五色ヶ原〜黒部ダム/富山

五色ヶ原秘境おなべ隊 後編2〜黒部の追い打ち〜

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古くからこの黒部の谷に語り継がれて来た言い伝えがある。


その者達

マゾき衣をまといて

金色の黒部に降りたつべし

失われし紅葉との絆を結び

終に人々をマゾきダッシュの地へと導かん…




前回、ついに秘境五色ヶ原で聖なるお鍋儀式が完了。

これにて「あとは下山するだけだ」と完全に油断が生じてしまった秘境おなべ隊。


実はズサンプランナーの隊長は、この下山に関して事前にメンバーにこのように伝えていた。

「2日目は高低差のないダムの縁を歩いて行くだけのお気楽下山です。涸沢から上高地まで下山するようなもんですよ。ひたすら紅葉を満喫しましょう。そして早いけど昼にはゴールして、ゆっくり下界で何かうまいもんでも食いましょうや。」と。


これを鵜呑みにしたメンバー達は、出発の朝に「2時間半」という無駄なのんびりタイムを満喫。

余裕があり過ぎて、もはや宙に浮いてしまうほどの痛々しい浮かれっぷりを見せつけた。

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この時は、後に「黒部ダッシュの悲劇」などという濃厚なおマゾが待っているなんて誰も想像もしていない。

この数時間後にはこの中のメンバーの誰一人が笑ってなかったし、体力ギリギリで死線をさまよう者まで出て来ることになる。

今私がタイムスリップできるなら、時空を超えてこの浮かれた奴らを右から順に「バカヤロウ!」と言ってビンタで目を覚ましてやることも出来たろうに。


しかし時は戻らない。

何も知らない彼らはヘラヘラ笑いながら下山して行く。

これから素敵な「延々と続く紅葉狩り」が始まると思っているようだが、待っているのは「延々と終わらないおマゾ狩り」。

極上の秋のマゾな味覚を求めて、再びおなべ隊がゆく。


それではまさかの「後編2」となってしまった黒部脱出の模様。

にゅるりと振り返って行こう。


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名残惜しい気持ちを引きづりつつ、ついに我々は五色ヶ原を後にした。

本来は6時出発の予定だったが、もうすっかり8時半を過ぎている。

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しかしこの先は、隊長曰く「お気楽紅葉下山道」とやらが続くはず。

そのため誰一人焦りの色はなく、メンバーには自然と笑みが浮かんでいる。

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そして本日もこの大快晴。

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そして高度を下げるほどに色づき始める紅葉。

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日頃から汚れた闇の世界で生きる彼らに、この状況で「浮かれるな」と言っても耳に入るはずもない。

これはまさに、砂漠で脱水死しかけている者にキンキンに冷えたビールを与えるようなもの。

もはや彼らは狂ったようにその快楽に溺れて行く。


オレンジヘッドADパパラッチKも、「高城さん!いい感じっす!目線を空へ!」と浮かれて撮影に余念がない。

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ハイパー歩荷クリエイター高城も、すっかり浮かれて良い気になってカッコつけることに余念がない。

もちろんこの写真が後にパパラッチによって週刊誌に売られ、「高城、復縁失敗で涙の紅葉歩荷」という見出しで載る事になるとは微塵も思っていない。


その後も高城の浮かれは止まらず、クリエイターらしい視点で「洋物のAVは獣じみてて奥ゆかしさがない」という独自の持論を展開。

そんな彼の軽妙トークを聞きながら進んでいくが、何気に長い下山道で足腰にダメージが蓄積して行くおなべ隊。

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やがて血圧が低くてまだ目が覚めてない低血圧Mちゃんの後方で、すっかり弱って動きがじじいみたいになっている者がいる。

それは腹下しと下山にめっぽう弱いという「ゲゲゲのゲリM」。

周りが浮かれる中、彼だけはしっかりと己のマゾと向き合っていたのだ。

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もはや人相も変わって「たった今トイレから出て来たゲリ野郎」といった風合いの表情に。

後ろで小木Kがヘラヘラ笑っていても、彼だけはピクリとも笑っていない。

今思えば彼の地獄はこの時点から始まっていたのだ。


さらにキツい下山は続くが、他のメンバーはまだまだ余裕の表情。

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そしていよいよ紅葉も勢いを増して行く。

この頃やっと目が覚めて来た低血圧の人も、ついつい急登じゃなくてもニヤリとしてしまうほどだ。

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そんな中でも、やはりゲリMだけは紅葉には目もくれずにうつむいて己のマゾと向き合っている。

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まるでゲリしすぎて脱水状態に陥った人のように、狂ったように水ばっか飲んでいる。

実はこの頃には皆すっかり担ぎ上げて来た水分が枯渇し始めて、心行くまで水分摂取できない苦しい時間帯。


それでもおなべ隊は、この先の平ノ小屋の水場目指して金色の野の中へとその身を投じて行く。

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辺り一面がオームの黄金の触手ように彼らを包み込む。

たちまち世界は黄金色に輝き、金色の野が広がった。

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これを見た大ババ様が言う。

「なんといういたわりと友愛じゃ。黒部が心を開いておる。子供達よ、わしのめしいた目の代わりによく見ておくれ。」 と。

すかさず少女は言う。

「ひめねえさま、真っ青な異国のザックを背負っているの。まるで金色の草原を歩いているみたい。」 と。

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それはザックから手足が生えてるかのような血圧の谷のマゾシカの勇姿。

自らを犠牲にして、腐海から湧き出て来た汚れた男どもの前に立ちはだかる名場面。

大ババ様は目を見張って言う。

「おおお・・、その者マゾき衣を纏いて金色の野に降りたつべし。古き言い伝えはまことであった…。」 と。


これを合図にするかのように、ついにおなべ隊は「おマゾ隊」へと変化。

挨拶替わりとばかりに、突然パパラッチKが猛烈な勢いで斜面を転がり落ちたのだ。

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写真は落ち着いた時に撮られたものだが、その転倒の様はまるでアイドルの朝帰り現場を目撃して焦り過ぎたパパラッチのようだったと伝えられている。

それはCW-Xのサポートタイツの膝頭に穴が空いて出血するほどの激しいクラッシュ。

彼は黄色ばかりの紅葉に対し、早くも自らを犠牲にして「赤」という彩りをこの黒部に美しく刻み込む。

これぞ己の赤い血とオレンジヘッドを駆使した「パパラッチ紅葉グラデーション」なのである。


このパパラッチKの先制マゾに対し、我も遅れてなるものかと隊長が動く。

倒木をくぐり抜ける局面で、お鍋が引っかかって身動きが取れなくなるという小粋なマゾを披露だ。

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ベテランならではの、おなべとおマゾをコラボさせた玄人好みのいぶし銀の技。

まだまだ若い奴らには負けてられない。


そしてこの頃にはゲリMも、3日目のゲリ野郎みたいに地面を這いつくばりながら「水…水を…」と土下座している。

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いよいよ担いで来た水も底をつき、脱水を訴える者が続出。

そしてここから地味に長く辛い区間がスタート。

あまりにも地味すぎて、もはや誰も写真を撮っていないからこの時の写真はない。

こういう華の無いマゾほど、真にしんどいものはない。


やがて脱水ゾンビご一行は、ついに黒部湖の姿を捉えた。

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そしてやっとこさ「平ノ小屋」に到達。

我先にとパープルの宝石に群がる脱水ゾンビども。

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この時ほどファンタがファンタスティックに見えた瞬間はなかった。

乾ききった喉に続々と投入されていく猛烈な爽やかさ。

そのあまりの爽やかさに、パパラッチKも「80年代アイドル雑誌」的な爽やかさに包まれてしまったほどだ。

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膝を怪我してるくせに、実に爽やかな回復力。

この爽やかさにあやかろうと、限界ゲリ男も犬に自分のパンをあげて懐柔を図る。

しかしパパラッチKとは対照的に、ゲリMは犬に見向きもされていない。

結局犬は最後までゲリMにはなつかず、最終的には仕方なく小屋の飼い主さんがゲリMのパンをあげている。

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和式便所で止まらないゲリに対して途方に暮れるゲリ男のように、ただただ黙ってその光景を眺めるゲリM。


そしてここで無事に水分補給&水調達を完了し、いざ出発。

と思いきや、この段階でやって来た小屋のご主人の軽妙トークがスタート。

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水を補給した重いザックを背負った段階からスタートしてしまったこのトークに、荷物を降ろす事も出来ずに膝をプルプルさせながら聞き入るおマゾ隊。

しかもご主人、ワンカップの酒を片手に「さあ、これからロングトークかましてやるぞ」と気合い満々の状態。

しかも「いやあここまでの紅葉最高でしたよ」という我々に対し、「今年の紅葉は近年まれに見るハズレ年だね。非常に残念な紅葉だ」とハッキリ言っちゃうご主人。

十分この紅葉に満足していたのに、何だか損した気分にさせるという絶妙なトークだ。

そしてトーク内容が「良い熊鈴と悪い熊鈴」というコアな講義に至った頃、さすがにこのままでは小屋泊になってしまうと判断して我々はその場を立ち去って行く。

でも実に面白いご主人だったから、次回はゆっくり小屋に泊まってみたいものだ。


さあ、行く前から「数年に一度の残念な紅葉」と言われてしまったが、ここからが素敵な紅葉ロードの始まりだ。

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ここからの道は黒部湖の縁を辿って行くルート。

もうすでにここまでの下山でかなりの体力を持って行かれていた我々だが、地図を見る限り高低差もなく快適な平地ルートが始まるはず。

景色も良いし、やっとのんびりとした紅葉登山が始まりそうだ。

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ご満悦な表情の女優と男優ご一行。

しかし彼らが笑っていたのはここまでだった。


ここからの道。

ずっと平らかと思いきや、実はずっと細かいアップダウンを連続させて来るイバラの道だったのである。

しかも道はすこぶる歩きづらく、同じような光景がひたすら続く大持久戦へ突入。

そして先ほどの笑顔から40分後。

おマゾ隊は早くも「全滅」していた。

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川原に転がる数体の死体。

朝浮かれてジャンプしていた奴らの哀れな現在地。


なんだかこの道、妙に体力もやる気も奪って行くルート。

地味に死へと誘うドラクエの沼地みたいな道。

しかも長々と同じような光景ばかり提供して来て、誰ともなく「もう飽きたよ…」と言ってしまうという苦行道。

かと思いきやこのようにいつ崩れてもおかしくない手作り感満載の橋が出て来たりして、こまめに恐怖も植え付けて来たりする。

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もう木を一本抜くだけで一気に崩壊しそうなジェンガ橋。

そして確かに平坦なんだが、妙に斜めって歩きにくい区間も続出。

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そんな中で、小木Kが「俺がリーダーになってみんなを引っ張る」と意気込んで先をずんずん進んでいく。

するとしばらくして、前方の方から「うおおおおっ」という声。

駆けつけてみれば、なんと小木Kがハシゴから滑り落ちて、トレッキングポールをポッキリと折っていたというまさか。

しかもそんなおいしい状況の写真を撮ろうとしたら、フラフラとフレームインして来たゲリMにピントが合って肝心の小木Kがボケまくるという波状まさか。

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小木Kはポールをへし折ってまでこのブログのためにネタ提供してくれたのに、その勇姿はゲリMによって闇に葬られてしまった。

実に苦しい報われない地味マゾの時間帯だ。


そして相変わらずのめんどくさい道。

ずがーんと下らせておいて、

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ずきゅぅーんと垂直に昇らせるというめんどくささ。

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確かに地図上は平坦なんだが、累積獲得標高だけで言えば結構高度稼いでる気がする。

そしておマゾ隊の累積獲得マゾも上昇の一途で、士気はうなぎ下がり。

これに対し、マゾ共の苦痛の表情に悦びを見いだす大物サド女優は「オラッ!ちんたらしてるとこのポールにモノ言わすよ!」とムチの嵐。

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これにはたまらず「うひゃあ」と言いながらも、自然と元気が出てしまうマゾたち。

高所恐怖症のマゾ隊長なぞは、先は高所で背後はサドというたまらない状況にゾクゾクしている。

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そんな感じでSとMを織り交ぜた絶妙なバランスでお互いを励まし合うおマゾ隊。

しかしそんな中、いよいよ限界の先の世界の住人になってしまった者がいる。

それはもちろん進撃のゲリM。

いつの間にか本当のおじいちゃんみたいになってヨロヨロしているではないか。

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最近ランニングに目覚めてめっきり体力を付けてしまった彼だったが、久々のゲリM真骨頂。

顔はすっかり表情を無くし、長らく無言で己と向き合うその姿。

Geri is Back.

ついに僕らの大好きな、あのヘロヘロゲリMが帰って来たのだ。


トイレが見つからず町中を彷徨うゲリ男のように、ふらつきながら進んでいく腹下しゲリ夫。

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そしてその背後には、ザックから手足を生やしたゆるキャラ「にやりちゃん」も追随。

彼女は体が小さすぎるあまり、背後から見るとザックが空中に浮かんでいるように見えるイリュージョンを発動させる。

そんなゆるキャラを従えて、ゲリMは「ゲリ汁ブシャーッ」とさせながらギリギリのゲリゲリ行軍。

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かくいうこれを撮っている隊長自体も、実はかなりのギリギリ感。

もう忘れている人もいるだろうから改めて書いておくが、隊長は最初っから普通に風邪を引いているのであります。

というかむしろこの頃には悪化しているのであります。


そしてあまりのいつまでも終わらないこの地味道に対し、すっかり笑顔が無くなって無言のおなべ隊。

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もう忘れている人もいるだろうから改めて載せておくが、数時間前までの彼らの姿がこれである。

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もう浮かれていたあの頃には戻れない。

もはや同じ日の出来事には思えないほど遠い記憶になりつつある。


やがて休憩地点へ。

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もうこの頃には時間はすでに15時すぎ。

当初「昼前には下山して下界でうまいもんでも食いましょうや」と言っていた者たちのまさかの事態。

このあまりの辛さに溢れ出る涙を止める事が出来ず、高城は頭を抱え、隊長は顔を洗って涙をごまかすのが精一杯。

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そしてこの後、風邪引いてる限界男は静かに息を引き取った。

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もう本気で動けない。

みんなにはずっと言っているが私はリアルな病人なのです。

というか咳をしすぎて腹筋が割れるように痛いんです。


そしてこの時点でB旦那がふとある事に気づく。

「あれ?黒部ダムからのバスって最終何時だ?」と。


そう。

昼前下山を想定していたから調べもしていなかったが、この時点でバスの最終が17時半だと言う事が発覚。

あと2時間でバスは無くなり、このペースのままだと我々はこの黒部に取り残されてしまうという衝撃の事実。


一気に悲壮感が漂うおマゾ隊。

やっぱり最後はこうなってしまうのか。

ここで隊長は、死体となっていたゲリMの荷物を比較的元気が残っているメンバーに振り分ける。

そして自ら先頭に立ち、「見せようぞ。我らの火事場のマゾ力を。」と大号令。

皆一様に顔をこわばらせながら、まさかのタイムアタックマゾタイムに突入だ。

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いよいよ米兵の追撃から逃れるジャングル日本兵のような絶望的な状況になって来た。

もはや登山とトレランの中間くらいのハイスピードで突き進む。

重い荷物は肩にめり込み、負担は膝や足腰に痛烈なダメージを与える。

それでもおマゾ隊はその歩みを止めない。

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多少軽量になったゲリMも必死で火事場のゲリ力をひねり出す。

かなりのハイペースだったが、他のメンバー達も必死で食らいつく。

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もはやレジャー感は完全に払拭され、浮かれた者などは誰一人いないストイックタイム。

その部活動のようなハードスピードハイクに対し、最重量のハイパー歩荷クリエイターもすっかり白目に。

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白馬男塾以来「白目と言えばジョンボー、ジョンボーと言えば白目」と評される彼のマゾもいよいよ絶頂の時を迎える。

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初めてジョンボーAの「生白目」を目の当たりにし、B旦那もすっかり驚いた表情だ。


もうここからはあまりにもしんどすぎて写真も撮っていない。

なんせ「同じ場所を回ってないか?」と思えるほど、とにかく景色が変わらない。

でも景色は変わらなくてもしっかりと疲労は蓄積。

もはや延々に終わらないんではないかという、黒部との命を削り合う壮絶なる一騎打ち。


そんな中、ついに「ロッジくろよん」に到達。

到着と同時に、もはや無言で自販機に吸い寄せられて行くランナー達。

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もはやこれが登山なのか、耐久鉄人レースなのかの区別もつかない疲弊感。

だがここまでのスピードアタックで、強烈に時間を短縮する事に成功だ。


しかしまだ予断は許さない状況。

休憩もそこそこに、スピードを緩める事なく一気に黒部ダム到達を目論むおマゾ隊。

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そしてついに、ゴールに向けての最後の橋を渡って黒部ダムエリア突入。

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ここでついに奴が動いた。

おマゾを極上の秋味に染め上げるべく、あのサディスティック大女優が勝負に出る。

ゴールまでのコースタイム残り30分の位置。

何を思ったか、彼女は突然本意気ダッシュを開始して猛スピードでかっ飛んで行ってしまったのだ。


この女優Eの突然のご乱心に、即座に事態が把握できないメンバー達。

慌ててマネージャーのB旦那が女優を追いかけてダッシュ開始。

そしてそれにつられるように、一人、また一人と芋づる式にダッシュ開始。

こうして「黒部ダッシュの悲劇」が幕を開けたのである。


はっきり言ってもうダッシュしなくても最終バスに間に合う時間だった。

しかし一番荷物の軽い女優Eは、ふと「最後にこいつらのもがき苦しむ顔が見たい」とサド心が芽生えた模様。

結果、後続の我々は20キロ近い荷物を背負ったままで本気のランニングをさせられる羽目になったのだ。


もちろん写真なんて撮ってる場合じゃない。

観光客がごった返す黒部ダムの上を、全身汗まみれで駆け抜けて行く8匹のマゾ。

その顔は苦痛で歪み、マゾでマゾを洗う壮絶なるラストマゾスパート。

もはや軽いボディ一発で、カレーライスからポトフまでの五色のゲロを吐き散らかしそうな勢い。

その姿を観光客達が「何か見てはいけないものを見てしまった」的な表情で眺める。

中には「あの人、背中に鍋がついてるわよ…」なんて声も聞こえて来る。

それでも彼らのダッシュは止まらない。


一般観光客には理解できない「ロマン」がここにはある。

そう。

我らは「秘境おなべおマゾ隊」。

そんじょそこらのマゾとはひと味違う。

これが僕らの生きる道。




やがて彼らはゴールした。

そしてこの時撮影された1枚の写真。

そこには変わり果てたハイパー歩荷クリエイターの姿が写っており、ダッシュの悲劇の壮絶さを物語っている。

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彼の名は高城目歩荷郎。

職業、ハイパー歩荷クリエイト白目ランナー。

黒部ダムにて殉職、享年35。


そして数人の荒くれた男どもに手込めにされてしまった少年の様にグッタリしているのはパパラッチK。

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膝の破れが痛々しい彼の名は黒部ファン太。

かつては人気のアイドルだったが、爽やかだったあの頃の面影はもうない。


それではこの時の「黒部ダッシュの悲劇」の模様を映像で振り返ってみよう。

そもそもこんなダッシュ撮るためにGoProを持って行ったわけではないし、動画の使い時を間違ってる気もするけど気にしない。

これが黒部ダッシュの全貌である。



お気づきになっただろうか?

最後の最後で「俺はドベになりたくない」という精神のもと、小木Kが低血圧Mちゃんのザックを掴んで追い抜くという鬼畜行為に及んでいた事に。

その決定的な瞬間は写真でもしっかりすっぱ抜かれている。

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この行為が週刊誌に掲載され、大御所男優は芸能界から干されて行った。

そしてこの謎のラストマゾを発生させたサディスティック女優。

彼女の高笑いは、いつまでもこの黒部の谷に響き渡っていたという。



こうしてついにロマンの旅路が完結。

秘境おなべ隊は全力でこの2日間、秋の濃厚ロマンを堪能しきったのである。

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ただやたらと歩いて鍋食っただけのこの戦い。

しかし終わってみれば絶景あり、ロマンあり、鍋あり、マゾありの充実ツーデイズ。

そして最高の仲間達。

ほんと、スバラシイ旅だったね。


と、綺麗に締めたい隊長。

しかし「お気楽登山」としか聞いてなかったメンバー達は、隊長のずさんな計画へのブーイングは怠らなかった。

戦いが終わってからも「話が違った」「騙された」という悦びの声が続々と寄せられる。


しかも隊長のズサンプランニングは終わらない。

帰宅路で「餃子のうまい店があるらしいからそこでメシ食おう」と言って、散々車を走らせて店を目指した挙げ句に「店が潰れていた」という追いまさか。

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しっかり営業時間や定休日や美味しいレビューも確認して行ったにも関わらず、その持ち前の負の運命には逆らえない隊長。

もちろんここまで騙され続けた上、腹が減って憤っているメンバー達からは激しい非難の声。

そこですかさず隊長の最後の奥義が炸裂。

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決まった。

これぞずさんを極めたおマゾに降臨するという奥義「ロマンティック土下座」。

長野の夜空に「すいませんでしたぁ」という美しい声が弱々しく消えて行く。

時折激しく咳き込みながら…。



「秘境おなべ隊」

次回彼らが登場するのはどこの秘境なのか?

それとももう二度と現れないのか?

それは誰にも分からない。


しかし、あなたがふと山中で秘境に迷い込んだ時。

きっとそこには黄金の鍋を背にした戦士達の姿があるはず。


そう、


彼らは今日もおいしいお鍋を求めて戦い続けているだろう


そこにロマンがある限り


そしておマゾがある限り…




五色ヶ腹秘境おなべ隊  〜完〜



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