賤ヶ岳/滋賀

賤ヶ岳の戦い〜早朝武士の嘆き節〜

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中日の和田を彷彿とさせるオープンスタンス。

何故彼はこんな早朝の山頂でバッティング練習をしているのか?


実はこれはバッティング練習ではない。

本人としては「刀を振り上げている武士」のつもりでやっている。

しかしどうにもうまく行かずに和田になってしまったのだ。


ではなぜ彼は武士となったのか?

それはここが琵琶湖湖北の「賤ヶ岳(しずがたけ)」だからに他ならない。



今からおよそ431年前。

この山を中心に「賤ヶ岳の戦い」が勃発。

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天下を穫りたい羽柴秀吉と、そうはさせじの柴田勝家がガップリ四つで激突したまさにその場所。

秀吉はこの戦いで勝利し、一気に天下人への階段を駆け上がって行った。


そして現代。

早朝の賤ヶ岳で「マゾひとりだけの戦い」が勃発。

本来は高時川の川下りに来たんだが、せっかくだから川下り前の早朝にもう一声遊んでやろうという魂胆。

限られた時間しか自由がない、陳腐な奴隷が考えつきそうな愚かな戦術である。


それではそんな彼の戦模様。

前回記事がいつものように「長いわボケ!」というご指摘を頂いたので、今回は出来るだけサラリと振り返ってみよう。


北近江ワンデイトリップ前編。

賤ヶ岳トレランでございます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


軍師マゾ兵衛が一策を講じた。

高時川カヌーの現地集合時間は朝9時。

睡眠時間を削りまくれば、ひょっとして集合前にひとマゾできちゃうんじゃないか?と。

賤ヶ岳を走れちゃうんじゃないか、と。


こうして彼はいつものように超早朝出発という道を選択。

限られた一日自由権。

1秒たりとも無駄にしてはいけないのである。


しかしそんな日に限ってこーたろくんの夜泣きがスペシャルな状態。

昼によほどイヤな目にあったのか、それとも遊ぶことしか考えてない父への反発なのか?

ほぼ1時間おきに起こされるというハードさで、全く眠る事を許さない。


そして前々から許可は得ていたんだが、この状況では出て行きづらいのなんの。

嫁の「それでもお前は行くのだな」という斬鉄剣のような鋭い視線にめった斬りされながらも、なんとか5時前に犬に吠えられながら家を脱出。

我が賤ヶ岳の戦いはもうすでに始まっているのである。


眠い目をこすりながら根性で車を走らせる。

しかしそんな状態の僕に心強い味方。

それは急に観たくなってTSUTAYAで借りて来たキン肉マンのDVD。

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すっかり目も覚めて夢中に。

しかし悪魔将軍との熱戦に気を取られるあまり、高速道路の分岐を間違えて彦根へ南下してしまうという大失態。

ただでさえ時間がないのに、あえて遠回りしてタイムロス。

これぞ己で己を追い込むという、軍師マゾ兵衛の十八番「仕込の計」である。


そんなこんなと色々あったが、やっとこさ余呉湖に到着。

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木々が赤く見えるのは目が充血しているからではない。

ちょうどいい感じの紅葉時期で、実に素敵なロケーションなのだ。


しかしそんなものにうつつを抜かしている時間はない。

急がないと9時の集合時間に間に合わなくなる。

さあ、いざ出陣である!



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軍師マゾ兵衛の策はいつだって一直線。

正直「寝ろ」と言われればいつでも寝れることが出来るほど眠い。

しかし無茶を知り己がマゾれば百戦危うからず。

我が策に一点の曇り無し。


時間がないからワッシワッシと登って行く。

紅葉の落ち葉絨毯の上を颯爽と攻め上がる。

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絵的にはオツな状況なんだが、実際は前日までの雨のせいでぐっちゃぐちゃ。

ただでさえ滑り易い落ち葉の下が、さらに滑り易さを増長させるというゲリコーティング。

敵の迎撃態勢も中々のものである。


しかしそこは北近江が誇るメジャー山。

道は綺麗に整備されていて「さあ攻めて来い」と言わんばかりの武士らしい道。

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その誘いにまんまと乗っかる無策の男。

相手が孔明なら、この時点で「ジャーン!ジャーン!」とドラが鳴って左右からの伏兵に殲滅させられる事必至の状況だ。

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しかし相手は筋肉脳みその柴田勝家。

このような伏兵を置くのに絶好の場所に誰もいないのだ。

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それもそのはず。

だってこんな早朝からこんな低山登る人はいないから。


そんなまだ日も昇らない時間帯。

他に誰もいない暗い山中を彷徨っていると、僕のようなネガティブシンカーは何やら背中に寒気を覚えてしまう。

おりしもここは激戦区で多くの死者が出たまさにその場所。

ちょうどここらへんが、秀吉方の中川清秀が佐久間軍に全滅食らった場所なのだ。


そんな中、中川清秀のお墓が登場するというナイスタイミング感。

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ネガティブシンカーの脳内ビジョンには、地中から栽培マンみたいに這い出て来た落ち武者に囲まれるという妄想が映し出される。

この時の我が心境をあえてビジュアル化するならばこんな感じ。



どう?寒気走った?


もうこうなると、持ち前の余計な豊かさを誇る我が想像力に歯止めがかからない。

ケツがぞわぞわしだし、妙な汗が滴り落ちる。

そして「なぜ私は無理に早起きしてまでこんな思いをしているのか…?」といういつもの自問自答タイムへ。


賤ヶ岳をより楽しむため、事前に色々歴史を調べて余計な知識を入れて来てしまった事が大きな裏目に。

大量に人が死んだ場所を一人きりで走り抜ける納涼トレラン。

すっかり喉もカラカラになって来た頃、「今だ!」とばかりにこんな余計な看板が。

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やめて。

そんなダイレクトな情報やめて。

ここで首を洗ったとか、そういうのやめて。


まずい、劣勢だ。

敵はゲリ道で我が機動力を奪い、整備された道で誘い込みをかけ、そしてネガティブ精神への波状攻撃。

勝家のくせに随分と手の込んだ戦法じゃないか。

完全に防戦一方だぞ。


この暴走した想像力のせいで、もはやただの青いテープすら敵兵の亡霊に囲まれているような錯覚に陥る。

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しかしそんな臆病軍師についに援軍。

早朝ネガティブシンカーの強い味方、「燦々太陽軍」が駆けつけてくれたのだ。

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たちまち消滅して行く亡霊達。

一瞬、ダークな世界に生きる僕も一緒に消滅しかけてしまったが、なんとか慣れない太陽に体を慣らして行く。


そして一気に進軍が加速し、スタートの余呉湖も眼下に。

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まるでちん毛越しに浴槽を眺めるケジラミ気分。

しかしそんなちっぽけな存在の私でも、あと少し頑張ればこの戦に勝利する事が出来るのだ。


さあ、いざ尋常に勝負!



賤ヶ岳制圧である!

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これにて勝家軍は一気に敗走。

そしてついに天下を手中に収めた「早朝マゾ右衛門」の勝ちどきが響き渡る。

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だが彼が天下人でいられる時間は早朝の一瞬のみ。

明智光秀が三日天下なら、彼は三分天下の男。

いい気になれるのは早朝の山頂の3分のみ。

家に帰ればリアルな天下人が待っており、毎日ケツを蹴られては「このブタ野郎」とご両親の前で言われる足軽に戻ってしまう。


だから彼はこの勝利の瞬間をスルメのようにじっくりと味わい尽くすのだ。

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そして精一杯浮かれに浮かれるのである。

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これがオープニングで触れた「山頂和田一浩」の実態なのである。

本人は武士のつもりなのである。


そして浮かれついでにポールにコンデジくくりつけて、琵琶湖とともに己撮りに挑戦。

「賤ヶ岳な私」というタイトルで撮れるはずだったが、実際はこんなもん。

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「賤ヶ岳な私」どころか、結果的には後頭部しか映らず「白髪だけな私」という作品に。

なんだか日に日に白髪の量が増えて行くね。

ほんとはもっとゆっくりと色んな事したいんだけど、こうして無理しないと遊べないのね。

いや、行かせてもらえてるだけでも感謝はしてるんだよ。

でもね。

なんだか他にも色んなストレスあるのね…

そこの醤油取ってくださいも言えなかったりの気を使い過ぎの日々とかがね…


と言う感じで3分経って胸のカラータイマーが鳴ると、彼はまた余計なネガティブシンカーに落ちて行く。

そんな彼の前にこんな像が。

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ぐったりとうなだれる兵士。

のちのち調べてみると、これは長期化して何日も戦場を駆け回って疲れ果てた兵士の像らしい。

しかしこの時の三分天下の男には、「サド嫁と養子プレッシャーで早朝に山をかけずり回る男の像」と映った。


途端に親近感を覚え、お互いに励まし合う名もなき兵士と自由なき戦士。

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431年の時を経て、誤った形で深い友情が芽生えた。

美しき山頂風景。


さあ、もうカラータイマーの音が早くなっている。

もう3分経ったから、これ以上私は山頂に留まる事は出来ない。

大急ぎでこの戦場から離脱だ。


男はモリモリと賤ヶ岳の戦場を駆け下りて行く。

落ち葉ゲリ道という追撃も何のその。

この朝日に染まった黄金のビクトリーロードを颯爽と駆け抜ける。

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素晴らしいペース。

完全勝利は目前である。


しかしである。

行きと同じ道を帰ってるんだが、なんだか見覚えのない雰囲気。

慌ててGPSアプリで現在地チェック。

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しまった。

見事に敵の残党のしかけた「遭難の計」にはまってしまったじゃないか。


こんなに道が整備された超低山でまさかの道迷い。

そしていつものように右往左往する狼狽男。

散々不安にかられながらも、やがて全く見覚えのない神社に出た。

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そして無事に下山。

と言ってもここはどこなんだろう?

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結局この天下人は、無駄に遠回りして車から一番遠い場所に下山を完了。

もちろん普通にここから車までロードランニング。

朝飯前のモーニングマゾとしては上出来だろう。



こうして彼の賤ヶ岳の戦いは幕を閉じた。

3時間のコースを、無駄な己撮りと道迷い含めてなんとか1時間半で舐め尽くす事に成功。

そんな今回の「賤ヶ岳の戦い」を映像で振り返ってみよう。



よき戦であった。


さあ、だからと言ってのんびり勝利に酔ってる場合じゃない。

せっかくのこの晴れた一日自由権。

コンマ1秒すら無駄にしてはいけないのだ。



男は全身汗臭い格好のまま車を走らせる。

次の現場は清流と名高い「高時川」。

そこを神崎川で出会ったテンカラの師匠とのんびり優雅に下る。

はずだったが…



まだまだ北近江の一日は終わらない。




北近江1デイトリップ高時川編へ 〜つづく〜



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MATATABI BASE

コメント

    • madara
    • 2014年 12月 07日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    毎度楽しそうで何よりです〜〜

    賤ヶ岳、今年の5月に南の方にある山本山からMTBで縦走してきました。
    初めて行く山でかなりハードだったような・・・チャリ担いだりしながら山の中を3時間ほどさまよったツライ思い出がよみがえります。

    tukon780さんが間違えて下って行かれたコースを下ったなぁ・・・そこから駐車場までの舗装路も長くてツラかったなぁ・・・ってツライ思い出ばっかりだ(苦笑
    ひょっとして遊びってツライものなのかも?

    • yukon780
    • 2014年 12月 09日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    madaraさん、毎度毎度楽しんでおります。
    まあ心にひっかっかるものがあるんで(家庭)そう素直に全力では楽しめませんが、はっきり言って現場では全力で遊んでます。
    僕も時間があれば山本山の方からの縦走ランがしたかったんですが、今回はあくまでも高時川の川下りがメインだったので最短ピストンコースになりました。
    まあピストンと言っても元の場所には戻れませんでしたけど…。

    基本的に真の遊びとは99%のマゾと1%の快楽だと認識してます。
    某ネズミーランドなどの「100%の笑顔をお約束」なんて世界は遊びではないです。
    お互い、もっと己を痛めつけてやりましょう。
    きっとそこに男のロマンが輝いているはずです。

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