伝説がついえる時
また次の新しい伝説が始まる。
かつてこの世のすべてを高天原へ置いて来たゴールド・ロスター。
そして今
その新世界で大秘宝マゾピースを手に入れた中年ジョージ・マゾリー。
彼と仲間達の冒険の旅はまだ終わらない。
無事に生還して初めて
ロマンはマゾとなり
男は漢になる。
傾き傾られ雲ノ平。
さあ
時代はまさに大後悔時代!
やがてそれは
新たな伝説への始まりとなる。
おマゾ王に
俺はなる!
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【後悔日誌 8月10日】
5:00
長く苦しい夜だった。
なぜ普通のテントをもって来なかったのか。
そしてなぜシュラフをもって来なかったのか。
この憧れの大地雲ノ平で、私の中の後悔は円熟の時を迎えたようだ。
全く疲れが抜けてないどころか、一晩かけてじっくり拷問を受けたような気分。
歩き続け、マゾり続けた2日間の蓄積疲労が今見事に花開いた爽やかモーニング。
しかしこのグランドラインにはエスケープルートなぞ存在しない。
生きて帰りたかったら、この2日間かかって来た同じ航路を1日で帰るしかない。
私は、北アに入って「本日4日目」という黒光り男優とともに幕営地を出発。
彼もさすがに度重なるハード撮影の日々だっただけに、その疲労の色は濃い。
そして雲ノ平キャンプ場の入口には、渋く佇む赤き怪我人の姿が。
彼は言う。
「おはよう…ございます…。僕は怪我してて二人には着いて行けません。どうか…お先に…お気に…なさらず…」と。
本日も美しく決まった、怪我人奥義「ハロー・グッバイ」。
まだ出航前だというのに、おはようの挨拶と共に早くも船員が一人離脱。
やはり本日も厳しい航海になりそうだ。
だがその一方で、早朝「生卵赤まむし」を飲んだ黒男優は朝からギンギンだ。
実は彼はボカボカの実を食べた変態歩荷人間。
重いテン泊装備を担ぐと、なぜか途端に元気が出てスピードアップする男。
撮影時でも彼は、「担ぎ系はまかせな!」とばかりに彼にしか出来ない体位をいくつか編み出した。
それが重宝されて宇宙企画のエースにまで登り詰めたことはあまりにも有名な話だ。
昨日は軽装だったから普通だったが、テン泊道具を担いだ今日の彼は本気だ。
彼がボカボカの能力を発動させると、周りの人間まで「歩荷スピードハイク」へと巻き込まれてまう。
昨日はやたら動けない怪我人で、今日はやたら動きすぎるAV男優。
私はこの船に乗せる仲間を間違えた気がしてならない。
そんな彼の「あおり重圧」を背後に感じながらも、美しき雲ノ平の航海は続く。
山頂から見るご来光も良いもんだが、雲ノ平に降り注ぐ朝日を浴びるのも実に良いもんだ。
しかし追い込み男優は「朝日なんぞ何の重さにもならねえ。クソ食らえだ。」とばかりに私をあおり続ける。
余韻に浸ることなど許されない。
この世界からの脱出とは、それほどの過酷な覚悟が必要なのである。
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7:00
笑っている。
私ではない。
我がヒザが皿を抱えて大爆笑しているのだ。
実はあの後、我々はかなり速いペースで雲ノ平を脱出した。
そしてそこに待ち受けていたもの。
それは昨日の朝、起き抜けからゲロ吐きながら登り続けたあの悲劇の「エンドレスハイパー急登」。
もちろん今日は復路だから、延々と続く「エンドレスハイパーひざ殺し急下降」だ。
昨日、ハードに左ひざを痛めていた私に訪れたこの試練。
一歩一歩段差を下りる度、背中の重みがヒザに一点集中。
その度に嫁にハンマーで叩かれたような痛みがほとばしり、顔を歪めずにはいられない。
その度に本気で、「ヌフッ!アアッ!トゥハッァァ!」などの声が漏れまくる。
そして後ろから「いいよぉ!もっと、もっとだぁ!」と肉薄する男優の圧力。
山中はたちまちマニア向け作品、「ホモトーーク」の撮影現場に。
休みたいけど休ませてくれないボカボカの能力者。
さすがの私も、裏声で「もうだめぇぇぇぇぇッ!」と荷物を置いて悶絶。
私はいつもはよっぽどの事がないと道中で荷物を降ろして休憩なんてしないし、このようにオネエ化することもない。
やはり半年間のブランクと老いは、思った以上に我が肉体を弱体化させていた。
こんな苦しいお膝事情は登山を始めた頃以来だ。
黒男優も「情けないすねぇ。なんかしばらく見んうちにデブになってるし。僕の尊敬してたマゾリーはこんなもんじゃなかったはずです。」と、先輩の老いを哀れみの目で見て来る。
確かに最近の私は老眼が始まり、白髪の量も増加の一途で、残尿感も凄まじい。
ちょっと気候が変わればすぐ体調を崩すし、座ってから立ち上がれば100%立ちくらみ。
冷え性も酷くなる一方で、かと言って温めすぎると汗かいてすぐに全身あせも。
贅肉感も素晴らしく、腹の肉で己のちんこが見えない事もしばしば。
そして年々酷くなる物忘れや忘れ物。
ロマンを探すとかより、まずはどこか良い病院を探した方がよかったのだろうか?
山道具で散財ばっかりしてないで、大金払って結果にコミットしてた方がマシだったのだろうか?
しかしまだまだ老け込む年齢ではない。
男たるもの、尿は残しても悔いは残すな。
意地でもこの世界から生還してみせる。
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8:00
ついに我がお膝元、限界突破。
動きがカクカクになり、久しぶりの生まれたて子馬スタイルに。
ヒザの爆笑ヒットパレードは留まる事を知らず、もはや立ってるのもやっとの状態。
頑張ってガクガクしながら一歩一歩進んでいくが、たまに石で足を滑らすと本気の大声で「ダアアッッ!」と突然猪木に。
それでも血の汗を流しながら、根性でこの「ハイパーひざ殺し急下降」を撃破。
なんとか昨日の奴隷船、薬師沢小屋まで帰って来たぞ。
しかし当然ここがゴールではなく、先はまだまだまだ長い。
しかもである。
私はこの小屋に余計な「沢道具一式」を預けてあったのである。
もちろんそれを回収し、急激に重さが増したザックでさらにヒザに負担をかける事に。
沢靴を外付けしたせいで、何やら足が二つある新しいゆるキャラ的歩荷スタイルへ。
この写真をそのままゆでたまご先生に送れば、新超人「ビッグ・ザ・マゾー」として採用されるかもしれない。
当然水を吸いまくったフェルトソールの沢靴は重さを増している。
普通の登山者は日が経つほどに荷物は軽くなるが、パックトランパーはなぜか毎回後半に向けて重くなって行く。
体感的には23キロくらいか。
我が後悔は相変わらず止まらない。
その後も私は、この余計な重量と共に足を引きずりながら突き進む。
もうとにかく荷物を降ろして大休憩したい。
私は後方から圧力をかける後輩に、「お願いです…どうか…休ませて…ください…」と先輩らしく懇願。
しかし振り向くと奴の表情は鬼畜の顔に変化していた。
彼は「片腹痛いっすね。天下のジョージ・マゾリーの名が泣きますよ。」と言って一切休ませてくれない。
それでもすがるように「リアルなんですよぉ…マジ痛いんすよぉ…。これじゃ次の目的地“薬師沢左股”まで体がもたないっすよぅ…」と泣きつく。
すると彼は「しょうがないすね。あと少しの所に休憩のベンチがあります。そこまでは頑張りましょう。」と言ってくれた。
やはり持つべきものは優しい仲間なのである。
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8:30
鬼畜教官が「あと少しで休憩のベンチ」と言ってから、一体どれほどの時間が経っただろう。
どこまで行ってもその「ベンチ」が全然出て来ないのである。
騙された。
とうに限界を超えてるのに、全然休む事が許されないSMの館。
このままではベンチが出て来る前にウンチが出てしまう。
頼むから休ませて…。
その時。
私を哀れんだ神のご加護だろうか。
なんとこの段階で、我が買ったばかりの自慢のトレッキングポールが抜けてはいけない所からスポンと抜けて壊れたのである。
これ以降、何度戻してもちょっと土に突き刺さる度にスポンスポン抜ける愉快なポールに変化。
全く安心して体重を預ける事が出来なくなり、いよいよ我がヒザに絶望の炎が灯り出す。
笑いが絶えないヒザ。
使えないスポンスポンポール。
圧力をかけて来るAV男優教官。
いつまでも出て来ないベンチ。
インドアの家の中では全く大人しく出来ない私だが、この時ばかりはついに言ってしまった。
「もう、早くおうちに帰りたい。」、と。
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9:00
随分と長い「あと少しのベンチ」だった。
「あと少し」と思いながら延々と歩き続けるのは、肉体のみならず精神すら破壊して行く。
何とかベンチに辿り着いた時、私は突然充電が切れたASIMOのようにそのベンチに倒れ込んだ。
結局雲ノ平出発から5時間、ヒザを爆笑させながらほとんど休まずにマゾらされてしまった。
後方の鬼畜サド男優は、これを見てよだれを垂らしてギンギンになりながら興奮して悦んでいる。
しかもである。
このベンチのすぐ先が、私が「このままじゃ次の目的地“薬師沢左股”まで体がもたないっす」と言っていた「薬師沢左股」だったりするのだ。
この鬼畜男優の、してやったりのサディスティックスマイル。
ゼハゼハと恨めしそうに男優を見ながらも、どこか嬉しそうな私。
ほんとにこのビデオ、需要があるのだろうか?
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9:30
この薬師沢左俣は、1日目の時私が我慢出来ずに突入して行った沢。
今日は本来、ここから沢登りで稜線まで行って北ノ俣岳経由で太郎平に行くつもりだった。
しかし昨日、テンカラフィーバーですっかり調子に乗っていた我々は、「もう沢登りやめてイワナと戯れましょう」と方向転換。
もういちいち沢装備に着替えるのも面倒なんで、ネオプレンソックスだけ履いてレッツテンカラタイム。
結果このような格好になり、その怪しい風体はまさに「変態盗撮王」。
もしこんな男が繁華街にいたら、職務質問から連行されるまでの最短時間を更新するのは間違いない。
しかしこんな変態ですら、軽々とその街の女をナンパで釣り上げちゃうのが可能なのがこの世界。
尻が軽いにもほどがある節操のないイワナ達。
もちろん黒男優が「チワース!君カワウィーネー!AV出てみない?」と軽薄にナンパしても、
ホイホイと釣れてしまう。
こうしてまたも次々とスカウトを成功させて行く北ア新宿スワンコンビ。
これで幹部昇進間違いなしだ!とばかりに浮かれが止まらない。
途中、このような巨大なイワナとの激闘もあった。
このように、思わず飛び込んで二人掛かりでなんとかものにしてやった。
これですっかりホクホクで浮かれが止まらないマゾキチ三平と黒谷地坊主。
その時である。
突然太陽の周りにぐるりと虹がかかるという「ハロ現象」が巻き起こった。
かつて古代の人々は、このハロ現象をお釈迦様のご光臨だと言って崇めたと言う。
そして今。
我らの前にも聖人が降臨した。
いや、ただの通りすがりの怪我人だ。
我々が散々ここでイワナ釣りで浮かれまくって昼飯食ってた時、とうとう彼が雲ノ平から追いついて来たのだ。
さあ、ここからはやっと3人での航海が始まるのか。
と思ったのも束の間、「ぼ…僕は怪我..してて..追いつかれるんで…。先に…進んでます…。お気に…なさらず….」と言ったかと思うと、あっという間にその場から姿を消した。
一体いつになったら彼と一緒に航海出来るのだろうか?
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12:00
スカウトしたイワナ嬢達に「その気になったらいつでも電話して」と名刺を渡して優しくリリースした我々は、再び脱出の航海を続けた。
私は黒男優にヒザをテーピングしてもらってのギリギリ航海である。
そしてここから太郎平までは延々と地味な登りの区間。
蓄積疲労と膝の痛みでリアルにヘロヘロになっていく私をよそに、後方の圧力男優の勢いは増すばかり。
彼は常にニヤニヤしながら、我が耳元で「ツラいのか?あ?もうダメ?どうなの?え?行くの?行かないの?どっち?ねえ…」とねちっこく私を追い込んで行く。
こいつは本当に仲間なのだろうか?
本気の懇願で「ちょ…ちょっとだけ休ませて…」って言っても、「立ったまま10秒ね。…はい10秒。そら動け。ムゥゥゥーブッ!」とムチを打つ。
いよいよ限界が近い。
もはや目もかすんできた。
クソ重い荷物に押しつぶされて死ぬ前に、せめてケンシロウの成長した姿を見たかった。
そんな感じで私が南斗白鷺拳のシュウと化して来た頃、ついに救世主伝説が動き出す。
なんと死の直前の私の前に、あの男の姿が。
見える…。
見えるぞ、お前の顔が…。
神が最後に一つだけ願いを叶えてくれた。
私の人生は間違っていなかった。
もはや悔いはない。
ゆけ!ケガニン!
時代を開け!
私はいつもでもお前を見ている。
さらばだ…。
必死で駆けつけたケガニンの努力も虚しく、私は聖帝十字陵に散った。
かに思われたが、怪我人は怪我人の扱いに慣れている。
たちまち私は救世主の怪我人に助け出されて、なんとか命をつなぎ止めた。
そう、私たちはまたしても仲間の怪我人に追いついたのだ。
そしてそれは何を意味するかと言うと、この怪我人が私の身代わりとして、鬼畜教官の圧力を受け続ける羽目になるという事なのだ。
やっと怪我人が役に立つ時がやって来て、私は黒男優の圧力から解放された。
怪我人は「しまった」と言う顔をしながら、再び奥義「ハロー・グッバイ」でその場を逃れようとする。
彼は「僕は…ケガをしてるので…どうぞ..おさ」と言いかける。
しかしその言葉に被せるように、鬼畜AV監督「団 黒鬼六」が叫ぶ。
「バカヤロー!怪我してるからこそ需要があるんだよ!見せてくれよ、お前の喘ぎ顔を!」と、怪我人をロックオン。
たちまち怪我人の「アッー、もう!だから追いつかれるのイヤだったんだよぅ…」という声が漏れまくる。
そして本気で嫌がる怪我人のアヘアヘ顏に対し、黒鬼六はホクホクでこの表情。
歩荷スタイル時でのこのような彼のサディスティックな追い込みこそ、彼の作品がマニアの間で高い評価を受け続ける要因なのである。
しかし怪我人もプロの怪我職人。
黒鬼六監督が相変わらず「立ったまま10秒」の休憩しか与えてくれないのに対し、彼も巧みな作戦に打って出た。
彼は監督に対し「すいません、ちょっとザックの中の水をとってもらっていいですか」と頼んでちゃっかり座って休憩。
さらには「ないぞ」という監督に対し、「あれぇ…おっかしいなあ」と言いながら巧みにザックを下ろして休憩。
この怪我人のあからさまな休憩工作に、さすがの鬼六監督もしてやられたりの表情。
おかげで私もやっとじっくり休憩する事が出来た。
やはりこの怪我人を仲間にしておいて良かったぞ。
しかしこれが監督の逆鱗に触れ、彼の我々に対する追い込み圧力はさらに激化。
そこからは10秒立ち休憩すらなくなり、猛烈に私と怪我人はディープなマゾを演じ続けさせられる羽目に。
やっと3人が揃っての楽しい航海なのに、笑顔も会話もなくただただ己の限界と向き合う二人。
一方で、黒鬼六監督はこの悪い顔で大満足の表情。
この時初めて私は仲間を疑った。
こいつは海軍の送り込んだ「潜入工作員」じゃないのかと。
しかし仲間を疑ってはいけない。
何とか3人力を合わせ、この世界から脱出しなくてはならないのだ。
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13:20
長く苦しい撮影だった。
ついに我々は、3人で生きたまま太郎平まで登りきったのである。
激しい1本撮りだったが、実に良い作品が撮れて皆一様に満足顔だ。
しかしここでついに悲しい別れの時が来た。
追い込み撮影に嫌気がさした怪我人は、「僕はもうこの船を降ります。」と宣言。
残念だが、彼は「こんな目に遭うのなら海軍に自首をする」と言ってマゾワラの一味から脱退。
我々は固い握手をして、この太郎平で怪我人と真のお別れをした。
結局この三日間、彼と行動を共にしたのはわずか1時間ほど。
忘れた頃に颯爽と現れて、強烈な印象を残してまた消えるというフェニックス一輝のような男だった。
ある意味凄い実力者である。
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14:00
苦楽を共にしたのかしてないのかよく分からない大切な仲間を失ってしまった。
そしてそれは何を意味するかと言えば、私は再び黒男優の暑苦しい後方圧力に晒されるという事である。
彼は後方からことさらに乳首を強調させながら、「オラオラ。欲しいのか?欲しくないのか?さあ、どっちだ!」と詰め寄って来る。
地獄だ。
私は逃げた。
彼の圧力から必死で逃げた。
それでも背後から黒い邪気は執拗にストーキングして来る。
ここで私は気づく。
実は奴は仲間の振りをして、私のマゾピースを横取りしようとしているのじゃないだろうかと。
私はそんな彼を突き放そうと、その後も口から胃液を出しながら必死で逃げる。
マゾピースを守るため、そして己の操を守るため。
足は痛い、疲労が濃い、荷物は重い、目もうつろ。
それでも逃げる。
そしてついに限界突破。
オカマ声で「アアアッ!」と本気で声が出てしまった瞬間。
その時である。
ついに私の中に眠る「覇王色のマゾ」が大スパーク。
突然私は「オマゾーズ・ハイ」に突入して、全ての疲労や痛みから解放。
急に私は稲中卓球部に出て来そうな顔になって、猛スピードでダッシュを開始。
これには背後の歩荷マゾ人間も「これだ!これだよ!これを待っていたんだ!」と悦びがスパーク。
ついには「あれ?今俺たち走ってないか?」と言いながら、リアルに走り出してる二人。
お互いに、20キロ以上の荷物を抱えながらの謎の本意気トレイルランニング。
肩と腰は千切れんばかりで、体中から湯気が大量放出。
完全にギア・セカンド状態になった私と黒男優。
このまま一気にこのグランドラインから脱出だ!
しかしグランドライン脱出手前のラスト数100m。
完全にオマゾーズ・ハイの魔法が解け、ただのおマゾの灰になりかける二人。
全てのパワーを使い果たし、あの黒男優ですら「も…もうダメっす…」と言ってしまうリアル限界ライン。
それでも我らは突き進む。
こんな所で死んでたまるか。
私はマゾピースを手に入れた男!
そしておマゾ王だ!
なめるんじゃない!
栄光の瞬間はすぐそこだ!
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15:30
やった。
ついにやったのだ。
我々はグランドラインを突破し、とうとう折立の登山口にゴールしたのだ。
もはや満身創痍。
しかし体中にアホほどみなぎる達成感。
結局太郎平から3時間10分かかる道のりを、誰にも頼まれてないのに無駄に1時間30分で駆け下りたのである。
私と黒男優はお互いの健闘を称え合う。
私は一瞬でもこの男を「海軍の潜入工作員」とか「マゾピース横取り海賊」と疑った自分を恥じた。
おかげで私は「おマゾ王」の称号を手に入れる事が出来た。
そして彼もそのクルーとして、立派に「男優王」の称号を獲得。
まるで「男優王!100人斬りに挑戦!」という作品を撮り終えた後かのようなこの佇まいだ。
そしてここにはいないが、途中で命を落とした怪我人の功績も偉大だ。
彼には後に「すれ違い王」という称号が贈られる事だろう。
こうして我が航海は終わった。
色々と後悔はしたが、今回は何とか死なずに最後までやりきった。
おマゾ王に
俺はなった!
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(ナレーション)
ここでジョージ・マゾリーの後悔日誌は終わっていた。
しかし彼は結局ここで命を落とす事になる。
彼がこの後悔日誌を書き終えた後、ベンチでグッタリ休んでいると、
彼は突然大量に待ち構えていた海軍に取り囲まれ、捕縛されてしまったのである。
マゾリーは「なぜここがわかったんだ?」と海軍を見ると、そこにはあの男が立っていた。
そう。
やはり彼は海軍の送り込んだ潜入捜査官「チョコボール・D・サモア大佐」だったのだ。
そしてあのマゾピースは、海軍が用意した真っ赤な偽物だったのだ。
これにて罠にはまったマゾリーは、そのまま折立の街の民衆の前で「後悔処刑」されることに。
民衆達は「やはり秘宝なんてなかったんだ」「マゾピースなんて存在しないんだ」と口々に囁き合った。
しかし民衆のロマンがついえたかと思われた時、
新たなるロマンの伝説が始まる。
ジョージ・マゾリーが死に際に放った一言は、人々を再び山へと駆り立てたのだ。
このあと斬首されたマゾリーの懐から、1枚の写真が民衆の元にハラハラと舞い落ちた。
それは「宝の場所」を示す、彼の最後のメッセージが込められた写真だった。
そう。
その場所にこそ「マゾのひとカケラ」、すなわち「マゾピース」が眠っていると。
人々は再びロマンの心を取り戻し、こぞってグランドラインへ突入して行った。
しかもマゾリーは最後の最後にこんなことも叫んでいた。
「ついでに三脚も!タオルも!焼き網なども色々置いて来た!探せぃ!私物の全てがそこにある!」と。
世はまさに大後悔時代!
伝説は、新たな伝説へと続いて行くのである!
「ジョージ・マゾリー」
享年39歳。
こうして彼は今回もロマンを残して死んで行った。
人は「なぜそんな無駄な事をしたのか」と聞くだろう。
しかし彼はまたしても「Because it’s There.(そこにマゾがあるからさ)」と言うことだろう。
そして人は「時間に余裕がある行程では出来なかったのか」と問うだろう。
もちろん彼は「Because it’s There.(そこに嫁がいるからさ)」と言うはずだ。
ありがとう、マゾリー。
来年以降また現れるかどうか怪しいけど、我々はあなたの事を忘れない。
そしてマゾリー処刑から数時間後。
一人の男が、マゾリーの遺体を折立から持ち帰ったという伝説がある。
それを目撃した人は言う。
「なんか足を引きずってましたね。怪我してる人でしたよ」と。
それが誰だったのかは、今となってはわからない。
しかしこの世界のどこかで、まだマゾリーが生きている可能性も捨てきれない。
そう考えるだけでもロマンがあるというもの。
もしあなたが、生きているマゾリーを見つけたら
「もうこんな無駄な事やめようよ」
そう言ってやるといい。
マゾピース 〜完〜
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はい、今回も活動内容と文章が無駄だらけのパックトランピングでしたね。
それではおまとめ動画であります。
雲ノ平行った時は8月だったけど、曲はあえて「September(9月)」です。
しかもこの曲は9月の恋人との事を思い出してる12月の歌だったりします。
曲と全く接点はないですが、レッツグルービン!
ウィーアー!
マゾピース5 大脱出編〜そして伝説へ〜
- 雲ノ平〜高天原/富山
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MATATABI BASE
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初めまして。いつも楽しく読ませてもらっています(同世代の山男なので)
今回も最高な旅ですね(^^)
北アルプスの奥深くにマゾりに行くところがさすがですねぇ^o^
アイディアたくさんの山行をこれからも期待しています♫
何処かの山でお会いできたら酒でも飲みたいですね*\(^o^)/*
では、奥様と末長くお幸せに..
SECRET: 0
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takeさん、はじめまして!
同世代の山男ってことで、家庭や老化の波との戦いの同志でしょうか。
今回もいい歳こいて無駄で不毛な旅をしてしまいました。
ついに北アルプスに3日も行ってどこの山頂も踏まないというまさかな事態になって来ましたよ。
しかもまたパックラフトまともに漕げてないっていう。
でもとりあえずなんやかんやと楽しかったし、久しぶりに思う存分マゾることが出来たんでいい旅だったと納得しております。
登山ブログとしてはなんの参考にもならんブログですが、時折人の不幸を嘲笑したくなった際はいつでもお越し下さいませ。
いずれどっかの山で行き倒れてる僕を見たら助けてくださいね。
そして一献交わしましょう。
とりあえず嫁と末永くってのは、僕自身は望んでることですが嫁がどう思っていることやら…。
お幸せになれるかどうかは今後の僕の従順っぷり次第ですが、まずはほんとに殺されないように頑張って行きます!
今後もよろしくお願いします!