富士見台/長野

忍び寄るベビースター〜富士見台〜

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笹の海に埋もれる父と子がいる。


本来であればこの親子、この日は家でのんびりする予定だった。

しかも父の方は前日に病院で「ホルター心電図」を体に取付けられており(参考記事)、この日はそいつを取り外す日だ。

挙げ句、心電図の24時間測定のために風呂にも入れず不潔極まりないバクテリアン状態。

さらには測定機のせいで寝違えて右の首筋を痛めているというおまけつきだ。


なぜこの親子が笹の海を彷徨う事になったのか?

それはチーム・マサカズの矢作CとゲリMが「行ける人、突然だけど明日天気回復しそうだから富士見台(1739m)〜横川山(1620m)に行こう」とFacebookで呟いたのが始まり。

学習をしないアホ魚のような僕は即座にそのエサに食い付いた。


しかもその山なら病院に寄ってから行っても問題なさそうだし、なんだったらりんたろくんを背負って行っても大丈夫ではなかろうか?

僕は何の根拠もなく大いにその山を甘く見ていた。


結果はいつも通りの修行の風景となった。

今回は先行して登っていたゲリM・矢作Cコンビと、遅れてスタートした僕・ビビるSコンビの二元中継でお送りします。


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朝8時半。

開院と同時に僕とりんたろくんは病院にいた。


本来ホルター心電図は24時間計測しなくてはいけないが、我慢出来ない僕は2時間巻きでさっさと心電図を撤去するのだ。

りんたろくんを連れて行った事が吉と出て、奇麗なナースさんが「かわいいー」と数人集まって来た。

いいぞ、りんたろう。


日曜日の早朝なので他に患者もおらず、ナースさん達もフランクだ。

ナースと戯れ、そして個室で美人ナースさんに優しく心電図を取り外してもらう。

恐らく最後の方の心電図は異常な数値を叩き出している可能性が高い。

不整脈と診断されなければいいが。


やっとホルター心電図が取れてスッキリしたが、テープの後がかぶれて痒い。

風呂にも入れてないから不潔感がハンパないし、寝違えた背中も痛い。

しかし「腹に入ればみんな一緒」の原理と同じく「山に入ればどうせ臭いし痛い」のだ。

気にせずその足で急いで車を走らせた。



やがて可児市でビビるSと合流。

彼の息子TKTとの久しぶりのご対面。

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20年後の中日ドラゴンズのエースと4番。

毎度精悍な顔つきのTKTに比べて、我がりんたろくんのアホそうな顔といったらどうだ。

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そして今、彼が手にしているベビースターラーメンが後に悲劇を生む事になる。


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その頃、げりやはぎコンビはすでに登山を開始していた。

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前回の木曽駒ヶ岳では中盤でゲームオーバーしていたゲリMだが、今回は快適に歩みを進めているようだ。

そして毎度その重いカメラのせいで途中で撮影を放棄してしまう従軍キャメラマンの矢作Cも元気に撮影中。

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やはり体力消耗前の矢作Cの写真は美しい。


彼らは久しぶりにのんびりと「あの男達がいない」という快適な登山を楽しんでいるようだ。

悪天候男・猪突猛進脱線男・失踪エロ男がいないゆったりとしたペースで「正しい登山」を満喫中。

雲は出ているが、青空も広がって実に気持ち良さそうだ。

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しかし彼らも薄々は気付いているだろう。

あの男がヒタヒタと忍び寄って来ている事に。


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あの男とりんたろくんとビビるSは、車で長い長い山道を走らせて登山口を目指していた。

あまりに長い山道なのですっかり車内で眠ってしまったりんたろくん。


僕は「可愛らしい寝顔だなあ、どんな夢を見てるのかな?」と微笑ましく彼を見ていた。

すると突然りんたろくんが何の前触れもなく「ビクンッ」と体を反応させ、手に持っていた食べかけのベビースターをぶちまけた。

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そして何事も無かったように再び眠りに落ちるりんたろくん。

後には凄惨すぎるベビースターの海。

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過去には岐阜城でベビースターをぶちまけ、茶臼山の展望台でもベビースターをぶちまけた男。

今の所、こいつにベビースターを買い与えた時のぶちまけ率は100%。

臭くなるから車内で物を食うなと嫁に散々言われているが、もはや車内はベビースターの匂いしかしない。

結果、怒られるのは僕だ。


もう二度とこの男にベビースターは渡さない。


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その頃の矢作C。

僕が散乱したベビースターの拡大写真を撮っている時に、優雅に草木の拡大写真撮影を満喫していた。

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浮かれやがって。

待ってろ、今そこにあの男が行くからな。


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ついに登山口に向かい出したあの男。

寝起きで不機嫌なりんたろくんが背中に乗ってくれず、ダッコで登山口を目指す。

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さすがに背負わないと、すっかり重くなったりんたろくんの体重を腕だけで支え続けるのは苦行だ。

おまけに無駄に重い「こびとづかん」まで持たされる始末。

登山口到着前に腕をプルプルさせて早くも虫の息のお父さん。


やがてやっとこさスタートです。

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彼はと言えば、最終手段のiPhoneに意識を向けさせその隙にご乗車いただいた。

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これやらせると何のために山に連れて来たか分からなくなるから出したくなかったが、こうでもしないと乗ってくれない。


登山道は快適そのもので、なんだか中世ヨーロッパの田舎道って感じが好ましい。

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向こうの方からハイジが空中ブランコで登場しそうではないか。

しかし実際はそんなメルヘンな気持ちにはなれない。

ここ最近の忙しすぎる日々で疲れきった体と寝違えた背中のせいか、異常にりんたろくんが重く感じる。

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もはや素敵な景色に目をやる事も出来ず、うつむいて息を切らす男。

そんな思わぬハードプレイに自然と笑顔がこぼれるお父さんと、景色なんてどうでもいいiPhone野郎。

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この親子の意思が通い合う日は来るのだろうか?


まあいいさ。

せっかく来たんだから素敵な登山を満喫しようじゃないか。

そう思った矢先に、モクモクと「アイツ」が現れた。

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あっという間にお馴染みの景色へと変貌して行く富士見台。

大空翼とサッカーボールが友達なように、僕もこのお友達といつだって一緒なのさ。

片時だってこいつと離れるなんて考えられないや。


と、前向きに考えようとするがやはり無理だ。

いつも通り悔しさにまみれた気持ちのまま富士見台の山頂へ到達。

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毎度変わらぬ真っ白な山頂風景にうなだれながらもニヤける男と、これ以上無いほどの退屈な表情の息子。

そしてそんな我々の気持ちに毎回追い討ちをかけて来るのが「山容看板」。

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いつものように想像力をフル回転させて、本来広がっているであろう景色を頭に思い浮かべる。

僕レベルの男になると、目の前にアンデスの山並みが想像出来るほどに明確なビジョンが捉えられる。

だったらわざわざ山に登らなくてもって言われそうだが、この場所で真っ白なキャンバスを目の前に想像するのがツウのやり方だ。

しかしどんなに想像したってへこんだ気持ちが回復しないのは残念だ。


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一方でげりやはぎコンビはすでに横川山から下山を開始し始めていた。

青空のもと、快適な登山を続けるゲリMと矢作C。


しかしそこで彼らは異変に気付く。

前方の富士見台の頂上だけが「暗雲」にまみれている事に。

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そう、今まさにあの暗雲の中に奴がいる。

これを見て彼らは「あの男」があそこにいる事を察知した。

こうして別方向から見てみるととても分かり易いね。


彼らは覚悟した。

ああ、間もなく快適登山が終わり「修行」が始まるんだと。


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真っ白な山頂を満喫した我々は一路横川山目指して動き出す。

富士見台から一度高度を下げて再び横川山に向けて登って行くルートだ。

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しばらく進むと前方からこちらに向かって来る二人の登山者の姿を確認。

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きっとげりやはぎコンビに違いない。

僕は大きくポールを降ってこちらの存在を知らせた。


しかし彼らと近づくにつれ悲しい現実を知らされることになる。

明らかに二人は別の人だった。


この二人とすれ違う時の気まずさと言ったらどうだ。

向こうの人もなんでなんであんなにポールを降られたか謎だった事だろう。


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覚悟を決めて下山して行くげりやはぎ。

この頃にはFacebookに投稿した事をすっかり後悔していた事だろう。


やがて前方に「負の気配」を感じた矢作C。

慌ててファインダーを覗いて迎撃態勢。


やがて前方の笹の中からマゾえもんが登場した。

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今にも四次元ポケットから「どこでもマゾ」を取り出しそうな勢いだ。


終わった。

げりやはぎの快適登山はこの時終わりを告げた。


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何気にしんどい富士見台から横川山までの道のり。

急激に下って来たから、帰りの登りは相当なハードさを感じさせる。


そして鞍部まで降りて、再び横川山目指して急登をグハグハと登って行く。

正直今までのりんたろ登頂記の中で地味に一番しんどい気がしてならない。


そんな中、前方に怪しげなパパラッチが突然登場。

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しまった、熱M現場を激写されてしまった。

今週のフライデーに「山中でのDM(ドメスティック・マゾヒスティック)現場!やっぱり息子は山を楽しんでいなかった!自分が気持ちよければそれでいい幼児虐待男」という見出しが躍ってしまう。

と、思ったらゲリMと矢作Cのげりやはぎコンビでした。


どうやらこの先の横川山の山頂は大したことないらしく、僕とビビるSも若干疲れ果てていたので迷わず全員での下山を決めた。

結果僕とビビるSは横川山登頂を断念し、一番しんどい場所を往復するだけの見事な修行登山となったわけだ。


そして僕と合流してしまったげりはやぎに暗雲がまとわりつく。

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もはや彼らにとって僕はキングボンビーのような存在なんだろう。

快適な登山なんて許さない。

一蓮托生。

墓場までお前達を離さない。


やがて僕のリコールポールが壊れた。

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修理不可で回収したポールが結構使えそうだったから持って来たんだが、やはりダメだったようだ。

再びはめたらはまったんだけど、何とその状態から動かない。

これ以降このポールは折り畳むことが出来ず、常に伸びきった状態をキープ。

随分とやる気に溢れたポールへと変化した。


そしてやっとこのタイミングで元気になる男。

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遅いよ。

どんだけ寝ぼけ続けてたんだ。


やがて真っ白な精神と時の部屋をひたすらに急登。

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見事に矢作Cはいつものように撮影を放棄し出し、ゲリMははるか後方へ。

あんなに楽しそうだったのに。

気の毒な男達だ。

君たちは誘う相手を間違えたのだ。


このように皆が悲壮感にまみれた所で神様は多少満足したのか、青空ってやつを提供してくれた。

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一番の急登場所での突然の激しい日差し。

たちまち汗まみれになって行く加齢臭軍団。

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どうでも良い場所で晴れられても逆に苦痛だ。


やがて富士見台の頂上に戻って来てやっとこさ昼ご飯。

晴れた山頂に浮かれてしまったゲリMとりんたろくん。

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神は見逃さない。

浮かれる事を許さない。

即座に我々の眼前(右側)からモクモクの雲を発生させて視界を遮る。

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こうして結局またしても真っ白な世界でメシを食う事になる。

とにかく楽しんではダメだ。

神は我々が常に苦渋に満ちた表情で山と向きあう事を望んでおられる。


で、結局渋々な表情で我々は富士見台から下山して行きました。

最後にはこんなにモクモクになりました。

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で、なぜかガードレール前で記念撮影。

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こうして本日も無事に修行を終えた修行僧達。

楽しかったのか?と聞かれれば僕は楽しかったと答える。

これが僕らの生きる道。



次回から彼らは僕を山に誘ってくれるだろうか?

僕は楽しいんだが、彼らの胸中はどうだろう?

親から人に迷惑をかけるなと育てられたが、僕の意思を越えた部分で展開する迷惑行為を僕自身もどうしていいか分からない。


彼らには今後も懲りずに友達でいてもらいたいものだ。

ともに修行の日々を楽しもう。



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MATATABI BASE

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