烏帽子岳〜野口五郎岳/長野

マゾゴンクエスト序章〜沢と山と大地と呪われしマゾ君〜

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ついにこの時がやって来た。

アウトドアでマゾに邁進し、ダーマ神殿に通い続けること十余年。

その男はやっと伝説の職業に転職したのだ。



思えば彼の最初の職業は「カヌー野郎」だった。

そこでコツコツと経験値を積み、ソロでアラスカくんだりまで冒険できるようなると「遊び人」に昇格。

しかし結婚というディープなダンジョンに迷い込んでしまった事により、むなしく「育児野郎」への転職を余儀なくされた。


これにて数日に渡る長期旅は無理になったが、ダーマの神官はそんな育児野郎に手を差し伸べた。

子供を背負った日帰り登山なら問題ないだろうってことで、「子背負いハイカー」という職を斡旋。

それがきっかけで彼は山にはまり、結局勝手に一人で山を登り出して見事に「登山野郎」へ昇格。


だがやはりそんな勝手な行動を家庭内ハーゴンが見過ごすはずがない。

男はいてつくはどうで職をはぎ取られ、空しく「奴隷」という身分へと落とされた。

だがそれでも彼は苦肉の策として、「みんなが寝ている早朝だけなら」という理由で「早朝トレイルランナー」という新しい隙間産業を見いだした。


で、なんだかんだとハーゴン様の目をかいくぐりながらも彼は意地の冒険を続けた。

カヌー、登山、トレラン、子連れアウトドア。

そんな苦難の活動がダーマ神殿に評価され、彼は見事に「スーパーマゾスター」という上級職へと昇格。

この時点で男は二児の父として「やりすぎた男」という称号まで手に入れた。


やがてそのやりすぎた男は、よせばいいのに伝説の勇者のアイテム「パックラフト」を手に入れる事になる。

男はそのアイテムを持って再びダーマ神殿へ。

するとついに、スーパーマゾスターを極めた者だけが転職可能な伝説の職業「パックトランパー」に昇格する資格を得たのだ。



「パックトランパー」

それは「パックラフト」「登山」「トレラン」「冒険」を中途半端に極めた奴隷のみに許された伝説の職業。

マゾの奥義を極めんとする求道者達が行き着く最終地点。

己の限界までマゾりきれる者のみが体験する事が出来る珠玉のブラック職業なのである。



前置きが長くなったが、要するに「今の僕に出来る究極の遊び」こそパックトランピング。

そのようなアウトドアのジャンルはないので、便宜上勝手に「パックトランピング」と名付けたが、これは「パックラフトを背負ってトランピング(登山・放浪・旅)して川下りまでしてしまうというお得なマゾパック」という意味が込められている。


パックラフトを手に入れた事で、日本でもアラスカ的な旅が出来るのではないか?

私は奴隷だから長期の旅は無理でも、ギュッと詰め込んで無理すれば心躍る大冒険が出来るのではないか?

登山もしてトレランもして川下りもし、秘境を冒険したり極上の野天風呂に浸かったり釣りまでしちゃったり。

もちろんマゾも欠かさない。


今こそその時。

パックトランパーに転職した今こそ冒険の大チャンスなのである。


そんな彼の挑戦の記録。

まだ誰も踏み込んだ事がないであろうパックトランピングという世界。

しかし彼は後に知る事になる。

それはただの「苦行」だったという事に。


その苦行の模様は次回以降お送り致します。

今回はあくまでもプロローグ。

自分的に書いておきたいだけで、他人的にはどうでもいい回。

今回の旅に対する思い入れを、パックトランピング誕生の歴史とともにどうしても書いておきたかったのです。


さあ、お暇な方だけどうぞ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その全ての始まりは半年前。

僕がまだスーパーマゾスターだったあの頃。

僕は冬の八ヶ岳でもう一人のスーパーマゾスター「ランボーN」に出会う事になる。(参考記事:ヤツオリンピック


その頃ランボーNはすでにパックラフトを所有していた。

そして僕もパックラフトの購入を画策していた頃。


二人の同業者は意気投合し、早速お互いの嫁には見せられない悪い顔で密談を交わした。

世に言う「赤岳鉱泉サンマ会議」である。


内容は岐阜の川浦渓谷をパックラフトで探検しようというもの。

しかしさすがはスーパーマゾスターのランボーN。

決行日が近づくにつれだんだん話がマゾ方面に脱線し、「せっかくだから九頭竜湖漕いで沢から山に侵入して、パックラフト担いで沢登りで山越えて、反対側の沢でビバークした後で川浦渓谷に攻め込もうよ。」という変態プランが浮上。

まさに日本のパックトランピングの夜明けを告げる歴史的なやり過ぎプラン。

これにコーフンした僕は必死の思いでハーゴン様に究極呪文「ドゲザ」を連続で炸裂させ、2日間の自由を得る事に成功したのだ。


しかしである。

7月の決行日を目前に大変な事実が発覚。

ハーゴン様に了承を得た時はお互いに気づいてなかったんだが、なんとその決行日がハーゴン様の「お誕生日」だったという大失態。

しかもその2日前がりんたろくんの誕生日なので、まさにその決行日は「合同お誕生日パーティー」の日だったのである。


さすがに嫁と子供の誕生日を振り切ってまで遊びに行ったら、帰宅した頃には僕は旧姓に戻されているいる可能性が大だ。

もしくはハーゴン様の「もえさかるかえん」をモロに食らって、二人の誕生日がそのまま僕の命日になりかねない。

しかもご両親の手前もあるし…。



と言う事で川浦渓谷探検は2週間後に延期に。

そしてついにその日がやって来た。

台風8号とともに…。


「過去最強クラスの台風」とという謳い文句で直撃した台風。

河川や沢が増水する中、河川や沢だけで遊ぼうとしている二人のスーパーマゾスターに突きつけられた現実。

そして結局川浦探検は中止になった挙げ句、代替え案で突入してしまったのがあの伝説の「白馬男塾」。

結局これにて僕はパックトランパーになりそこねたばかりか、男塾でスーパーマゾスターとしての経験値をさらに荒稼ぎした事は記憶に新しいところだ。(参考記事:白馬男塾3部作


これにて今シーズン中のパックトランパー転職の夢は途絶えたかに見えた。

しかしハーゴン様との粘り強い戦いは続いていた。

「やりすぎた男」とともに「諦めの悪い男」という称号も所有する男は、「8月は育児に没頭しますんでどうか1回だけチャンスを!我に光を!」と神々しく土下座。

これに対して気の毒に思ったのかサド心が満足したのか、見事に8月頭に1泊2日の自由権を獲得。


男は喜び勇んでその日を待ちわびた。

楽しみ過ぎて、決行日の1週間前にはすでにパッキングが終わっているという準備の良さだ。

IMGP5164_20140827155945084.jpg

ランボーNは都合が合わなかったんで、今回は川浦渓谷じゃなくて新たに発見したルートを開拓しに行くのだ。

もう今からワクワクが止まらない。

ついに私は念願のパックトランパーに転職できる時が来たのである。


そしてついにその日がやって来た。

台風12号とともに…。


「経験した事のないレベルの大雨」という謳い文句で直撃した台風。

ダーマ神殿はまだ私に試練が足りないと言うのか?


男は目に涙を浮かべながら、ダーマの神官にかけよる。

img_5.png

男は叫ぶ。

「いいかげん私をパックトランパーに転職させてくれ!」と。

しかし神官は、

img_6.jpeg

と、言うじゃない。


どうやらまだまだ私には試練が足りないようだ。

しかしまだまだ諦めるわけにはいかない。


8月は割と家族の予定もなく、ハーゴン様も比較的穏やかだったんで翌週への延期を許可してくださった。

しかし翌週は見事に「雨」。

そしてまた翌週へ延期。

見事に「雨」。


そう。

この男のパックトランパー転職へのアツい想いのせいで、なんとこの日本から「夏の青空」がごっそりと奪い去られてしまったのである。


察しのいい読者の方はこの夏の雨ばかりの異常気象に対して「ははあ、またアイツが遊びの計画を立てやがったな。」とお気づきになった事だろう。

本人としても、まさかひと夏丸ごと持って行かれるとは思っていなかったのである。


思えば去年の夏。

僕は「夏の完全自宅謹慎」を余儀なくされていた。

嫁から「8月はどこにも行くな」と命令され、地獄のような自宅謹慎の日々。(参考記事:何もできなくて…夏

そんな去年の夏は、連日「大快晴」が続いていた事を思い出す。

結局僕は自宅にいても外にいても、夏を楽しむ事は許されないのである。


しかしもうこの2週連続の延期スライドで我がストレスはピークに。

お預けを食らえば食らう程、じらされればじらされる程に悶々度の上昇に歯止めがかからない。

もう「3週間前」からパッキングの済んでいる我がザックも泣いている。

IMGP5162.jpg

「ご主人様、いつになったら私は旅立てるんですか?」と責めるような目で僕を見て来る。

もうこのパッキング済みのザックを毎日見てると、我が胸中は引き裂かれる思いなのである。



そんな中迎えた8月第4週。

8月の5週目はさすがにハーゴン様に用事が出来たので、この第4週こそが転職のラストチャンス。


だがもちろん言うまでもなく、週末の天気予報はしっかりとオシャレな傘が乱舞している。

だが限界を迎えたその男は「例え天からまめぶ汁が降って来ようが俺は行く。行くと言ったら行くのだ!」と宣言。


おそらくこの試練を乗り越えないと、パックトランパーへの転職のお許しが出ないのだろう。

確かに言われてみれば「晴れた世界を楽しもう」なんて思った時点でダーマ神殿の怒りを買っていたのだ。

私がスーパーマゾスターである以上、その職務は全うしないといけないのである。



という事で、やっと男は旅立った。

向かった先は、転職の舞台に持って来いの北アルプス。

彼が国土地理院の地図とにらめっこしながらあぶり出したステージだ。


実は彼は、北アルプスのとある秘境に「白肌パイオツ」という名の伝説の秘宝があるという情報を得た。

今回はその秘宝を、パックトランピングスタイルで摑み取ろうと言うのが冒険の目的だ。


その秘宝への最短ルートを示したのが以下の宝の地図。

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行きはパックラフトを担いでトレッキングし、秘宝を手に入れてからはパックラフトで源流部を下って湖へ。

そして湖を横断して、人が踏み入らない沢でイワナ釣り三昧という計画だ。


しかしである。

彼はパックトランパーである前にスーパーマゾスター。

故によせばいいのに、このような「大回り道」をするというまさかな計画を立ててしまった。

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直接秘宝に向かえば楽なものを、なぜか「ついでに裏銀座を縦走しちゃったらどうだろう」と考えてしまったのである。

3時間で辿り着ける場所に、あえて「15時間以上」かけて行こうと言うまさかなプランニング。

しかも相手は北アルプス三大急登「ブナ立尾根」を擁するハイパーマゾルート。

下山の竹村新道だって「登りも下りも健脚向け」と言われるハードな道。

そこを彼はパックラフトを背負った「総重量24キロ」のザックを背負って行くと言う。

さすがはスーパーマゾスターの発想力だと言わざるを得ない。


だがこれこそが試練。

これを乗り越えてこそダーマ神殿から正式な転職の許可が得られるはず。


しかしこの旅は辛い事ばかりじゃない。

天下の裏銀座で絶景を堪能し、最高のロケーションで野天風呂に入り、素晴らしい渓相を眺めながら川を下り、〆はイワナを釣りまくってそれを焚き火で焼いて食べるのだ。

まさにこれは男のロマンが凝縮した夢祭り。

恐らく過去最高の旅になる事だろう。



やがて男は駐車場のある七倉ゲート前に到着。

その途端。

急激に雨が降り始め、やがてそれはバケツをひっくり返したかのような「ゲリラ豪雨」に。

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天気予報ではこの時間帯は曇りだったはずだが…。

男はここで車を降りて小便をするべくトイレに掛け混むが、車からトイレまでの3mで全身余す事なくびしょ濡れになってしまったほどの豪雨。


こうして男は、まだ始まってもいないのにずぶ濡れになってこの場所で仮眠。

実にスーパーマゾスターらしい演出だ。

いよいよこれで、やっと彼の戦いが始まるのである。



男の未来に待ち受けているのは「夢の実現」なのか「マゾの現実」なのか?

待ちに待った大冒険への道のり。


その全貌は次回からお送りして行きます。

場合によってはハンカチが必要になるかもしれません。


「僕も、私もパックトランピングしてみたい」

そう言ってもらえるように。

そして不幸に悩む人々が「ああ、これに比べたら私は楽だ」と笑顔になってもらえるように。


彼は冒険の一歩を踏み出すのであります。



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MATATABI BASE

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コメント

    • こういち
    • 2014年 8月 28日

    SECRET: 0
    PASS: 6ddc4780772f45c035376f60279feb5e
    おつかれさまでございます。

    湯俣川でのパックラフティング、自分もやってみたいと思っていました!

    次回更新を楽しみにしています。

    • yukon780
    • 2014年 8月 28日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    どうもです!
    やっぱ夏のパックラフターは源流ですよ!
    100%こんなとこで鮎釣ってる奴はいないしそもそも鮎いないし。
    でもやっぱり源流だから当然行くのも下るのも過酷な世界。
    もうちょっと気軽な場所が良かったんだけど、地図見る限り山と絡めて楽しそうなのはここしかなかったんですよねえ。

    まあ実際どうだったかはまた書いて行きますが、あまり大きな期待はしない方が良いですよ…。
    所詮僕は僕なんで、かっこつけて「パックトランパーだ」なんて言ってるけどただのマゾ道中ですから…。

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