とても子連れ登山とは思えないほどの荒々しい道を突き進む男。
正確に言えば、これは予想外の事態に追い込まれている親子の図だ。
木津川のんびりカヌーの二日後。
さらに北岳の傷を癒すべく行なわれた「親子のんびり里山登山」。
しかしそこで展開されたのは、全く予想外の「親子ジャングル草まみれ修行」だった。
向かった先は「飯盛山」(745m)。
ネットや本で見る限り、とても道が整備されていてのんびり里山を味わうには持って来いと判断。
ここの所激しいマゾプレイが行き過ぎていたので、普通の穏やかな低山を楽しもうという主旨だ。
因縁の登山靴マムートさんは只今修理中なので、以前「登山に行って登山靴を忘れる」という暴挙を冒した際に急遽買った登山靴が臨時出動。(参考記事)
マムートさんはキツいのに対し、こちらの靴はサイズがでかすぎてずっと出番がなかった。
僕の登山靴のラインナップにピッタリフィットというジャンルは存在しない。
その辺りが、マゾのマゾたるゆえんでもある。
それではそんな飯盛山ジャングルクルーズを振り返って行こう。
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僕は登山口に向かう車の中で不安に包まれていた。
この道路の荒れっぷりと言ったらどうだ。
拳サイズの落石が散乱し、中には頭サイズの巨岩まで落石しまくっている。
今日は緊張する予定などさらさら無い里山登山だったはずが、のっけから落石の恐怖にさらされながらの恐怖ドライブ。
この時点で大人しく引き返すべきだったのだ。
それでもかろうじて登山口に到達。
看板も奇麗だし、きっとここから先は整備された穏やか登山が楽しめるはずだ。
せっかくだからそろそろりんたろくんにも、いつまでもお父さんに背負われずに自力で登れるように訓練しよう。
颯爽とスタートの階段を一段二段と進んで行く男。
しかし五段目にさしかかった時点で「お父さんダッコ」とせがみ始めて動かなくなる息子。
この野外での根気の無さは見事に母親譲りだ。
しかし嫁は僕に対して「お父さんダッコ」とせがんで来る事はもうないだろう。
結局早くもりんたろくんを担いでいつものスタイルに。
まあいいさ。
いつかはこうして背負って登ることもできなくなる日も来るんだ。
今日はのんびりと親子二人の時間を楽しもうじゃないか。
この整備されたステキな登山道を…
なんだ?
草ボーボーじゃないか。
登山道は一体どこなんだ?
予想もしていなかった事態を受け入れることが出来ない男。
そう、ここは「整備された登山道」ではなかった。
ここは「かつて整備されていた事があった」登山道だった。
行きの道の荒れ具合を見て気付くべきだった。
しかたなくジャングルの中に侵入して行く親子。
もはや山中に死体を遺棄しに行く男にしか見えない。
今日の僕はマゾる気など毛頭なかっただけに覚悟が追いつかない。
ちゃんと登山道らしき場所を歩いているんだが、端から見れば遭難者のようだ。
景色もほとんど見えず、この時点で「一体どこに楽しさを見いだすのか?」というテーマで自問自答を開始。
しかしこれはもう「いつも通りの登山」と割り切るしかないようだ。
へたにのんびりと里山を楽しもうなんて考えてしまった僕が悪かったと気持ちを切り替えた。
するとこんな道だってとっても楽しげじゃないか。
木が道を塞いじゃってるもんね。
ああ、楽しいなあ。
楽しいねえ。
楽しいか…?
楽しくねえ。
ひとつも楽しくないぞ。
なんだこの修行は?
こんなはずじゃ無かったのに。
いかん、このままでは僕はいつも通りだとしてもりんたろくんがまた山嫌いになってしまう。
ここで大人の汚い偽装工作。
りんたろくんにバレないように、そっと彼の大好きな「ベニキノコビト」をセッティング。
で、さも今発見したかのように「おい、ベニキノコビトがいるぞ!」と言う自作自演のヤラセ男。
これが功を奏し、りんたろくんも大満足。
逆にこのジャングリー感がコビトの発生を期待させたようだ。
こうなればとことんこの草ボーボーを楽しもう。
やはり子供はこのくらい整備されていない自然で遊ばせるべきなんだ。(結果論)
やがて想像通りの貧相な頂上に到達。
狭いスペースでなんとか記念撮影。
一緒に笑顔で写っているかとばかり思っていたが、まさかのお父さん一人笑顔。
そして木々の隙間からかろうじての展望。
本にも載っていた山だが、一体この山に来る人はどれほどいるんだろうか?
まあ、中には草マニア的な人がいるんだろうな。
これで僕も草分け的な存在になったという事か。
さあ、ここで我が息子を解き放つ。
十分にこの大自然に戻りつつある飯盛山の山頂を堪能するがいい。
草の海に埋もれるりんたろくん。
もはや彼自身がコビトになっているようだ。
そしてまたも親によってセットされたベニキノコビトを発見して喜ぶ単純な男。
ちゃんとこびとづかん通りの方法でそっとカサの部分から捕獲。
いつまでこのコビトでだまし通せるか分からないが、本人が楽しんでいるから良しとしよう。
視聴者が喜んでるからと言ってヤラセが止まらなくなるTVプロデューサーと同じ卑怯なる思考だ。
そして木に無理矢理乗せてみた。
竜に乗る日本昔話のオープニング小僧のようだが、非常に喜んでいる。
意外とこの飯盛山は子供のアウトドア教育には適した山なのかもね。
大幅に予想と違う山だったけど、何気に親子の時間を楽しめたね。
よし、飯も食ったし下山するか。
こうして親子は再びジャングルの中に消えて行った。
まあ、恐らく二度と来る事は無いだろうがね。
さらば、飯盛山。
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その後、横蔵寺に寄ってみました。
ここでりんたろくんのオムツの替えが無い事が発覚。
まだあると思っていたのはオムツをはずす訓練用の簡易的なものだった。
とりあえずそれをノーパンツ状態であてがってみたが、明らかに気になって具合が悪いご様子。
今彼が放尿などしようものならたちまち大惨事。
もし大の方をした日には壮絶な物語が始まってしまう。
せっかく駐車代金も払ってりんたろくんも楽しそうなのに。
この笑顔が悲痛な顔になる前に早期撤退を決意。
またここにはオムツが取れた頃に遊びに来ようね。
その後無事にオムツを手に入れて昆虫館とやらがあったので行ってみた。
昆虫館なのに入口には何故かヤギが。
そして誰一人客がいない館内はどこか不気味な雰囲気が漂う。
昆虫館なのになぜ鹿の剥製なんだ?
で、何故かプラレール。
昆虫は?
奥にやっと昆虫の展示物を発見したが、標本の上には豪快にプラレールのレールが。
実にシュールな空間だった。
みなさんも是非この昆虫館でプラレールを楽しんでみるといい。
こうして親子ののんびり里山登山は終わった。
果たして北岳の傷が癒えたかどうかは謎だが、また一つ親子の絆が強くなった気がします。
そう思っているのは僕だけでしょうか?
もちろん草むらを這いずり回るりんたろくんの写真は嫁には見せてません。
僕にはいつも「死ね」と言う割には、りんたろくんにわずかでも危険な事させると怒るからね。
親子の絆は強くなっても、夫婦の絆がゆるゆるになる事請け合いです。
そのまま家を追放されてジャングルに逃げ込む事にならないように、いつものように「帰ったらお母さんに楽しかったって言うんだぞ」と言いくるめるお父さん。
そして甲斐甲斐しく母に向かって「山、楽しかった。コビトもおったよ。」と言う我が子。
こうして敏腕プロデューサーと名子役の休日は更けて行くのだ。
魅惑のジャングルクルーズ
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MATATABI BASE
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