塔ノ岳/神奈川

関東祝福遠征 塔ノ岳編〜追込み神前式〜

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祝いたい。

結婚おめでとうと叫びたい。

しかし平地の式場でおめでとうと言ってもありがたみがない。

どうせ祝うなら標高の高い所から上から目線で祝ってあげたい。

しかもできるだけ爽やかな早朝に祝ってあげたいのである。


サケヤKの結婚式当日の朝。

我らが向かった先は式場ではなく、もちろん丹沢山地。

神奈川在住の彼女を祝うのには持って来いのステージである。


しかし僕はここまでに結構な疲労と寝不足を重ねてヘコヘコ状態。

それでもお祝いしたい気持ちが僕をその場に停滞させようとしない。

濡れ岩の二子山も、渇水の長瀞だってすべて結婚式の一部。

あくまでも嫁には「結婚式に行って来る」としか言ってないから、これらは誰が何と言おうと「結婚式」なのである。

決して好きで関東の名所を遊び回っているわけではないのである。


二子山では式に向けた準備運動をし、長瀞で身を清めた次は、ここ丹沢山中で祝詞(のりと)を唱える。

朝から出来るだけ体を追い込み、胃液と共にこみ上げて来た衝動で祝詞を山の神に奏上する。

それが今回の目的。

これが我ら流の「神前式」なのである。


それでは結婚式前に行われた塔ノ岳神前式。

そこから無事に結婚式を駆け抜ける所まで、ザクッと振り返って行こう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


朝3時半。

泥のような眠りを切り裂くアラーム。

それでも体が目覚めるのを拒否するかのように動かない。

昨日の「大移動+1時間半仮眠+二子山登山+長瀞川下り」の疲労が、たった4時間くらいの睡眠じゃ抜けるわけがない。

それでも鬼の形相で目覚める僕。

意地でも丹沢行って走らねばならんのだ。


もはや遊びという範疇を大いにはみ出た使命感。

飲み会帰りで30分くらいしか仮眠が取れなかったB旦那を叩き起こし、二人してフラフラになりながら家を出る。

俺たちが祝わずして、一体誰が丹沢で祝詞をあげるというのだ。

これは自分たちのための戦いじゃない。

全てはサケヤKのためなのである。


やがて目をシパシパさせながら丹沢へ移動。

全身はすでにボロボロだが、精一杯の空元気ポーズでいざ出発。

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これより「お腹とおっぱい出てるのに何故か動けるブラザーズ」による、神前式スタートである。


早朝一発目からハイペースで「二ノ塔」目指して駆け上がる。

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この段階で僕は早くも終了間際の加藤鷹と化し、「ハアッ!ウウッ!アアーッ!」とやたらうるさいセクシークライマーに。

僕は恐らくその辺の小学生よりも息が上がるのが早い。

多分心拍数は常時170を越えた状態なんだが、不思議と息が上がると僕はスピードアップする。

ほぼ徹夜明けのB旦那も、いつも寝てなければ寝てないほどハイになってペースが上がる。


このような東西を代表する不思議人間達が駆け上がって行くと、やがてドドンとコイツのご登場だ。

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やはり富士山が出て来ると、「関東の山登ってます」って感じが一気に漂う。

地元鈴鹿の山とも、アルプスの景観とも違う独特な気持ちよさが丹沢には渦巻いていた。

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天気は快晴予報のはずだったのにやたらフォグってるが、それがまた味があってよろしい。


そんな富士山を横目に駆け上って行き、やがて「二ノ塔」を通過し、

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グハグハ走って「三ノ塔」に到達。

そこからはこれから辿って行く、塔ノ岳への長い長い道のりが見て取れる。

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遥か先の一番高いとこが塔ノ岳山頂。

この猛烈なアップダウンの光景を目にし、乳首を震わせてヨロコビに浸るマゾ。

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早くも昨晩食った焼き肉が喉元までこみ上げて来てそうだ。

そもそも新郎新婦ですらまだ眠っているであろうこんな早朝に、なぜこんな事をしているのか?

しかしその疑問は愚問。

あくまでこれは神前式なのだから。


ってことで、せっかく稼いだ標高を無にするダウンヒル。

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この山は登っては下ってまた登るという行程。

まさにそれは夫婦関係にも似たものがある。

喧嘩もすれば仲直りもする。

そうして山頂という名の幸せに辿り着くのだ。

この辛さは我々からサケヤKへのメッセージ。

岐阜の方にはずっと下り続けて闇に落ちて行った男もいるらしいが、どうかそんな風にならずに円満な夫婦生活を送っていただきたいのである。


で、ガツンと下ったらガツっと登って行く。

もうその頃には、不眠状態のB旦那は完全にハイで危険な状態に。

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青少年達も変なハーブとかに手を染めるより、彼のように不眠で山を走れば良いのだ。

簡単にハイになれて誰にも迷惑かけないからオススメだ。


そんなハイ状態で続いて「烏尾山」に到達。

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そのままグハグハと尾根道を走って「行者ヶ岳」到達。

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B旦那のハイが止まらない一方、久々のトレランスタイルでヒィヒィの疲労男。

この時点でクソ甘いエネルギージェルが、非常に美味しく感じてしまうという危険ゾーンへ。

蓄積疲労と痩せなかったダイエットのせいで、80キロのこの体が重いのなんのって。


そして頑張って上げた標高を、またしても下りでハードにリセット。

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そんな厳しい精神攻撃に耐えながら、5つ目の山「新大日」に到達。

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その先の「木ノ又大日」にはこんな可愛らしい小屋もある。

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このコースはとにかく登山道は綺麗に整備されてるし、低山なのに所々にトイレや小屋があってなんとも至れり尽くせり。

鈴鹿では考えられないおもてなしっぷりに、さすがは関東と唸らずにはいられない。

どうせならもっと山ガールが溢れる日中に来たかったものである。


しかし今日は神事で来ているので、その手の色欲や小屋の炭酸ジュースには目もくれずにひたすら先を急ぐ。

だって時間通り帰らないと、式自体に遅れてしまって本末転倒も良いとこなのだから。


やがて綺麗なお花のトンネルを駆け抜けて、

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吐き気を堪えながら最後の追い打ち急登を登って行くと、

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ついに塔ノ岳(1,491m)の頂に到達なのである。

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約4時間ちょっとのコースを2時間半で来れたんだから、O2B(お腹とおっぱい出てるのに何故か動けるブラザーズ)にしては上出来の結果だ。

しかし本当の意味での神前式の祝詞はここでは発せられない。

もっともっと己を追い込んだマゾの先にこそ、山の神と対峙する事が可能になるのである。


ってことでお互いにサクッとヤラセ写真を撮って、

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さっさと弾丸下山開始。

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下山と言えど、アップダウン豊富なルートなので結局グハグハと悶絶しながらの追込みアタック。

ここからはダウンヒルに集中するため、カメラもザックインして記録は残っていない。

しかしここでちょっとしたアクシデントが発生したのである。


もの凄い勢いで調子良く下りをかっとんでいた僕。

しかし途中で前を少々ゆっくり目で走っていたトレイルランナーがいて軽く渋滞状態に。

後ろからそれとなく音を立てて抜かさせて欲しい意思表示をするが、その人はヘッドフォンで音楽を聴きながら走っていたから聞こえない。

仕方なく、しばしドラクエ2のように3人が縦に並んだ状態で重なってゆるゆると走った。

しかし途中で少しだけ抜かせそうな広さの道があったから、チャンスとばかりに僕は「失礼します」と言って横を追い抜いた。

それに対しそのトレイルランナーは「勝負かけてきやがったな」と勘違いしたのか、もの凄い勢いで我々を猛追。

結果後ろから追われる形となり、3人は猛烈な勢いで弾丸ダウンヒルに突入。

完全にいつも以上のハイペースで駈け下り、その結果僕は激しく左足をグネッたのである。


結局あまりにもケンカ腰なその猛追に対して嫌気がさして、その人には先に行ってもらった。

というかヘッドフォンしながら山走るのはやめようよ…。


そしてそこに残ったのは、無理して左足首を捻挫した敗残兵が一匹。

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左手首はじん帯損傷で、左足首は捻挫。

いいぞ、だいぶ仕上がって来た。

しかもテーピング巻いてる途中に足の指をツるというおまけ付きだ。

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悶絶に悶絶が重なり、一体どこが痛くてどこが痛くないかもうよく分からない。


さあ、祝詞に向けた準備が整って来た。

正直走るどころか歩くのも痛いリアルな怪我だ。

もはや軽い遭難状態だが、このくらいじゃなきゃ山の神様に謁見など叶わない。

僕はビッコを引きながらフラフラ状態で突き進む。


やがて下山のくせに、「三ノ塔」に向けた猛烈な急登区間に突入。

ここでB旦那による「ここは最後の登りです。全力タイムアタックで共に死にましょう。」と小粋な提案が。

もちろん僕はその提案を飲んだ。


そこからは脚を引きづりながらも、猛烈なスピードでハイクアップ。

心臓が飛び出そうになほど心拍数はうなぎ登り。

すれ違う人の「おはようございます!」の挨拶にも、「ざ..す…」としか答えられない苦しすぎる戦い。

全速力で10分以上走ってる状態と言えば分かり易いだろうか。


やがて「もうそろそろか」と思って曲がった先を見た。

するとまだまだ終わらない超急登の嵐が目に入る。

するとついに僕は心が折れてその場に倒れ込む。

それを見てB旦那も「あと少しじゃないか!ガンバレ!立て!」と丹下段平状態で僕を奮起させる。


もう逃げ出したい。

しかしこれは自分のためではなくサケヤKのための神前式。

僕は予備の緊急ターボエンジンを点火させ、本気で吐きそうになりながら最後の急登を登った。

そして登りきった先でリアルダウン。

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胃の中からこみ上げて来る熱き想い。

それは声にならない声でヒューヒューと口から漏れ吐き出されていく。

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「掛けまくも畏き丹沢神の大前にマゾ男恐み恐みも白さく

八十日は有れども今日を生日の足日と選定め….」


薄れいく意識の中、ついに胃の底から沸き上がる祝詞。

これが我々流の神前式。

丹沢の神に己の身を奉納し奉り、無事に祝詞を奏上する事に成功。

これでサケヤKの結婚生活は順風満帆間違いなし。


この時間帯から登山者が増えて来て、多少変な目で見られたが気にしない。

再び根性で立ち上がり、左手首と左足首を負傷している半身不随男は、式に間に合わせるために必死の下山。

やがて山頂から1時間半で下山完遂。

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無事に?神前式を終える事が出来誇らしげな二人。

もう過労やら痛みやら眠気やらが混在して、とてもフレッシュな気分で一杯だ。


しかも今回の山行にて、我がお気に入りのトレランシューズがソールが剥げてご臨終を迎えてしまった。

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ここまでやれば奉納も十分だろう。

実に良い神前式だった。


こうして我々は、一路横浜に向けて帰って行った。

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意地でも休場しようとしない角番大関のような足首のテーピングが実に痛々しい。

さあ、後は穏やかな気持ちで結婚式に出るのみなのである。


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東京の結婚式会場。

途中で何度も寝落ちしそうになり、「B旦那…僕…式場に辿り着けないかもしれないっす…」と弱音を吐いていたが、なんとか会場にまで辿り着いたのである。

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静岡のモジャ男「黒はんぺんH」も合流し、お祝いの準備は万端。


しかしここで式場のスタッフに呼び出される僕とB旦那。

実は僕はサケヤKに頼まれて、式の最後に流れる来場者へのありがとうメッセージ動画を作成していた。

で、B旦那はその動画をDVDに焼いて式場に提出していたのだ。

でもってここに来て、その動画が「ちゃんと再生されない」というビッグアクシデントが勃発なのである。


後は気楽に式を楽しむだけと思っていた我々に突きつけられた最終難関。

最後にB旦那の家のプレステでちゃんと動作確認したのに、なぜここに来てちゃんと写らないのか。

なぜ我が人生はいつもこうなんだ。


しかし結局式場の人が別日にそのデータを焼いたDVDがあった事で、なんとか事なきを得た。

式場の人も「DVD焼き代が別途かかりますが」と言っていたが、本気で助かったから問題ない。

まあ式場価格で高くなったとして、DVD代と手数料含めてせいぜい2,000円くらいだろう。


するとスタッフは言った。

「10,800円になります。」と。


その瞬間、僕とB旦那は激しくズッこけた。

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さすがはビッグシティ東京の関東価格。

DVD焼くだけでこんなにもグレートな価格だとは。

しかもしっかり消費税まで。


結果「DVDすらまともに焼けなかったのは私ですから…」とB旦那が支払う事に。

これにてパーフェクトな奉納が完成し、これ以上ない完全体の形でサケヤKをお祝い出来る事と相成った。


これには別テーブルにいたサディステッィク女優Eも大爆笑しながら合流。

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横浜組オールスターが勢揃いし、いよいよ高まるセレモニームード。

そしてついに新郎新婦のご入場であります。

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脳裏に駆け巡るは辛かったここまでの戦いの日々。

ずぶ濡れ岩登り、渇水どんより川下り、胃酸逆流神前式、写らないDVD…。

ついつい熱くなる目頭。

もはや僕の目は真っ赤っかなのである。(ただの寝不足という説)


うまい棒係、ビールサーバー係のB旦那とバターNも実に嬉しそう。

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ビールはほとんど泡だけど。


何はともあれ、こうして無事にサケヤKの結婚式を祝う事が出来た。

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聞けば旦那さんも相当なマゾらしい。

尻に敷かれる事は必至だが、どうかそんなサケヤKの上質なサドを楽しんで欲しい。

そしてあまりに度が過ぎる発言が目立って来たら僕に相談しておくれ。

正しい土下座の仕方と仕事行くふりして遊びに行く極意しか教えてあげられないが、共に泣く事はできる。


そしてサケヤKよ。

どうか幸せになって欲しい。

そして出来るだけ旦那さんをやさしく包んであげてほしい。

どこぞの岐阜の養子のような悲しみを繰り返していけない。

ほんの一握り。

一握りのやさしさでいいのです…。


そんな君たち夫婦に、昨日僕が愛する嫁に言われたホカホカの名言を贈ります。


「ちょっとどいてよ。打ち上げられたトドみたいな顔しやがって!」です。


もう一度言う。

こんな悲しみを繰り返していけない…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


さあ、これで無事結婚式は終了。

今すぐにでも眠りたい気持ちはやまやまだが、もちろん祝い足りない我々は二次会へ。

そこでは必死に疲労と眠気の限界ラインで戦う男の勇姿が確認された。

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とうに限界を突破しているが、もちろんまだまだ祝い足りない。

そこで翌日。

我々は仕上げの「三次会会場」へと足を運んだ。


向かった先は多摩川上流、奥多摩の「御岳エリア」。

ここでサクッとデザート的にライトな川下りをし、ささやかに幕を閉じようというのが狙いだ。


しかしである。

あれよあれよと増えて行く「我らも祝いたいのだ」という有志達が大量登場。

最終的にその人数はまさかの「17人」という大船団に。


まだまだ終わらない関東祝福遠征。

家に帰るまでが結婚式。


血を吐いて倒れるのは

家に帰ってからで良いのである。


だって私は


打ち上げられたトドなのだから




関東祝福遠征 奥多摩編へ  〜つづく〜



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今回のギア


【上半身】
・ベース/ファイントラック「パワーメッシュT」
・Tシャツ/MHW「ウェイ2クールショートスリーブT」
・ウィンドシェル/ノースフェイス「コンパクトジャケット」

【下半身】
・ショートパンツ/パタゴニア「ストライダーショーツ」
・テーピング/ニューハレ「ニューハレVテープ」

【足】
・ソックス/ドライマックス「トレイルランニング」
・シューズ/モントレイル「バハダ」

【頭部】
・バイザー/ノースフェイス「ランナーズバイザー」

【ギア】
・トレッキングポール/シナノ「トレランポール」
・ヘッデン/ブラックダイヤモンド「ストーム」

【ザック類】
・トレランザック/ノースフェイス「マーティン ウイング 10」

【デジ物】
・コンデジ/ソニー「RX100」
・三脚/JOBY「アクションゴリラポッド」
・ウェアラブル/GoPro「HERO4silver」



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