3年と3ヶ月。
やっとこの日がやって来た。
ついに我が息子りんたろくんが「流水カヌーデビュー」を飾る日が来たのだ。
思えばまだ1歳11ヶ月だった彼は、早まったお父さんによって無理矢理登山デビュー。
以来、何度も山に連行されるうちに「山キライ、おとうしゃんキライ」と言わしめた育成失敗の過去がある。
なので僕は彼のカヌーデビューに対しては慎重に事を進めて来た。
自宅の庭での丘カヌーで少しづつ慣らしを行ない、そして流れのない静水域での穏やかカヌーを数回。
言葉でも「カヌーは楽しいぞ」と洗脳し、カヌーが登場する絵本で日々英才教育。
そして今では彼はすっかり「かぬースキ。おとうしゃん大スキ。」と言うまでに成長した。
こびとづかんが大好きな彼は、川には「オオヒレカワコビト」が住んでいると信じているので川も大好きだと言う。
一方で僕はと言えば、ここの所のハードすぎる連続登山と仕事で休養が必要とされていた。
あの問題の登山靴マムートさんも、北岳登山翌日に何の迷いもなく修理へと旅立たせた。
よって山には行けない。
時は来た。
今こそ穏やかに流れる流水の川で、僕の休養がてらのんびりとりんたろくんのカヌーデビューだ。
チョイスした川は京都の「木津川」。
僕はかつてこの川を一度だけ下った事がある。
木津川の事は「あん時のアイツ」シリーズでいつか書こうと思っていたんだが、中々書く気が起こらなかった。
なぜならこの川に対して何の印象も無く、大した思い出もなかったから。
かろうじて記憶に残っているのは夕日が奇麗だった事くらい。
ステキだねって思われた方もいるだろうが、この日の彼はコース設定ミスでかなりの長距離を漕ぐ事になり、今にも夜になりそうな風景の中で必死に漕ぎ続けている状態。
この程度のトラブルはいつもの事なので、特に記事に書くほどでもなかった。
では何故今回この川を選んだのか?
それは10月ともなればほとんど鮎釣り師がいなくなる事と、流れが穏やかで危険箇所がほとんどなく安全な川だから。
これといって清流でもなければ、すごく景色が良い訳でもない。
ただただ何事もなくのんびりと下れる何の変哲もない川。
疲れきった今の僕にはその条件こそが重要なのだ。
そして何気にこの木津川は「日本カヌー発祥の地」と言われており、日本で初めてカヌーが浮かべられた川として知られていたりいなかったり。
まさにりんたろくんの流水デビューにはもってこいの川だ。
今回は僕とりんたろくんの他に、チーム・マサカズのアゴ割れMと矢作Cも参加。
そしてビビるSと、川は下らないが彼の嫁さんのボニーYと息子のTKTも参戦。
今回は穏やかなるカヌートリップ。
このブログでは数少ない平和的な記録です。
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京都、木津川の川原。
そこに突如として我々の前に現れた全身黒のガンツ男。
手にしたガンツガンでこれから星人との戦いでも始めようとでも言うのか。
当の本人がガンツ玉みたいなイボをケツからはみ出させている痔聖人のくせに。
いや、違う。
よく見るとアゴ割れMが口からイボを出しながら必死でダッキーをポンプアップ中だ。
ここは笠置駅下のキャンプ場。
今回はこの場所からのスタートだ。
ここで毎度お馴染みとなったアゴ割れMの、カヌー前の安全確認。
いつ見ても国交省役人が無用な護岸工事を指揮しているようにしか見えない。
彼はこの為だけに毎度現場ヘルメットを持参して来るマメな男だ。
そんな変態デューク更家を不思議な目で眺める男達。
始めて見る変態にキョトンとしているのがTKTで、早くも危険を察知して棒で臨戦態勢を取っているのがりんたろくん。
ビビるSとは若い頃から共にカヌーに乗って色々旅したが、今こうしてその子供達がカヌーに乗っている光景。
とても不思議な気分で感慨深い物がある。
ひとしきり準備をし、ボニーYとTKTとはお別れして川原へ。
今回は何気にビビるSも僕のカヤックでプレイボートデビューです。
しかし近頃酒浸りで、すっかり肉付きが良くなって来た彼には非常にタイトな挑戦となっているようだ。
なんとか入ったようで一安心。
続けてアゴ割れMと矢作Cスタート。
今回は穏やかな川なので矢作Cも撮影意欲に溢れている。
登りのキツい山では一切撮影をしない彼も今日ばかりはやってくれそうだ。
で、いよいよりんたろくんもスタートです。
スタート前まではかなりのハイテンションだった男が、何やら出だしから一気にテンションダウンしたぞ。
きっと初めての流水に感動して、流れに手を浸けて堪能しているんだろう。
恐らく満面の笑みで川を楽しむ彼の姿が矢作Cによって撮影されているに違いない。
しかしそこに写っていたのは無表情・無感情の男の姿。
母親譲りのアシュラマン冷血の面。
彼は楽しんでくれているのだろうか?
距離も短いし、今日はのんびりカヌーなので暫く行って早速休憩。
どうした息子よ。
元気がないじゃないか。
また例の父親によってよく分からない事に巻込まれたと思って己の運命を呪っているのか?
しかしどうやら彼はスロースターター。
次第にそのテンションも上がって来て実に楽しそうにし始めた。
ゴムがちゃんとアゴにかかっていない、そのだらしなさに親子を感じるがまあいいだろう。
何やら白い眉毛みたいで馬良っぽくていいじゃないか。(分かる人だけで良い)
やはりこのような沈する危険のかけらもない平和的な川でのんびりするものいいもんだ。
そもそもこんな川で沈する奴がいるわけがない。
そう思って川を見るとビビるSの様子がおかしい。
もう秋だというのに暑かったのかな?
まさかカヌー歴10年を越すビビるSが乗り込みに失敗して粗沈なんてあってはならない。
年齢から来る物だとすれば、あまり見たくない物を見てしまった気がする。
りんたろくんも大分慣れて来て余裕が出て来たぞ。
カヌーからカヌーへと乗り移るという子供ならではの大技だ。
こうして息子は黒いおじさんに連れられて行ってしまった。
親としてはイボ痔が移りそうで気が気じゃない。
その後もまったり水上散歩は続きます。
雰囲気のいい川原に上陸して昼食。
登山では重くて矢作Cを苦しめた鋳鉄鉄板もカヌーなら難なく持って来れる。
いつも山では冷たいおにぎりばっかり食わされていたりんたろくんも大満足だね。
いつも嫁に冷や飯食わされてるお父さんも大満足です。
そして再びアゴ割れガンツに連れ去られて行く息子。
面倒見のいい彼のおかげで、だいぶりんたろくんも楽しんでくれているようだ。
アゴ割れMは酒が入ると突然失踪するという癖があるから怖いが、シラフの彼には安心して預けられる。
りんたろくんもこの楽しそうな表情。
嫌なのか、りんたろくん?
突き出したイボが当たって気になるのか?
むしろ黒いおっさんのほうが快感に浸っている表情になっているぞ。
というのは冗談で、とっても楽しそうなりんたろくん。
ここで僕はさらに彼のテンションアップを試みる。
川で魚が跳ねる度に「おい、今オオヒレカワコビトがいたぞ」と言ってやる。
前にも書いたけどこいつね↓
それを聞いて俄然テンションが上がるりんたろくん。
やがて僕とアゴ割れMに「早くつかまえてっ」って懇願。
仕方なくいるはずもないコビトを捕まえに行く振りをする中年二人。
もはやこの状況をどう着地させていいか分からず途方に暮れる二人。
アゴ割れMに至っては、ケツを抑えて中のコビトが飛び出ないようにするのが精一杯の様子だ。
結局あんなコビトがいるはずもなく、無駄に父親としての威厳を失ってしまった。
お腹も満たされ、再び川をユラユラと下って行く。
なんだか久しぶりに落ち着いたアウトドアを満喫しているなあ。
御嶽山・北岳の壮絶な戦いの後だけに、いつもより時間が緩やかに感じます。
やっぱりカヌーはいいもんです。
ふと、りんたろくんを見てみる。
なんとりんたろくんがグッタリしている。
まるで北岳の時のお父さんのようではないか。
でもりんたろくんは力尽きたわけではなく、気持ちのいいユラユラですっかり寝てしまったようです。
どうやら上々の流水カヌーデビューになったようだね。
ステキなコビトの夢でも見ているのかな?
やがて恭仁橋を過ぎた辺りでゴールです。
より大きな地図で 木津川のんびりショートコース を表示
こんな感じののんびりとした平和なカヌートリップでした。
ここからがりんたろくんのカヌー人生のスタートかな。
やがて二十歳くらいになったら一緒にユーコン川を下るのがお父さんの夢です。
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帰りはモクモクファームへ寄って温泉に行きました。
明らかにカヌーに乗っている時よりも嬉しそうなのが気になります。
カヌーよりもブタの方がいいのでしょうか?
きっとお父さんがいつもお母さんに「おい、この白豚」って言われているから愛着が湧いたのかも。
白豚の表情もどこか嬉しそうなのが印象的だ。
他人の気がしない。
まあ、こんな感じでたっぷり一日を満喫したね。
たまにはこんな日もいいものですな。
りんたろ漕行記〜木津川〜
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MATATABI BASE
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