小牧山/愛知

激闘ミルフィーユ〜小牧山〜

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冬の山中。

切り株の上で必死でケツの痛みと戦う少年が一人。

今朝「ウルトラマンに会って来る」と言って家を出た少年が、何故このような事になってしまったのか?



ここは愛知県の小牧山。

歴史好きな人はピンと来るかもしれない。

ここはかつて「小牧長久手の戦い」の時、徳川家康がいち早く目を付けて本陣を置き、戦いを有利に導いた最重要拠点。

そしてその戦いから430年後。

家康公と同郷の男とその息子が立ち上がった。

育児期間中の「束の間プチ登山」の最重要拠点として、その親子がこの小牧山に目を付けたのだ。



しかしそもそもその親子がそんな山に登る予定なんて全くなかった。

りんたろくんが言うように「ウルトラマンに会いに行く」が本来の我々の目標だったはず。

しかも父に至っては「しばらく登山はしない」と言っていた矢先の出来事。

一体二人に何が起こってしまったのか?


そして過去最低標高でわずか「86m」しかないこの平和な山で、なんと男は人生最大の危機に見舞われた。

かつていくつもの3,000m峰を落として来た男の、たった86m峰での絶望的な脱出劇。

もはや「死」すら覚悟した男の戦いが繰り広げられた。


430年の時を経て、再びこの小牧山で巻き起こった激しい戦。

そこには傾奇者らしい、さわやかで逞しい漢(おとこ)の姿があった。


それでは、そんな激戦に至る模様を振り返って行こう。


(この作品は「R-御食事」指定です。読後の苦情は受け付けません)


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快晴の日曜日。

朝目覚めると昨晩に降りたくった雪が積もっており、「遊ぼうよ」と無邪気に誘って来る。


こんな日には池田山あたりに行けば、フカフカの気持ち良い新雪登山が楽しめる事だろう。

しかし僕は育児のため、現在雪山登山産休中。


でもせっかくなんで、りんたろくんと近所の堤防に行って雪遊びです。

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遠方では池田山が「こっちおいでよ」と誘惑して来るが、ここはグッとこらえる。

次男こーたろくんの世話も大事だが、ちゃんとりんたろくんにも「子供らしい」外遊びを教えてあげないと。

家で閉じこもってばっかのもやしっ子にならないように、張り切ってソリ遊びだ。

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しかし家を出てわずか10分程。

まだ2滑りしかソリをしていないというのに、彼は「寒い」「疲れちゃうのよ」「おウチがいいの」「暖かいのがいいの」と子供とは思えないローテンション。


信じられない。

僕の認識している「少年」という奴は、こんな雪景色を見れば狂喜乱舞で庭を駆け回る生き物なはず。


この瞬間、今までの疑問が確信に変わった。

僕はこれに良く似た事を口走る生き物を知っている。

残念ながらりんたろくんの中に、ハッキリと「嫁」の姿を確認した。


家に帰ると、そのDNAの持ち主が「なんで遊ばんの。子供なのに」と、己を棚に上げまくった驚き発言。

パラオという海だらけの島に行って、一切泳ぐ事と動く事を拒否した女の発言とは思えない。

「あんたそっくりだね」と僕が言えば「臭いお前に似るよりマシだ」と言うじゃない。



そしてその発言から1時間後。

ついに旦那の加齢臭への怒りが爆発した嫁が巨大化した。

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40mまで巨大化した嫁が、ついにサドリウム光線を上から目線で解き放つ。


というのはウソで、実は僕とりんたろくんの二人で「ウルトラマンランド」へ移動して来たのだ。

嫁が「外が嫌なら、今日はお父さんにウルトラマンごっこでもしてもらいなさい」と言ったから、以前から気になっていたこのランドにやって来たのだ。


りんたろくんは猛烈なるウルトラマンファン。

仮面ライダーはオモチャの値段が高いし、やたらと種類があるので彼には見せないようにしている。

代わりにケーブルテレビでやってる初期の頃のウルトラマンやウルトラセブン、そしてウルトラマンタロウばかりを見せている。

これなら古い作品だし、オモチャ代金がかからないという親の策略に見事にはまってくれたわけだ。



入場料を払って園内へ侵入。

早速ウルトラマンダイナが現れて、会場の子供達はヒートアップ。

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しかし我がりんたろくんは、真似をしながらも若干キョトンとしている。

こんな新し目のウルトラマンは知らないからだ。


結局ダイナのショーの真っ最中にも関わらず、初期ウルトラマンに登場した怪獣の元へ移動していく男。

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彼にとっては、ウルトラマンダイナよりも「三面怪獣ダダ」の方がヒーローだ。

そしてダイナのショーそっちのけで、お父さんの手を引いて遊具内を徘徊。

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もちろん基本的に子供用なので、お父さんは常時中腰の体勢を強いられる。

入場料を払ってまで腰痛を悪化させる父をよそに、りんたろくんのテンションは非常に高い。


そんな猛烈な腰痛を抱えながら一緒にスライダー滑り台。

すると滑る程にこの季節特有の静電気が発生して「バチッバチッ」と、まるで大量のコビトからスタンガンの攻撃を受け続けているかのような状態でとっても痛い。


そうして次第に弱って行くお父さんをさらに追い込んむウルトラマンランド。

気付いた時に僕のポケットにiPhoneが無く、どこかに落としてるじゃない。


たちまち焦る僕。

そして周りを見渡せば絶望的な風景が。

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まさかとは思うがこの中のどこかに埋没してるのか?

ここから探し出すなんてウォーリーよりもハイレベルだ。


矢継ぎ早に繰り出されるウルトラマンの「腰痛攻撃」と「静電気パチパチ」からの「ウォーリー光線」。

平和な子供用施設内で本気で泣きそうになる36歳。

金を払ったからにはただでは帰らないマゾ星人。


やがてiPhoneは一人の知らない少年により「これ探してます?」と戻って来た。

僕にはどんなウルトラマンよりもこの少年がヒーローに思えた。


そんなこんなで、ひとしきりセルフマゾプレイを楽しんでいるとウルトラマンダイナのショーが終わって記念撮影会が始まっていた。

せっかくなんで、りんたろくんもこの「知らないウルトラマン」との撮影を試みる。


壇上に登るなり、自ら歩み寄って握手を求めるりんたろくん。

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そして何故かそのままダイナによじ登ろうとして係員に止められ、

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ダイナが「お父さんを見ろ」と言っているのに明後日の方向を見ている。

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自由すぎる少年の出現に、若干ばたつくダイナ陣営。

そしていよいよ「決めポーズ」での撮影。

係員の「さあ、カッコいいウルトラマンのポーズを決めてね。はい、ポーズ!」のかけ声。

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何故か彼は大声で「ドゥーンッ!」と叫んだ。

まさかの展開に騒然とする会場。

今までの子はみんな「シュワッチポーズ」や「ファイティングポーズ」だったにも関わらず、なんと我が子は「ショージポーズ」を決めてみせたのだ。


確かに僕はお風呂のウルトラマンごっこの際、冗談で村上ショージの「ドゥーン」をウルトラマンの必殺技の一つとして教え込んだ記憶はある。

彼は律儀にもそれをこのような晴れの舞台で炸裂させたのだ。


これでスイッチが入ってしまったのか。

慌ててスタッフさんが撮り直しをさせてくれたが、彼のコーフンが止まらない。

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必死でポーズを取ってくれてるウルトラマンダイナが滑稽な男にすら見えてしまう。

僕はスタッフさんに「すいません。もう大丈夫です」と言って、りんたろくんを回収した。

子供に変な事を教えると、とんでもない火傷をしてしまう事を知った。



会場を出てグッズ売場へ。

怪獣フィギュアの種類の豊富さにりんたろくんも「ハァハァ」と興奮気味だ。

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見かねて僕は「一つだけ買ってやるから好きなのを選べ」と言ってやった。

多分ピグモンとかバルタン星人とかの有名どころをチョイスするだろう。

しかし彼は散々悩んだ末、思いがけない怪獣を選んだ。

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何だこいつ?

何かすごく気持ち悪い奴を手にしたぞ。(後で撮った拡大写真↓)

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全身グレーで毛だらけの小太りのハエみたいな奴が、真っ黒な乳首を六つ付けてブツブツの真っ赤な目をしている。

なんてキショイ怪獣だ。

というかこんな怪獣見た事無いぞ。


僕は何度も「本当にこれがいいの?ピグモンとかかわいいよ」と聞いてみるが、彼はかたくなにこの小太りハエ男を離さない。

凄く気に入ってしまったようだ。

彼の中には楳図かずお的なグロテスクな美的感覚が備わっているかもしれない。



小太りハエ男とタロウのお面を買ってやって店を出る。

そしてそこにはウルトラマンのプリクラが。

早速りんたろくんとチャレンジ。

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やはり彼は撮影の瞬間、見事なウルトラマンショージになった。

もう今更気の毒すぎて「ごめん、ウソでした。それは村上さんという地球人のギャグなんです」なんて言い出せない。

これで今後「嘘をつくな」と教育する資格が無くなってしまった。



プリクラを終えると、そこには巨大なウルトラマンメビウスが。

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やはりコイツも新し目のウルトラマンだから、りんたろくんの感動は薄い。

しかしこのアングルから見ると、僕はドキドキが止まらない。

まるで嫁に怒られている気分になるからだ。

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よくオシッコのしぶきがはみ出して便器を汚してしまった時、このようなポーズで怒られて僕は平謝りする。

さあ、こんな悲惨な事になる前に早く帰らなきゃ。



僕とりんたろくんは帰路につき、エアポートウォークの近くのコロッケ屋さんに向かった。

実は嫁に「愛知県一美味いコロッケ屋があるからお土産買ってくね」と約束をしていたのだ。

その絶品コロッケが売っている三澤屋さんへ。

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ここでは松阪牛を使って素材にこだわりまくったコロッケを、その場で揚げてくれるのだ。

実はここに来るのをかなり楽しみにしてたんだよね。


でも何やら様子がおかしい。

繁盛店の割に、随分と閑散としているぞ。

確認してみれば、いつものように店頭に「貼紙」が。

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やっぱりね。

今日は27日で今は昼の2時。

一体何度こういう場面に出くわせば気が済むのか?


2時間も待つ程コロッケに飢えてはいないが、嫁にコロッケ買って帰ると言った手前なんとしても買って帰らないと殺されてしまう。

オリンピック競泳選手風に言えば「嫁の所に手ぶらで帰るわけにはいかない」と言った局面だ。



そしてこの瞬間、僕の中に悪魔が宿った。

僕の意思に反して体が勝手に動き出す。

悪魔に支配された僕の指が、iPhoneのGoogleMapアプリを勝手に起動。

嫌がる僕をよそに、地図で周辺の「山」を探し出す悪魔。

そして悪魔がそっと耳元で囁く。


「良い口実が出来たじゃないか。4時まで2時間もあるぜ。コロッケの為のちょっとした寄り道だ。登っちゃえよ、山。」

そして次の瞬間、僕は意識を失った。




20分後。

ハッと目が覚めた時にはこんな事になっていた。

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そこでは「山のフドウ」スタイルで少年を肩に乗せた男が、山に入って行く様子が目撃された。

レポーターが男にマイクを向けて「しばらく登山はしないんじゃなかったんですか?」と詰問すると、彼は「これは公園の散歩です。コロッケまでの時間つぶしです。」と目を泳がせながら言い放った。


確かにこの一番近くにあった「小牧山」は、あくまでも史跡公園という名称。

ゆえにこれは登山ではない。


りんたろくんも「夢のウルトラマンの世界」から「親のウルトラマゾの世界」へと突然引きずり込まれてしまった。

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しかもここにきて、彼の得意の「便秘によるオシリの痛み」が勃発。

顔をゆがめて「オシリナデナデしてー!」と叫んでいる。

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そしてすかさず「ダッコ、ダッコ」と言って来る。

たかが86mの超低山だから、今回こそ彼に自力登頂を期待したが早くもダメだったようだ。

結局いつものベビーキャリアは持って来てないから、腕のみで彼を担ぎながらの筋トレ登山散歩になってしまった。

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腕に彼の全体重がのしかかり、筋線がプチプチと千切れて行く感覚が心地いい。

そしてふと横を見ると、そこには奴がいる。

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妙にこの森の中の空気感とマッチする小太りハエ男。

気になって調べてみたら、どうやらウルトラマンレオに出て来た「サタンビートル」という怪獣らしく、口から猛毒ガスを撒き散らし、腹部の筒状の器官からはロケット弾を発射するとある。

いつも僕がオナラをする度にりんたろくんは何故か「お父さんカッコいい」と言っているから、もしや毒ガスを吐く生物に一種の憧れを抱いているのかもしれない。

そしてプチ情報としては、こいつはハエじゃなくてカブトムシの怪獣らしく、意外と子供達に人気の怪獣らしいです。


こうして僕と息子と毒ガス怪獣の三名で仲良く山頂へ。

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久しぶりの「りんたろ攻城記」6番目の城は小牧城です。

そして登頂記念に、手作り感満載の顔出看板へ。

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顔のサイズもでかすぎて松井秀喜モデルの顔出看板だ。

さりげなくあの小太りハエ男を肩口から登場させている辺り、彼も随分と顔出看板のベテランになって来たものだ。


これでテンションが上がったりんたろくん。

何故かその場にいた足軽ガイドのおっさんに「これ、サタンビートルよ」と必死で怪獣ガイドを始め出す。

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最初は足軽のおっさんも戸惑っていたが、そこはやはり旧世代。

「それ、ウルトラマンの怪獣じゃないか」と乗って来た。

りんたろくんは同世代の子とは話が合わないが、40代50代のおっさんとはたちまち意気投合する。

今なら良い営業マンになれそうだ。


そしてお城の展望デッキへ。

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白く雪化粧をした山々を見て若干心がざわついたが、出来るだけ見ないように心がけた。

でも気分は、電車で目の前に座った女の人のパンツが見えそで見えないのをチラチラと見る中学生のような淡い気持ち。

でも育児期間中はグッとこらえるんだ。


そして下山。

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山の逆側に向けた「遊園地」と書いてあった標識があったのでそこへ向かう。

これはりんたろくんも喜んでくれるに違いない。


しかしわざわざ行った「遊園地」には、滑り台とブランコしか無いという驚きの結果が待っていた。

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すっかりテンションを落としてグッタリとブランコに揺られる男。

僕は僕で手持ち無沙汰なので、モデル相手にグラビア撮影会。

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親子のシュールな「遊園地」でのひと時。


そしてこの余計な寄り道が地獄への序章となった。

駐車場は山の真逆にあるから、ずっと山麓を巻いて戻って行かねばならない。

そして山道を車に向けて歩いている際、あろうことか僕に激しいゲリが襲いかかって来た。


ここまで激しい腹痛は久しぶりだ。

少しでも腹の筋肉を緩めたら、たちまち僕のクリーミーカレーの大放出は免れない。


次第に、もはや我慢出来ないレベルにまで追い込まれる男。

いよいよ防波堤が決壊寸前となり、顔面蒼白で額からの脂汗が凄まじい。

道はとても平坦なんだが、汗だくで「ブハーッ、ブハーッ」と激しく息を切らす男。


でもこの山道内にトイレなんていうシャレたものはなく、このままではリアルに野に解き放つしか選択肢が無いという逼迫した状況設定。

でも一応ここは「史跡公園」で、周辺にはファミリーも歩いている。

「己の解放」をするには、あまりにもこの場所はパブリックすぎる。


本気でヤバい。

これはリアルにもらすぞ。

過去に何度か命の危険に遭遇しているが、今回のは一番過酷で絶望的な状態。

この歳でウンコをもらすなんてあってはいけない事だ。

何よりも親のそんな姿を目撃したら、りんたろくんは間違いなく将来グレてしまうだろう。


しかしそんな思いを吹き飛ばす程の勢いで押し寄せる波。

僕はたまらずその場にうずくまり、「りんちゃん…お父さん、もうダメかもしれない…」と弱音を吐く。

りんたろくんは真剣な顔で「きっとウルトラマンが助けてくれるよ」と僕を励ます。

正直、今あんなでかい奴が現れたら僕は驚きでもらす事必至だ。

いよいよ追いつめられたマゾ-78星人。


しかし諦めなければ希望はあるはず。

僕はりんたろくんを抱えながら(こんな状況でも自分では歩かない息子)、渾身の内股ダッシュ。

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かろうじて撮った写真は、僕の荒い息と熱気で曇っている。

相当に追い込まれた状況がよく表現されている1枚だ。


やがて意識が遠のき始めた時、やっと山の裏側に到達してトイレ発見。

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僕にとっては光の国よりもこのトイレのが遥かに輝いて見える。

勝利の瞬間に向けて、気と尻を緩めず慎重にトイレになだれ込む。


これで救われたと思った。

しかし大便の扉を開けると信じられない光景。

便器が大量の「トイレットペーパー」と「物体」で溢れ返っているじゃない。

トイレを器に見立てた「大盛りカレーライス」という芸術作品のような惨事。

試しにレバーを引いて流してみたが、詰まっていて全く水が出て来ない。


しかしもはや僕には選択肢は残っていない。

後先なんて考えられる状況ではないんだ。


狭いトイレ内に僕とりんたろくんとハエ男。

画竜点睛を欠いた芸術作品に最後の一筆を加え始める。

そんな父の最後の戦いを真っすぐに見つめる息子。

ここでの戦いをあまり細かく描写すると問題がありそうなので、オブラートに包むべく再び「サタンビートル」の解説を載せておく。

男は「猛毒ガスを撒き散らし、腹部の穴状の器官からはロケット弾を発射」した。





やがて戦いは終わった。


すっかり汗だくになったが、実に清々しい気分。

僕は切り離された己の分身に敬意を表し、ホトケの顔に白い布を被せるようにそっとトイレットペーパーを被せた。

こうして何層にも重ねられた歴代の男達の戦いの記憶。

その歴史の重みは詰まりすぎてて流す事などできない。


何層もの茶と白が織りなすハーモニー。

こうしてここに新たな名物「小牧ミルフィーユ」が完成した。



そんな僕の健闘を称えてハエ男が言う。

「これでお前も俺たちの仲間だ」と。

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臭い者同士の熱い友情が芽生えた瞬間だった。

初めて君に会った時はキショイなんて言ってゴメンね。

こんな汚い事を長々とブログで綴ってる男の方がキショイよね。



そしてもはや本来の目的を忘れかけていたが、やっとコロッケを購入。

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そして胸のカラータイマーが鳴り出したので、一路我が家へ向けて飛び立った。



二人が帰宅した頃、息子はタロウだった。

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そして父はハエ男で、嫁はサド女だった。

わかるかなぁ、わかんねぇだろうなぁ。

そもそもこれが「松鶴家千とせ」だと言う事がわかんねぇだろうなぁ。



こうして長い戦いが終わった。

430年の時を経て、父と息子が繰り広げた「小牧長グソの戦い」。

育児期間中でも十分マゾれる事を知った。

そんなありふれた日曜日の風景をお送りしました。



(※汚くてホントすいませんでした。)



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