村積山/愛知

帰省物語 後編〜脱糞トライアングル〜

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5日間うんこしていないりんたろくんの為に、急遽発動された「りんたろくん脱糞プロジェクト」。

いち早く彼に脱糞してもらわなければ、お父さんはお母さんに激しく罵倒されてしまうのだよ。

怒られた挙げ句、お父さんが恐怖で脱糞してしまいかねない。

この年齢でそれは避けたいんだ。

(ちなみに僕の脱糞最年長記録は29歳。ウケ狙いで嫁に向かって思いっきり屁をひった時に粗相をしてしまった。大腸がウェッティな時にしてしまったのがいけなかったようだ。)



僕はネットでリサーチを開始した。

確かに5日も排泄されないと、その内深刻な状況になってしまうようだ。



さあ、緊急プロジェクトの開始だ。


無邪気に遊んでいたりんたろくんを捕まえて、力任せにスッポンポンにし羽交い締め。

大開帳の状態で、肛門を母さんに向ける。

泣き叫び必死の抵抗を見せる我が息子。がんばれ。


すかさず母さんお手製の第一弾の刺客「ティッシュのこより」で肛門を刺激する。

まずはソフトなこの方法でいってみたが、くしゃみじゃあるまいし脱糞の気配すら感じない。

まあ、想定内さ。


第二弾の刺客「濡れ綿棒」で肛門をツンツン刺激する。

彼が子供だから良いが、もし僕が36歳にしてこの状況に陥る事があったらとても耐えられない。

ダメだ、出て来る気配がない。


そろそろこっちも本気でいかせてもらうぞ。

第三弾の刺客として「ヴァージンオイル綿棒」の挿入という壮大なチャレンジだ。

母さんは何のためらいも無く、綿棒を容赦なくりんたろくんに突き刺した。

未だかつて経験した事のない感覚が息子を襲う。

「ぐおおおおっっ」と泣き叫ぶりんたろくん。


しかし、それでも中の引きこもり野郎は姿を見せない。

このままでは登校拒否になってしまう。


ここで一旦休憩を挟み、母さんが「最後の刺客」を買いに薬局へ行った。


母さんが戻って来たので、再びりんたろくんを羽交い締めにする。

またしても恐怖に取り付かれるりんたろくん。

彼はこの実家がトラウマにならないだろうか?


ついに最終兵器のアルマゲドン。

狙った獲物は逃がさない脱糞スナイパー。

最後の刺客「浣腸」が姿を現した。


親子三代による脱糞トライアングル。

父親に羽交い締めにされ、祖母に刺客を送り込まれる孫。


「ぎゃあああああっっっっ」と孫の悲痛な雄叫びがこだまする。

自分がやられる事を想像すると、見ていて痛々しい。

まさに戦場。

ここは脱糞最前線。

出るか踏みとどまるかの攻防戦だ。


そしてついにコロリとコルクの栓みたいな固まりがたまらず転げ落ちる。

ついに敵の防御線を切り崩した。

堰は切って落とされたのだ。



後は再びオムツを装着させ、アンパンマンを見せながらしばらく様子を見る。

15分後、周辺に異臭が漂い始め、彼のオムツの膨張を確認。

オムツの中では壮絶な土砂崩れが展開されていた。

りんたろくんの顔は晴れ晴れとしていた。


こうして我々は勝利を手に入れた。

やったな、息子よ。

これでお前も大人の仲間入りだ。

うんこを失って、代わりに得たものは「勇気」だ。

逞しく生きてゆけよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日。

昨日最初に会えなかった友達の家を訪問。

りんたろくんも、そこにいる3人の子供達とたっぷり遊んだ。


その後嫁に「母さんと僕とりんたろくんで散歩してから帰る」と電話で告げた。

「うんこ出たからって、あんま無理させんといてよ」という嫁。

しかし、嫁は知らない。

僕と母さんにとっての「散歩」とは「登山」の事をさしている事を。



向かった先は近所の「村積山」(むらづみやま)。

ひさしぶりのりんたろ登頂記、第14弾の山だ。

と言ってもわずか256mの里山なんだけどね。


昨日一皮むけてしまったりんたろくんも、とても良い表情だ。

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そんな孫を、刺客を送った張本人の祖母が優しく見守る。

昨日の一件を乗り越えた事で、我々親子三代の絆もより深まったようだ。


調子良く歩いて行くから、これは自力登頂いけるか?

出すもの出したから、背中にも男の自信ってのがみなぎって見えるぞ。

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と、思っていたらすぐに「ダッコ、ダッコー」とせがんで来た。

この辺のアウトドアへの根気の無さは嫁譲りだ。


登山口が見えた。

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看板には「急坂につき、きついルート」と書いてある。

今週末は登山は無理だと思っていただけに、思わずニヤリとしてしまった。


それにしても、母さんと山に登るのは中学生の時以来だ。

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当時行き先もよく分からないまま、北アルプスの槍ヶ岳に登らされた。


今でも焼き付いている光景。

山小屋で寝ていたら、母さんがビクッして起き上がった。

そして母さんは「なんだ、筋肉か。」と言って再び寝転んだ。

どうやら、枕にしていた自分の二の腕の筋肉の固さに驚いて起きてしまったらしい。

体は小さいが、実にパワフルな女なのだ。


そして槍ヶ岳のあの恐ろしい頂上でワンカップ大関を飲み過ぎて、酔っぱらってフラフラになるという危険も犯している。


僕は父親の放浪癖とこの人の「行き当たりばったり」な性格だけを受け継いでしまった。

その他の良い部分はすべて僕の兄ちゃんに遺伝された。


そうこうしていると、言うに違わない急坂が続いて行く。

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中々良い感じだ。

親子三代でマゾるのも悪くない。

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母さんも、息を切らす事無くガシガシ登って来る。さすがだ。


そして急坂を登りきって、頂上に到着。

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りんたろくんも、万歳なのか阿波踊りなのかよく分からないポーズで喜んでいる。

良かった良かった。

ささやかな登山だったけど、ちょっとだけ親孝行できたかな?


下山を開始したら、母さんが「おしっこしたくなってきた」と言った。

まあ、あと15分も歩けばトイレがあるから大丈夫だろうと思っていた。

しかしその後、我が母の口から「野ションしてくるわ」という衝撃的な発言。


まず、あと少しでトイレがあるのに何故っていう驚き。

そして母が「野ション」というワードを吐いて来た事への驚き。


母さんはおもむろティッシュを取り出し、山の中に消えて行った。

なんという逞しき母の姿。

さすがは我が母だ。

まるでイモトみたいな女だ。

我が嫁にも大いに見習って欲しいものだ。


こうして我々の「散歩」は終わった。


それにしても、うんことか野ションとか随分と汚い親子三代だ。

ちょっと、前回と今回の記事はひどいな。


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こうして僕とりんたろくんの帰省物語は終わった。


岐阜に帰ると、興奮しすぎたりんたろくんは何故か全速力で走り回って、凄い勢いで頭から壁に突入して行った。

たんこぶを作って大泣きの息子。

一体何がしたかったんだ?

やはりこの男も、誰に似たのかアホのようだ。


機嫌を取り戻したりんたろくんに聞いてみた。


「おばあちゃんのとこ、楽しかったか?」

「うん!」

「そうか。お山は楽しかったか?」

「うん!」

「そうか。また浣腸したいか?」

「うんっ!」


何も分かっていないのか、ただのアホなのか?

それとも、本気で新しい自分を発見してしまったのか?


どっちにしてもこの男の将来が心配だ。



帰省物語 〜完〜



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