英虞湾/三重

お伊勢マゾり・英虞湾編〜暴発サザエさんと永遠のマゾ〜

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山や川や嫁で日夜マゾり続ける男。

大都会で仕事と乳首に明け暮れる男。

沢や氷壁で命のやり取りに埋没する男。


三者三様のライフスタイルを持つ男達。

彼らの共通点は昭和51年生まれ、その一本のみ。

そんな遊びに飢えた中年達が織りなすお伊勢マゾり。


前回彼らは朝っぱらから一之瀬川を一本下って、早くも男臭ムンムンな状態。

40近くになると、ちょっと汗かくとすぐに体中が濡れたカピパラのような匂いに包まれる。

尿切れも悪いから、股間のアンモニア猪木による闘魂ビンタも強烈だ。


しかし彼らの遊びはまだ始まったばかり。

ここからはこのブログでは珍しいステージ、「海」の世界。

僕は「海とは腹筋の割れた浮かれ野郎しか立ち入ってはいけない世界」という認識があり、今まで近づく事が出来なかった。

しかも川と違って、何か得体の知れない生物が跋扈するミステリーワールド。

正直「恐い」という印象しかない。


しかし遊びスタンスの異なる昭和51年会のおかげで、憧れだった「無人島キャンプ」への挑戦権を得た。

目指す無人島は「多徳島」。

そこのビーチで焚き火男メシを堪能し、酒池肉林の欲望に溺れるのだ。


そして翌日は人生初の「シーカヤック大会」へ出場。

そもそもほとんどシーカヤック経験がないのに、いきなり大会に出ようという時点でおかしな話。

優劣の出るレースというものには正直魅力を感じないが、何事も経験。

どうせならセンセーショナルに優勝をかっさらって「超新星現る!」と関係者の度肝を抜いてやる。


それではそんな昭和51年回のお伊勢マゾり海開き。

さっくりと振り返って行こう。


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宝の地図「Googleマップ・ストリートビュー」を駆使して、伊勢の魚介類と松阪肉を手に入れたご一行。

散々道に迷った挙げ句、ついに英虞湾(あごわん)に到達だ。

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そして早くも男達のアツい想いが止まらない。

突如ランボーNとビーチクOによる「パドル相撲」が勃発だ。

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一進一退の攻防戦。

「これは俺のパドルだ」「なんの、これは私のパドルだ」と互いに譲らない。

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と、見えるけど実際はこれ「分割パドルが抜けない」という、分割パドル持ちのあるあるの光景。


かと思えば、今度はビーチクOと僕の「バッチ来いポーズ」が炸裂。

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いつでも後ろから優しく突いてくださいと言わんばかりだが、さにあらず。

ファルトボート初体験の僕が、ビーチクOから組み立てのレッスンを受けている所です。

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僕は海でも行けるカヤックを持っていないから、今回はビーチクO所有のファルト艇をお借りする事に。


インフレータブル(空気注入式カヌー・パックラフトもこの分類)に慣れている僕には、この組み立ては面白かったがいささか面倒にも感じた。

分かり易く言えば、ダッチワイフとばかり遊んでいた男がいきなり生身の神田うのと付き合わされるようなめんどくささだ。

でもやっぱり野田さんへの憧れからこの世界に入った身としては、やっぱりファルトに対する思い入れもあるから結構ワクワクする。


そして準備も完了。

いよいよ出航でございます。

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今回はレース主催者のご好意で会場の浜からのスタート。

しかも頼んでもないのに、わざわざ「案内兼荷物運び」としてレーススタッフのおっさんが小型船で同行してくれるというおもてなし。

なんだか全体的に緩い感じも非常に好ましい大会のようだ。


そして僕は嵐の石垣島以来の海へ。

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湾内だから波も穏やかで、この日は風も緩やか。

それでもやっぱり川とは別の緊張感が支配する。

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どうしても自分の下に意味の分からない生物やクラーケンのような巨大タコとかいると妄想してしまい、妙にソワソワと落ち着かない。

ネガティブ妄想家としては海はやはり恐い場所だが、次第に慣れてこればこの優雅さは新鮮だ。

広大な世界と適度な緊張感が実に心地よい。

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狭い川や、決まった登山道を歩く山とは違ったこの自由さ。

海は海でいいな。

と、海のない岐阜に生きる僕も思ってしまうのです。



この英虞湾内には大小50余りの島が浮かぶ。

その島の間を縫って行くから、気分的には壮大な巨大迷路の中を漕いで行く感じだ。

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そして真珠や青海苔の養殖も盛んで、各所で人の暮らしを感じて飽きる事もない。

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冒険的な海旅ではないが、暮らしと自然のバランスが取れた不安感の少ないコースだ。

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若干の物足りなさも無くは無いが、最近ハードマゾな戦いが続いていたからちょうど良いだろう。

僕も久々に穏やかな心を取り戻し、ランボーNもミクロネシア人のような表情でご満悦の様子。

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彫りの深いランボーNと一緒に写真に納まると、途端にここが海外に見えて来るから不思議だ。


そうこうしていると、出発から3.4kmほどの位置に目指す無人島「多徳島」が現れた。

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何やらイメージしていた「無人島」と随分と雰囲気が違う。

明日のレースの中継地点になってるから、大会ののぼりとかも立ってるし。

絶海の孤島感というか、ビジュアル的なパンチ力と言うものがあまり感じられない無人島だ。

もっとこう広いビーチとヤシの木みたいなのがあって、流木も沢山あってってイメージだったんだが…。

倉庫みたいな小屋もあるし、なにやら普通に内陸の小さな漁港に上陸した気分。

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目の前も一面の海って感じじゃなく、普通にホテルとか見えちゃってるし。

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無人島でキャンプというか、近所の漁港の裏でキャンプっていう雰囲気だけど、まあこれはこれで新しい。

今回は雨が降りそうな天気だし、雨をしのげる小屋があるのはありがたいし。




そして島に上陸するなり、案内してくれたおっちゃんの軽妙なトークショースタート。

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ずっとしゃべってるから「あれ?おっちゃんも今日ここに泊まるのかな?」と思ってしまった程。

そしておっちゃんは「この島はイノシシがさんわとおるで気をつけてね。いくらでも穫って食っていいぞ。リアルにヤバくなったら電話して。」と言い残して去って行った。

雰囲気こそ漁港の裏みたいなこの場所だが、状況だけはしっかりと緊張感のある現場のようだ。


そして早速宴会の準備開始。

しかしここで酒や水や氷が心もとないねって事で、ビーチクシェフからお使い指令。

「近くにコンビニがあるから買って来て。」と。


およそ無人島で交わされる会話ではないが、彼曰く隣の賢島(かしこじま・有人島)にコンビニがあることを、得意のストリートビューで確認済みだと言う。

コンビニに行くなんて無人島感ゼロだが、「海をカヤック漕いでふらっとコンビニまで行く」というシチュエーションが中々オツだ。


料理系はビーチクシェフにお願いするとして、この手の体力系・冒険系のお仕事は僕とランボーNの得意とする所。

早速マゾとランボーのマンボーコンビで、いざコンビニ目指して出航。

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暗くなる前に帰って来ないと面倒なので、モリモリと漕いで進んでいく。

途中ホテルの海に面した露天風呂が丸見えで、嬉しいというより「これは通報されたらのぞき魔として捕まってしまうんじゃないか?」という不安に支配される。

コンビニにお使いに出て行った二人がのぞきの現行犯で海上保安庁に捕まったなんて事になっては、家族の手前話がややこしすぎる。

ただでさえランボーNが外人みたいな顔してるもんだから、何か密入国的なオーラも放っているし。

しかも彼は「滝に落ちたい」「空を飛びたい」と言ってはニヤニヤするから、妙なクスリを打ってる疑惑も持たれてしまう。


そんなエキサイティングな海上散歩の末、何とか我々は海上保安庁の目をかいくぐって、このような廃墟の浜に上陸。

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本当はコンビニ付近から上陸したかったんだけど、漁船やら観光船やらいて怒られる可能性があったから、このようなスパイみたいなスタイルでの入島となったのだ。

そして薄暗い中、廃墟の家から人里を目指す。

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この廃墟の出口なんて網で塞がれていて、心霊スポット感もビンビンだ。

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多分一人だったら僕は泣いていたね。


そして島の中心部まで歩き続け、散々迷った挙げ句にやっと駅の構内にコンビニ発見。

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なんだろう?

我々は文明とは無縁の無人島に来ていたはずんなんだが、この日常的な風景は何事だ?

随分とイメージしていた無人島キャンプとは遠い所にいる気がしてならない。


そして再び廃墟から島を脱出し、海を渡ってビーチクシェフの待つ多徳島へ帰還。

まずは雨に備えて小屋内にテント設営。

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もうこの時点で無人島キャンプというイメージから離れてしまっている。

なんか会社の倉庫にテント張ってるような気分だ。

本来はヘネシーハンモックでも持って来て、木の間で揺られながら酒を飲んでるイメージだったんだけど。


しかしそんなイメージも、うまいもん食って酒を飲めば問題ない。

すかさずビーチクシェフが屁で火をつけて、

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乾杯。

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さあ、ここからだ。


と思った瞬間、遠くの方から「ゴロゴロゴロゴロ」という音が響き渡り、時折路チュー現場を激写されたかのような閃光がほとばしる。

そして見事に雨。

まあ、いつも通りの展開だ。


結局落ち着く間もなく、あたふたと倉庫内へ移動。

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いよいよ「会社の倉庫内でBBQを始め出した社員達」という情景に。

無人の広いビーチで流木に座って満天の星空を眺めながら焚き火に興じるという、「THE無人島」な夢がどんどん遠ざかって行く。

そして雨から逃げて来たのは人間だけではなく、あらゆる虫達も大侵入。

瞬く間に会社倉庫内が、蚊やら蛾やらムカデやらゴキブリやらの大乱交パーリー会場に。

こいつは賑やかになって来たぞ。


そんな中、突然プーさんがツボの中のハチミツを食べ始めた。

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の、ように見えたがさにあらず。

なんと彼がこの日の為に準備して来た、お手製のピクルスの登場だ。

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なんて小洒落た事をして来るプーさんなのだ。

エシャロットやらパプリカやらみょうがやらが漬け込まれた超絶美味なる前菜。

基本体の成分がアルファ米で構成されているマンボーコンビは、ただただその未知なるシャレオツ食材にむしゃぶりついて行く。

しかもTシャツの下半分がドラえもんカラーの男は、ゴソゴソと秘密道具を取り出すようにこのような物を提示した。

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なんと彼は、本日のお品書きまで用意して来たと言うまさか。

さすがはシティ派オシャレドラえもん。

普段から自分の事と遊びの事しか考えていないマンボーコンビは、ただただそのおもてなしの心に痛み入るばかり。


そしてシャレドラプーさんは、畳み掛けるように次なる一手を繰り出す。

「チリコンカン」なる、モンゴルの王のような名前の豆のスープが炸裂だ。

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汁物と言ったら、マルタイ棒ラーメンのスープしか飲んだ事のないマンボーコンビはもはや動揺を隠す事ができない。

完全に防戦一方だ。


しかしここまでおもてなしされてしまえば、ランボーNも黙っちゃいない。

彼には彼なりのおもてなしの道具がある。

彼はおもむろに何かを取り出した。

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僕は一瞬「この段階でまさかのブルワーカーか?」と戦慄が走った。

あのよく少年ジャンプの裏ページに掲載されていたあの商品なのか?と。

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さすがは80年代に青春を生きた昭和51年会ならではの出し物だと感心したが、もちろんそんなものは無人島には必要ない。

どうやら彼は彼の得意分野でのおもてなしを開始した模様。

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なんとブルワーカーかと思われたアイテムは「弓矢」。

実に無人島に相応しいワイルドアイテム。

彼は静かにほくそ笑みながら「イノシシが迫って来たらコイツで撃退してやりますよ」とニヤリ。

そして実に頼もしい感じで、壁に向かって矢を撃ちまくる。

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しかし彼が放った矢が壁に跳ね返り、ビーチクOご自慢のテントに当たるというまさか。

テントは何とか破れずに済んだが、ビーチクOは乳首を震わせてキレていた。

渾身の料理でおもてなしした挙げ句、テントに穴をあけられれば誰だって怒るだろう。


まずはイノシシよりも、この血気盛んな弓矢男をどうにかしないといけない。

こういう男を黙らせるにはやはりコイツだ。

男メシ塾長、松阪牛である!

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我々の年齢を考慮して、霜降りではなく極上の赤身チョイス。

こいつをオシャレの上塗り作戦で、岩塩プレートで頂いてしまうのだ。

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さあ、祭りの始まりだ。


と、思った瞬間。

松阪牛のピンチに同郷の仲間が立ち上がる。

この段階で、何と熱していたサザエが大爆発。

たちまちサザエの蓋が弾丸となってビーチクシェフに襲いかかる。

そして「グオッ!」というプーさんの悶絶シャウト。


なんとサザエの蓋がビーチクOの額に突き刺さるというまさかな展開。

額からは流血。

さすがの僕も「これはかなりヤバいんじゃないのか?」と、カメラのシャターを切る事が出来ない。

まさか3つ目のビーチクを額にあしらってしまうなんて。

一体どこまでオシャレな男なのか?


この体を張ったビーチクサザエさんのビッグプレイに対し、せっかく落ち着いて来たランボーNに火がついた。

彼はナイフを取り出し、ビーチクOの仇討ちだとばかりに戦闘モードへ。

サザエの仲間である、伊勢エビに復讐を開始し始めたのだ。

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慌てて逃げ惑う伊勢エビ。

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しかしランボーの怒りはおさまらない。

たちまち伊勢エビは彼のナイフの餌食になり、そのまま網の上へ。

そして直で火あぶりという、究極の復讐劇。

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これぞ、昭和51年会名物「怒りのアフガン焼き」である。


ここからは大満足の飲んだくれタイムへ。

場所こそビーチではなく倉庫だが、実に心地のいい時間帯へ。

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しかしここで気持ち良くなり過ぎたビーチクOが、人知れずスキットルボトルに入れていたブランデーを大量にこぼしていた事が後に発覚。

そしてそのブランデーが翌日、数百匹の蟻を引き寄せる事態になってしまうことをこの時は誰も知らない。


こうして宴会は終了して各々テントへ。

そしてそこからはネガティブシンカーの僕による、一人妄想恐怖タイムへ突入。

みんなが早々と寝息を立てる中、一人目が覚めて外の「ガサゴソ」という音や、何やら「がやがや」と男達の話し声のような音に怯え続ける事に。

実際、翌朝起きた時に僕の大事なカップ(チリコンカン入り)だけがこつ然と姿を消していた。

恐らくリアルにイノシシが来て持って行ってしまったんだろう。

結局ランボーNの弓矢は、僕のカップすら守れなかったのである。


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翌朝。

山野郎である僕とランボーNの朝はやたらに早い。

日の出前には起床して、さっさとテントの片付けなど開始。


しかし山屋ではないビーチクOは無理矢理起こされて、果てしなくローテンションだ。

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それでも半ドラえもんの彼は、再び頑張って秘密道具を取り出す。

なんと豆から挽くコーヒーと、アンチョビトーストなるオシャレモーニングをご提供。

足下はアリだらけで僕のカップも見つからないけど、このモーニングは実にうまかった。


で、満腹になったランボーがご満悦な表情で「うんこして来ます」と草むらの中へ。

すると「うおおおおっ!」というランボーの声が。

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なんと彼はこの無防備な状態でイノシシの親子に遭遇してしまったのだ。

見事なるイノシシ達の奇襲攻撃。

奴らはランボーが弓矢を置いて無防備になる瞬間を狙っていたようだ。


とりあえず彼はうんこ前だったので事なきを得たが、最中に攻撃されていたらさすがのランボーでもアウトだっただろう。

そして祟り神となって我々に襲いかかって来たかもしれない。

恐るべしもののけ島。


で、昨日のおっちゃんが荷物取りにやって来るはずの時間にいつまでも現れないから、仕方なく大量に荷物詰め込んで島から脱出です。

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これからレースだというのに、貴重な体力をしっかりと消耗。


そしてレース会場の海岸に帰還し、早速受付&検艇。

海岸には色とりどりのシーカヤックが誇らしげに並んでいる。

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見るからにシュッとして速そうなカヤックのオンパレード。

その中に、明らかに場違い感が凄まじい黒く短い我がファルトボート。

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最新鋭の戦闘機レースに、旧式のゼロ戦で挑むようなこの圧倒的不利な状況設定。

これを見た瞬間、我が脳裏から早くも「優勝」の二文字は消え去って行った。


そしてなんか凄く久しぶりに、僕は開会式というものに参加した。

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志摩市長のお話に、思わず女子のように貧血で倒れそうになるがそこはグッとこらえる。

どうやら市長は1週間前に初めてシーカヤックを漕いだらしく、2日前に自分のシーカヤックを手に入れたばかりだと言う。

そして今回はこのレースに参加すると言う。


そして今回、僕とランボーNはソロのロングレースに参加する。

ビーチクOはタンデムのショートレース。

タンデムと言っても相手がいないので、大会の方からビーチクOにパートナーが支給された。

それがこの屈強な雰囲気のこの男。

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彼の名は自衛隊K。

その名の通り自衛隊員。

ビーチクOはこれ以上ないエンジンを手に入れたようだ。


やがて各選手、スタート位置へ移動。

ミクロネシア代表のランボーN入場。

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そしてビーチクOと自衛隊Kの「乳首防衛軍」入場。

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もはや自衛隊Kはターミネーターにしか見えない。

ひょっとしたら彼らはファルトボートなのに、シーカヤックに勝ってしまうかもしれないぞ。


それでは各艇位置に着いて。

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スタート!

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しまった!

撮影に集中したあまり、見事なる「ロケット出遅れ」をかましてしまったぞ。


たちまち取り残されて行く旧式ゼロ戦の日本兵。

もはや写真を撮ってる場合じゃない。

僕はスタート直後から早くもフルスロットル。

全開の盛り漕ぎアタック。


しかしである。

漕げども漕げども、全くシーカヤックに追いつけない。

明らかに一漕ぎのストロークが違いすぎる。


だが、眼前に勝てそうな奴を発見。

僕はドタバタと一生懸命パドリングしている「志摩市長」にロックオン。

昨日今日始めたばかりのおっさんに、カヌー歴13年の私が負けるわけがない。


しかしである。

全く市長に追いつけないばかりか、徐々に突き放されて行くではないか。

こっちは今までの経験とありったけの体力を駆使しているというのに、これはどういう事だ。


ここで僕はシーカヤックという世界の現実をまざまざと体験する事になった。

海の世界では艇の性能が大きく速度に影響するのだ。

結局は高い値段の船はその分速い、という資本主義社会の縮図のような世界を垣間みてしまった。


そんな中で、ゼロ戦に乗った「永遠のマゾ」は愚直に攻め続ける。

かろうじてまだ数艇のカヤックは我が後方にいる。


しかしである。

その後方のカヤックはことごとくショートレースの人達で、中継地点に着くとみんな背後から消えた。

途端に海上に一人ぼっちになる日本兵。

そう。

この時点で私はぶっちぎりの最下位を激走していたのだ。



そこからの記憶は曖昧だ。

僕は相変わらずスタート直後から「本気漕ぎ」をし続けているが、もうレースというより一人旅。

しんどさのあまり、何度か意識も朦朧としたが踏ん張って漕ぎ続ける。

こんなに頑張っても無惨な結果しか着いて来いと言う、スペシャルマゾタイムに突入したのだ。


これがマゾを競うレースならダントツの1位。

おそらく今大会で一番自分を追い込んだのはこの哀れな日本兵だ。


やがてどれほどの時が経過した事だろう。

ゴールの海岸に、一人の土左衛門が打ち上げられていた。

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彼は最後まで全力で戦い抜いた。

彼が漂着する頃には、他の参加者はすでにカレーライスを食っている時間。

もちろん満場一致での文句の無い最下位である。


数日前までは「参加者はおっさんばっかでしょ?もしかしたら優勝しちゃうかもねw」とうぬぼれていた男に突きつけられたこの現実。

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これが持てる者と持たざる者が共存する資本主義社会。

悔しかったら頑張って稼げ、このブタ野郎が。




そして閉会式。

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ここで驚きの結果が発表された。

なんと「乳首防衛軍」の二人が、タンデムショート部門で優勝していたと言うまさか。

まさか優勝してたと思っていなかった自衛隊Kはもうすでに会場から去っていたから、代表でビーチクOが賞状を受け取る。

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プーさんみたいな人からプーさんみたいな人への賞状授与。

そして賞状を受け取ったビーチクOは、久々の喪黒福造スタイルでドーンと悦びを表現。

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何だか「これが優勝だ!分かったかこの最下位野郎!」と言われている気分だ。


しかしそんな最下位日本兵にも最後の意地が残っていた。

この後行われた余興的じゃんけん大会で、見事に私は景品を勝ち取ったのだ。

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シーカヤックのない生身の人間同士なら勝てるってとこを見せつけてやったぞ。

でも実はこの男、1回戦で「あいこはアウト」というルールを把握しておらず、あいこでも前に出て行ってしまっている。

わざとではないが、言わばズルをした事になる。

最下位な上に、人としてもクズな男である。

ちなみに景品は特に僕には必要のない、漬け物を入れる陶器だったりする。



しかし元々大会は「ついで」で出たんだから最下位だろうが漬け物だろうがどうでも良い。

参加者達がワラワラと帰って行く中、早速我々は次の遊びに邁進。

ランボーN持参のSUP(スタンドアップパドル)ボードのご登場だ。

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前々から一度はやってみたかったSUP。

正直膨らませるのには結構な時間と体力が必要で、完成した頃にはもう遊ぶ気力が無くなるほどに大変だ。

しかし慣れればこれで川下りや波乗りも出来てしまうという、ここ数年でブレイク中の遊び道具だ。

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慣れないうちは思いのほか安定せず、ただボードの上でプルプル震えるだけの子豚状態。

しかし慣れたランボーNが乗れば、このように優雅に海上を散歩できる。

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まるで水面を歩いてるようにすら見える。

これは海で子供達と遊ぶにはかなり楽しそう。

SUPをベースにして、素潜りするのも楽しそうだ。


そんなSUPに、ついに我らのSUP(サド・優勝・プーさん)が試乗。

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早速プルプルが止まらず、今にも飛び立って行きそうになっている。

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かと思いきや、突然海上で美しい土下座をかます。

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なんとか持ち直して帰還して来るが、

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最後は、今にも「乳首亭風三」の寄席が始まりそうなスタイルでフィニッシュ。

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実にうまそうにそばをすする音を出しそうな雰囲気である。


こうして、本日も一日フルに遊んだ。

このあとは素潜りタイムに突入し、クラゲにビビって大事なフィンのパーツを失くすといういつもの紛失プレイをじっくりと楽しむ。

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そして気がつけばもう夕方に。

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遊びきったなあ。

川に始まり、湾内を巡り、無人島に泊まり、男メシを食い、イノシシと戦い、資本主義と戦い、そしてSUPからの海遊び。

充実した2日間だった。


今回はスタンスの違う男達が集まった事により、いつもとはまた違った旅を楽しむ事が出来た。

そして海も中々楽しいという事が判明したので(もうレースには出ないけど)、今後も何度かチャレンジしてみたい。

もっと無人島らしい無人島も堪能してみたいし。


ということで、さっくりと振り返ると言いながら長々と書きました。

最近「文章が長過ぎて最後まで読めん」という苦情を頂いたばかりだから出来るだけ簡潔に書こうと思ったんだが、結果やはりまた長くなってしまった。

多分ブルワーカーのくだりとかの余計なものが文章を長くしてる要因なんだろうけど、気にせずこのスタイルを貫きます。



昭和51年会。

各々色々と問題を抱えて動きも鈍いが、ロマンだけは湯水のように溢れかえっている。

まだまだ老け込むわけにはいかない。


51年生まれのそこのあなた。

いつでも我々は君の挑戦を待っているぞ。



お伊勢マゾり  〜完〜



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MATATABI BASE

コメント

    • バルカン
    • 2014年 10月 04日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    毎回楽しく読ませていただいております。私も参考にして屋久島を冒険して来ました。来週は四万十川、来月は奥利根湖を冒険してきます。

    • yukon780
    • 2014年 10月 05日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    バルカンさんありがとうございます!
    屋久島、今となっては懐かしいですねえ。
    考えてみれば今こそがんがん山登ってますが、あの時の屋久島体験がなかったら歩き旅には目覚めてなかったんで僕にとっても貴重な体験でした。
    で、四万十川とは王道な流れですね。ぜひあの川ならでは風景と土地の人達の清流さに触れて来てくださいね。
    奥利根の方はまだ行った事がなく、いずれ子供が落ち着いたらがっつり関東遠征に行くつもりです。

    今後もこんな汚いブログで良ければヨロシクお願いします!

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    はじめまして
    コメントするのは初めてですが、文才のない自分には「いつも長文で面白い文章を書かれる方だな」と気になっていました。
    シーカヤック大会に参加されていたのでねIMGP6197.jpgの画像に映っていす手前の黄色いカヤックが私のです。私たちも土曜日はその浜から漕ぎ出して志摩半島を一周していました。
    http://bin49.blog2.fc2.com/blog-date-20140909.html
    http://bin49.blog2.fc2.com/blog-date-20140910.html

    どこかの海でお会いできるといいですね。

    • yukon780
    • 2014年 10月 06日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    びんさんはじめまして!
    いやあ、奇遇ですねえ。まさか僕の旧式ゼロ戦の比較カヤックの方だったとは驚きです。
    僕は見ての通り海はてんでダメな男で、シーカヤックとのスピードの違いにただただアワアワしていただけの大会になってしまいました…。
    なんせ5キロ余計に漕いだという先頭集団の人達にも抜かされてますからね。
    そして伊勢市長じゃなくて志摩市長さんだったんですね。早速修正しておきました。

    ブログ拝見いたしましたが、和具大島ってとこ良さそうな島ですね。
    多徳島がなんだか無人島らしからぬ無人島だったんで、こんな島があったならそこ目指せば良かったです。
    まあ多分翌日のレースには間に合わなかったでしょうけど。

    海に関しては、子供達が落ちついた段階で手を出そうと思ってます。
    なんせ岐阜には海ってもんがないんで、遠出が必要な海は中々手が出ません。
    でも琵琶湖は近いんで、シーカヤックがあったら気軽に行けるのになあといつも思ってます。そっちみちお金ないんで手が出ないですが。

    でも今後はこういう仲間も出来たんで、年一くらいはどこぞの海に現れるかもしれません。
    またナイスな無人島情報とか教えてもらうかもしれないです。
    今後もよろしくお願いします!

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