本宮山/愛知

りんたろ挑戦記〜親子三代オータムマゾフェスタ〜

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岩壁をよじ登る4歳児。

そして同じく岩壁をワシワシ登って行く70歳の女。

さらにその状況を背後から撮影する37歳のマゾ男。


晩秋の山中に現れた、お馴染みの「親子三代」。

マゾの血脈を一子相伝で引き継いで来た、実の母・子・孫が織りなすオータムマゾフェスタだ。


僕はともかく、そもそもなぜそんないたいけな幼児と老婆が、こんな変態的な岩壁でマゾることになったのか?

実は彼らは今、歴史的な扉をこじ開けようとしている所なのだ。



実に今回で30回目を迎えた「りんたろ登頂記」。

今まで散々お父さんが無理矢理りんたろくんを山に担ぎ上げ、数々の名マゾを繰り広げて来たこのシリーズ。

しかし、今回はついに「りんたろくん完全自力登頂プロジェクト」が発動。

もうお父さんに担がれる事無く自らの意思で山頂を落とすという、りんたろくんによる「脱マゾ父」宣言を目指す。

ついに我が息子が、己の足だけで山頂を目指す時が来たのだ。


そしてこんな4歳児をサポートするべく立ち上がったのが我が実母。

ちょうど帰省する用事があったため、再び親子三代アタックが実現したのだ。


かつて最高でも3mの山(丘)にしか自力で登った事が無いりんたろくん。

そんな彼に用意された山は、東三河人お馴染みマウンテン「本宮山(ほんぐうさん)」789m。

実にその標高差「786m」。

これはりんたろくんにとっては壮大なチャレンジだ。


「りんたろ登頂記」と「親子三代シリーズ」の集大成。

果たしてりんたろくんは自力登頂を達成したのか?

そして事態はマゾがマゾを呼び、最終的には見事に3人で壮絶な遭難へと追い込まれた大持久戦へ。

果たして親子三代は無事にこの山から脱出できたのか?


そんなオータムマゾフェスタの、楽しげなマゾ模様を振り返って行こう。


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本宮山登山口に向かう道。

スタート前から、驚く程の「やる気無しモード」の挑戦者。

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そもそも今回の帰省に際し、笑顔で「ボク、一人でお山に登るの」と宣言したのは彼だったはず。

これは早くも僕が背負わされるいつものパターンなのか。


しかし今日のお父さんは心を鬼にして君を初自力登頂まで導く覚悟。

僕は父としての威厳たっぷりに、「頼むよ。がんばろ。お願い。登れたらおもちゃ買ってやるからさ。」と厳しく言い聞かす。

もうこの時点で己の意思もくそも無い気がするが、幼児が山に向き合うには褒美が必要なのだ。


そして何とかヨイショをかまして彼を歩かせる。

やがて登山口の鳥居へ到着。

さあ、記念すべき君の偉業への第一歩の写真を撮ってやろう。

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いきなりつまずいてるじゃないか。

まさかの「一段目で転倒」という華々しいスタート。

とてもこの先、786mまで登れる気がしない。


一方で、スタートから容赦なくガシガシ登って行く我が母。

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孫の覇気の無さと対局をなす足取りの軽さ。

さすがは昭和の山を生きた女。

恐らく彼女一人だったら、その辺のトレイルランナーと同タイムで軽く登って行ってしまいそうだ。


しかしそんな昭和山女も今回はしっかりと孫をサポートだ。

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やはりいつも一人で勝手にマゾり始める父と違い、祖母は優しく孫を誘導している。

この調子なら、自力登頂も夢ではないかもしれない。


一方この時点で偶然なのか意図的なのか、車に忘れ物がある事が発覚。

ゆえにここでマゾ父が、「走って駐車場まで戻って走って戻ってくる」というのマゾプレイを勝手に始め出した。

しかもよりによってこの男、この日は「ならし運転だ」と言って買ったばかりのごつい冬靴を履いて来ている始末。

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この固い靴を履いての往復30分ラン。

やがて二人に追いついた時には、すっかり足を痛めて疲弊しまくるお父さん。

ファミリー登山だからといってマゾを怠らない父の姿に、テンションの低かったりんたろくんもすっかり笑顔だ。

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しかし彼のテンションは定まらない。

凄く楽しげに歩いていたかと思えば、

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次の瞬間には道を外れて立ち尽くしてフリーズし、

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再びテンションが上がったかと思えば、

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ひたすら座り込んで動かなくなる。

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今日も彼はとても自由だ。

自由過ぎて全く進んで行かない。


やがてはいつものように「もう疲れちゃったのよう」と言い出して、

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完全に座り込んでしまった。

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もはやここまでか。

しかし「疲れちゃった」とか言いながらも、バッタを捕まえて少しも疲れを感じさせないこの表情。

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間違いなくこいつは疲れてなんかいない。

早速お父さんに担いで行ってもらおうという魂胆が見え見えの男。

「もう歩けないのよう」と言って祖母に背中を押してもらいながらも、その顔は確信犯的にニヤついている。

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そろそろ彼のこのダラけ根性を叩き直す必要がある。

そこで祖母は得意の昭和山女奥義「トレッキングポール現地調達」を発動し(参考記事:親子三代8耐登山〜昭和山女に学べ〜)、何とか彼を一人で歩かせようとする。

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しかし彼の徹底したやる気の無さはさらにエスカレート。

その表情からは感情が消え、

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ついには立ち止まって木の皮をむしり出す始末。

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やがて座り込んで、木の実をむしって並べるという作業に没頭し始める。

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こうなるとこの男はもう動かない。

もはやどう考えても、彼の自力登頂は絶望視された。

何度も言うが「ボク、一人でお山を登る」と言ったのはこの人だ。


そもそも登頂参考タイム2時間のこの山だが、まだ半分にも満たない地点でもう2時間が経過。

何とか再び祖母にサポートされながら歩くが、もはや目すら開いていない。

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父と祖母にはない「嫁の血」が、必死で我々マゾ一族に抵抗を試みているのがよく分かる。


やがて、もうすっかりビジュアル的には避難民の祖母と孫といった風情に。

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楽しいはずのファミリー登山のはずが、なぜか物悲しい光景に見えてしまう。


そしてそんな絶望的な状況の親子三代の前に立ちはだかるさらなる絶望。

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なんだかとんでもない急登地獄になってるじゃないか。

僕は母さんに「4歳でも自力で登れるような軽い山ない?」と聞いて紹介されたのがこの本宮山。

しかしどう見ても4歳児が一人で登れる山に見えないのは私だけだろうか?

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そう言えばこの昭和山女、まだ少年だった僕をいきなり槍ヶ岳に連れて行った女だったと言う事を思い出したぞ。

僕はとんでもない女に「軽い山ない?」と聞いてしまったものだ。

恐らく彼女にとっては、これが「4歳児が登れる軽い山」だったんだろう。

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りんたろくんも父と違って祖母は優しくサポートしてくれる人と思っていただろうが、今はもうそんな事は思っていないはず。

むしろ父さん、君の祖母が男塾の教官にしか見えないぞ。


実は今回話してて初めて知ったが、彼女は北アルプス北穂〜奥穂間の例の変態ルートをすでに攻略していたと言う事実が発覚。

※参考資料:先月に撮ったその変態ルート↓

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奴は「ああ、大キレット行った事あるわよ。50歳くらいの時に。」とものすごく軽い感じで言って来た。

そして「ジャンダルムも真下まで行って見学して来たけど時間がなくて引き返した」と飄々と語っていた。

ジャンダルムの真下まで行くだけでも結構な事だと思うが、まるで散歩でもして来たかのような軽さで彼女は語る。

我が母ながら、今になってそのマゾ度に震えを覚える程だ。

やはりまだまだ僕は母には及ばない。


そしてそんなやり過ぎサポーターズに囲まれて、ついにりんたろくんも発奮。

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一生懸命這うようによじ登り、

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やがて前のめりに力尽きた。

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ムキムキの祖母と変態のお父さんを肉親に持ってしまった不幸な少年。

やがてこの一族でお馴染みの「限界の先の世界」で、己の中に眠るマゾが目覚め始める。

いよいよ受け継がれる時が来た一子相伝のマゾ。

母から子、そして今孫へ。


ついにこの時、彼の中でマゾ遺伝子がスパークしたのだ。

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とうとう目覚めてしまった眠れる才能。

へこへこに追い込まれる程に沸き立つマゾき血潮。


彼は自らの意思であえて難関の岩場に取り付き、

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猛烈な勢いでグッハグッハと駆け上って行った。

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ちょっと前まで、木の皮をむしって座り込んでいた男とは思えない激しさ。

その後ろ姿からもマゾオーラが漂い始め、昭和山女に堂々と付いて行く様はまさに一子相伝マゾの次期継承者にふさわしい姿。

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完全に突き抜けてしまった4歳児。


やがて、母さんが「4歳児が一人で登れる山」と言い張った本宮山の修羅場がやってくる。

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これには70歳の山女もニヤリが止まらずに、してやったりの実に良い笑顔だ。

そしてそれに嬉々として取り付く「開花してしまった4歳児」の勇姿。

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やがてこの過酷な状況下で、彼のヨロコビに歯止めがかからない。

何故かこの岩場上で、突然「デニーロ!」と叫んだかと思うと、

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続けざまに「ドゥーン!」と叫び、

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最後に全開の笑顔で「アタックチャーンス!」と言って来た。

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マゾの世界に開花したヨロコビから、ロバートデニーロ・村上ショージ・児玉清というウルトラ三段活用を炸裂させた我が息子。

過去に僕が冗談で「これはウルトラマンの必殺技だよ」と言って仕込んだものを、今この場でこれでもかと披露して来たのだ。


もうすっかりウルトラマン気分(間違ってるけど)のりんたろくん。

最大の難所を、ご機嫌でガシガシ登って行くマゾ少年。

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やがて上がりまくったテンションを制御できなくなったのか?

ついに彼はマゾのみならず、何故か得意の「エロ太郎」へと変身。

前から来る山ガールに、これでもかという笑顔で握手を求め始めたのだ。

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「かわいー、かわいー」と言われて、ご満悦のエロ顔でニヤつく我が息子。

これに味を占めたのか、その後も次々と現れる山ガールに手を出す策士エロ太郎。

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「少年」という武器をまんべんなく活かした確信犯。

とても楽しそうだが、どうも違った形で登山が好きになって行っているような気がするぞ。

今だからまだ許されるが、大人になってからもマゾでエロだと救いがなくなるぞ。

そんなんじゃお父さんみたいになっちゃうぞ。


こうしてやっと機嫌良くガンガン登るようになってくれたはいいが、なんせすれ違う登山者全員と握手を始め出したので全く進んで行かない。

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ガールから中高年まで、まんべんなく虜にして行く男。

ここが本宮山1区の選挙区なら、彼はブッチギリで当選を果たしそうだ。


やがて妙な歌を歌い出し、買ったばかりのお父さんの靴に突然襲いかかって来たりの余裕をかます。



しかしそのペースは相変わらずで、全く進んで行かない。


やがて大階段が現れ、「私に付いて来い」とばかりに息も切らさずガシガシ進んで行く70歳の先輩マゾ女。

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この時聞いて初めて知ったが、彼女の登山靴は無名メーカーの3,980円で、ウェアは大半がユニクロ製だという事が発覚。

昭和山女の背中からは、「山は装備で登るもんじゃない。気合いで登るもんだ。」と声も無く語っていた。


そしてこれも後に発覚する事になるが、この時点で彼女は自分の飲料水の中に「焼酎」を投入していた事が発覚。

なんと奴は「水割り」で水分補給をしながら登っていたという驚愕の事実。

昭和山女の背中からは、「水なんて飲んでも意味がねえ。女は黙って焼酎飲んで登るもんだ。」と声も無く語っていた。

現代の山ガールが彼女から学ぶべき事はまだまだ多そうだ。


そんな逞しき先輩の後を追う、新進気鋭の天才マゾ少年。

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だが彼はまだ所詮少年なので、石碑を見ると文字の溝に沿って指をなぞりたくなる欲求が抑えられない。

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この道しるべの石碑が数十メートル単位であるから、その度にこの行為に及んでしまって先に進んで行かない。

それでも彼は、少しづつでもあくまでも己の足で進んで行く。

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完全に少年向きではない世界をひたすら登り続け、

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やがていよいよスタートから「4時間」が経過した頃。

ついにその4歳児は、リアルな限界に到達してしまった。

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その顔からは表情が消え失せ、ただただ力なく座り込んでいる。

これはさすがに気の毒だし、ここまでよく頑張った。

僕は「お前はよくやった。もうここらでお父さんが担いで行こうか?」と、彼にギブアップを促す。

すると彼は泣きそうな顔で「おもちゃはどうなるの?」と聞いてくるから、「がんばったけど、おもちゃはまた今度山頂まで一人で登れた時までお預けになるね」と僕は言う。

しかし彼は「いやだ、おもちゃ欲しい。そしてダッコもしてよ。」とジャイアンみたいな事を言い始める。

ここに来てぶり返して来た嫁のDNA。


しかし最後は「まだがんばる」と言って動き出し、酒臭い女に手を引かれながら歩みを進めて行く。

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でもすぐに良いタイミングでヘナヘナと座り込み、通りすがりの山ガール達に「ボク、がんばって!あと少しでお山のてっぺんだよ」と励まされている。

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さすがは策士エロ太郎。

勝負所を心得たジゴロっぷりで、4歳にして女心をくすぐるテクニックを身につけているようだ。


しかしさすがに4歳児が4時間以上も歩き続ければ、もはや演技ではないヘタリっぷり。

いよいよ僕と祖母が両サイドから支える「囚われ宇宙人スタイル」での根性登山。

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それでも彼は父に担がれるのを拒否し、粛々と山頂を目指す。

これが山頂への渇望なのかおもちゃへの執念なのかは分からないが、お父さんは非常に嬉しいぞ。


しかし「山頂で昼飯を食おう」と言っていたのに、時間はもう14時半。

すっかり腹を空かせてヘロヘロだったから、東屋で無念の途中昼食。

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彼は相当「うまいうまい」と言ってラーメンをすすっていたから、もう餓死寸前だったのかもしれない。

きっと4年の人生で一番うまいラーメンになったはずだ。


一方で優雅に熱いお茶を飲む祖母。

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と思ったら、「焼酎のお茶割り」だったというまさか。

そして孫に向かって「りんちゃん、おやつ食べる?」と言って「にぼし」を食わせるという暴挙。

りんたろくんも人生で初めてにぼしをかじるが、そのおやつの概念を超越した食材に対して即座に吐き出す始末。

やはり昭和山女の流儀は、まだ平成生まれの4歳児には理解できなかったんだろう。


そうこうしていると、お約束の「クソ寒い突風」に晒され始める親子三代。

りんたろくんもガタガタと震え出し、今にも泣き出しそうな状況に追いつめられた。

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「晴れたんだから風が吹くのは当たり前」というマゾ男の常識に付いて行くのが精一杯の息子。

ちなみにこの日はまれに見る大快晴だったが、この親子三代はずっと森の中だったからまだ一度も景色を見ていない。


さあ、山頂まで残りわずかだぞ。

寒過ぎてすっかりテンションダウンの孫を、背後からにぼし臭い息を吐きながら祖母が必死のプッシュ。

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中腰でりんたろの寄りかかる体重を支えながらのパワー登山。

サポートする側も相当にハードだ。


やがてあと少しで山頂の位置まで来て、祖母も手を離して完全に一人の足で歩かせる。

もはやフラフラのロボットのような美しき疲弊度。



追い込まれた時の父と同じ動き。

それでも彼は一歩一歩その足を山頂に向けて進めて行く。

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実に登山開始から「5時間半」。

いたいけな4歳の少年が、ついにその頂に到達したのだ。

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大盛り上がりの祖母と父をよそに、一切の笑顔も無く無感情な表情のりんたろくん。

そして彼は「はい、寒いからもう帰ろ。」と言い放った。

まるで父と祖母の気持ちを満足させる為に登ったかのような素っ気なさだったが、何にしてもお父さんは感動しているぞ。

よく頑張ったぞ、りんたろう!


で、ビックリするほど何の景色も見れない味気ない山頂を堪能し、

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せっかく晴れてるのに、スタートから徹頭徹尾何一つ景色を見る事無く下山を開始。


しかしさすがにこの時点で15時半。

このまま下山までりんたろくんに歩かせたら、我々親子三代はたちまち遭難して翌日のヤフートピックスをにぎわす事になってしまう。

とりあえず「りんたろくん完全自力登頂プロジェクト」は達成したから、下山はいつものようにお父さんと合体です。

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するとりんたろくん。

乗車わずか5分で、電源が切れるように眠りに落ちた。

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よほど疲れていたんだろう。

ほんと、お前はよく頑張った。

ここから先は、母と子二人の大人のマゾタイム。

良い子が見てはいけない世界だよ。


そして始まった、親子二人の「暗闇からの脱出下山パーティー」。

早く下山しないと、今時期は17時前にはもうすっかり暗くなってしまう。

猛烈な勢いで下って行くが、スタート時の「往復30分ラン」で痛めた足のせいで、そのマゾ度は相当にキレのあるものとなった。


やがて凄い勢いで辺りは暗くなって行き、

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いよいよ山陰に太陽が沈んで行く。

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まずいぞ。

まさか登りで5時間半もかかるなんて思ってもいなかったから、こんな状況を想定してなかった。

今回はいつも持ってるヘッドライトも置いて来てしまっている。

久しぶりに担いだりんたろくんの重さもパワーアップしてるし、こんな冬靴で走るように下山してるから膝の叫び声もスペシャルだ。

やはり大人のマゾはハイレベルだぞ。


でもそんな事は言ってられない感じに、みるみる暗くなって行く登山道。

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当然だが、もはや他の登山客なんて誰もいない。

僕はほぼトレランスタイルで登山道を駆け下りて行く。

そしてそれに対し、一切息を切らす事無く付いてくる70歳の女もある意味で恐怖だ。


しかし、やがてそんな母さんが「もうだめ!限界!」と言って来た。

さすがの昭和山女もさすがに齢70。

少しペースを落とそうかと思ったら、暗闇の中で何やらザックを下ろしてゴソゴソやってるぞ。

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そして中からポーチを取り出して「もういかん。もれる。」と言い放ち、彼女は真っ暗な闇の中に消えて行った。


この段階で炸裂させた昭和山女奥義「お花摘み」。

相変わらず昭和山女の辞書には、「我慢」「恐怖」「恥じらい」という言葉は存在しないようだ。

そして特筆すべきは、彼女がものの20秒程で事を済ませて戻って来たと言う事実。

もはや男子のレベルすら超越したタイム。

そのピットインからピットアウトまでの時間は、もうマクラーレンチームが闇の中にいたとしか思えない程の高速タイムだ。


もちろん彼女のスタミナは切れていないから、その後もひたすら駈け下る。

辺りはもう絶望的な暗闇になって行く。

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平和なファミリー登山の山で繰り広げられる、親子三代のまさかのナイトラン。

これぞ我々のオータムマゾフェスタ。

やがて、もう写真なのか放送事故なのか分からないような光景をひたすら楽しんで、

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なんとか無事に脱出完了。

登りで5時間半の道を、フルパワー下山で1時間弱で降りきった。

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まさか下山の記念撮影時に「フラッシュ撮影」する事になるなんて想像もしていなかった。

背後に何か変なものが写っていないか心配になるような記念写真だ。


こうしてあまりにも壮絶だった、りんたろくんの初自力登頂登山は終了。

本当に今日はよく頑張ったな。

そして全体を通して、見事に親子三代がまんべんなくマゾることが出来たね。



やがてりんたろくんは言った。

「登山楽しいね。」と。

お父さんはその言葉をずっと待っていたぞ。

でもすかさず「ボク、明日は富士山に登るね」と言って来た。

さすがは次期マゾ継承者。

今日のペースで行ったら、多分山頂まで80時間くらいかかるね。

でもいつかはこの親子三代で富士山に登ろうじゃないか。



と、こんな感じの平和な快晴の晩秋。

よくあるファミリー登山の模様をお送りいたしました。



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