銚子ヶ峰/岐阜

秋の中性脂肪祭り二日目 in銚子ヶ峰/後編

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快晴の空、ステキな登山道。

そんな中をトボトボと歩くテンションの低い男。


昨日から続く奇祭「秋の中性脂肪祭り2012」がいよいよ佳境に入って来た。

ここまでの非常に過酷だった祭りの数々が脳裏を駆け巡る。

チームGによる「痔鎮祭」から始まり、僕の放屁による「異臭祭り」、下山時に足を痛めた「アホの坂田祭り」、アゴ割れMを肉離れに追いやった「牛糞ランニング祭り」、温泉でコインロッカーが開かないという「全裸放置祭り」、8時間浴びるように酒を飲み肉を食らう「酒池肉林祭り」、そしてアゴ割れMの「台湾祭り」に巻込まれながらの「激辛嘔吐祭り」。

その勢いのまま突入した二日目では「二日酔い祭り」を基本ベースに「脱水祭り」からの「おたけり祭り」、そして辿り着いた避難小屋で「延長水場ジャングルフェス」を楽しみ、そのまま「背骨祭り」へと急展開。

ここまで実に13もの祭りを渡り歩き、僕のボルテージは下がる一方だ。


しかしまだまだ負けるわけにはいかない。

実はチームのメンバーには「お昼ご飯までにはみんなに合流する」と高らかに宣言して飛び出して来ている。

矢作Cおすすめのサンマ定食が美味しいというお店でお昼を食べ、この辛かった祭りを締めくくるのだ。


男はみんなの夢と希望を背負って突き進む。


それではそんな彼のその後の足取り。

誰も望んではいない蛮行を追って行こう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


やたらと姿勢の良い男が歩いている。

背筋はピンと伸び、真っすぐ前だけを見つめる精悍なる顔つき。


そう、彼は今激しい背中の突っ張りによってあまり前屈みになると激痛が走る状態。

精悍な顔つきに見えるのは、痛みで表情がこわばっているからだ。


息を吐く度に背中を痛めるというロングマゾブレスダイエット。

痩せる事はないが、みるみる顔色が白くなって行って美白効果は抜群だ。


そんな画期的なダイエット法を楽しんでいると、やがて紅葉区間を抜けてポッと視界が開けた。

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やっとここまで来たか。

この山を選んだ理由はこのステキな稜線を歩きたかったからだ。

さっき水を飲み過ぎて若干脇腹が痛み始めているが、もはやその程度の痛みなど祭りの内に入らない。

ここからは素直にこの登山を楽しませてもらうぞ。



とっても気持ちのいい道が続き、

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振り返れば紅葉の絨毯。

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しかし悲しい事にあまり振り返ると背中が痛い。

振り返る際は首だけでなく体ごと動かす事になるので、動きがロボジーのようになる。

今の僕ならこのまま東京ロボットショーに出場しても違和感なく溶け込めるだろう。


しばらく進むと遥か前方に「別山」が見えて来た。

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実は来年はあの別山を越え、遥か先の「白山」(はくさん・2,702m)を目指す白山連峰完全大縦走を企んでいる。

でも来年の一月には二人目の子供が生まれるので、恐らくそんなことが出来る立場にはない気がする。

果たして来年の僕は夢を叶えて「別山からの白山大縦走」の切符を手にできるのか?

もしくはその手前で怒りを買い「別居からの嫁さん大暴走」で緑の紙を手にするのか?

事は入念に運ぶ必要がありそうだ。



やがて岩の上に仙人が現れた。

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于吉仙人が雨乞いでもしているのか?(分かる人だけで良い)

僕はその岩を目指して行く。

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そしてその岩によじ登る。

岩の下で休憩中しながらバウムクーヘンを食べていた于吉仙人に写真を撮ってもらった。

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于吉仙人は不思議そうに「こっちを向かないの?」と聞いて来るが、怖くて足がすくんでいるのと背骨祭りのせいで振り向けないんです。

とりあえず「たそがれてる感じでお願いします」と言って撮ってもらった。


そしてこの岩からの眺めが絶景だった。

右見て、

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前見て、

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左見て、

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紅葉絨毯の大パノラマ。

まさに仙人にでもなったかのような浮遊感。

僕は今、鶴に乗って空を飛んでいるのか?

それとも実はさっきの水飲み場で僕は息絶えていて幽体離脱して浮遊して来たのか?


何にしてもやっと大満足の登山になって来た。

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「楽しい」と思えるまで随分と時間が必要だったが、やっと人間らしい秋の登山を満喫だ。

さあ、感動の山頂はもうすぐそこだ。

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早く山頂で華やかな記念撮影をして、ここに来れなかった奴らに見せつけてやるんだ。

今までにない最高の笑顔で写真を撮った後は、たっぷりと山頂を満喫してやる。

登山とは山頂でのそんな静かな時間によって今までの苦労の全てが報われるのが醍醐味なのだ。


そしてついに山頂に到達。

さあ、山頂の碑とともに勝利の記念撮影だ。

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誰だ、あんたたち?

もの凄い数の集団登山者が山頂をジャックしてるじゃないか。

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何やら引率者みたいな人が延々と白山の歴史を語っているのを、大勢の集団登山者がじっと聞いている。

はっきり言って記念撮影なんてできる雰囲気ではない。

なんだ、この突然甲子園のライトスタンドに置き去りにされた巨人ファンのような心境は?


笑顔の登頂写真は?

静かな山頂でのひと時は?

苦労が報われるって言う登山の醍醐味はどこへ?


達成感を感じる隙も与えずにやって来たガッカリ感。

僕は何か悪い事したかい?


そしてその場の激しい「部外者感」に耐えきれず、そのまま頂上を越えてさらに稜線を別山方向に移動して行く。

3時間以上登り続けて、頂上での滞在時間は実に「3分」にも満たない。

こうして背骨を痛めているウルトラマンマゾは悲しみのカラータイマーの警告音に耐えきれなくなって頂上を去っていった。


水場ジャングル祭りに次ぐ本日二度目の延長戦。

でも銚子ヶ峰から別山に続く稜線は強烈な美しき登山道だった。

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時間があればこの先の一ノ峰、二ノ峰、三ノ峰を経て別山・白山へと縦走できるが、楽しみは来年以降に取っておこう。

今日は早めに下山してみんなと勝利のサンマ定食を食わねばならんのだ。


稜線上に調度いい場所があった。

勝手に「ここを銚子ヶ峰、山頂とす」と宣言。

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山頂の標識もない場所でのヤラセ登頂写真。

彼が後ろ向きなのは背骨の痛みだけではなく、頬を伝う水が写らないようにしたせめてものプロデューサーの配慮か。

そしてここで目撃されたのが、前回のオープニング写真を飾った「うなだれる男」だ。

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顔が黒くなっているので、彼が笑顔なのか泣いているのかは窺い知る事はできない。


でも神はそんな憐れな男の事をちゃんと見てくださっている。

何気にこの仮頂上。

本当の頂上よりも当然人はいなくて静かだし、断然景色だって素晴らしいのだ。

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おおお。

ひょっとしてとても僕は今ツイテいる状態ではないのか?

ここまでの祭りが騒々しすぎて気がつかなかったが、こんなに晴れててこんなにいい景色で他に一体何を望むというのか?

うむ、まぎれもなくここは「僕の頂上」だ。


僕はホクホク顏で餞別で貰った魚肉ソーセージを食パンに挟んで食い始める。

雄大な景色を見ながらの静かなる勝利タイム。

無理してまで来て良かった。

やっぱり登山って楽しいなあ。


と、思った瞬間背後に異様な気配を感じた。

なんとあの大量の山頂ジャック登山者どもがワラワラとこっちに向かって来るじゃないか。


あっという間に奴らに占拠された「僕の頂上」。

その中のおばさんが「わあ、こっちのが景色良いねえ」なんて言いながら僕のトレッキングポールを踏んでいる。


腹が立ったので僕は元「僕の頂上」の下のスペースに仕方なく移動して、改めて座って景色見ながら魚肉パンを食う。

そんな僕の目の前でなぜか悠然と立ち止まる奴がいて、おかげで景色が見えないばかりか「そいつの股間を眺めながら魚肉ソーセージを食べる」という非常に気分の悪い状況へ。


こうして強烈に気分を害した僕は、逃げるようにその場を退散。

まあいいさ。

わずか一瞬でも幸せな気持ちになれたんだ。

彼らは悪くない。

少しでも楽しんでしまった僕が悪いのだ。


僕は何故か濡れて塩辛くなったソイジョイをかじりながら下山を開始した。

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ここから先はずっとメガネが曇っていたからあまり記憶はない。

もうこうなった以上、僕を突き動かしているのはみんなと食べるサンマ定食のみ。

少しでも早く下山してみんなに追いつくのだ。

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ひたすら元来た道を無心で下り続ける男。

相変わらず背骨は痛いし、結局は足も痛いし、ここまでの疲労も酷い。

しかし望んで足を踏み入れたこの世界。

後悔はしていない。


ノンストップで下り続け、やがて嫁が見えて来た。

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さあ、ここまでこればあと少し。

よく頑張った。もうすぐ祭りは終わるぞ。

意地でもサンマ定食に間に合わせるぞ。


そしてついにゴール。

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出発時よりもゲッソリとした男が撮影された。


ハアハアと息を切らせるぐったり男。

時計を見る。

14時10分。

サンマ定食が美味しい「だるまや」の集合時間は14時。

ここからだるまやまでは車で50分くらい。

そしてだるまやの営業時間は15時まで。




カンカンカンカンカンカン。


試合終了のゴングが無情に鳴り響いた。

男はその場で静かにマットに沈んだ。



ちなみに男がノックアウトしている時。

その時刻に彼らによって撮影されているサンマ定食がこちら。

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やっぱり秋はサンマだよね。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あれからどれほどの時が流れただろうか?

行き場を失った孤独な男は桧峠という峠に立っていた。


そもそも楽しくサンマ定食を食おうなどと考えてしまったのが分不相応というのも。

マゾはマゾらしくランニングでもするべきだなんだ。

祭りはまだ終わっていないのだ。



こうして男は何故かランニングを開始。

もちろん背中は痛いし足も痛い。

そもそも体力が限界に近づいて来ている。


でも峠から走り出したから、ひたすら下りで楽々ランニング。

しかし当たり前だが、その道をまた登って来なくてはならない。

当然後半は自業自得の心臓破りヒルクライムに突入。


「アッあー!」「ブハッ!」「ぐえぇえ。」

誰もいない山間の峠に断末魔の叫び声がこだまする。


そしてついに走り出して3キロ地点。

そこには脇腹を抑えて苦悶の表情を浮かべる男の姿。

ついに彼は脇腹を痛めて無念のリタイア。


もう十分じゃないだろうか?

そろそろ僕を楽にしてやってもいいんじゃないだろうか?


男は口元に大満足の笑みを浮かべながらヨロヨロと峠にある温泉へと向かった。

ここまで自分を痛めつけた後の温泉は格別なるご褒美だ。

とりあえずこれから温泉に浸かってから帰る事を携帯で嫁に連絡しておこう。

ここまでずっと圏外だったから、嫁も久々のダーリンの声を聞いて喜ぶはずだ。


すると嫁が「いつまで遊んどんの!お義母さんが風邪でダウンしているからさっさと帰って来い、このハゲ野郎!」と言うじゃない。

やはりこの迫力は「いとしろの大杉」の比じゃない。

僕は「そうなの?せめて温泉だけ入って帰っても良いですか?」と懇願。

嫁は「大人の判断しやあ。」とピシャリ。


こういう言い回しをする辺り、彼女が匠と言われる所以だろう。

もはや温泉にも入らずに最短で帰って来いと言っているのと変わらない。

実に恐ろしい。


僕は「こんな全身汗まみれの悪臭野郎で帰宅して迷惑をかけるのは大人ではない」という大人の新基準を作り上げて無理矢理自分を納得させて温泉へ。

しかし常に嫁が頭にちらついて、800円も払ったのにシャワーを浴びる程度で温泉から上がり速攻帰宅。

この祭りは一体いつになったら終わるのか?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ノンストップで車を運転し続けて自宅到着。

いろんな疲労やいろんな痛みでクラクラする。


倒れ込むように玄関へ。

輝いた顔で出迎えてくれた我が息子りんたろくん。

りんたろくんは僕を見て「帰って来たよ!うんこ星人帰って来た!」と言った。


一体僕が不在中に彼は何を教え込まれているんだ?

彼がウルトラマンにはまっているのは知っているが、そんな星人はいなかったはずだ。


ふらつきながらも先ずはお館様に帰還報告をしなくてはならない。

嫁は寝転がってテレビを見ている。

そんな嫁が、僕の方を見てハッとした感じで何故かじっと僕を見つめている。

さてはこの度重なるお祭りの試練を乗り越えた僕が今まで以上に男らしく輝いて見えるのか?

ついに惚れ直してしまったのか?

まさかの三人目誕生なるか?


しかし嫁はボソリと言った。

「なんか老けたね。おっさんだがね。」と。


そして彼女の奥の方には想像以上に元気なお義母さんの姿を確認。

僕はヨボヨボとその場に座り込む。




ひとしきりショックを楽しんでから、とりあえず荷物の後片付けを開始。

そうこうしているとりんたろくんが苦悶の表情を浮かべて泣き出した。

なんと彼は本日便秘5日目で、今まさにその溜まりに溜まった思いをぶちまけようとしている。

しかし入口付近のカチカチうんこがフタとなり、大変な難産がスタート。


すぐさま僕は疲れた体に鞭打って彼のセコンドに回る。

「出せ!出すんだ、りんたろう!がんばれ!いきんで!ウウウッッっていきんで!」

ウウウッの時に思わずスカ屁を出す男。

嫁が「臭うよ。出たんじゃない?」と言ってオムツチェック。

当然「お前じゃねえか!」とはたかれる僕。

泣き叫ぶ息子。

イラつく嫁。

色々限界のお父さん。

祭りはいよいよ感動のフィナーレへ向かって突っ走る。





突如訪れた静寂。

りんたろくんがニヤリとした。

「スッキリしたか?」と聞けば「スッキリした」と言う。


終わった。

長かった。

ついに「秋の中性脂肪祭り2012」がこの瞬間感動のフィナーレを迎えたのだ。


鳴り止まない拍手。

観客はスタンディングオベーションで彼の健闘を称える。


こうしてまた一つ僕は大人になった。

だんだん自分が何者かが分からなくなって来た。

一体何になりたいのか?


その答えは地球の人には分からないだろう。

所詮僕はうんこ星人なのだから。




秋の中性脂肪祭り 〜完〜



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コメント

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