私はついに死んでしまったのだろうか?
何度目をこすってみても、頬をつねってみても目の前の状況は変わらない。
おかしいぞ。
私の知っている空って「白」だったはず。
空が「青い」だなんて、ずっとCGの世界だと信じて来た。
青い空なんてランドネが作り出した妄想の世界だとばかり思っていた。
今まで私がお世話になった事があるのは蒼井そらだけだ。
では今目の前に広がる絶景は何なのか?
これは一体何事なのか?
そしてこの胸の中に広がって行く感情は何だ?
これが世に言う「浮かれている」という状態なのか?
こんなキモチは初めてだ。
かつて白馬という領域では絶望だけが渦巻いていた。
そこでは毎回ホワイトアウトの宴が催され、風雪に耐える者、白い絶景を前に立ち尽くす者、黄昏れる者、テントを飛ばす者などがうごめく魑魅魍魎の世界だった。
僕ははるばる5時間近くかけて白馬まで来ては、その都度真っ白な世界でワールドクラスのマゾを楽しんで来た。
しかしである。
この白馬に通い続けること実に3年。
ついに一見さんお断りの名店「白馬」が、我々を快晴で受け入れてくれる時が来たのである。
そんなスペシャルな2DAYS。
快晴とスキヤキに魅入られてしまった男女7人冬物語。
目指す聖地は栂池自然園の奥地にある桃源郷。
マゾのマの字も感じさせない夢の祭典。
これは快晴慣れしていない男が快晴に包まれると一体どういう事になってしまうのかというドキュメンタリー。
今シーズン最後の雪山のステージ。
さあ。
いざ、夢の中へ。
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山頂なぞは目指さない。
目指すはあくまでもスキヤキと酒を暴飲暴食してやろうという酒池肉林会場。
僕が高らかに「白馬で飲もう!吐くまで飲もう!」と仲間を集った所、総勢7名の肉と酒と血に飢えた者達が集結した。
まさに浮かれるには持って来いの大快晴である。
しかしそんな浮かれ日和の中、この写真のメンバーの中の一人だけが全く浮かれていない。
いや、むしろ浮いてしまっているその男を拡大してみよう。
あきらかに様子がおかしい、この変質者色の覇気をまき散らすマスクマン。
もちろんこいつはあの伝説の虚弱アウトドアマン、マゾマスオである。
なんと彼は甲斐駒男塾以来実に2週間にわたって風邪をひき続けた挙げ句、全く治らないどころか悪化させて来たという悲惨な状態。
前日まで歩く事もやっとの状態で、夜中は激しい咳に苦しめられてほとんど寝ていないという仕上がり。
他のメンバーの誰よりも快晴に飢えていたこの企画の企画者ご本人。
その待ちに待った快晴スペシャルデーに過去最悪な体調をぶつけて来たという仕込みの妙。
もはや三脚立てるだけでふらついて、常時吐き気が止まらない。
これぞプロの仕上がり。
正直参加してるのが不思議なくらいに追いつめられている。
こんなマゾりようがない平和な日でも、彼だけは今日もプロフェッショナルを貫き通す覚悟のようだ。
一般人であれば参加を見送って家で寝てなきゃいけない状況。
しかし彼は「意地でも遊ぶのだ」という強い意思の元で戦うプロマゾピニスト。
マゾをこじらせるにも程がある痛々しさである。
そんな己の身を犠牲にしてまで快晴を手に入れた弟に対し、「ぬうう!さすがは我が弟である!」と感心しているのは悪天候三兄妹の長兄ラオウ(ハッポーNさん)である。
今回も「パンパンの80Lザックを背負ってスプリットボードに乗る」という異様なスタイルでの参戦。
かつてはそのはち切れんばかりの悪天候の闘気が制御できず、何度もこの白馬を白の絶望で包み込んだ世紀末覇者。
しかし彼も長兄として弟に負けてなるものかと、階段も満足に登れないほどに膝を痛めているという状況。
これにより彼はラオウから片足のファルコと化し、元斗の力で悪天候闘気を封じ込めたのだ。
しかも封じ込めた闘気が体内で強烈なリバウンドを起こし、以前会った時よりも10キロ近く増量してしまったというまさか。
そんな二人の兄の身を呈した犠牲の上に訪れた快晴。
それに対して浮かれるのは悪天候三兄妹末妹、「気圧も血圧も下り坂♡」のキャッチフレーズでお馴染みのマゾドル、低血圧Mちゃんである。
しかし今日ばかりは兄達の活躍のおかげで、爽やかに背中にネギを背負うネギガールに。
いつもこのネギ係は次兄トキの役なんだが、ネギの匂いで吐き気が止まらなくなった彼は「そろそろこの大役を妹に譲ろう」とその想いを託したのである。
そのアツい想いを受け取った妹は「兄さんをもっとマゾらせなきゃ」と、隣でネギ臭を振り撒いて兄の吐き気を増長させる事を忘れない。
これには兄もたまらずチェストバッグを開いて、いつでも嘔吐可能な臨戦態勢だ。
そんな三者三様な悪天候三兄妹を前に、この快晴にほくそ笑むはジャギことジョンボーA。
かつて晴れ男として何度も悪天候三兄妹に挑んでは蹴散らされ、悔しさのあまりテントを谷底に吹き飛ばすという大技をかました男。
彼にとっても今回は絶対に負けられない快晴リベンジマッチ。
あえて無駄にクソ重い南部鉄器製のすき焼き鍋をザックインし、そこに500mlビール6缶とスキヤキの具材までパッキングするという変態ハイパー歩荷スタイルで快晴祈願だ。
そしてジャギはそれだけでは三兄妹に勝てないと踏んで、チーム・マサカズの「快晴御三家」として名を馳せる他の二人の助っ人を招集。
まずは晴れる事に関してはジャギよりも高い勝率を誇る男。
あの甲斐駒男塾を生き抜いたクールマン、パパラッチKである。
最近カメラ持ってなかったからすっかり忘れがちだが、久々にバズーカレンズ持参のパパラッチスタイルで快晴スクープ。
とりあえずここまで北斗の拳の登場人物で例えて来たから、無理矢理彼も当てはめるとしたら「名もなき修羅の男」が適任だろう。
常にクールな表情でマゾり続ける修羅の男。
このコマを見て分かる通り、高所になればなるほど「ヒュウウウウ…ヒュウウウウ…」と唸りながら雪山を彷徨う癖がある。
その見事な修羅っぷりゆえ、男前なのにいつまでも結婚できずに名を名乗る事を許されない。
そう。
長兄ラオウの足をもぎ取ってファルコ化させ、快晴を奪い取ったのも実はこの男の仕業なのである。
ジャギは最強の快晴助っ人を招集したようだ。
そしてこの修羅、ジャギと共に快晴御三家を名乗るのはこの男。
かつてジャギの前に悪天候三兄妹に挑んで1ラウンドノックアウト負けを喫し、一人ベンチで黄昏れる羽目になった矢作Cである。
前回は無理矢理バックカントリースキーをさせられた挙げ句、ホワイトアウトに巻き込まれて全く滑れなかったこの男。
今回はリベンジをかけて再びバックカントリーに執着しての再チャレンジなのである。
そんな彼は、北斗の拳でいう所の「ミスミじいさん」。
あの種モミにやたらと執着しすぎの村のジジイである。
前回は種モミごと明日への希望をホワイトアウトに持って行かれた種モミジジイ。
今回こそはちゃんと快晴と種モミを守りきり、村人達が待つ目的地に辿り着きたい所だ。
そんな快晴御三家に、ジャギは更なる助っ人の一手を追加して万全を期す。
それがこのどっちに転ぶか分からないというMr.パルプンテ野郎。
小木Kである。
何気にこの男もマスクをしているが、こっちはただの花粉症だから基本的に元気いっぱいである。
前回の藤原岳ですっかり雪山の魅力に取り憑かれ、今回初めて雪山テント泊に挑戦する。
いつも相棒の種モミじじいに理不尽な仕打ちをするサドピニストでもある。
そんな彼には北斗の拳でいうところの「ジャコウ」がふさわしい。
チーム・マサカズ随一の邪(よこしま)な心を持つ男。
かつて彼が天帝の村で村人として暮らしていた時、村に侵攻してきたラオウに目をつけられ、その邪な心がいずれファルコに災いをもたらすだろうと予言された。
今がまさにそのチャンス。
ラオウの悪天候闘気がファルコ化した今こそ快晴という名の権力を奪う時。
彼は「もっと光を!もっと光をぉぉ~~!!」と叫んで意気盛んだ。
こうして悪天候三兄妹VSチーム・ジャギの晴れ男ドリームチームの対戦の図式が完成した。
まだスタート前なのに、メンバー紹介だけでやたらと長くなってしまったぞ。
こいつは今回も長くなりそうだぜ。
さあ、いよいよ出発だ!
ここから酒池肉林会場までは、ラオウ情報だとおよそ40分くらい。
前回の黒戸尾根のスタート時の悲壮感を思うと赤子の手をひねるようなものである。
そしてスタート直後。
過去最速の早さでヨロコビ失禁のお時間がやって来てしまったのである。
信じられない美しさ。
これがこのブログでは絶対に書く事がないだろうと思っていたワード、世に聞く「青と白のコントラスト」ってやつか。
かつてここいら一体は真っ白だった。
そんな中でも心眼に磨きをかけて、中二男子のようにそのモザイクの先の世界を想像したものだった。
しかしまさかここまで美しかっただなんて、見た事ないから想像できるわけがなかった。
でも今まさにその憧れ続けた白馬の秘部が、我が眼前に「これでもか」とばかりに惜しげもなくあらわになっているのである。
一般登山者達はこんな景色を見ていたのか。
今まで山をやってない友達に、「何かお前のブログ見てても山に行こうって気が起きない。」と言わせ続けて来たが、これが本来普通の登山者の方々が楽しんでいる世界なのだ。
いつもは急登でしかニヤリとしない低血圧ネギちゃんも、この光景にはさすがにニヤリが止まらない。
そして彼女の兄は、あまりにも快晴が似合わなくてなんだかスタジオ撮影したみたいに嘘くさい写真になってしまっている。
どうせいつもの合成だろ?マゾコラだろ?と疑われそうだが、これは紛れも無い事実だ。
この姿を見た快晴野郎ジャギも「今回は完勝だぞ」と悪い顔でニヤリとする。
今にも「俺の名を言ってみろ」と言い出しそうなこのドヤジャギ。
しかしそんな彼の足を引っ張る男が早くも登場。
まだスタート直後だというのに、猛烈に遅れ出す男が後方に一人。
あれはチーム・ジャギの種モミジジイだ。
やがてやっと彼が追いついて来た時、我々は信じられない光景を目の当たりにする事になる。
まだスタートして10分も経っていないのに…
ずぶ濡れじゃないか!
そのあまりの遅さと発汗っぷりに、「おい!貴様!シャワー浴びてやがったな!」とジャコウに怒られる種モミジジイ。
早くもチーム・ジャギ内で仲間割れのピンチ。
しかしこれこそ、彼が前回たそがれベンチで必死で考案した快晴策。
慣れないスキー板ハイクとクソ暑いウェアを脱がないことでロンリーマゾに邁進し、ひたすら後方から快晴を祈願していたのである。
雨が降ってないのに、実に男気溢れるずぶ濡れスタートダッシュ。
果たして彼は無事に酒池肉林会場まで種モミを運びきる事が出来るのだろうか?
だがそんな矢作Cのシャワープレイが功を奏し、いよいよ凄みを増す快晴ワールド。
ついにあのラオウの頭上に太陽の光が降り注いだのである。
それは20年に一度あるかないかの奇跡。
ついにあのラオウも日に焼ける時が来てしまったのだ。
ラオウも「ふぬう!我が影を初めて見たぞ!」と、20年ぶりに見る自分の影に驚いている。
一方、見上げればノエビア化粧品のCMでしか見た事がない青空と飛行機の共演が展開。
そしてまるで北欧の雪山を歩いているかのようなこのスペシャルな光景。
とても日本にいるとは思えない絶景。
そしてこの小屋を抜けると、そこには美しすぎる雪原が広がっていた。
もう全身の毛穴から溢れかえるヨダレが止まらない。
そのあまりの快晴&絶景に、浮かれ慣れしていない奴らは、どうしていいのか分からずあたふたと右往左往するばかり。
だがやがて彼らの脳内で鎖に繋がれていた「浮かれ」という堕落した猛獣が、あっという間に鎖をひきちぎって全身を駆け回って行く。
そして我も我もとニヤニヤし出し、全力で浮かれ始める。
ジャコウに至っては「天帝様もお喜びだぁー!もっともっと光をー!」と絶叫。
そして彼は「俺を撮ってくれ」と言わんばかりに先頭を突き進む。
そんな彼を撮影すれば、あのジャコウですらこの絵になる感。
もうこうなったら誰も我々の浮かれポンチを止められる奴はいない。
我々はジャコウ様に導かれるように、「発光する帝都」こと白馬の雪原にその身を投じて行く。
我らはスキヤキ浮かれポンチーズ。
もう青空を想像していただけのあの頃にサヨウナラ。
今、チーム・ジャギが白馬の救世主となったのである。
かつてあの晴れ妖怪松岡修造に「あいつらにだけは敵わない」と言わしめた悪天候三兄妹ですら、この惨敗状況にガックリと肩を落す。
トキに至っては、まるでGoProで低血圧Mちゃんを盗撮しようと企む変質者的な装いになってしまうほど、この結果を受け止めきれていない。
しかし実は彼だけはこんな状況でも一切浮かれない。
いや、正確に言えば「浮かれている場合じゃないくらい体調が悪化した」と言った方が適切だ。
よく慣れない食材を食べると食あたりを起こしてしまう人がいるように、彼は慣れない青空に対して「晴れあたり」を起こしてしまったのだ。
それによって折からの風邪による症状はさらに悪化し、吐こうと思えばリアルにいつでも吐ける状態に。
見上げればあれ程待ち望んだ大快晴だと言うのに、彼だけはずっとうつむいて景色も見ずに己の体調と向き合い続ける。
結局晴れようが距離が短かろうが、彼は状況に応じた最善のマゾに埋没して行ってしまう。
蛇の道は蛇。
マゾの道はマゾ。
その運命には抗いきれないのである。
その姿を見て勝利を確信したジャギ。
余裕が出て来たのか、最後尾でシャワーを浴び続けてヘロヘロになってる仲間の元へ。
黙々と快晴祈願をしている種モミジジイのサポートに入ったのだ。
しかしジャギの風貌がチンピラ的なので、まるで矢作Cがオヤジ狩りに遭遇してしまっているかのような情景に見えてしまう。
まるで「オラ、おっさん。ポケットの中も見せてみろや」と迫られているようにしか見えない。
種モミジジイも「厄介な若者に捕まっちゃったよぅ」とシマッタ顔。
それでもジジイは必死になってポケットの中の種モミを死守しようとする。
種モミに対するアツすぎる執着心。
そして彼はその想いを胸に、村人達が待つ会場に向けて急登に突入して行く。
この急登でいよいよ矢作Cのシャワープレイもラストスパートに入ったようだ。
そしてこの突然現れた急登に対してジャコウの文句が止まらない。
弱り切る病弱なトキに対して、「おい。お前今回はずっと平坦な道だって言ってじゃねえか。そもそも40分で着くんじゃなかったのか?もう出発してから1時間以上経ってるぜ。また騙したのか?天帝様はお怒りだぞ。」とねちっこく責めてくる。
だがもうトキは何も答える事がない。
瀕死のトキは、もはや口を開いた瞬間に吐いてしまうからだ。
実はこの時、みんなには言ってないが一人下山して車中泊しようかと思っていたほどにギリギリの状態。
せっかくの大快晴を1ミリも楽しめていないあたり、さすが悪天候神拳史上最も華麗なマゾの使い手だと言われる男である。
そんなトキだったが、自らに究極秘孔・刹活孔を突き最後の力を振り絞って急登を突破。
しかし何度も膝をついて虫の息。
彼はこの企画をみんなに発表する時、「お気楽なノンマゾ企画です。ノンまさかで楽しく行きましょう」と言っていた。
そして「白馬で飲もう!吐くまで飲もう!」とも言っていたのに、飲む前から吐きそうになっているというまさか。
こういう所が、彼が嫁さんに一番鬱陶しがられている所でもある。
そしてその急登の先にはやはりご褒美タイム。
再び素晴らしい絶景がお出迎えだ。
最高だ。
体調さえ良ければ。
正直このあたりの記憶は私には無い。
そして誰よりも「箔がつく」ことに執着する男ジャコウが、「ハッポーさん。あの山行ったって言ったら箔がつくから山の名前教えて下さい」と、かつてのライバル・ファルコに教えを受けている。
ファルコも今までは散々真っ白な風景を指差して山の解説をして来たから、今回ばかりは心眼を使わずに喜んで山名解説にいそしんでいる。
そうこうしていると、やっと酒池肉林会場へ続く急登樹林帯へ突入。
いよいよ最後の戦い。
吐くか吐かれるかの攻防戦。
トキは何度もジャギに対し「吐いた方が楽かなあ…。どう思う?吐いた方がいいのかなあ…。」と弱々しく尋ね続ける。
かつてトキの事を「尊敬してるッス」と言っていたジャギも、もはやそんな兄を軽蔑と哀れみの表情で見ながら「どうせネタですよね?やり過ぎですよ」と冷たくディスり続ける。
一方、健康体なのに瀕死な状態の種モミジジイも急登と戦闘中。
いよいよ溢れ出るシャワーも絶頂に達し、ジャコウも「おい!お前今度は勝手に沢登りしてやがったな!」とお怒りだ。
しかし彼は本気の限界に到達したのか声もでない。
やがてその場で血を吐いて倒れる。
そして仲間達に言う。
さらば種モミジジイ。
本来なんのことはないただの雪上ハイキングで、彼は健康体にも関わらず己のマゾを見事に貫いたのだ。
ある意味すごい男だ。
そして種モミを託されたケンシロウは、その大事な種モミを非常に乱雑に矢作Cの墓に撒いてしまう。
絶対実らないって…。
ちゃんと村人に届けてあげてよ…。
さあ、そんなこんなで酒池肉林会場まであと少し。
振り返るとこんな感じ。
40分で着くと聞いていたのに、なんと間もなく2時間が経とうとしている。
まさか我々はラオウのマゾアシストに踊らされていたのか?
そう言えばかつて彼は夏の白馬三山に挑むランボーNに対して、あえて厳冬期登山靴を貸して靴擦れさせるというマゾアシスト確信犯だった。
今回もまんまとはめられたのだ。
だが、何にしてもあと少し。
みんなが会場で待っている。
なんて美しい会場なんだ。
まるでスイスのようで素敵すぎるよ。
本気で何度もふらつくが、これを見て最後の力を振り絞るトキ。
ただのスノーハイクなのに、体感的にはあの黒戸尾根をも越えるしんどさ。
しかしそれでもトキは負けない。
こみ上げる胃酸を無理矢理秘孔をついて胃に押し戻す。
そしてついにゴール!
拍手で迎えられるトキ。
この感動的な光景に、人の心を失ったジャコウですら握手を求めて来る。
それに応えようとするトキ。
しかし次の瞬間。
彼はその握手ポーズのまま、雪上のマットに倒れ込んだ。
会場からは「力石ッー!」というファンの悲鳴。
これにはライバルの矢吹丈こと「明日のジャコウ」も驚きを隠せない。
会場からは必死の力石コール。
やがて力石は明日のジャコウに支えられてなんとか蘇生。
感動に包まれる後楽園ホール。
ついに悪天候三兄妹とチーム・ジャギが和解するという歴史的な瞬間が訪れたのだ。
そしてそれを祝福するかのように、白馬の山々が我々を優しく包み込む。
まさにこの会場は桃源郷だった。
ずっとこういう場所に来たかったんだよ。
そしてその反対側に登って行けば、さらなる絶景が。
涙が止まらない。
咳も止まらない。
白馬に通い続ける事苦節3年。
初めて目にする「白の先の世界」。
大変な回り道をして来た我々だからこそ、今この突き抜けるような感動を味わっているのである。
そして歴史的な瞬間が訪れる。
なんとあの悪天候三兄妹が、快晴に包まれて1枚の写真に納まったのである。
かつて「我が生涯に一片の晴れなし!」と叫んだラオウも、さすがに今回は「一片の悔いなし!」と叫んで昇天。
低血圧Mちゃんも、上がらずの血圧と言われた血圧を急上昇させて喜んでいる。
トキに至っては立ったまま死んでいる。
しかしいつまでも死んでいる場合じゃない。
みんなで記念写真撮るために、トキは大急ぎでザックが置いてある場所まで駆け下りる。
するとそこで奇跡の光景を目の当たりにする事になる。
なんと死んだはずのあの種モミジジイが会場に到達しているではないか!
彼はやりきったのだ。
無事に村人達のために種モミを運びきったのである。
そしてヘロヘロの彼はトキに支えられて皆のところへ向かう。
そして悪天候三兄妹とチーム・ジャギの和解調印式。
今年度のピューリッツァー賞間違いなしの歴史的な1枚が撮影された。
改めてこのブログがモノクロ設定じゃなく、フルカラーだった事を思い出させてくれる珠玉の1枚。
距離的にはほんの数キロだが、約二名だけはなんだか壮絶な戦いだった気がしてならない。
ここは山頂でも何でもないんだが、この達成感と快晴は何物にも代え難い大勝利なのである。
しかしまだ我々は新たな戦いのステージに到達しただけに過ぎない。
本来の目的はあくまでもスキヤキと酒の酒池肉林。
それは血で血を洗い、溶き卵で黒毛和牛を洗う壮絶な団体戦。
一致団結を果たした「スキヤキ浮かれポンチーズ」が、次は雪上デスマッチで黒毛和牛とにらみ合う。
そして一生果たす事は出来ないと思っていた夢。
それこそ僕がずっと「あれはランドネのねつ造だ」と言い続けて来た「雪のテーブルで飯を食う」というもの。
今、その千載一遇のチャンスが我々の目の前に展開しようとしているのである。
さあ。
二部構成にする気はさらさらなかったのに、余計なことを書きすぎてしまったためまさかの後編へ。
次回、浮かれポンチーズ達が飲んで食ってけん玉するだけの酒宴模様をお送りします。
そして運命の2日目。
さらなるまさかが浮かれたポンチーズに襲いかかる。
やはり所詮彼らは落ち着くべき所に堕ちて行くのである。
スキヤキ浮かれポンチーズ 後編へ 〜つづく〜
スキヤキ浮かれポンチーズ 前編〜逆襲のジャギ〜
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MATATABI BASE
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