福地山/長野

連鎖する悲惨〜福地山〜

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上の写真をご覧いただきたい。

本来仕事中だったはずの彼は、平日の昼過ぎになぜか雨の中山の中の避難小屋にて避難中だ。

なぜ彼はこんなことになっているのか?

振り返ってみよう。

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前回記事の富士登山を決意したのが火曜日の夕方。

僕は富士登山に向けて何が必要かを考えた。

僕は3000m以上の山を登ったことが無いので、高山病が心配だった。

どこかに車で2000m付近まで行けて、3000mを越える仮想富士山が出来る気軽な山はないだろうかと調べた。(仕事しろよ)

出来れば、富士登山の前に高度順応して体を慣らしておきたかったのだ。


僕は以前から狙っていた、お気軽3000m登山の乗鞍岳をピックアップした。

ここは乗鞍スカイラインをバスで畳平(2702m)まで上り、剣ケ峰(3026m)を目指すもので、富士山5合目から登る仮想富士山としてはうってつけの高度順応登山が出来る。


試しに乗鞍の週末の天気を調べてみた。

だめだ、土日はあまりよろしくない。

おや。明日の水曜日は晴れマークじゃないか。

3時間予報を見ても、15時まで晴れであとは曇り。雨は夜に少し降る程度。

明日行けるじゃないか。行っちゃおうかな。


富士登山決意の1時間後に、僕は残り少ない有給の申請用紙を提出していた。

こうなると誰も僕を止められない。

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翌日、僕は常念岳に続いて2時間の寝坊。

この寝坊から負の連鎖が始まる。

またもノンストップの3時間のロングドライブを経て、ほうのき平のバスターミナル駐車場に9:00頃到着。

快晴だ。休んでまで来て良かった。


さっそく登山準備を整えていると、ある重大なことに気がつく。

登山で一番必要なもの、登山靴が無いじゃない。

慌てて家を出て来たから、家に忘れて来てるじゃない。

心から己に対して「大馬鹿野郎」と叫ぶ。


どこかで登山靴を買おうと、仕方なく一度高山の街まで急いで車で40分程引き返す。

iPhoneで調べるとコングというアウトドアショップが見つかった。

僕はこういう時、お店まで行くといつも定休日だったり改装中だったりでイタイ思いをするので、ちゃんと定休日もチェックして行った。今日は大丈夫だ。

お店に貼紙が張ってある。

「8月31日(水)は夏期休暇のため臨時でお休みです。」

なんて事だ。


慌ててさらに付近のアウトドアショップを調べる。

アルペンを発見。

アルペンに到着したのが、ちょうど10時5分前。開店前のいいタイミングだ。

駐車場で待っているとお店の人がやって来た。

「今日は営業10時半からなんですが。」

なんて事だ。30分も待ってられるか。


時間がもったいない。さらに探すとヒマラヤがあった。

10時から営業している。やった。

本来登山靴は入念に履き比べて、テストして、店員さんと検討して買うものだが、時間のない僕はためらいも無くサイズが合う一足を選び即座に購入。

決して登山靴は、コンビニでジュースを買うような感覚で買ってはならないが、僕には時間がないのだ。

快晴のうちに登りたいのだ。

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車をかっ飛ばして、再びほうのき平のバスターミナルに向かう。


ああ・・・、あんなに晴れていたのになにやらお馴染みの空模様に包まれて来たぞ。

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僕が駐車場に到着した時、1台のバスがちょうど出発して行った。

急いで準備を整え、ダッシュで改札口へ。

「今しがたバス行っちゃったからねえ。次来るのは1時間後だよ。」

なんて事だ。


とりあえず往復のチケットを購入し、ベンチでうなだれて考えた。

この時点で11時頃。
バスが来るのは12時頃。
畳平に着くのは13時頃。
畳平発の最終は16時半頃。
現地にいられるのはおよそ3時間半。
乗鞍登頂の往復参考時間はおよそ4時間。

だめじゃないか。帰って来れないじゃないか。

そしてそんな僕の腕にポツリポツリと水滴が降って来た。

雨だ。雨だよ。

あんなに晴れてたじゃないか!
天気予報晴れだったじゃないか!
有給取っちゃったじゃないか!


僕はバスのチケットを払い戻してもらい(手数料として100円取られた)、車に戻ってしばし放心状態。

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せっかくここまで来たのに。

バッチリ登山の格好で、登山靴まで買って来たのに。

せめて今日一日に意味を見いだすため、僕は新穂高温泉へ行こうと決めた。

有給取ってまでしてただの温泉一人旅か。愚痴がこぼれる。

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雨の中車を走らせて、平湯トンネルを抜けた。

するとどうだ。

こっち側(長野県側)は晴れてるじゃないか!

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これは一体どういう事だ。

こうなるとなんだか、このまま温泉に行くのもアホらしい。

せめてどっかに軽くトレッキングでも出来る所は無いかと地図を広げた。


あった。「福地山」。

軽いトレッキングというより、ばっちり登山だ。

この時点でもう12時頃。

こんな時間から登り始めて、ちゃんと日暮れまでに戻って来れるだろうか。

でもせっかく晴れてるし、このまま温泉旅で終わらせるわけにはいかない。
(※ここで彼は少し冷静に考えてみるべきだった。先ほど岐阜県側で雨が降ってたという事は、いずれその雨雲は長野県側に来る事くらい容易に分かったはずだ。)

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福地山登山者駐車場は、荒廃したテニス場だ。

馬鹿な男は意気揚々と出発していった。

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登山口までは実に感じのいい風景が続く。

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晴れるって素晴らしい。


登山口には立派な案内看板が。

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参考タイム、往復で4時間。日暮れまでに下山できる時間だ。


登山スタートいきなりで倒木が激しく行く手を阻む。

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獣出没注意の標識も。

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若干のっけから不安がよぎる。


でもこの福地岳。実に登りやすい山だった。

登山道は整備され、歩きやすい。

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しかも今日の僕はとても軽い荷物で登っている。

いつもりんたろくん背負ったり、縦走の時はテントとか背負ったりで、こんなに軽い荷物で登るのは初めてだったからスイスイ登っていく。

これはいいぞ。天気もいいし。

僕はこの時、今回のブログタイトルは「災い転じて福地山」で決まりだなって考えていた。馬鹿な男だ。

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やがて憮然平に出た。

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そこには小人のような篠原憮然という人の石像が、憮然とした顔でたたずんでいる。

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そこからも実に快適なトレッキングが続く。

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このマニアックな福地山であるが、近年北アルプス展望の山として注目されているそうだ。

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気分よく上のセルフタイマー写真を撮っている時に、何やらザザアアという音が遠くから聞こえ出した。

そしてポツポツと雨が降って来たではないか。

景色はあんなに晴れているのに、頭上を見上げると実に重い雲が顔を出して来ていた。


その後も小振りな雨が降ったりやんだりだが、基本雨雲は僕の頭上なので景色はまだ晴れている。

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第4展望台をすぎれば、頂上はあと少しだ。

2時間半の登頂予定だったがまだ1時間ちょっとしか経っていない。荷物が軽いって素晴らしい。


登頂前に雨で心配しているだろうと、時間的に昼休み中の嫁に電話をした。

「予定と違う山だけど、間もなく頂上です。このまま一緒に登頂するかい?」と聞いたら

「なにが楽しいの?切るわ」とブツリと切られてしまった。

それを合図にしたかのように急激に雨が激しくなった。

ああ、もうすぐ頂上なのに。

嫁に愛されないばかりか、山にまでも愛されないのか。


そして失意の中、福地山登頂。

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達成感のかけらも無い。

急いでザックにレインカバーをかけて、レインウェアを身にまとい即座に下山開始。


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頂上で北アルプスの大展望を見ながら昼メシを食うつもりだったが、儚い夢の話となった。

そろそろ何か口にしないとばててしまう。

雨足が弱かった木の下で僕は惨めにうなだれながら、カロリーメイトをほおばった。

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うつろな目で遠くを見つめる男。すっかり精気がなくなってしまったようだ。

とは言え、これも大事な経験だ。

一度は雨の中がっつり歩くという事も経験しておきたかったんだ。

そう、僕は今ツイているんだ。

いつもの悲しい自己暗示作業で前向きに考える事にする。

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しだいに土砂降りの様相を呈して来た雨。

僕は行きと違うルートで下り、避難小屋と書いてあった場所に逃げ込んだ。

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ここで、やっとこの記事のオープニングの写真に到達するわけである。

なんとか落ち着いてパスタを作る。

靴下も脱いで、足を休ませていると大量の蚊が僕の足を急襲。

複数箇所刺されて、その後の下山時はかゆくてもかけないという不快な思いをすることになる。

雨は降り止まないどころか、いよいよ強くなって来た。

この避難小屋も薄暗くてなんだか怖い。


意を決してバシャ降りの中、下山。

何度も言うが、本日の天気予報は晴れでした。

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テニスコートの駐車場に戻って来た男。ぐったり感が漂っている。

そしてこの時点で雨がやんだ。

もはや何も言う事は無い。


今朝買ったばかりの登山靴は、5〜6年履いたかのような「味」をすでに醸し出していた。

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雨ですっかり体が冷えてしまったので、新穂高温泉に向かった。

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川沿いの無料公衆浴場。実に野趣あふれた温泉だ。

そこには中年の夫婦が入浴していた。混浴なのだ。

予期していなかったので、相手が熟女とはいえ激しく緊張が走る。

熟女のポロリ。見たいような見たくないような。


しかし、冷えた体を温めるために入ったこの温泉は、かなりのぬるま湯だった。

いかん、まるで体が温まらない。このままでは風邪を引いてしまう。

結局僕の方が先にそそくさと温泉から上がった。


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どでかいのれんの看板があったので、さも温泉上がり的な写真を撮ってみたがその先に温泉があるわけではない。


こうして富士山前哨戦、福地山(予定はあくまで乗鞍岳だったけど)が終わった。

ちゃんと高度順応出来るのかが当初のテーマだった今回。

高度順応というより、不幸順応テストだった。

結局分かった事は、やはり「僕の山は荒れる」ということだけだ。

僕専用のお天気衛星でも飛ばしてくれない限り、天気予報なんて信じない。

こんな男が9月の富士山を乗り切れるのか、とても心配だ。



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MATATABI BASE

コメント

    • B旦那
    • 2011年 9月 02日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    素晴らしいマイナスっぷりd(^_^o)
    きっと富士も登りきれると思うよ!

    しかし今月はドMワールド全開だね。
    富士でどんなミラクルを見せてくれるのか楽しみだよ(=´∀`)人(´∀`=)

    でも荷物だけはちゃんとチェックしてね!

    • yukon780
    • 2011年 9月 02日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    「今月は」とありますが、これで一応通常の状態です。

    僕が絡むといつもこんな世界が楽しめます。

    結局高度順応テスト出来ませんでしたが、雨のテストは出来ました。

    登山靴はさすがにもう忘れません。

    M心と好奇心も忘れませんよ。

    なんとかご来光拝みたい!

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