交パーティー会場と化したのである。


動画では大した感じに見えないのが癪だが、とにかく後ろから不意に攻撃して来る波が超怖い。

しかも数メールとごとに海流が変化するから、突然「グラッ」ってなってその度に軽失禁。

さすがはかつて村上水軍が跋扈した瀬戸内の海である。

 

しかし西伊豆という「はぐれメタルキング」で経験値を荒稼ぎした僕は、なんとかその潮流も乗り越えて無事に生還することができた。

外海には外海の怖さがあり、内海には内海の複雑な世界が存在することを知ることができた。

結局今回も「普通の海」を見ることなくマゾってしまった感があるが、これでようやく西伊豆のトラウマは多少上書きされ、海を見ても吐き気を催すことはなくなったのである。

石田さん、ありがとうございます!




図らずも二人して「ま〜きのっ」な感じで写ってしまった。





その後はカヤックや服を洗って基地内でまったりコーヒーブレイク。

ここで石田さんの壮絶な半生を聞いてがっつり夜まで過ごす。

世界放浪のバックパッカー時代のこと、インドの伝説DJに感動してスペインでDJやってた頃のこと、世界的な外資系企業で猛烈に働いてた頃のこと、アラスカで弓矢だけでクマやムースと戦った日々、ユーコン川を下ったこと、難ルートに挑み続けた壮絶なクライマー時代、気仙沼から高知までカツオを運んでたトラック野郎時代、そして現在のカヤックガイドに至るまで、そりゃあもうちょっとした特番組めるほどの波乱万丈な人生。

この話を聞いたら、多分百田尚樹あたりが「海賊と呼ばざるをえない男」ってタイトルで本書いてベストセラーになりそうなほどだ。

 

やがて家に帰って、パートナーである「島裏番Rさん」の手作りの特製麻婆豆腐を食いながら飲みなおす。

勝手に冷蔵庫からビール出して飲んだりともう完全に居候状態。

ここには気を使うべきご両親も、奇声を発し続ける子供達も、人間の尊厳を踏みにじって来る嫁も、10年も飼ってるのに今だに歯をむき出して吠え続けて来るトイプードルもいない。

実の家より居心地が良い…

そんな中、なんとはるばる倉敷から「急に天気がおかしくなったんでユーコンさんが来たと思って」と、昔からFacebookで繋がってた「郵便海賊Oさん」が参戦。

瀬戸内の海では知らぬものなしの女傑海賊(シーカヤッカー)の方で、カヤック雑誌にはちょいちょい出てる人。

普段は郵便屋さんで働きつつ、隙あらば旅に出る機会を虎視眈々と狙ってる旅好きなお方だ。

彼女も海外での旅経験豊富で、バックパッカーだった石田さんも交えて旅話に花が咲く。

なにやら海外のゲストハウスにたまたま日本人同士が集った的な面白さがある夜だった。

シーカヤックガイドの世界のいろんな話も聞けて、久々に楽しく痛飲してしまった。

 

一日中海を逆走で漕ぎまくり、そして散々飲み終わった後はもう気持ち良く眠るだけ。

…と思いきや、彼は戦うノマドワーカーなのでこっからがお仕事スタートなのである。




現在AM2:30。張り切って頑張ろう!





もう瞼は鉛のように重たく、旅に仕事を持ち込んでしまった自分に激しい後悔が止まらない。でもこうでもせんと来れないし…。

しかもそんな自分をセルフタイマーで己撮りしてる最中、急に石田さんがシュラフを取りに部屋に入って来て「なんかピーピー鳴ってますよ」って言われて超恥ずかしい目にも遭遇。




慌てながらも何事もなかったようにシュラフを渡す男の姿が劇撮された。





その後はひたすら作業に邁進。

もちろん今日も見事なまでにヘビー案件が発生。

サクッと終わらないその作業に対し、AM3時になる頃にはついにダウン。

彼は「さすがにこのままでは血尿が出てしまう」と己でレフェリーストップ。

そして「どうせ明日も雨なんだろうし、もう残りの作業は明日やろう…」と眠りに落ちて行ったのである。


最終日 旅は日暮れて夕波小波

全身を包み込む倦怠感。

頭は鈍器で殴られたかのような二日酔い。

僕はそのヘビーな体を必死で目覚めさせ、フラフラと窓の方に向かって行く。

今日はもう残りの仕事するだけだし、雨が降っててもダメージは少なくて済む。

 

そして男は静かにカーテンを開ける。

そして叫んだ。

「晴れてるじゃねえか!」と。

男は一瞬白目になってその場で倒れそうになったがなんとかこらえた。

ここに来て最高の超快晴。

昨日のことは何光年前の出来事なのか?ってくらいに晴れ渡り、風も無風で海面はキラキラと輝いている。

しかしそんな好天の中でも、男はその足で無言のままMacBookをボアーンと起動させ、うなだれるように仕事を始めたのである。

朝日によって壁に投影された猫背の影が、彼のやりきれない思いをしたたかに表現している。

もはや「ここは締め切り直前のトキワ荘なのか?」といったシュールな世界観が展開。

そしてひとしきり仕事してから朝飯を食って、

再び仕事に邁進。

窓の外は激しい白飛びを起こすほどの大快晴だが、彼はそれを見て見ぬ振りで猛烈な勢いで仕事を片付けて行く。

当初彼は「ノマドワーカーなら天気の良い日に遊んで、天気の悪いときに仕事すりゃ良いじゃん!素敵じゃん!」と思っていたんだが、それができるのは普通の人のお話。

彼のような卑弥呼クラスの男はあくまでもその逆を行ってしまうため、「遊びも仕事も倍しんどい」という新世界のワークスタイルを確立してしまうのである。

 

やがて朝日をたっぷり3時間味わいながら、ヘロヘロで仕事を終わらせる。

そして艇庫に乾かしてた荷物を取りに行くと、昨日のモノクロの世界が嘘だったかのようなフルカラーの瀬戸内海が広がっていた。




青い空!青い海!これぞ瀬戸内海。良いなあ、こんな海を漕いでみたいなあ。

キラキラ光る海、穏やかな風。良いなあ、こんな海を漕いでみたいなあ。





しかし天はそんな瀬戸内海を眺めることすら許さない。

この段階でまた彼の電話が鳴り、先方から「昨日のお歳暮のパネルデータ、1枚抜けてたんですが…」とクレーム。

綺麗な海そっちのけで、慌ててデータをチェックする男。

どうやら朦朧状態で仕事をしていた彼は、せっかく頑張って作ったデータを寝ぼけて上書き保存して消してしまっていたことが発覚。

外はこんなに晴れてるのに、ひたすら彼はこの場で凹みまくっていたという。

 

しかしこれらの一連の代償プレイに満足した瀬戸内の神も、「よし、ここまで懲らしめたらもう良いだろう。気の毒だから最後にチラッとだけ良い思いをさせてやろうぞ。」と、ここからは優しい一面を見せてくれることに。

まずはせっかく晴れたんで最後っ屁とばかりに「久司山」登山。




蜘蛛の巣が多いから宇多田ヒカルのAutomaticのPV的な動きで巧みに巣をくぐり抜けて行く。





実はこの山、非常にマニアックな山だが実は瀬戸内の隠れたベストビュースポット。

石田さんの案内で頂上の展望台まで登って行くと、そこにはとてつもない絶景が広がっていたのである!

That’s瀬戸内海!

4日目にしてやっとちゃんと見れた!

大河のような海に美しい島々!圧倒的かつ優しげな自然!そして橋や造船所などの構造物があってそこかしこに人の息吹を感じる集落が点在!

北アルプスのような険しい荒涼とした絶景も好きだが、このような生活と人の歴史を感じられる自然も旅感があって大好きだ。

そうそうこれこれ、こんな海を漕いでみたかったの!

ってもう…帰るけどね…。

 

絶景を堪能した後は、弓削島探訪ってことで今週末祭りで盛り上がる弓削神社を見て、




島の神社は海を向いてるのってのが良いよね。





味のある裏路地探索して猫を満喫。まさに島的情景。

 

路地から屋根の上まで猫がいて、もはや気分は岩合昭光。

余談だが僕は超がつくほどの猫好きだ。

独身時代、結婚する女性の条件として「優しくて猫好きであればそれだけで良いの」って言っていたが、今現在の嫁は「ドSで猫アレルギーの女」。

けして多くを望んだつもりではなかったが、人生とはうまくいかないものである。

 

そして弓削島を一周して次に向かったのはカヤック艇庫がある方の「佐島」。

初日に続いてこれまた雰囲気最高なカフェ「book cafe okappa」に向かった。

ここは昔島の保育所だった建物で、東京から移住してきたおかっぱ頭の女性2人(だから店名がokappa)がリノベーションしてカフェにしたのだ。

中の雰囲気はそりゃあもう手作り感あって最高な空間で、彼女たち自らがトンカチ持って作り上げたという渾身の内装。

のんびりとした空気感もいい感じで、彼女たちが醸し出すフンワカさと楽しんでる感がこっちまで伝染して気持ちも穏やかに。

朝、窓からの絶望によってあれほど心中がささくれてたこの男も、奥の和室ではご覧の穏やかな表情に。

出てくる料理も地元で採れたものばかりで、近所の青木くんが作ったという無農薬野菜がベース。

またしても急激に違う人のブログ感が出てしまったが、これがまた殊の外美味かった。

お店の外にはハンモックも吊ってあり、そこには色々と疲れ果てた人の死体も確認できた。

危うくこのまま息を引き取りそうだったので、気合いを入れ直して今度は佐島を1周ドライブ。

石田さんオススメのビュースポットを堪能し、

 

地域の役場の方とも談笑。




その方は「昨日急に天気悪くなりましたよね。昨日だけやたら寒かったし。」と言っていた。なんかすみません。





そして島の南端にある長磯の浜へ移動。

そこでついに「青い空・青い海・白いビーチ」という、噂の「ちゃんとした海」ってやつを見ることに成功したのである!

 

最後の最後でやっとステキビーチを味わえた。

できればこのビーチでテント泊して明日の祭りを見て帰ればパーフェクトだったが、これ以上ここに居座って瀬戸内の人々にご迷惑をかけてはいけない。

めちゃくちゃ名残惜しかったが、ここで4日間お世話になった石田さんとグッバイ。

今まではアレもコレもと落ち着かない旅が多かったが、こんなに長いこと同じ場所にとどまって島を堪能できたのは新鮮に楽しかった。

また一つ日本のどこかに「帰れる場所」ができたことが純粋に嬉しい。

やっぱ島旅っていいなあ。

 

さあ、もう結構いい時間だし体もへとへとだからさっさと帰らねば。

って言っても結局落ち着きのない僕は、帰りがけに閉館間際の因島水軍城に立ち寄り、

またしてもその場に偶然居合わせたポルノさんと再会を果たす。

そしてそのまましまなみ街道を抜け、長駆6時間半かけて帰宅した。

遊びも仕事も全力で駆け抜けた4日間だった。

 

しかし男の戦いはまだ終わらない。

深夜に帰宅した彼は、荷物も車内にそのままにして泥のように深い眠りに落ちた。

本来なら翌日は遅くまで寝て体力の回復を図りたいところ。

しかし彼は翌朝早朝、例の猫アレルギーの女によって叩き起こされることになる。

そして「こうちゃんの運動会、しっかり場所取りしてきな!散々遊んで来たんだで疲れたとかぬかしたら殺すよ!」と送り出される。

 

そして5日目、彼は顔全体に「疲労」という文字を浮かべながら、ひたすら場所取りという名の持久戦へと突入。

しかし開門後のダッシュで出遅れて最前線が確保できず、嫁から役立たず的な視線にさらされることに。

おまけにその後、荷物がそのままだった車に嫁を乗せた際「クサッ!よくこんな空間で生きてられるね。寝てる間に鼻の下に犬のうんこ置いといても気づかないんじゃないの?」なーんて言葉をいただいてしまう始末。

彼は「多くは望んでなかったのに….優しくて猫好きなだけでよかったのに…ああ、島に帰りたい…」と早くも瀬戸内が恋しくなったという。

 

そしてさらにその2日後、彼は市民病院にいた。

左腰に強烈な痛みが発生し、「まさかロックアウティング(尿管結石)か!」と戦慄が走っての病院直行。

そこで激痛の中4時間半たっぷりと放置された末、診察代9310円も払った挙句「ただの腰痛ですね」と言われて終わったというまさか。

石じゃなくてよかったんだが、長時間移動運転・長時間シーカヤック・長時間ちゃぶ台ワークが祟ってしまったのは間違いない。

これによって、瀬戸内から帰ってきて2週間が経った今でもまともにしゃがむことすらできないという腰痛苦を満喫する羽目に。

最終日に晴れた代償はことのほか大きかったようである。

 

 

こうして彼の夏を取り戻す「秋吉久美子ラウンド第2弾・瀬戸内編」は幕を閉じた。

正直早くも満身創痍だが、この秋吉ラウンドは第5弾までビッチリと予定を入れてるから休むわけにはいかない。

この程度じゃまだまだ夏を取り戻せないぞ!

 

ってことで次回第3弾、沢、海、と来たら次のステージは「湯」と相場は決まっている。

次回は「秘境温泉お鍋旅」。

旧ブログ時代を知る人には久々となるチーム・マサカズ登場で、「秘境お鍋隊」の復活祭。

北アの奥地まで行って温泉入って鍋食って飲んで帰ってくるだけという、「それ健康ランドでやれよ」ってな模様をお送りします。

 

ではでは、また次回。

まともに靴下も履けないほど腰痛いけど、明日は第5弾の「穴」行かなきゃ…。

更新がなかったら僕は過労死したと思ってください。

 

気張れ!まぞどん!

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コメント

    • 海苔
    • 2018年 10月 26日

    いつも楽しく見させてもらっております!
    天候だけでは飽き足らず、季節まで操るようになるとはXメンもびっくりな才能ですね!

    晴れた瀬戸内はきれいで、また行きたくなります。
    しまなみ海道は好きなので何回か関東からぶっ飛ばしていったりしますが、なにせ遠すぎてなかなか行けない!

    腰痛はくせになりやすいですし、ご自愛下さい・・・
    次回の鍋パも楽しみにしております!

      • yukonkawai
      • 2018年 10月 26日

      ありがとうございます!
      ついに季節変化という新たなスキルを手に入れたようです。
      今回は同時に「ワークレイン」という技術も習得したので、いよいよ天気予報なんて信じられない体質になりました。

      でもやっぱ晴れた瀬戸内は良いですよねー。
      何でしょうあの暖かな雰囲気と言ったりと流れる島時間。
      もう少し近かったら間違いなく足しげく通ってますよ。

      このての腰痛、商業がら今までもありましたが今回のはなかなかハードでねちっこいっす。
      何も「さあこれから遊びまくるぞ!」って段階で来なくてもっていう。
      そんな中、明日は「基本屈みながら進む」ってう洞窟ですからね。もはや自殺行為です。

      でも夏を取り戻すため、これは避けては通れない戦い。
      何とか乗り切ります!

    • ほすほす
    • 2018年 10月 26日

    ついにゆーこんさんギア2突入で季節まで操るようになったんですね!瀬戸内海おつかれさまでした。
    twitterにてこれからまたチームマサカズが見れるかも知れないとのことで(ひっそり解散してなかったんだとの安堵感….)気長にわくわくしてましたが、早速の次回とは!!!!
    今までは一気通貫で読み進めてたので困りませんでしたが、今は毎週ジャンプを買っていた時のごとく更新がとても待ち遠しいです。

      • yukonkawai
      • 2018年 10月 26日

      ほすほすさん、こっちの方もコメントありがとうございます。
      そうなんです、マゾマゾの実の能力の暴走はどうすることもできず意図せずギア2に突入してしまいました。
      運命って自分ではもうどうすることもできないようです。
      瀬戸内近辺にお住いの方には変な気候にして申し訳ないことをしました。

      チーム・マサカズは絵面が汚すぎてBBGでは登場できませんでしたが、このブログなら思いっきり書けるんでこれでもかってくらい書いてやろうかと思ってますよ。
      基本的に僕が何かを企画しないと彼らは動かないんで、必然的にBBGやってた二年間は活動休止状態でした。
      ぜひ次回も暇つぶしにご覧ください。
      ゆでおマゾ先生の作品が読めるのはジャンプだけ!

    • おとおさん
    • 2018年 10月 27日

    ユーコンさん聞いてください…
    先日5泊6日で白馬三山縦走、乗鞍観光、入笠山ハイキング全て晴れという最高の山を味わってきました。(先日の投稿は入笠山の頂上からです)「俺はあの人とは違って持ってるぜ!」と鼻息を荒くしていたのですが、本日出勤しようとしたところ車のフロントガラスに15cmほどのひびが…
    これが事後代償というものなのでしょうか?
    おかげで冬のボーナスの小遣いが吹っ飛んでしまいました…。
    慰めて下さい

      • yukonkawai
      • 2018年 10月 28日

      おとおさん…とんでもない6日間を過ごしてしまったようですね。
      僕がそんな日々を送ってしまった日には地球滅亡ですよ。良くて半身不随です。
      事後代償がお金の流出だけで済んで良かったと思うべきですね。
      これから名言を吐くんでよく心に留め置いてください。

      「晴れは有料です!」

      そんな奇跡のような6日間を過ごしたんですから、喜んで笑顔で支払いましょう。
      そして五体満足のまま今を迎えられてることを天に感謝しましょう。
      その上でそんな日々を送ってしまった事に対して、僕に謝罪しましょう。
      6日間晴れるなら僕は40万円まで出しますね。安いものです。
      とりあえず今後数カ月は何かしらの事後代償を払う事になるかもしれないので、一度保険の方を見直してください。

      チクショー!羨ましい!

        • おとおさん
        • 2018年 10月 29日

        「晴れは有料です!」名言ありがとうございます。帰宅後より嫁からの私に対する激しいディスり、今日になり原因不明の持病である胸痛、腹痛と徐々に事後代償が出てきてます。
        そんな時は目を閉じ白馬鑓から見た富士、剱、日本海に思いを馳せて厳しい現実から逃避しております。
        まだ乗鞍から見た御嶽、雲海、入笠山からの360°の展望と逃避できる場所があるのでしばらくは事後代償と戦っていけそうです。

          • yukonkawai
          • 2018年 10月 29日

          じわじわと来ているようですね。
          そうです。
          そんな時こそ晴れの時に見た絶景ストックの量が物を言うのです。
          僕はあまりストックがないので、インスタなどで出回ってるCG写真を頭の中で再生して嫁のディスり時に対応しております。
          6日間も晴れたんです。
          今年いっぱいは色々な精神攻撃を食らうと思いますので、目立った行動を慎み、できれば寄付や献血などをしながら返済していきましょう。

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